ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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天空山ってすっごいよね!あんな不可思議なフィールドは見たことがないもん!
まぁ不可思議なモンスターなら数え切れないぐらいいますが、それでも魔法が関わっていないという不思議(笑)
だからこそモンハン大好きです。ビバ、科学や方式では解き明かされない不思議!

5/25:誤字修正。徹甲虫を伝説のポケモンと間違えました(汗)


第42話「天空山の剛毅」

 天空山。太古の地殻変動によりかつてあった遺跡群が倒壊し、神秘的な雰囲気を残す山。

 かつてはこの山全体の生物が死に絶え、屍の山が積みあがった大災害が起こったとされており、過去に生息していた生物が全滅したという記録が残されている。

 また、この山には正体不明の長大な生物が現れた事があり、その生物が苦痛に苦しみ暴れたことで今の天空山の姿になったとも言い伝えられている。

 そんな天空山の二つの伝承は、山を一望できるシナト村に古くから言い伝えられており、現在ではその伝承は事実であったと証明されている。

 

 まぁ、そんな昔話は置いておこう。

 

 この天空山は何よりも高低差が激しい場所としても有名だ。どういう理屈でこうなったんだとぼやく程に断崖は高く、場所によっては上から岩が滝のように落ちてくる。

 低いところでも段差が目立ち、跳躍力のあるイーオスやケルビが生息し、遺跡の破片と思われる断片が壁のように置かれていることも。

 この断崖絶壁が多いフィールドでは足腰が発達した、あるいは飛行能力を持つ大型モンスターが有利を掴むことが出来る為、リオレウスやジンオウガなど危険度の高いモンスターもちらほら見える。

 

 そんなフィールドには、徹甲虫アルセルタスの姿を確認することもできる。

 中型モンスターに含まれるこの甲虫種は大きな角と鎌のような前脚があるにも関わらず、自由自在に飛び回る飛行能力を持っている。

 とはいえ、背中に何かが引っ付いたらバランスを崩してしまう。落ちはしないだろうが、邪魔なので振り払おうとするだろう。

 

 例えばそう―――奇面族の子供とか。

 

 鳥兜風のお面を被る奇面族の子・ブッチャーは空を飛んでいた。アルセルタスの角にしがみ付きながら。

 どうしてこうなったのかをブッチャーは、そしてアルセルタスは覚えてないし、解っていない。だからこそ互いに混乱していた。

 なんてことはない。ただブッチャーが段差から降りようと跳び、たまたまそこへアルセルタスが横切ったことで、ブッチャーがアルセルタスの角にしがみついてバランスを崩す結果となったからだ。

 それでも引っ付いてしまった以上、双方の意思など関係なく、バランスを崩し暴れ馬の如く滅茶苦茶な空の旅をするしかなかった。壁にぶつからないあたり、アルセルタスも必死と見える。

 

 アルセルタスは角を振り回すようにして飛びまわり、ブッチャーは振り落とされるものかと角に必死にしがみ付く。まるでロデオではないか。

 そんな珍騒動を眺めているのは、奇しくも巻き添えを食らうガブラス、そして地上から見上げているイーオスぐらいだ。襲う気がないのは食性の違いだからだろう。

 

 

 それにより、アルセルタスVSブッチャーの、意地を張ったロデオバトルは続行されるのだった。

 

 

―――

 

 さて、ブッチャーがいるということはオニムシャザザミがいるということ。

 そのオニムシャザザミがブッチャーを放っておいて(いつものことだが)何をしているのかといえば、雷雲轟くエリア6で鉱石類を食らっていた。

 

 あの原生林を包み込む粉塵爆発を受けて大ダメージを負ったオニムシャザザミは、狂竜ウィルスに侵されているにも関わらず、生存本能を働かせて逃げ出した。

 テツカブラ戦やゴア・マガラ第一回戦、そして原生林の大乱闘にあの爆発。自慢の超硬度を持つ甲殻も大分ボロボロになっており、罅割れが大きく目立つ。

 割れ目が多くなっていくに連れて漏れる狂竜ウィルスの量も増え、ここ天空山に辿り着いた時は身体に蓄積されていたウィルスが全て抜け切り、前の温厚な性格に戻ったようだ。

 もちろん道中はウィルスを撒き散らし様々な地域で狂竜化モンスターが増えたのだが、同じく原生林を脱したゴア・マガラもあちこちを飛びまわっている為、被害はどこも同じだろう。

 これまでの道中にゴア・マガラと三度目の正直が無かったのが幸いだろうが……こういうのはフラグになるだろうから黙っておく。

 

 さて、ここ天空山には珍しい鉱石・フルクライト鉱石とレビテライト鉱石がある。

 非常に軽い物質で出来ているこの鉱石は、あの紅蓮石や獄炎石よりも採掘される事が少なく、必死で捜し求めているハンターも多い。

 そんなレア鉱石だろうともオニムシャザザミに掛かれば意図も簡単に見つけ出せるのだから、炭鉱夫ハンターには羨ましい限りである。嗅覚なのか、はてまた食欲が成せる執念か。

 とにかくオニムシャザザミはこのフルレビを大層気に入り、この鉱石をメインに食事を続けている。恐らくは甲殻の再生と強化に繋げようとしているのだろう。

 

 しかし当然ながら、ここ天空山にも大型モンスターが出没する。

 実は天空山は火山地帯並に危険度の高いモンスターが多く出る狩猟フィールドでもあり、高低差の激しさからか火竜の姿を見かける事が多い。

 バルバレ地方に出没するリオレウスはこの天空山を主な生息地としているが、それ以外のメジャーなモンスターも生息している。

 

―それが、暗雲から轟く雷鳴と共に姿を現れし牙竜種・ジンオウガである。

 

 流石のオニムシャザザミも、無双の狩人ジンオウガから放つプレッシャーと電撃に気付き、食事を中断して後ろを振り向く。

 そこにはゆっくりとした足取りでオニムシャザザミを睨むジンオウガの姿があり、威嚇の唸り声を上げながら電撃を漏らす。

 どうやらこのジンオウガは相手に敵意がないことを理解しているようだが、それでも己の縄張りに堂々居座るオニムシャザザミが気に入らないらしい。

 

 痛い目に見てもらうぜ、と言わんばかりに四肢に力を込め、超電電光虫を射出―――することはなかった。 

 突如として地中からハサミが出現し、ジンオウガの首を挟み込み、締め上げてきたからだ。

 

 あまりにも唐突な出来事にジンオウガも、そしてそれを傍から見ているしかないオニムシャザザミも事態を飲み込むことはできなかった。

 ジンオウガは首を圧迫される事で苦しみ、なんとか振り払おうともがき、全身から電撃を生じてハサミの主に攻撃を加える。

 強靭な四肢を持ってしてもハサミは振り払えなかったが、流石にジンオウガの雷撃は効いているらしく、苦しそうにハサミが震えている。

 

 そしてその電撃がいけなかったのだろう、ハサミは電撃を止めさせようと身を伸ばし、首を締め付けたままジンオウガを振り回したではないか。

 流石に軽々と、とは言えない。しかし左右の地面に叩きつけるようにして振るハサミに振り回され、首への負担と頭への打撲が悪化してしまう。

 やがてハサミはジンオウガの首を解放して地中へ逃げるが、酸素不足と首へのダメージが酷いのか、ジンオウガは力なく身を地面に伏せるしかなかった。

 そんなジンオウガの目の前に、そいつは地中より姿を現した―――重甲虫ゲネル・セルタスである。

 

 重厚な身体を盾のような分厚い四足で支えているこの大型モンスターは、容易く潰される側でしかないと思われていた「甲虫種」に属している。

 その体躯はジンオウガを悠々と越え、同じく重厚であるはずのオニムシャザザミとは違う物々しい風貌は、若きハンターが考えている「小さな甲虫種」の常識を覆すには充分な姿だ。

 

 自身を振り回した張本人を前にして倒れているわけにはいかない。ジンオウガは立ち上がりこそしたが、支える足は震えている。

 しかし彼もまた各地方で強者の一柱と数えられている「無双の狩人」。弱っていようともそのプレッシャー、そして威嚇とは思えぬ電撃が全身に溢れ出ていた。

 しかし、それが通じるのはそれより下の連中のみ。同じ土俵に立つ強者には強がりでしかない。

 

 ゲネル・セルタスは唐突に身体の側面をジンオウガに向け、両足に力を込める。

 咄嗟にジンオウガは避けようとするが、酸欠により意識が朦朧とし、足元がフラつく。

 

 

―そしてゲネル・セルタスの巨体が強靭な四肢の力により押し出され―――ジンオウガを吹き飛ばした。

 

 

 いくら弱っていようとも相手はジンオウガ。強靭な跳躍力を生み出す四肢は筋肉が詰められており、一部を除く大型モンスターの中でも重量はそれなりにあるはずだ。

 そのジンオウガを、まるでハリボテだったかのように突き飛ばし、崖に突き落とした。先のハサミによる振り回し攻撃は、ゲネル・セルタスのパワーの一端でしかなかったのだ。

 重量級から繰り出される圧倒的なパワーを持つ大型の甲虫種。故に二つ名は「重量級の女帝」。

 

 そんなゲネル・セルタスに背を向け「失礼しました~」と言わんばかりにコソコソと逃げ出そうとするオニムシャザザミだが……それも無駄に終わる。

 ゲネル・セルタスは背を向けたはずのオニムシャザザミを敵と認め、蒸気機関のような音を立てて威嚇の意を示したからだ。縄張り意識の強さも竜種に劣らなかったようだ。

 逃げようとするオニムシャザザミを追うようにゲネル・セルタスは走り出す。決して速いとはいえないが、歩くだけで地面が陥没する巨重と、それを支える足の力強さを物語る。

 

 しかし相手は甲殻種。同じ四足ではあるが機動性は上回っているらしく、ゲネル・セルタスの突進を横に移動することで避ける。

 巨体に加速度が入ることで簡単には止められず壁に激突。その一撃で壁にめり込むのだから、この一撃の重さが解るだろう。

 それでも壁にめり込んでいることを良い事にサヨナラと走りだす。足の速さならオニムシャザザミに分があるからだ。

 それでもゲネル・セルタスはオニムシャザザミを逃がすつもりはないらしい。壁から身を抜いて方向転換すると身構え、オニムシャザザミに向け高圧水ブレスを発射。

 頑丈とはいえ先の粉塵爆発でヒビが入った頭蓋骨に命中して半壊。弱点の一部を露になってしまったではないか。

 

 弱点が露見されたからか、オニムシャザザミの防衛本能により刺激された闘争本能(・・・・)を剥き出しにし、対立を決意。ゲネル・セルタスと向き合い鋏を振るう。

 これまでオニムシャザザミは、防衛本能が刺激されると「種を残す為の逃走」が本能的に選ばれ、逃げることで確実に生き延びようとしてきた。

 しかしここ最近は狂竜ウィルスによって攻撃性を刺激され、無くなった今もその影響は根深く残り、「優位を保つ為の排他」行為を本能的に選択できるようになったのだ。

 

 

―オニムシャザザミVSゲネル・セルタスの重量級同士の戦いが実現されようとしていた。

 

 

 

 しかしこの時のオニムシャザザミは知らなかった。このゲネル・セルタスの真価は、圧倒的なパワーだけでないことに。

 

 

 

―完―




作者がモンハン4で一番衝撃を覚えたモンスターはもちろん「ゲネル・セルタス」です。
これだ!これこそが私の求めていた重量級モンスターなんだ!と感動すらしました。
もう少し早くこの甲虫種が出ていたらゲネル・セルタスが主役になっていたといっても過言じゃないぐらいです。

それだけ私は多脚モンスターが好き、ということです(笑)

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