だからゲネル・セルタスは作者の中のモンスターで最強のモンスターなのです。異論は認める!
そんなわけで、モンスターハンターデルシオンは投稿が遅れます。すみません(汗)
察しの良い方は題材が何か解っているでしょう。力を入れているのでどうかお待ちください。
6/8:サブタイトル修正。ご指摘ありがとうございました。
重甲虫ゲネル・セルタスと鬼鉄蟹オニムシャザザミ。この2匹は外観的に見て似た要素を持つが、実は大きな違いがある。
この2匹に共有するキーワードは大雑把に分けて三つ。高硬度の甲殻による「重装甲」、それに伴う「重量級」、そんな身体を支える「四足」だ。
「重装甲」について話すとすれば、この2匹は性質がそれぞれ異なっている。
ダイミョウザザミの甲殻は全身まで行き渡っておらず柔らかな背部を晒している為、別の殻で隠す必要性がある。それは鉱石を複合させるようになったオニムシャザザミも同じ事だ。
対するゲネル・セルタスは関節部を除けば全てが分厚い緑色の甲殻で覆われている為、甲殻種に比べると硬度は劣ってしまうが、防御力は高いといえよう。
そして甲殻を分厚くしようとすれば身体が重くなり、「重量級」となってしまうのは当然のこと。
鎧竜グラビモスが一目瞭然だろう。リオレウスのように自由に飛ぶことはできず、装甲が増す分だけ動きは鈍くなるものだ。
このゲネル・セルタスもオニムシャザザミもそう……かといえばそうではない。オニムシャザザミは重量級ではあるが、動きが鈍いとは言い切れない。
その理由は同じキーワードでありながら違いがハッキリと解る「四足」にある。
ダイミョウザザミやショウグンギザミは甲殻とヤドの頭蓋骨、そして大きなハサミがあるにも関わらず、バランスを崩すことなく高い機動性を発揮することができる。
身体の大きさに比べると小さく見える四足だが、時には空高く跳躍することも出来るというのだから、この足に込められた筋肉の量は凄まじいものといえるだろう。
そもそも甲殻種は無脊椎動物であり、芯となる骨を持たぬ代わりに外骨格を持つようになった生物であり、柔らかな筋肉を守る為に堅い甲羅を必要としている。
そしてそれは甲虫種にも言えることであり、甲殻で全身を包むことで身を守る術を得た虫だからこそ「甲虫種」という種族名がつけられたのだ。
だがゲネル・セルタスの甲殻の下にある筋力の量は甲殻種とは比べ物にならない程に多い。それは「体を支える為」だけでなく「敵を踏み潰す為」の足だからだ。
考えても見て欲しい。あれだけ太く大きな4本の足ならば、巨体を支える所か、脚力により推進力が上がっても可笑しくない。それにも関わらず鈍いまま。
グラビモスですら2本の足であれだけの推進力を発揮している。あの速度であの重量がぶつかった時のパワーは、ベテランハンターですら1乙する確率が高いと聞く。
つまりゲネル・セルタスの足は速度を上げる為のものではなく、足そのものに力を込める事で破壊力と走破力を上げているのだ。
また天空山は地形上、段差が多い。それを難なく上り下りできるだけの脚力は、速度よりも走破力に優れていることを物語っている。
―つまりゲネル・セルタスの足は、しっかりと地面を踏み抜く力に特化した「安定性」と「走破力」の高さにある、と言ったところだ。
―――
オニムシャザザミが鋏を構えれば確かに鉄壁だろう。しかしその鉄壁ごと推し進められてしまっては意味が無い。
鋏を構え防御体勢でいるオニムシャザザミを、ズリズリというよりはズガガガという効果音が似合う程に押すゲネル・セルタス。
四つの太い足が地面にめり込むほどの突進は、地面を抉りながらオニムシャザザミを押し出すほどのパワーを秘めていた。
天空山で繰り広げられているオニムシャザザミとゲネル・セルタスの攻防。
ジンオウガを突き飛ばしたエリア6を移動し、緩やかな段差があるエリア5でその死闘は続けられた。外野のイーオス達もその戦いを見守るかのように吠えていた。
もはやガードしていても無駄だと解ったオニムシャザザミは姿勢を崩し、鋏を構えたまま右へと動き、上手くゲネル・セルタスをいなす。
目標が眼前から消えたと同時にゲネル・セルタスは四足を地面にめり込ませ急停止。鋏を振るうことで遠心力が働き、動きを止めつつ方向転換に成功した。
しかし隙があるには違いなく、急旋回し正面に捉えたオニムシャザザミは其の場で跳躍。ゲネル・セルタスの頭上に落下してきた。
モロに受けたゲネル・セルタスは身体ごと地面にめり込むが、四足に力を込めて地面から胴体を抜くどころか、勢いをつけてオニムシャザザミを逆に吹っ飛ばす。
下から上に突き上げられたことで軽く宙を舞い、地面に落下。鋏を盾にすることで顔面直撃は避けられ、ゆっくりと起き上がる。
ゲネル・セルタスは甲殻の硬さだけではない。その巨体とパワーの元である筋肉の量も凄まじく、防御力だけでなく体力面ですら高いことで知られている。
鉱石を食らってそれを纏うオニムシャザザミの重量もかなりある方だが、その身体から繰り出すボディプレスですら、ゲネル・セルタスには決定打にならない様子。
パワーとタフネスは圧倒的にゲネル・セルタスが上。ゲネル・セルタスを上回っているのは硬度と機動性だが、このパワフルな外敵を打ち倒すのは容易ではない。
ならばどうするかといえば……絡め手を使う他ない。
オニムシャザザミは口から毒液を発射。機敏に動けないゲネル・セルタスはそれを大量に浴びてしまう。
しかしゲネル・セルタスは分厚い甲殻で身を覆っている為、大量に浴びても実際に体内に入る量は微量らしく、弱っている気配が無い。
飛竜種や牙獣種は甲殻や体毛で覆われていても僅かな隙間にある皮膚から毒素が侵入するのだが、甲虫種はそうではない。繋ぎ目があるとはいえ皮膚とは違った性質を持つ為、傷をつけなければ体内に侵入できないのだ。
よって絡み手も効果は薄い。なんてこったい。
それでもいずれは効果が出るだろうと、オニムシャザザミは
時には水ブレスとして相手の足を滑らせ、時には毒や麻痺を混ぜて全身に浴びせ、動きを止める必要がある圧縮水ブレスで傷つけようとする。
ちょこまかと動きつつ遠距離から攻める。ゲネル・セルタスも高圧ブレスという必殺技があるが、水分量と命中精度ならオニムシャザザミが上らしく、上手く避けつつ戦い続けた。
すると、ゲネル・セルタスは突如として全身から蒸気を噴出す。どうやらセコい戦い方に苛立ちを覚えていたらしく、怒りのサインをあげているようだ。
そして息を吸い込むように身構えると、今度は蒸気ではなく独特の臭気を纏うガスを噴出したではないか。
その匂いは流石のオニムシャザザミの嗅覚も参るらしく、嫌そうに身を引いて逃れようとするほど。ゲネル・セルタス近隣にいたイーオスに至っては匂いで気絶。南―無―。
あまりの激臭にゲネル・セルタスから距離を置いて様子を伺うオニムシャザザミだが、空から音がしたのでそちらへと視線を向けた。
―そこには、フラフラと飛ぶアルセルタスとそれにしがみ付くブッチャーの姿があった。
あのロデオバトルから軽く1時間は経過しているというのに、2匹の戦いは未だに続いていたらしい。
お互いに汗水垂らしてヘトヘトだというのに、アルセルタスは必死に前へ飛び、ブッチャーは必死に角にしがみ付いていた。
なんであんなことしてんだろーとばかりに顔(というより身体?)を傾げてブッチャーとアルセルタスを見上げ、その行き先を視線で追う。
そしてアルセルタスが着地した場所は、なんとゲネル・セルタスの真上だった。
アルセルタスが着地したと同時にゲネル・セルタスは「これで勝つる!」と言わんばかりに気合を入れだした。気のせいか、アルセルタスも両の鎌を振り回し気合を露にしていた。
なんだなんだと周囲を見渡すブッチャーを置いてけぼりにアルセルタスが羽ばたき、ゲネル・セルタスが地面を蹴って前方に勢いをつける。
するとゲネル・セルタスはほんの僅かだが地面から浮遊し、蹴った勢いと合わせることで最初期とは比べ物にならない程の加速が生じた。
その突進の勢いはオニムシャザザミが驚くほどで、横に逃げるよりも跳んだ方が早いと咄嗟に判断し、ジャンプ。
その下を潜り抜けたゲネル・セルタスはそのまま地面に着地し、四足をそれぞれの力加減で地面に食い込ませ急旋回。
勢いに乗ったままゴリゴリと地面を抉りながら旋回する様は、ゲネル・セルタスの重さを改めて思い知り、そして先ほどの突進の勢いが段違いに速い事を理解できるだろう。
ゲネル・セルタスとアルセルタス。この2匹は見た目こそ大きく違うが、これでも雌雄関係にあたる。雄がアルセルタスで、雌がゲネル・セルタス。
小柄で飛行能力が高いアルセルタス。大柄でパワフルなゲネル・セルタス。どうして雄雌がここまで違うのかはともかく、この2匹は雌雄揃って初めて真価を発揮する。
激臭のようなフェロモンでアルセルタスを呼び出し、その飛行能力と兵力を手にしたゲネル・セルタスは飛竜種を圧倒するほどの戦闘能力を得られるのだ。
その一例が、アルセルタスの飛行能力を利用した、浮力を得たことによる機動性と推進力の向上。突進の性能強化はもちろん、先とは違うバリエーション豊かな攻撃を可能としている。
これはあくまで一例であり、これ以外にもアルセルタスを用いた連携攻撃は多数存在しているが……今はまだ語るべきではないだろう。
まるで兵のようにアルセルタスを付き従わせ、兵力として扱う。これがゲネル・セルタスの異名「重量級の女帝」のもう一つの由来である。
久々の強敵、それでも圧倒的なパワーとスピードを兼ね揃えた厄介な相手。
同じ突進でもディアブロスとは違う。同じパワーでもドボルベルクとは違う。例えようのない、この大型甲虫種ならではの強さを見せ付けていた。
それでもオニムシャザザミは逃げない―――否、
こちらも毒液による絡め手や跳躍力という独特の戦法があり、ゲネル・セルタスはアルセルタスを 用いてパワーアップするが、元は自分と同じ「防御力とパワーで勝負するタイプ」。
だからこそ、狂竜ウィルスに汚染されて変化した野性本能が告げている―――「ここで引いたら、自分の甲殻とパワーはココでは通用しない」と。
セクレーヌ大砂漠で覇とG級の2匹に遭遇したことで、オニムシャザザミの世界は広がったのだ。自分はまだまだ弱い。自分はまだまだ脆い。自分はまだまだ―――強くなれると。
人もモンスターも、自分が知らなかった上の存在を知った途端に「登る」という概念を覚える。それが生存本能の一つ「競争意識」だ。大自然は生き残ったが勝ちであり、最も解りやすい手段は「強さを身につけ他者を倒す」ことにある。
狂竜ウィルスによって攻撃性を刺激されたオニムシャザザミは、徐々にモンスターとしての矜持を本能的に思い出す。「敵は倒せ」と。
だからこそ、オニムシャザザミは強敵に挑む。
モンスターとして忘れていた本能を思い出す為にも。そして強敵を打ち倒し、伸し上がる為にも。
いつのまにかオニムシャザザミの鋏によじ登っていた。それに気づいたオニムシャザザミは、むしろ歓迎するかのように鋏を頭に寄せ、ブッチャーを乗せる。
―さぁオニムシャザザミの旦那、わちきらのコンビネーションを見せてやるでヤンス!
なお、上記の台詞はイメージです。
イメージなのだが、オニムシャザザミは言葉を理解したかのように「よっしゃー!」と鋏を打ち鳴らし、気合を入れる。
ブッチャーはその音を試合開始のゴングのように感じたのか、喜々として舞い踊る。
―さぁ、第二ラウンドの始まりだ!
―完―
本来ならもっと戦闘シーンを書くべきだったのですが、熱く語ってしまいました(汗)
次回は比較やうんちくを省き、戦闘に絞りたいです。