ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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今明かされるブッチャー脅威のハンター力!

それとポケットモンスター・ライフでの後書きのオマケについて触れないで下さい(汗)

6/23:誤字修正。ご指摘ありがとうございました!


第44話「天空山での決着」

 ゲネル・セルタスとアルセルタス。見た目も機能も異なる雌雄関係だが、だからこそ合わさることで強さを発揮することができる。

 とはいえ、この二匹の連携攻撃はアルセルタスの献身があってこそ。ゲネル・セルタスのパワーに加えた、他のモンスターにはない明確なサポートがある。

 小回りの効かないゲネル・セルタスに代わり、懐へ飛び込んだハンターを両前脚の鎌や腐食液で撃退し。

 鈍重なゲネル・セルタスを圧倒的な飛行能力を用いて浮かばせ、負担を減少させて突進の勢いを増し、更には宙に浮かんでからの強烈なボディプレスを繰り出し。

 時には合体を解除し、ハンターや大型モンスターの死角から突進してくるなど、多くのハンターがこのアルセルタスの阻害を受け、腹を立てたものだ。

 

 よって、多くのハンターがセルタス夫婦と遭遇した場合、まずアルセルタスを率先して倒すことが多い。

 ゲネル・セルタス自身も強敵には違いないが、このアルセルタスを先に討伐しておくことで難易度はぐっと下がる。

 しかし時間が経過すると新たなアルセルタスを呼び出す為、その間にゲネル・セルタスを倒せるか否かが重要となるだろう。

 

 

―では、逆にアルセルタスの行動を邪魔してやるとどうなるのだろうか?

 

 

 

―――

 

 ゲネル・セルタスが背に乗せたアルセルタスの角を地面に突き刺そうと身を屈める。角刺し突進を繰り出すつもりか。

 しかしそれは叶わず、頭を地面に激突するだけに終わった。しかしゲネル・セルタスは角が刺さったと思い込んでそのまま走りだした。

 ゴリゴリと地面を削ろうがお構い無しに突撃するが、オニムシャザザミは平然と横移動で避ける。速さが足りないからだ。

 

 そんなことも知らず走り続けるゲネル・セルタスの背中の上では、二匹のモンスターが奮闘していた。アルセルタスと奇面族のブッチャーである。

 角にしがみつくブッチャーは片手で持った杖でボコボコとアルセルタスの背を殴りつけ、アルセルタス自身は身を捻ったり振ったりして角を振り回す。

 その間にもゲネル・セルタスは重心を固定し地面を削りながらUターンをし、二匹に遠心力が襲い掛かる。

 

 そしてブッチャーと、身を揺すっていたアルセルタスはゲネル・セルタスから落下。

 落下しても尚ブッチャーは「これでもか、これでもか!」とアルセルタスを杖でボコり、アルセルタスは「いい加減に離れろ!」と地面の上で身体を振り回す。

 さっさと飛べよ、と傍から見ていたイーオスは思う(ように見える)だろうが、ブッチャーが殴っているのはアルセルタスの背中、つまりは羽根が開く場所だ。羽根を広げたくても広げられず、地を這う結果となった。

 

 結果的にゲネル・セルタス対オニムシャザザミに戻ってしまうが、いつアルセルタス又はブッチャーが戻るとも限らない。

 ブッチャーがアルセルタスを抑えている間、オニムシャザザミはゲネルと真剣勝負が出来る。それだけでも十分なサポートだ。

 

 改めて対峙し、両の鋏を広げ大きさをアピールし、威嚇の姿勢を示すオニムシャザザミ。

 ゲネル・セルタスは両の鋏を広げたオニムシャザザミに真っ向から突進……するわけでもなく、四足に力を込めて身体を固定し、高圧ブレスを発射。

 巨大な水の塊がオニムシャザザミに降りかかるが、幾ら高圧とはいえ水なのでオニムシャザザミの甲殻を破壊するには至らない。まぁ体は吹っ飛んだが。

 お返しとばかりにオニムシャザザミも毒を混ぜた水を発射。ゲネル・セルタスの水大砲とは違い直線状に放たれる水鉄砲だ。

 こちらも分厚い甲殻で守られたゲネル・セルタスには効果が薄く、オニムシャザザミのように吹っ飛ぶこともないが、それでも抑えつけられているからか面倒くさそうに直線状から逃げようとする。

 

 貯水する器官があるとはいえ、水は有限だ。特に元々は半水生故に水分を必要とするオニムシャザザミは連続で放つことができない。

 水生の要素が全く無いゲネル・セルタスでも、高圧ブレスは隙が大きい上に放つ水の量が膨大なため、頻繁に撃てるものではない。射撃戦に持ち込むことは不可能だ。

 「やっぱガチンコでケジメつけるしかないみたいだな」と言わんばかりにオニムシャザザミは鋏同士を打ち鳴らし、「かかってきなさいな!」とゲネル・セルタスが地団駄を踏む。

 そして果敢にもオニムシャザザミから鋏を広げゲネル・セルタスに突進していくのだが……。

 

 

―ゴインッ!

 

 

 突如として横から、しかも鋏ではなく本体の方にアルセルタスが直撃。角という小さな一点から食らった一撃はオニムシャザザミを見事スタンさせた。

 しかし高硬度の壁のような存在に直撃したアルセルタスも無事ではなく、硬い角から伝わってきた衝撃は頭部に響き、同じくスタン状態になってしまう。

 

 アルセルタスがオニムシャザザミに突っ込んだのはサポート目的ではない。

 アルセルタスの背中をブッチャーが陣取って邪魔する中、地面の上で必死に羽根を広げ、振り払おうとした結果だ。

 それを好機と見たゲネル・セルタスは尾を振り回して攻撃しようとしたが、そこへ。

 

 

―カッ!

 

 

―目がぁー!目があぁー!

 

 

 なお、上記の台詞はイメージです。ゲネル・セルタスが閃光をモロに食らって混乱しはじめたので。

 

 なんとブッチャーは、ハンターが使う閃光玉のようなもの(・・・・・・)を作り出すことに成功したのだ!

 材料は光蟲にネンチャク草。本物と違って範囲は狭い上に何かに直撃させ光蟲を潰す必要があるが、目くらましには充分だ。

 

 その辺を暴れ出したゲネル・セルタスを見たブッチャーは力の限りを尽くして杖を振り下ろし、アルセルタスの角を部位破壊。先ほどの衝突が響いたのだろうか?

 そして衝突で気絶しているオニムシャザザミを起こそうと頭によじ登り、適度な力加減でポカポカと杖で頭を殴る。ついでに元気を出せダンスも披露。

 

 そんなブッチャーの必死の頑張りが通じたか、オニムシャザザミはハッと我に返り、起き上がる。

 よいしょ、と横倒しになっていた身体を起き上がらせた結果、気絶していたアルセルタスを意図せず踏みつけてしまった。

 甲殻種の脚は細く長くそして硬い為、ゲネルに比べると薄い甲殻を持つアルセルタスの身体を……ここからは語らないで置こう。スプラッタなのだ。

 

 とにかく、アルセルタスがダウンした今、残るはゲネル・セルタスのみ……というわけにはいかなかった。

 目くらまし状態から回復したゲネル・セルタスはオニムシャザザミに向き合うと、再び身体からフェロモンガスを噴射。

 そう、アルセルタスは決して一匹だけではない。あるハンターの日記によると「ゲネル・セルタス一匹居たらアルセルタス三十匹いると思え」と記されているほど、アルセルタスは沢山いる。

 オニムシャザザミですら嫌がるほどに臭いこのフェロモンは、遠くに生息しているアルセルタスですら呼び出すことが出来るのだ。

 

 しかし、ここでまたしてもブッチャーの妨害行動が。

 ブッチャーはフェロモンの香りをなんとも思っていないのか、ゲネル・セルタスの背中を陣取り、ある物を周囲にばら撒く。

 それはフェロモンとは別の意味で臭いこやし玉だった。ハンターやババコンガが使っているものを真似て作ったそれは、直撃すればフェロモンに勝る悪臭が充満する。

 ベッタベッタとゲネル・セルタスに降りかかるこやし玉はフェロモンを覆いつくし混ざり合い、なんともいえぬ臭さの塊となっていく。あまりにも残酷な行いといえよう。

 その匂いは広範囲に広がっていき、野次馬のイーオス達が「うわーくせー逃げろー!」と蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。

 

 

 そんなゲネル・セルタスの今の心情を台詞とするならば―――

 

 

「なにこのイジメ」

 

 

―――といった感じである。

 

 

 とにかく、これでフェロモンの匂いはかき消され、アルセルタスが呼び出されることはない。所詮フェロモンでしか釣れない連中ですから。

 反してブッチャーは(驚いたことに)激臭も悪臭も平然としており、「やったでヤンスー!」と言わんばかりにゲネル・セルタスの上でダンスを披露。飛び降りてオニムシャザザミの元へ駆け出した。

 オニムシャザザミは臭いゲネル・セルタスを相手にしたくはないが、攻撃的本能により叩くなら今しかないと、ブッチャーが頭頂部に達した所で鋏を打ち鳴らす。

 

 対するゲネル・セルタスは「こうなったらヤケクソよー!」と言わんばかりに尾の鋏を打ち鳴らし、無謀にもオニムシャザザミに突貫。

 だがオニムシャザザミは脚に力を込めて高く跳び上がり、ゲネル・セルタスがその下を通過した所へ落ちて押し潰す!

 

 

―ドガァンッ!

 

 

 流石のゲネル・セルタスも高い所から落ちてきたオニムシャザザミの重さに耐え切れず、踏ん張りも利かず地面に叩きつけられ、甲殻に大きな皹が入り体液が溢れ出てくる。

 それでもオニムシャザザミは容赦しない。匂いのおかげで躊躇いはしたものの背中を陣取ったまま鋏で殴りまくる!ブッチャーも杖でボカボカ殴る!

 ゲネル・セルタスは反撃しない……いや反撃しようと尾の鋏を振り回しヤドである頭蓋に殴りかかってはいる。それでもオニムシャザザミは無視して殴り続けた。

 大事な弱点を隠すためのヤドが破壊されるかもしれないという恐怖よりも、脅威を逸早く倒しておきたいという本能が上回ったのだろう。ヤドが破壊される気配はないが、一心不乱に殴り続ける。

 

 

 

―――

 

 かくして、ゲネル・セルタスは息絶えた。

 スイカのように割れた甲殻の上で、体液まみれになりながらも勝利の意を示すかのように鋏を天に上げているオニムシャザザミは、まるで蛹から抜け出し蝶になったかのよう。

 

 いや、オニムシャザザミはこの日より変わった……いや元に戻ったのかもしれない。

 食用として育てられ、食用として船で輸送された際に大海原に落っこち、ユクモ地方に辿り着いた。

 その環境の激変的な変化に適応した彼は、鉱石を取り込んで防御力を強化させ、その防御力から異常なまでの臆病な性質となって暮らしてきた。

 もちろん暢気で食いしん坊はあったが、それは周囲の力の差を見比べるだけの知性があったからだ。自分より弱い奴は無視し、自分より強い奴から逃げ出す。これも自然の中で生き残る方法の一つだ。

 

 しかし本来のダイミョウザザミはこうではない。

 比較的大人しいと云われているダイミョウザザミとて縄張りに侵入者が現れれば敵対するし、攻撃されれば反撃にでる。

 甲殻種とて「敵を排他し生き延びる本能」を持ち合わせており、オニムシャザザミはその原点を思い返したのだ。

 

 セクアーヌ砂漠で自身より強大な敵がいくらでもいることを知った。

 

 バルバレ地方でゴア・マガラの狂竜ウィルスに感染し、狂竜化することで攻撃的本能を思い出した。

 

 そしてこのゲネル・セルタスを打ち負かしたことで、ダイミョウザザミとしての本能を取り戻した。

 

 もちろんオニムシャザザミとしての性質―――生きる為の逃走本能も忘れてはいない。

 そもそも弱点である背部がある時点で防御本能は働いているから、時には恐れ逃げることも重要だと、これまでの生活で理解している。だからこそ今まで生き延びることができたのだ。

 しかしオニシャザザミは、今後からは戦う道も少なからず選ぶだろう。そういう風に進化(・・)できたのだから。

 

 

 これよりは、蟹が食物連鎖の強者となる為の戦いである。

 頭頂部で嬉しそうに踊るブッチャーは、本能的にそれを理解したのかもしれない。

 

 

 

 だが、まずは食事だ。腹が減っては生き残ることができないのが世の常。

 ブッチャーも同調して腹を空かしたところで、オニムシャザザミはゆっくりと脚を運ぶ。

 鉱石類を多く食して甲殻の補強も行わなければならない為、しばらくは天空山で食いまくるつもりだ。

 そんなオニムシャザザミの姿を見降ろした一部のイーオス達は、しばらくちょっかいを出さないでおこうと本能的に決めた。

 

 

 

 

 

――

 

 

―パキ

 

 

 今、漆黒より金色が生まれ来る。

 

 

―パキキ

 

 

 今、闇より光が生まれ来る。

 

 

―バリバリバリ

 

 

 天を廻りて戻り来よ。

 

 

「――――――――――!!!!」

 

 

 

 

 時を廻りて戻り来よ。

 

 

 

 

 

―続く―




決着の時、来たれり。


けどその前にワンクッション(コラ)
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