今後は投稿がゆっくりになるかもしれません(汗)
10/9:誤字編集追加文あり。切羽詰って書いたのでミスが多かったです、ご指摘ありがとうございます!
禁足地で繰り広げたオウショウザザミとの激戦。その結末は呆気ないものではあったが、終わったことには変わりない。
狂竜ウィルスの根源であるシャガルマガラは骨となったし、食らった張本人であるオウショウザザミは地中へ潜ってどこかへ行ってしまった。
ジグエの狩猟対象は既に討伐されたようなものだし、クックラブトリオのターゲットであるオニムシャザザミは姿が変わって逃げ出した。結果オーライというものである。
しかし失った物も少なからずあり、特にジグエの損失は大きすぎた。
―――
天空山のシナト村。狂気の根源が山から消えてしばらく経った山の全貌は美しく、村に吹く風も心地よいものだった。
暗雲に包まれ狂竜化したイーオスにすら怯えなければならなかったのが嘘であるかのように、村人達は穏やかな日々を過ごしている。
大僧正もいつもの格好で皆に混ざって畑仕事に励み、農作業の疲れを【我らの団】の料理長の美味しい飯で満たす。
しかし料理長の表情は浮かばない。自身よりも大きな中華鍋を振るうが、いつもの料理長の調理姿を見ている者なら、いつもよりも調子が無いことが解る。
料理長だけではない。シナト村全体は穏やかではあるが、大僧正を始めとした、【我らの団】との繋がりが強い村人は、全員が心配そうにイサナ船を見つめていた。
そして当然の事ながら、【我らの団】のメンバーも見る先は同じだった。
明るく笑う竜人問屋も、無口な加工屋も、今にも泣き出しそうな顔でソワソワしている加工の娘も、クエストボートの前でフルフル人形を抱きしめている看板娘も、全員が今は不安げにイサナ船を見つめている。
シナト村が穏やかな静寂と重い沈黙の半々で満たされる中、声が轟く。
「みんなー!
若き青年のハンター・ビスカが慌ててイサナ船から出た途端、竜人問屋を除く【我らの団】のメンバーがイサナ船に殺到したのは無理も無いことだった。
そして押し合うようにして駆け込んだ為にビスカがソレに流され、(主に女性2名に)背を踏まれたのも必然であった。アーメン。
―――
ジグエの意識が覚醒した直後に感じたのは、右腕の違和感だった。
意識が復活したからか体からヒシヒシと痛覚が伝わり、それにより目を開いたジグエには見慣れた天井……己の部屋の天井が見えていた。
「
「おう、ようやっと起きたか」
嬉しそうに己の名を呼ぶビスカの声と、少しトーンを落とした団長の声、そしてニャーニャーとオトモアイルー達が騒ぐ声が聞こえてくる。
ビスカが慌てて外へ出て何かを叫んでいる中、痛みが走る体を起こす為に右腕を動かそうとして……反応が無かった。
当然だろう。包帯が巻かれたジグエの右肩よりも先が何も無いのだから。
「……はぁ、やっぱりのぉ」
「なんだ、意外とあっさりしてんのな」
右腕が消失したというのにジグエは溜息を吐くだけで、落ち込むことも悲しむこともしなかった。
ジグエの事をよく知っている団長とはいえジグエの反応を見て意外そうに口を挟む。それに対してジグエは「ほっほっほ」と短く笑う。
「自分の体じゃからな。それにあの一撃を食らったら、こりゃダメになったなと悟ってまうわい」
ここ最近になって己の体力の限界を悟ったほどだ。歳の数だけ付き合ってきた肉体だからこそ、あの攻撃を受けた直後、体の一部が欠落することを悟ったのだ。
それにハンター歴は短いとはいえ、ジグエは幾多もの死線を越えてきた。古龍種や凶暴な飛竜種との戦いで生死の境目を彷徨いかねた事も多い。
当然ながら骨折や打撲、命に関わるような致命傷を受けることは多々あったが、腕一本持ってかれるようなことは無かった。
「それは置いといて、あの後じゃが……」
まぁ過ぎた事を言っても仕方ない。切り替えの早い2人は本題に入ろうとして……。
「爺ちゃん起きた!?起きたー!?」
「お目覚めのようで何よりです!」
「……無事そうだな。よかった」
「おお起きたニャルか!旦那の為に上手い雑炊を作ったニャルよ!」
加工屋の娘、看板娘、加工屋、料理長がこぞって部屋に入ってきたではないか。
しかも静かにするようにと筆頭オトモのトラが纏めて甲板に集めておいたオトモアイルー達もニャーニャーいいながら雪崩のように入室。トラが流されて大変だ。
人に加えて5匹ものアイルーが入ってきたことであっと言う間にハンターの部屋は満室、しかもワイワイニャーニャーと五月蝿いのなんの。当のジグエは揉みくちゃにされるし。
「静かにせんかい、おまえらーーー!!」
そう叫んで、ジグエは折れた肋骨を痛めてしまうのだった。
―――
さて、場所は変わってイサナ船の甲板。ここなら広いので、ジグエを心配していた人が全員来ても大丈夫だろう。
右腕を失った痛々しい姿をしているが本人はいたって平常運転な為、彼を知る人は「流石は爺ちゃんハンターだ」と納得したほどだ。
しかしジグエの事を「爺ちゃん」と慕っている加工屋の娘は不安のようで、無くなった腕の代わりになるかのように傍で座っていた。
「さてと……わしが気絶している間に何があったか教えてくれんか?」
左手で泣きそうな加工屋の娘の頭を撫でながら、ジグエは自身が眠っている間の事を聞く。
まずトラは、オウショウザザミが逃げ出した直後に倒れたジグエを、クックラブトリオがシナト村まで運んでくれた事を話した。
倒れた直後に3人がえっちらおっちらと担いで持っていき、シナト村の治療室へ送った後は別れたので、3人組のその後をトラは知らない。
そこで団長が代わりに礼を言おうと探した所、3人組は禁足地にあったオウショウザザミの抜け殻……正確にはオニムシャザザミの甲殻をかき集めている最中だったという。
戦闘時は集中していた為に気づかなかったが、禁足地にはシャガルマガラの白骨死体の他にオウショウザザミの物らしき抜け殻があったので、報酬代わりに持って行こうとしたのだ。がめつい話だろうが、難題のご褒美だと考えれば妥当かもしれない。
ギルドが回収する分と自然に返す分、さらにジグエが回収する分は取ってあるので大丈夫だと言っていた3人組の肝っ玉に、団長は大笑いしたそうだ。
特例としてギルドと大僧正から許可を貰っているから後で剥ぎ取ってこいと団長はジグエに言ったが、ジグエは応とは言わなかった。
続いてオニムシャザザミ、もといオウショウザザミの現状について。
ドドルの達筆なイラストとダリーの説明によって、ギルドはオウショウザザミの情報を得る事ができた。
アラムシャからオニムシャとなった期間も長いとは言えなかったが、まさかこんな短期間に進化するとは予想外で、ギルドも異例中の異例として、上へ下への大騒ぎ。
G級と思われる新種モンスターや
元が大人しい性質だということもあって、現状は放っておく事にするのだという。地中潜行した先も解らず、現在は行方不明も同然。
まぁ狂竜化によって暴走していた線が強いという結果もあり、シャガルマガラが討伐された今は大人しくなるだろう。
そしてシナト村についてだが。
「見ての通り、穏やかで美しい山を取り戻したよ。狂竜化が治まったおかげで無闇に入りさえしなければ安全も確保できた。君と彼らのおかげだよ」
大僧じょ……いや青年の言うとおり、シナト村から見える山を見れば一目瞭然だろう。討伐に向かう前の山は禍々しい雰囲気があったのに、今ではその様子は見られないのだから。
シャガルマガラもオウショウザザミも居なくったことで、シナト村だけでなく、貴重な素材欲しさに挑もうとして散る無謀なハンターも減るだろう。
後はジグエが元気な姿で帰ってきてくれたらどれだけ良かったか。いくら生きていれば儲かりモノとはいえ、片腕を失ったとなれば痛まれない気持ちになる。
しかしジグエはそんな周囲の気持ちを理解していないかのように笑った。
「いやいや、終わりよければ全て良し、じゃ!老いぼれの腕1本で解決したどころか……」
するとジグエは腰に巻いていたアイテムポーチに左手を伸ばし、何かを取り出した。
なんだろうと凝視する加工屋の娘に、キラリと眩しい光が差し込んでくる。
「
ジグエの手に持っているものは、片手にスッポリ収まる程に小さな、虹色に光る
おお、と歓声を上げてアイテムを見ようと近づく人々には、それぞれの角度に応じて様々な色合いを見せることだろう。
綺麗な輝きは濁りや汚れの無い純度の高さを物語らせ、光の反射角度によって変化する色合いに不思議な印象を与える。
「……綺麗なアイテムじゃないか」
「本当に綺麗だよ……!」
最も近くに居たが故にその輝きを美しいと捉えた団長と加工屋の娘は、じっとそのアイテムを見つめている。
団長は最初に【謎のアイテム】を拾った時の自分を思い出し、加工屋の娘はナグリ村の皆に育てられたが故の職人魂がざわめいていた。
黙って見つめている2人以外はワイワイと騒ぎながらアイテムを一目みたいと押し寄せるが、ジグエは言う。
「こいつはオウショウザザミの殻じゃ」
戦闘中、地面の上でキラリと光った欠片を咄嗟に拾ったジグエは、比較対象が居たことによってその正体を知った。
何かしらの攻撃を受けたのか脱皮の際に一部が剥がれたかは知らないが、これは間違いなく、オウショウザザミの真新しい甲殻の一部。
美しい甲殻だと思っていたものが手に入ったことで、ジグエは腕1本ぐらいならと考えるようになったのだ。
いや、腕を失ったからといって諦めるような老人ではないのがジグエだ。
「団長よ、ワシは今日からハンターを引退する―――代わりと言ってはなんじゃが【我らの団】の教官として置いてくれんか?」
ハンターは辞めるが、己の経験を生かす為、ビスカや先日入団を希望した新人ハンターを育てたい。
それにビスカには新しい夢が次々と浮かんできた。その数多くの夢を叶えるには、【我らの団】ほど相応しい居場所はない。
「おお!お前さんが居てくれるんなら大歓迎だ!そうだろ、皆!?」
ジグエが残ると知って喜ぶ団長を切欠に、【我らの団】は喜びのあまり歓声が上がり、シナト村の人々もそれに感染されて喜んだ。
ジグエの活き活きとした目を見て安心したからか青年もにこやかに見つめているし、加工屋の娘なんか嬉し涙を浮かべて泣き始めたほど。
喜びの中心に居るジグエは団長から快く受け入れられた事により、1つの決断をする。
「娘や」
「泣いてない!」
「ほれ」
どう見ても泣いている加工屋の娘に、ジグエは夢の1つを託す。
―キラリと輝くオウショウザザミの欠片……『冠蟹の虹殻』を。
「お前さんが持っていなさい」
「……ふぇ?」
思わずと言わんばかりに加工屋は綺麗なソレを受け取った。微笑むジグエを呆然と見つめながら。
「いつかあの蟹……冠蟹と呼ぶとするか……そいつの素材が手に入る日が来るはずじゃ」
この世に絶対なんてない。
それは膨大な時と人の努力が積み上げられた結果。災害級とされる古龍種もいつかは死ぬし、討伐不可能とされたモンスターも時が経てば狩られる立場ともなる。
それは世間を騒がせている孤独な蟹も一緒だ。世界に1匹しか居ないからとギルドが無闇に討伐を依頼しないからとはいえ、生命の理に則って何らかの形で死ぬだろう。
そしていつかは手に入るはずだ―――あの美しい甲殻を用いた素晴らしい防具が。
「だからコレは、お前さんにやる」
遠い未来を託すには、若くて才能がある、己が信頼する子が一番。だからこそ加工屋の娘に託したいのだ。
そんなジグエの意図を察知したかは解らないが、加工屋の娘は確かに受け取った―――物ではなく、想いや志といった、得体の知れない何かを。
子供や看板娘が羨ましそうに加工屋の娘の手に納まった欠片を見つめる中、加工屋の娘は呆然と美しい輝きを見つめている。
彼女の中には、泣き喚きたい衝動・職人としての期待と不安・未来を託された事への無意識の重さ・偉大と思える者から託された喜びなど、様々な感情に飲み込まれていた。
ただ、それらが決して悪いものではなく、むしろ心地よい物ですら想ってしまう。それが良いか悪いかという戸惑いも甘んじて受け止め、頭と心の中で渦巻かせる。
ジグエと団長、そしてこれからの【我らの団】を支えるであろうビスカは、そんな加工屋の娘を見つめて微笑んでいた。
この日より、ジグエはハンターを辞めて【我らの団】の教官となった。
その翌日にジグエが愛する大量のオトモアイルー達を泣く泣く授けようとして新人ハンター達を困らせるのだが、それは別の話。
後、加工屋の娘がちょっぴり大人に近づいた―――気がする。
―続―
【我らの団】のヒロインは加工屋の娘と信じて疑わない作者の贔屓でした(コラコラ)
ナグリ村の村長があんだけ愛するのも納得の若々しさです。いいよねぇああいう子(ロリコンにあらず)
次回はオウショウザザミのその後を記す予定です。G級の世界はその後かな?
ああ楽しみだなぁモンハン4G!最近になってMH4でオンラインにハマっちゃったし(笑)
もし狩猟笛を持ったブラキSの老人ハンターが居たら、それは私かもしれません(苦笑)
長々と失礼しました。ではまた!