ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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第52.5話「迫り来るG級」

 シャガルマガラが亡くなり、オニムシャザザミがオウショウザザミとなって逃げ出した日から数週間が経過した頃。バルバレギルドは徐々に落ち着きを取り戻してきた。

 

 シャガルマガラによる狂竜ウィルスの影響力は尋常ではないが、討伐(正確には食われたのだが)された後は脅威と言えるほどの物ではなくなって来たのが理由の1つだ。

 各地にゴア・マガラが何匹か確認されているとはいえシャガルマガラほどの影響は少なく、並のハンターでもチームを組めば討伐は容易い。ただし強いには違いなく、油断すると被害は大きくなるので注意。

 

 そしてある意味の問題児であるオウショウザザミについてだが……数週間経った今でも行方が知られていなかった。

 ダリー達クックラブトリオの情報提供もあり、オウショウザザミの姿形性質までを把握している。

 突っ込みどころ満載な内容だしおふざけの多い2人がいるが、相手は幅広い地域で活躍しているベテランだ。1人は真面目なこともあり、信用度は高い。

 

 つまり、虹色に光る甲殻という目立つ外見を持ちながら、バルバレギルドは未だオウショウザザミの発見例でしか報告されていなかった。

 

 これはオウショウザザミの元々の性質である「行動範囲の広さ」故に各地を点々としていることが、数多く寄せられた発見例で解っている。幸いなのは、オウショウザザミの行く先がバルバレの管轄内に留まっていることか。

 とはいえ姿を晦ましてしまったのは、重厚な甲殻が剥がれ身軽になったことで行動速度が上がったからではないか、とも指摘されている。ギルドがハンターを派遣した頃には居なくなるなど、その何気ない指摘は現実味を帯びていた。

 

 続いて、オウショウザザミは世界に1匹しかいない特殊な甲殻種であること。ここまでギルドが監視に徹底しているのも、突然変異で進化した貴重なモンスターであると認定しているからだ。

 この広い世界の中、バルバレが管理している地域ですら広いのだ。大勢のハンターが各地に挑んでいるとはいえ、発見例は一週間に一度あれば良い方とされている。

 

 そして発見例に留まっている最大の理由は―――ついにギルドはG級の世界へ挑む許可をハンターに与えたからだ。

 

 連日、新たな亜種はもちろんの事、これまで見なかった動きを見せるG級と推測されるモンスター達が多数発見されている。

 さらには古龍級モンスター・ウカムルバスが生息しているとされる地域までも発見している。噂レベルでしかないが、かの古龍種が1体・霞龍の目撃例もちらほらとある。

 目下研究中とされている謎のモンスター・千刃竜の被害報告も多数あり、Gの脅威が迫りつつあるとギルドは睨んでいる。

 

 

 故にバルバレギルドはオウショウザザミを放っておき、G級モンスターの情報とG級に挑むハンター達を集めている。

 いずれ多くのハンターが挑むであろう、これまで以上の力を示すことになるGの世界に備えて。

 

 

 

―――

 

 その少年がその日の原生林に訪れたのは、偶然か、あるいは必然か。

 

「なんだろ、これ」

 

 周囲を見渡していたら何かが光ったので、何気なくその光の正体を確かめに歩み出す。

 歩く度に目に映る光が変化した為に好奇心が刺激され、少年は次第に早足になっていく。

 その光の正体は、親指ほどのサイズでしか無い欠片のような物だった。しかしただの欠片というには余りにも綺麗な品物だった。

 

「なんて綺麗なんだろう……」

 

 齢17歳、ハンター歴2年という若い彼ではあるが、各地を点々と旅したからこそ解る。こんなに綺麗な物は見た事がないと。

 人差し指と親指で挟まれた欠片を掲げ、光が当る角度を変えることで変化する色合いを楽しみながら、少年は小柄な外見に似合った無邪気さを醸し出していた。

 いつ野生のモンスターに襲われるか解らない原生林ではあるが、彼はその心配は無いと解っているからこそ、不思議な輝きを見せる欠片を見つめていた。

 

 

―何故なら彼の後方に、満身創痍で倒れているラージャンが居たのだから。

 

 

 金獅子ラージャン。倒れているのは一般的な金獅子よりも小柄だとはいえ、ハンターどころか古龍種ですら恐れるという最強に程近い牙獣種。

 無論、ジンオウSシリーズを身に纏っているとはいえ彼1人で狩った訳ではない。このエリアには居ない知人のハンターが3人ほどおり、その3人からラージャン討伐を手伝うよう頼まれたからここに居る。

 

 さらに言えばこのラージャン、少年が参上した頃には既にボロボロだった。数回に解り双剣で斬ったとはいえ、放っておいても全身打撲による出血で死んでしまいそうなほどに。

 最小サイズでありながら上位種のラージャンを、ハンター達とは別の存在が殴り伏せたという事になる。知人らと共に原生林に立ち寄ってそれほど経って居ないし、必然的にその線が強くなる。

 つまり、ラージャンをも倒した存在がこの原生林に存在する可能性があるのだが……少年はその考えを忘れ去っている。

 

 

 

―知人らが駆けつけ事情を知らされる時が来るまで、少年は虹色に輝く不思議な欠片(アイテム)を眺め続けるのだった。

 

 

 

―――

 

 そのモンスターを狩れたのは奇跡のようなものだった。

 

 実力もさながら、自分を除くあらゆる生命を積極的に殺すという好戦的な性格が災いし、下手をするとイビルジョーに匹敵する災害を引き起こす凶悪なモンスター。

 ギルドが異例の如く高く設定した危険度故に討伐を諦めかけていたとはいえ、まさかそのモンスターを捕獲することに成功したとは夢にも思わなかった。

 何でもそのモンスターに大切な物を奪われた恨みがあるからと奮起するハンターによるものらしいが、捕獲してくれたというのならありがたい事この上ない。

 

 何せ世界に1匹しか居ないとされる甲殻種なのだ。厳重に、そして慎重にドントルマに持っていくとしよう。

 そういう思惑の元、ギルドは大陸を渡るべく船にそのモンスターを乗せ、出発したのだが……。

 

 

―よもや、大陸に到着する直前で。

 

 

「うわぁぁぁ燃える!船が燃えるぅぅぅ!」

 

「火を消せ!早く!」

 

「そんなことより逃げろおめぇら!斬り(・・)殺される(・・・・)ぞ!」

 

 厳重と慎重を重ねた最上級の護送船が容易く燃えていく。その事実が信じられない船員達は目の前の危機に立ち向いながら、しかし恐怖により混乱を極めていた。

 船上を燃え盛る炎に嫌でも目を向ける彼らに船長は怒号を上げる。何よりも恐ろしいのは、こんな時に麻酔が切れて暴れ出した()だから。

 斬る・斬る・斬る。そう言わんばかりに()は周囲のあらゆる物を切り裂いていき、船員達は炎と斬撃から逃げるように海に飛び込んでいく。

 

 やがて船は沈んだ。焼け落ちたのではなく、斬り落とされて。

 当然ながら船に乗せていた()も落ちたのだろうが、ここは大陸に近い海域だ。深いとは言い切れない海の底で生きている可能性が高い。

 だから船員達は泳いで逃げる。泳げないモンスターだが、水中でも生きられる可能性が高いモンスターだと知っている為に。

 

 

 

 その翌日、バルバレギルドに凶報が伝わった。

 

 

 

―ユクモ村からドントルマに輸送される予定だった刀蟹(カタナガニ)の消息が途絶えた、と。

 

 

 

 

 

―G級の脅威は、すぐそこまで迫っている。

 

 

 

 

―続く―




こういったプロローグみたいなものを書くのって楽しいです(笑)
ついでに感想板でリクが多かったので再登場させてみました。G級に入る頃を狙っていました(棒

次回から本編になりますが、それよりゲームに夢中になりそうです(コラコラ

待っててねザザミたん!今会いにいくぞぉぉぉ!(←変態)

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