旧砂漠にG級のザボアザギル亜種とオウショウザザミが現れました。
明日はポケモン最新作の発売日なので、その前に投稿しておこうと思いまして。
商人にとって大事なのは金でもコネでもない。他者との信用と信頼だ。
何故信用が第一に大切なのかといえば、それはモンスターが世界中に跋扈しているからに他ならない。
何せ自然災害の塊のような古龍種までいるこの時世。膨大な量の金が一瞬にして無に帰すこともあるし、結託していた大貴族が襲われてお陀仏なんてことも充分にある。
それでは何故、他者との繋がりを大事にするかといえば―――「困った時はお互い様」精神だ。
世界に困っている人は大勢居る。個人でもあるし、村でもあるし、大都市でもある。救いの手を伸ばすのに大も小も無く、救いの手は多ければ多いほど良い。
誰だって失敗はする。それを補うのは自分であり、他人だ。時には他人の失敗を自分が拭うことで、自分が困った時に助けてもらう。
もちろんこの手法にも失敗はあるが、何事も失敗を恐れるようでは成り立たないし、人との繋がりは仕事以外でも大事な所はある。
その代表的なのが、商人と狩人の関係だ。
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クエスト名:鮫どもの宴
依頼主:グルメな商人
メイン:ザボアザギル亜種とドスガレオスの狩猟
サブ:魚竜のキモ10個納品
ドンドルマに食糧を届けたいが、旧砂漠にザボアザギル亜種とドスガレオスがいると聞いてね。
街の皆に食糧を届ける為、2匹を狩猟してくれ。ついでに魚竜のキモを取ってきてくれたら嬉しいな。
これが成功して無事ドンドルマについたら私自慢の食材を使った夕食をご馳走するよ。
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炎天下の砂漠を、とある砂上船が進んでいた。輸送の為に設計されたものらしく、大きさからして相当の積載量が見込まれる。
甲板の上では船員達が船の行く先を定めるべく、大きな帆の操作や行く先の見張り、舵などで意外と忙しくしている。
そんな中、船内の一室―この砂上船の所有者が保有する大きめの部屋だ―では、ある取引が行われていた。
「……解った。では大きさに応じて報酬の額を変動させよう」
「まいどっ!」
落ち着きのある小太りの男と、褐色の肌を持つ女性が算盤を卓において会談していた。
ハンターであるこの女性の名はクカル。防具こそ狩猟外ということで外しているが、その背には、伝説ともされている銀火竜の素材で作られたハンマーを背負っている。
敵意が無いし親睦があるとはいえ、武器を背負うハンターを前にしても落ち着いている男の名はランボル。この砂上船の所有者にして、ドンドルマとロックラックを行き来する商人だ。
「いやー、助かるますわ。今月も金がキッツキツやねん」
「相変わらず食べるなぁ。この間のディナーもそうだけど、マナーはあっても遠慮は無いし」
特徴的な口調で話す彼女に苦笑いを浮かべるランボルは算盤を引き出しにしまった。
ランボルはクカルから「サブターゲットのモンスターのキモの大きさや質に応じて報酬を上乗せして欲しい」と会談を申し込まれ、それに応じていたところだった。
クカルは、リオレウス希少種の素材で作られた防具を纏う女ハンターとしてそれなりに名は通っているが、何よりも細身でありながらかなりの大食漢であることで有名。
G級になって久しいとはいえ、常に食事で報酬を浪費してしまい、未だG級の防具を纏えないほどに貧乏しているという悲しきハンターだ。彼女自身は楽観的である為か気にしていないが。
そんなクカルにとって、食に関して並々ならぬこだわりを持つランボルは、同志であり「お得意様」であった。
器量が良いのか報酬の支払いもいいし、何よりも魅力的なのはクエスト後に食事に招待してくれること。大食いのクカルが食いつかないわけがなかった。
ランボルも事ある毎にクカルと出会い、気が合うどころか何度もクエストを達成してくれたこともあり、有事の際は彼女に直接依頼する事も多い。
故に、魚竜のキモが大きく質の良い物だったら報酬を増やすぐらいは認めても良いだろう。そうランボルは考えた訳である。
「ほんなら、うちは出発の準備をしときますさかい」
「2匹の狩猟とキモの納品、くれぐれも頼みますよ」
クエストへの事前準備は念入りに。軽い口調とは裏腹に……いや、G級のクエストだからこそせめて持ち物は念入りにすべく、クカルは部屋を出る。
もう1人のハンターとの打ち合わせもあるだろうから、ランボルは一言だけ言って見送った。
―――
砂上船には布で出来た簡易的な天蓋があるとはいえ、やはり甲板が熱せられて暑いのなんの。
風通しの良い個室から出たクカルは乾燥した熱気に眉を顰めるも、相方になるハンターの姿を探すために甲板を歩く。
多くの人々が行き来しているが探している人物の特徴は分かり易いのでクカルは周囲を見渡すだけで、ふと目に留まった姿を見て確信する。
「イリーダ、準備できとっかー?」
ハンターの為に用意したという簡易天蓋へ向かい、そこに座っている少年に声をかける。
声を掛けられた少年は後ろを振り向き、人物の姿を特定すると素早く立つ。その手には双剣と砥石が握られており、研ぎの最中だったことが解るだろう。
「この研ぎが終わったらある程度は。クカルさんこそ大丈夫ですか?」
「うちはとっくに終わっとるわ。後は着替えるだけやで」
年上を甘く見るんやないで、と小柄な少年の頭をクシャクシャと撫でる。
赤みを帯びた金髪が崩れるが、元々短髪なので気にする事は無く、しかし困ったように苦笑いを浮かべている。
イリーダ。それがこの少年ハンターの名前である。特徴は赤みがかった金髪と150も満たない背丈だ。
齢18歳になってG級ハンターの仲間入りになった凄腕ハンターで、この度クエストを同行する事になった。
最も、クカルも若いとはいえ20代後半。イリーダのような瞬く間に駆け上るハンターなど多く見て来た為、あまり驚きはしない。
それにイリーダは基本、単独行動を好まないと聞く。中には上位ハンターについていってお零れに預かろうとするハンターも多いが、彼はそうではなさそうだ。
研ぎも丁寧だし、彼が愛用しているというジンオウSシリーズの手入れもしっかりとしている。ただの成り上がりハンターなら丁寧に手入れする事はない。
「ハンターさん達、そろそろ旧砂漠に到着しますよ」
進路方向を見張っていた船員が、軽く談笑していたクカルたちに声をかける。
それを聞いたクカル達が船の先を見ると、ひたすら地平線に砂が映っていた光景に、岩山らしきものがいくつか見えるようになった。
目的地が近づいているとわかったクカルは、天蓋においてあった自分の装備を手に取る。
「ほんなら着替えよっか」
「さっさとしないと着替える前に着いちゃいそうですしね」
そう言ってイリーダも手入れしていた防具に手を伸ばし、1つずつ装着していく。
そんな中、イリーダはポケットにしまっていた物―綺麗な虹色をした
―2人はまだ知らない。現在の旧砂漠にはザボアザギル亜種とドスガレオスの他に、オウショウザザミという甲殻種が居る事に。
斯くして、ハンター2人は停めた砂上船から降りて砂を踏み、旧砂漠へと足を運ぶのだった。
―続―
きっとモンハン世界の商人って、エチゴヤもアクトクホアンカンも居ないと思うんだ。
ぶっ飛んだ思考を持つ奴ならゴマンといるようですが(笑)
クカルは読者様のアイディアを参考にしました。食いしん坊で金欠な女ハンターです。
こんな風に簡易的なキャラになりますが、こんなハンター出して、とあったら採用される「かも」しれません(ぉ)