※後書きを読まないまたは読み飛ばす方へ
今回は必ず後書きも読むことをオススメします。
最近のハンターの間では、モンスターの背中に乗ってダウンさせる「乗り状態」を狙うのが主流となっている。
何せ上手く行けば無防備な背面を攻撃できるだけでなく、その痛みに耐え切れず悶えて隙を生じるのだ。
段差があってモンスターがそこに近づいたらとりあえず狙ってみる、というハンターも多いのではないだろうか?
―とはいえ、実際するとなれば楽ではない。
確実に乗れるわけではないし、モンスターの抵抗は厳しいし、失敗して落ちれば逆にこちらが隙を生じてしまうものだ。
モンスターの抵抗もそれぞれだが、一番厄介なのは両生種かもしれない。彼らは我武者羅に跳ねまわり、背中を地面にぶつけるのだから。
―故に。
「ぶぎゅっ!?」
「イ、イリーダぁぁぁ!」
ハンマーでイリーダをかち上げザボア亜種の背に乗ったのはいいが、暴れた際に背面から砂地に飛び込んだのが悪かった。
何せ逃げようとしていたガレオスと、背面にしがみ付いていたイリーダが衝突し、砂竜と虎鮫のサンドイッチが完成してしまったのだから。
砂地なら衝撃が和らぐし、地面ならしがみつく位置をずらすなりして対策ができるが、直撃を避けようとずらした位置に偶然ガレオスおり、この様である。
振り落とす為の跳躍だったためにガレオスは幸いにも命に別状は無いが、幾ら強靭なハンターでもコレはキツい。思わず手放してしまった。
振り落とせてホッとしたザボア亜種を余所に、クカルは砂地にダイブして倒れたイリーダへ駆け寄った。
「お、おい大丈夫……やないな、傷はそこそこあるわ」
「傷は浅いぞ!」というのがお約束だろうが、それどころではない。
身を起こそうとして解った。先ほど水ブレスで結構なダメージを負ったこともあり、全身打撲で力が出ない様子。
もちろんザボア亜種がそんな暇を与えない。すぐさま攻撃へ移ろうと身を膨らませ、大きく跳躍。
「やっばっ!」
しかしクカルも伊達にハンマーを振り回してはいない。小さいこともあってイリーダをおんぶする形で背負い、直撃を避けて走る。
「へい、ネコタクシー!」
どこかにいるであろうアイルーに届くよう、クカルは大声で叫び、ザボア亜種のゴロゴロアタックから逃げまくる。
そしてクカルの叫びが届いたのか、ゴロゴロと台車を牽きながら走るアイルー達の姿が。モンスター並の神出鬼没さである。
「後は任せた!」
「あいニャー!」
乱暴だが背負い投げの要領でイリーダを投げ飛ばし、アイルーが見事に(台車で)キャッチ!そのまま走り去っていった。
お荷物が無くなったからとハンマーを握り、こちらへ向けてボヨンと跳ねてくるザボア亜種と対峙する。
この時、イリーダがキャンプ送りになったことで、イリーダの持つ悪運が無くなった事になる。
そうなることでどうなるかといえば……乱入する奇跡あるいは遭遇できない不運が遠のいた、ということだ。
クカルを押し潰さんと飛び上がったザボア亜種の真下から別の
勢いよく飛び出たソレは跳び出した直後のザボア亜種の腹に直撃し、ザボアを予想以上の高さにまで吹っ飛ばす。お星様にはならなかったが。
砂中から飛び出てきたのは……太陽光をギラギラと反射する鉱石だった。
「うお、眩しっ!」
灼熱の太陽は眩しい。それを乱反射させるもんだから、クカルが眩しさの余り目を覆いたくなるのも無理は無い。
目に入った光に眩んで目を瞑ろうにも、砂の中から飛び出てきた何かを確認すべく、どうにか目を凝らしてその正体を見る。
その正体は―――蟹であった。
虹色に輝くダイミョウザザミ……オウショウザザミである。
イリーダがクカルから離れたと同時に、なぜかこのオウショウザザミがこのエリアにやってきたのだ。
まぁオウショウザザミからすれば腹が減ったからやって来ただけなのだが……クカルとザボア亜種はそれどころではなかった。
「こらアカン!」
経験が語っている。この奇妙な甲殻種と自分とでは話にならん、と。
己の直感を信じたクカルは地面に落ちてきたザボア亜種の事もあり、甲殻種に敵意がないのを良い事に背を向けてダッシュ。
ターゲットはあくまでザボア亜種。しかしドスガレオスが居る事も考慮して、2匹が同時に居合わせたら逃げると決めていたのだ。
相方のイリーダと合流すべく、ベースキャンプへ向けて一目散に逃げ出したのだった。
一方、予想以上に高く上がったことで地面に叩きつけられたザボア亜種は、飛び出たオウショウザザミに喧嘩を吹っ掛けようとしていた。
対抗意識と縄張り意識が強く出たのか、ザボア亜種は今度こそ!と言わんばかりに飛び上がり、オウショウザザミを上から押し潰さんとする。
潰されたオウショウザザミも黙ってはいない。新たに得た戦闘意欲を再び増長させ、ザボア亜種に挑まんとまずは押しのける。
持ち上げるようにして放り投げたザボア亜種を追撃せんと歩き出し、鋏を打ち鳴らして攻撃態勢をとる。
旧砂漠の第二ラウンドの結果は―――
―――
「虹色に光る蟹?」
「せや。どうやらそいつがザボア亜種とドスガレオスを蹴散らしたそうやで?」
ドンドルマの外れにある、旧砂漠へ続く砂の入り江。
そこに停めてあるのは商人ランボルの砂上船で、無事に旧砂漠を潜り抜けたらしく、様々な荷物を降ろす所だった。
ドンドルマに運び出している人々を余所に建つ、ランボル自慢の食材とコックを携えた小さな料亭に3人は居た。
クエスト達成の暁に出した料理は量も味もよく、クカルは嬉しそうに食べ続けていた。ランボルは慣れているが、イリーダはその食べっぷりに唖然としている。
ベースキャンプで準備を整えたイリーダとクカルが戻って見たのは、ザボアザギル亜種の死体だった。
フルボッコにされたらしく至る箇所に痛々しい打撲痕が残っていた。恐らくはクカルの言う甲殻種が殴り殺したのだろう。
まぁ2人である程度追い込めた為に早く倒れたのだろうが、討伐されたというのならランボルとしてはどちらでも良い。
魚竜のキモも良い状態が多く、料理の量も奮発したということだ。賞金は後日にギルドから振り込まれる。
さて、クカルが見たという虹色に輝く蟹についてだが……。
「聞いたことないなぁ……」
ランボルが首を傾げて言のを見たクカルは「せやろなー」と言うだけ。
当然といえば当然だろう。現在出回っている情報はオウショウザザミのものではなく、オニムシャザザミのものだからだ。
何せオウショウザザミに変化したのはつい先日な為、ギルドから情報が発信したとしても全てに行き届かせるには時間が掛かる。
しかし例外が居た。
「あの、その光る蟹についてですが……こんな色をしていましたか?」
意を決したように身を乗り出し、テーブルの反対側を陣取る2人に
彼の手に持っていたのは、キラキラと反射角度によって様々な色合いを見せる
その光に当てられたのか、クカルとランボルは興味津々と言ったように身を乗り出し、アイテムの輝きを目の当たりにする。
「ほぉ……これはこれは」
「この輝き……うちが見た蟹の甲殻によお似とるわ」
食卓に並ぶご馳走よりも目立つ光は、2人の関心を独占していた。
それはイリーダも同様で、彼の握る手は宝物を扱うかのように丁寧なものだった。
「あーっ!」
突如響いた甲高い声に3人はビクリと身を震わせ驚愕する。
何事かと、偶然にも3人が同じ方角を振り向いてみれば、そこには奇妙な少女が立っていた。
3人が何事かと目を点にしているのを余所に、少女はイリーダの手に握られた欠片を凝視する。
「やっぱりそうだ!ねぇ小さいハンターさん、コレをどこで見つけたの?」
「コレが何なのか知っているんですか?」
気にしている単語に対する反応や少女の正体が何者かを聞くより先に出たイリーダの問いかけ。
この虹色に光る欠片を少女は知っている様子。クカルとランボルを余所に追いやってでも聞きたいことだった。
「知っているよ!だって―――」
そういって少女―――【我らの団】の鍛冶職人の娘が見せたものは――――
「わたしも持っているもん!
―イリーダが持つ『虹色の欠片』よりも大きな『冠蟹の虹殻』であった。
この時、3人と1人は知らない。
この3人が、今後のドンドルマと【我らの団】、そしてオウショウザザミに大きく関わっていくことに。
―新たな物語が、始まろうとしていた。
―続く―
序章「千と二の刃」
天をも覆う程の数の飛竜が群れを成して空を飛ぶ。
その全てが彼の千刃竜だと知れば、どれだけの人々が驚愕と恐怖に染まる事だろうか。
我先にと同じ方角に飛ぶ姿は逃げ惑っているかのよう。
ではその反対の方角……セルレギオス達が逃げるほどの根源は何なのかといえば。
―黒い正気に蝕まれた
―千と二の刃だった
―新章「ドンドルマ編」へ続く―
続々と集うG級ハンター。ドンドルマの危機に駆けつけた【我らの団】。セルレギオスの来襲。
物語は一匹の蟹というイレギュラーを切欠に更なる展開へ。そして新たな脅威の正体とは(恐らくバルb、バレバレ)
というわけで、原作「モンスターハンター4G」の流れに入ります!多少の違いはありますが、基本的に原作沿いです。
来年へ向けた準備を年末に見せる。ふっふっふ、気になって仕方ないでしょう(鬼)
その為に今回はかなりザックリとしちゃいましたがね……いつものことだろ?そうですね(汗)
それではヤオザミ成長期、来年もよろしくお願いします!