ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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一ヶ月ぶりの更新です。期待していた(少数の)皆様ごめんなさい!
自分にやる気スイッチがあればいいのになぁ……ストーリーは大体思いついているし、デルシオンの登場モンスターも決めているんですが。

けど最近はポケモンばっかしています。育てて戦わせたいポケモンが多すぎて(汗)

言い訳はいいとして、今回も楽しんでくれると嬉しいです。
ハンターサイドでは、活動報告に投稿してくださった読者様のハンターが登場します。

3/8:誤字修正


第62話「ハンター組と密猟組」

 人がハンターとなる条件は決まった物が幾つかある。知能・筋力・技能と言った物は全ハンターに共通する義務といえよう。

 だが人がハンターとなる理由は多種多様だ。金銭を稼ぐ為・何かを守る為・力を振るう為と、そのハンターの人柄や個性が表される。

 その理由の1つに、モンスターを知りたいから、というものが割と多い。生物の不思議を追い求めるのも、自然の調和を図るハンターの特権だろう。

 

 話は変るが、大量発生が故に危険性が高いとされる大型モンスターの繁殖期にこぞって受注するハンターがいる。

 繁殖期とはモンスターの生態だ。そのモンスター特有の求愛行動や縄張り争いといった、繁殖期ならではの動きが見られる。

 そういった期間限定の生態を観察せんと、俗に言う研究者体質のハンターがクエストを受注し、観察と狩猟を兼任するのだ。

 

 

 

 どこか間が抜けているハンター・ディム=レッサーの失態は、そんなハンターの存在を知らずにパーティーを組んでしまった事と、不運にもチャチャブーが空から落ちて来た事か。

 

 

 

―――

 

 時は、哀れにもブッチャーがダイミョウザザミ亜種により吹っ飛ばされる頃より前に戻す。

 ダイミョウザザミ連続狩猟のクエストを受注した4人のハンターが旧砂漠に訪れていた。

 

 ジンオウUシリーズを着込んだ真面目そうな、しかし実は間が抜けている男・ディム=レッサー。

 ナルガSシリーズを身に纏う、富んだ知識と鋭い観察眼を持つ小柄な少女・イリヤ=ロックスミス。

 書士隊の一員でありながらハンターを務めているギルドナイトSの衣を着込む男・ヴァルツ。

 そんなヴァルツに付いて来た、書士隊を目指す新米ハンター・リグレット。装備はインゴットS。

 

 彼らは長い付き合いではない。受注前、パーティーを組むのを良しと考えているディムがそれなりの理由を聞いて集めたのだ。

 3人は結託前に言った。自分達はモンスターの生態を知るのが好きでハンターになったので、迷惑をかけるかもしれないと。ディムは大した問題ではないと笑って承諾した。

 生物の生態を知ることはハンターとしても重要だと理解していたのだが―――ディムの失態はこの軽視から始まっていたのかもしれない。

 

 

 

「クカルの言っていた事は本当だったんだな。虹色に光る蟹とは……ハァハァ」

 

 双眼鏡の先に映る光景を目の当たりにし、モンスターを愛していると言って憚らないヴァルツの息が怪しい意味で荒くなる。

 

「ふわー、ふわー!オウショウザザミが、噂のオウショウザザミがこんな近くで見られるなんて!」

 

 好奇心旺盛なイリヤが小声ながらも興奮している。

 

「すすす、凄いです、凄いです!このクエスト受けてよかった!物凄くよかったです!」

 

 普段は引っ込み思案のリグレットが、超珍しいといわれている甲殻種を目の当たりにしてテンションが可笑しくなっている。

 

 ハイテンションな3人に対して、ディムはブルーな気分だ。ヘルムの眉間に当る部分に手を当てて溜息を吐く。

 繁殖期のダイミョウザザミを観察して時間が潰れたのは許容範囲だったが、まさかここでオウショウザザミを見つけるとは思わなかった。

 おかげで好奇心と探究心を刺激された3人が物陰から中々動かない。未だ1匹しかザザミを狩れていない現状でコレはヤバい。

 

「お前らな、目的を」

 

「あ、何か出てきた!」

 

「人の話を聞け!」

 

 研究バカに抑止など無意味だった。

 

 直後に地鳴りがディムを襲い、何事かと目の前の光景を見てみれば、オウショウザザミの近くでダイミョウザザミ亜種が姿を現した。

 地中から這い出たザザミ亜種はオウショウザザミに襲い掛かることも逃げることもなく、そのまま素通りして日陰に歩いていく。

 

「あのダイミョウザザミ亜種は?」

 

「どうやらメスみたいだね」

 

「結構デカいサイズだな……」

 

 比較的冷静になったヴァルツとイリヤが観察する中、初めてみるザザミ亜種に興奮しているリグレットをディムが取り押さえていた。

 幸いな事にオウショウもザザミ亜種もこちらに気付いておらず、一方は食事を、一方は睡眠を取って過ごしている。

 

「このまま放っておいた方が良くない?」

 

 亜種がメスだと知ったイリヤが種の繁栄を考えて提案するが、ヴァルツは首を振って否定する。

 

「ようやくオウショウザザミを見つけたんだ。放っておくのは惜しい」

 

「……なぁ、空から何かが降ってきているんだが」

 

 今すぐにでも間近で見たいと暴れるリグレットを抑えていたディムが空を見上げながら言う。

 その視線の先を追うようにヴァルツが見上げた直後、奇妙な鳥兜のような何かが眼前に映る。

 

―ドゴンッ!

 

「おぶはっ!?」

 

―後にヴァルツは「ヘルメットが無かったら即死だった」と語ったという。

 

 ヘルム越しとはいえ顔面に甲殻で出来た兜がぶつかってきたことにより、ヴァルツは其の場で横転し気絶。

 ヴァルツの顔面に落ちて来た兜……獣人族のチャチャブーは何事も無かったかのように起き上がり、周囲を見る。

 周りは唐突な出来事を目の当たりにして唖然とし、静寂が訪れていたが……。

 

「な、なんですかこれぇぇぇ!?」

 

 チャチャブーという存在を初めて知った若き探求者・リグレットの叫びが轟く。

 その叫びの大きさは、間近に聞いたチャチャブーも、満腹になってボーっとしていたオウショウも、木陰で昼寝していたザザミですら目を覚まし。

 

 

 

―1人が気絶したまま、ハンター組は3匹のモンスターに目を付けられてしまったという。

 

 

 

―――

 

 そんなドタバタ狩猟を物陰から見ている別の組があった。

 

「丁度いいな」

 

 ガララX装備の狡賢そうな男・ギギレがニヤリと笑う。

 

「いや拙いだろ」

 

 レイアX装備のガッシリとした美丈夫・カランが眉を歪めて言う。

 

「そんなことよりクーラードリンク飲みたい」

 

 グラビドXヘルムを脱いで暑そうに天を仰ぐ小太りの男・ドドが言う―――直後に2人からゲンコツを貰った。

 

「先んじたつもりが完全に遅れちまったみたいだな……だが騒ぎを起こしてくれたんなら好都合だ」

 

 リーダー格のレウスX装備の男・レガッタは騒ぎながら体勢を立て直しつつあるハンター4人を見て呟く。

 

 彼らは密猟団。オウショウザザミという希少価値を早期に手に入れるべく、ドンドルマの包囲とギルドの目を潜り抜けて旧砂漠へと訪れた。

 しかしレガッタが言うように、あの研究者ハンターを連れた4人組に先を越されてしまい、思うように動けずにいた。

 何せ密猟団とは非合法どころか悪法とされている組織だ。ハンターに見つかれば即座に通報され、監視の目が鋭くなる処か捕まるケースですらある。

 

 そんな中、ようやくオウショウザザミを見つけたと思えば別の物陰に潜んでいるハンター達を見つけてしまう始末。

 だが幸か不幸か、どういう訳かは知らないがチャチャブーが彼らの頭上から落ちて来たことによりこの騒動が起きた。

 

「アイツらにとっちゃ災難だろうが、もっと霍乱してもらおうじゃねぇか」

 

 クックック、と声を出して笑うレガッタからは、悪人オーラがダダ漏れであった。

 

 

 

―――

 

 ディムとヴァルツは経験がソコソコあるが、イリヤとリグレッドは経験が浅い。

 それでも同じモンスターを2匹同時に相手にするという経験は少なからずあるし、複数のメンバーで挑んだ経験もある。

 ディムはドジって忘れてしまったが、強烈な匂いでモンスターを分別できるこやし玉は常時しているし、貴重品の生命の粉塵も持っている。

 

 しかしダイミョウザザミ亜種はともかく、オウショウザザミとブッチャーが厄介だった。

 

「イリヤ後ろ!」

 

「うわっと!」

 

「リグレット、そっち行ったぞ!」

 

「ひゃああっ!?」

 

 速いのだ。大きさに似合わぬ軽さを持つオウショウザザミの動きと、小柄なチャチャブーならではのすばしっこさが。

 ダイミョウザザミ亜種の動きは並かそれ以下だが水ブレスを多く使い、水を吐きながら曲線を描くようにして動くものだから攻撃範囲が思っていたより広い。

 おかげでこやし玉を投げる暇もなく、玄人2人も経験が浅いイリヤとリグレットのフォローに回るのが精一杯だった。

避け、潜り抜け、距離を取ろうとする。しかし入り乱れる大型モンスター2匹と、間を 縫うようにして駆けつけるチャチャブーの動きを同時に捌くのは玄人ハンターでも厳しい。

 なので大型モンスターをそれぞれ盾にするようにして動くのが基本だった。盾蟹だけに。

 

「くそっ!逃げ道が見つかったら構わず行けよ!」

 

「い、いいの!?」

 

「この状況なら逃げるのが先決だからな!こやし玉を狙えたらいいが、逆に返り討ちに合うなよ!あと、絶対に武器を構えるな!」

 

「は、はい!」

 

 攻撃を完全に捨て、味方をフォローしつつこの場の脱出を最優先。こやし玉を投げられればいいが、それで逆上されたら意味がない。

 探究心豊かな新人2人とてハンター。モンスターの脅威、特に目の前のキラキラカニの恐ろしさは直感を以て知った為、真剣に動きを見切ろうと瞬きを惜しむ。

 

 

 だが、ここで更なる不運が重なりながら襲ってくる。

 

 

―密猟団が別のエリアからオスのダイミョウザザミを呼び寄せ。

 

―その呼び寄せたダイミョウザザミがメスのダイミョウザザミ亜種に惚れ込み。

 

―普段なら襲い掛かる気になれないオウショウザザミに襲いかかってきたではないか。

 

 

 

 より回避が困難となったハンター4人組のネコタク送りの確率が飛躍的に上がるのだった。

 

 

 

―続―




「いや、まだネコタク送りって決まったわけじゃないから(天の声」

●登場ハンター(ご応募ありがとうございます)
・ディム・レッサー(男・23歳・ジンオウUシリーズ・ハンマー)
・イリヤ・ロックスミス(女・18歳・ナルガSシリーズ・片手剣)
・ヴァルツ(男・21歳・ギルドナイトSシリーズ・大剣)
・リグレット(男・20歳・インゴットSシリーズ・ヘヴィボウガン)
諸事情と年齢を考慮し、武器を変更し上位ハンターに統一させてもらいました。すみません。

研究者体質のハンターやトレーナーっていいですよね。
弱肉強食を生き抜く狩人として自然をより知ろうとするのはよいことだと思います。
ただ活動報告の設定でもありましたが、それで人様に迷惑をかけるのもキャラとしてアリですよね(笑)

次回はこのクエストの結末を書いて次の展開に進めたいですね。テンポ良く!
更新を少しでも早めるよう頑張ります。書きたい物は沢山あるんですがね(ぇ)

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