ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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やっと、やっと書けました……(汗)

最後辺りにオリジナル展開となります。

9/20:誤字修正。報告ありがとうございます。


第70話「極限個体の戦い」

―ムッガー!もう我慢ならん!全力でボコったる!

 

 

 なお、上記の台詞はイメージです。

 

 極限状態となったゲリョスのウィルスに当てられ蓄積量を超えた事で、とうとうオウショウザザミに変化が訪れる。

 多彩に輝く甲殻がドス黒く染まり、関節部やヤドの結合部から黒いオーラが溢れ、周囲に撒き散らしていく。

 

 内外合わせ長期間に渡ってウィルスに蝕まれた結果、ついにオウショウザザミが極限状態に達してしまった。

 

 加えて異常に硬化したゴム皮のおかげで打撃が通用しなくなった事に腹を立てていたのだろう。

 オウショウザザミはコレでもかと言わんばかりに鋏を広げ、口から黒っぽい泡を吹き出して怒りを表している。

 

 普段ならビビって逃げ出すなりパニックになるなりするだろうが、今のゲリョスはハッスル状態。

 そもそも腕を広げただけで大声を上げたわけではないのでビビる理由も無く、やんのかコラ!と翼を広げてアピール。

 本来なら臆病な性格の2匹が、ここまで攻撃的になって互いを排他しようとする。それが極限状態の恐ろしさの1つだ。

 

 

 オウショウザザミが走る!ゲリョスが走る!そして激突し―――

 

 

―バヨンッ!

 

 

 ゴムの体と鋼鉄の体が触れた直後に跳ね、猛スピード+猛烈パワーが合わさってかなりの距離を離して地面に激突してしまう。

 それだけではなく、オウショウザザミは逆さになった状態でヤドが地面にめり込んで動きが取れなくなり、ゲリョスはゴロンゴロンと跳ねながら転んでいく。

 

 このような現象が起こるのは、ゲリョスとザザミこと甲殻種が極限化した事に繋がる。

 幾ら堅くなりパワーが増したとしても、ゲリョスはゴム質のままで、オウショウザザミは狂竜化とは無縁の外骨格だ。

 弾くもの同士がぶつかり合えば相乗効果によって弾きパワーが増し、こうして吹っ飛ぶ結果となるのも仕方ない。

 

―てめぇ何しやがんだコラー!

 

―それはこっちのセリフやっちゅーねん!しばくでオラ!

 

 なお、上記の台詞はイメージです。

 

 

 こうしてオウショウザザミVSゲリョスの、極限状態でありながらひっじょ~に不毛になりそうな戦いが始まる。

 

 

 

―――

 

 ……とはいえ、それぞれの攻撃に差別化が生じてきた。

 

 極限状態になると形振り構わず攻めの姿勢に入る為に閃光といった行動阻害が通用しなくなる。

 故にゲリョスの十八番である閃光攻撃は無力となる……と解るのは人間ぐらいなもので。

 

―カッ!

 

 悲しきかな、ドヤっと胸を張りながら周囲を眩ます程の光を生じたとしても、オウショウザザミの突進は止められない。

 オウショウザザミの視界は強烈な白光により一時的に見えなくなるが、そんなこと構うものかと突撃を続行。一次的なものだし。

 どこへ避けようとも当るようにと鋏を振り回していると、幸運にもゲリョスを右横から殴る事に成功。

 本来のゴム皮の性質と極限化における筋肉強化によって防御とパワーが合わさり、ゲリョスを吹っ飛ばした。

 殴りつけた鋏が反動によって弾かれて身を引っ張られる思いをするも、遠くへ吹っ飛んでいったゲリョスに比べれば微々たるもの。

 

 そう、極限化における硬質化の原因は、皮膚及び筋肉が増大し凝縮したことによるもの。

 甲殻種たるオウショウザザミは外骨格で包まれた筋肉が異常に強化され、打撃力が強化されたのだ。

 ゲリョスを殴るのにもコツがいる。上からでなく横あるいは下からなら、硬化による弾力も合わせて遠くへ吹っ飛ばせる。

 

 そしていかにゴムの皮であろうとも、地面や岩に激突すれば打撲を受けるのは必然。

 弾き+極限パワーが合わさることで加速度を増したぶっ飛びは、ゲリョスに大打撲と言う名のダメージを与えている。

 

 だがゲリョスにも手はある。バタつきつつも起き上がり、次の攻撃を仕掛けんと突っ込んでくるオウショウザザミに向けて毒を吐く。

 オウショウザザミの許容量を越えるほどの猛毒こそがゲリョスの基本にして必殺技……なのだが、極限化したオウショウザザミに怯むという言葉は無い。

 ダバダバダーと毒を受けつつもオウショウザザミは突っ込んでいき、今度は下から上へと鋏を上げ、ゲリョスを持ち上げる。

 

 今度は持ち上げるという動作によって弾きを無視し、ゲリョスをひっくり返す作戦だ。

 飛ぶか走るように進化したゲリョスはスッテンコロリンと仰向けに倒れ、その隙にオウショウザザミが脚に力を込め、跳び上がる。

 ゲリョスが横転して起き上がろうとした所へ―――オウショウザザミの全体重がゲリョスに圧し掛かった!

 

―メキメキッ

 

 嫌な音が響く。これは強靭な皮膚が攻撃を弾く音ではなく、身と骨が地面にめり込んでく音だ。

 今度は体重によるプレス攻撃。これなら重力によって弾かれること無く、体重を用いてじっくりとタメージを与えられる。

 オニムシャザザミ期に比べると体重が軽くなったが、中型としては小柄に入るゲリョスにとっては効果覿面。ゴムで弾く前にめり込んだ。

 

 ここでゲリョスは、極限状態でありながら己の危機を直感し……バタリと死んだふり。

 

 だが無意味だ。

 

―ドッゴンドッゴン

 

 動けなくなったのを良い事にオウショウザザミが調子に乗って大ジャンプを繰り返す。

 さらにゴム質と弾きを合わさることで高さが増し、ゲリョスの体の半分が地面に埋まって固定されていることによりジャンプ力が上昇。

 ヤベェ間違えたとゲリョスが起き上がろうにも体の殆どが地面にめり込んでしまい、とどめの超ジャンプ攻撃が迫る!

 

―ドッゴォンっ!

 

 ついにゲリョスを完全に埋めてしまった!

 強度の足りない翼と首が無残にも地面から突き出ているが、硬化+プレス攻撃で見事に身体が地面に埋め込まれた。

 それでも極限状態の恐ろしさというか、首と翼が辛うじて抵抗を示している……まったく動けないが。

 

 だが今のオウショウザザミには遠慮という言葉すらない。

 僅かでもゲリョスが生きていると解ったオウショウザザミは、両の鋏を打ちつけ―――頭部を徹底的に殴る。

 右へ左へ、弾かれてもなお殴る。殴る。殴る。殴る。殴って殴って……ついにゲリョスも息の根が止まった。

 

 

 極限化個体同士の戦いは―――オウショウザザミが制したのだった。

 

 

 

 制したとしても、オウショウザザミの体力は限界に近かった。

 何せ猛毒をタップリと浴びたのだ。狂竜ウィルスに蝕まれていると言っても生命の危機を感じざるを得ない。

 苦戦(強さ的な問題ではない)を強いられたことで疲労した体をズリズリと引きずる中、滝が流れている水場にたどり着く。

 

 ここでまずは水分を……と思った所である物を発見。

 

 

―そこには山ほど積まれたウチケシの実と、それを食べるブッチャーとダイミョウザザミ亜種であった。

 

 

 恐らくはブッチャーが採って来たのだろうが、どこからそんなに持ってきたのかと言うほどの大量にある。

 ダイミョウザザミ亜種―不思議な事に黒いオーラは消えていた―は、ブッチャーの追いかけっこで減った腹を満たす為にモクモクと食べていた。

 

「キ?キー!キッキー!(んぉ?お、ザザミの旦那―!)」

 

 オウショウザザミの姿を見たブッチャーがはしゃぐ。ようやく再会できて嬉しいのだ。

 だが現実は非常である。極度の空腹と疲労でウチケシの実へまっしぐら!

 

「キキキ、キーキキー!(さぁさ、沢山食べてくだせぇ!)」

 

 何度も撥ね飛ばされるようなブッチャーではない。即座に走ってオウショウザザミに道を譲って衝突事故を未然に防ぐ。

 食欲を優先した(というかソレしか考えていない)2匹は大人しくウチケシの実を食べ続けるのだった。

 

 

 ウチケシの実―その浄化力は凄まじく、狂竜ウィルスですら浄化する程。

 2匹のザザミはブッチャーの齎した大量のウチケシの実で狂竜ウィルスを浄化していく。

 これにより徐々に沈静化、元の穏かな体質を戻しつつあった。いやはや、自然の力ってスゲー。

 

 

 こうしてゲリョスは倒れ、狂竜ウィルスの脅威は大人しくなりつつある。

 だが忘れてはいけない。ウィルスの元凶は別に居る事を……。

 

 

―――

 

―「お師匠さん」が帰って来た。

 

 その一言が街中の人々の復興作業を一時中断させ、ドンドルマに到着したガーグァ便を皆で歓迎させた。

 「お師匠さん」とはドンドルマの防衛に関わる重要人物であり、筆頭リーダーの師匠でもある。

 

「お待ちしておりました」

 

「いやはや、皆そろって歓迎してくれるなんて嬉しい限りだ」

 

 いつもお堅い筆頭リーダーだが今回ばかりは顔を綻ばせ、お師匠さんは喜んで歓迎してくれる人々に嬉しさを覚え微笑みを浮かべる。

 お師匠さんの元気な姿を見て安心した人々は張り切って作業に戻り、残ったのは筆頭ハンターらと【我らの団】のメンバーだけとなった。

 

「おう、筆頭リーダーから話は聞いているよ。俺が【我らの団】団長で、こっちが【我らの団】教官殿だ」

 

「話は聞いてるよ、世話になったようだね。だが今はそれどころではないので、簡潔に言わせてもらうよ」

 

 ガッシリと団長と握手を交わすお師匠さんだが、穏やかな笑みを消して視線を鋭くさせた。

 その只ならぬ気配に当てがれたのか周りは黙って彼の言葉を待ち……驚愕の事実が知らされる。

 

 

「輸送中に逃げ出した刀蟹(カタナガニ)が未知の樹海で目撃したと噂で聞いた。私がユクモ村から遥々やって来たのは、そのモンスターを止める為でもあるんだ」

 




我ながら強引な流れだと思いますが、こうでもしないとグダつきそうで(汗)

次回、未知の樹海の激戦が始まろうとしている!

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