オウショウザザミ同様オリジナルモンスターなのでご注意ください。
10/5:誤字修正
連日ドンドルマが管理する大地に蔓延る狂竜ウィルスとセルレギオス。
その実態が仮説とはいえ明らかになった。1つは極限化個体と呼ばれる
大災害の原因の1つとしてモンスターが挙げられるのはこの世界では日常茶飯事ではあるが、今回の規模と深刻度は古龍種に匹敵している。
そこで筆頭旅団の中で最も防御力に特化した筆頭ランサー率いるランサー部隊が出張。
全員をランスで統一したドンドルマのエリートで固め、最低でも確実に情報を持ち帰るのが狙いだ。
筆頭リーダーの不安そうな顔と【我らの団】の安心させる笑顔、そして筆頭オトモの「帰ってきて当たり前」という平然とした態度。
筆頭ランサーはそれらを頭の中で反芻して帰還する決意を固めた後、荷車を牽くアプトノスの手綱を握るアイルーの呼び声で我に返る。
向かう先は、目の前のアイルー曰く「最近ゲキヤバにゃ気配がする」、鳥と獣の騒ぐ音が絶えない未知の樹海だ。
―――
「……酷い惨状だな」
準備を整え樹海の奥地に足を踏み入れた直後、筆頭ランサーはそう言った。
生き物が殆どおらず、辺りにはジャギィやケルビの死体がゴロゴロと転がっている。
その尋常でない数を目の当たりにした歴戦を生き延びた部下達ですら吐き気を覚える。それほどの惨状なのだ。
筆頭ランサーは黙祷を挙げてからジャギィの死体……正確には死因になったであろう傷口を見る。
それなりの太刀ですら成し遂げられない程に綺麗な切断面だ。そしてここら全ての死体が同じような傷を負っている。
「隊長……」
一人だけ別の方角を見ていた部下の声に導かれて筆頭ランサーは振り向き、そして絶句した。
樹木どころか岩や瓦礫ですら綺麗に切断され、道標であるかのように連なっている。まるで道を作るために切り裂いたかのように。
中でも筆頭ランサーが驚愕したのは、その道標の中にポツンと佇む岩竜バサルモスの死骸。当然のように首が綺麗に切断されていた。
「……セルレギオスの業とは思えんな」
恐ろしいまでの切れ味を物語る岩の表面を手で擦りながら筆頭ランサーが声を漏らす。
セルレギオスは刃鱗と呼ばれる鱗を持つが所詮は鱗だ。分厚いものを切り裂くような力は無い。
「セルレギオスとは別のモンスターの仕業でしょうか?」
「それだけではない。よく見てみろ」
安易に応えた部下だが、筆頭ランサーが数歩ほど歩いてからある物を指差す。
岩や樹木の陰に隠れているように黒い靄が微かにこびり付いており、その事実を知った部下達の血の気が引いた。
「……狂竜ウィルスだ」
指先から伝わる、ゴア=マガラに多く関わってきたからこそ覚えている感覚に筆頭ランサーは苦い顔をする。
この惨状を起こしたモンスターが、少なくとも狂竜化、最悪な場合は極限化している可能性が高い。それを理解してしまったが故に。
それだけではない。耳を澄ませば木々が倒れる音や生物の断末魔らしき鳴き声が遠くより響いているのが解り、部下達を身震いさせた。
「……行くぞ」
筆頭ランサーの重い一言が部下達の震えを止め、全員が一丸となって頷いて歩き出す。
自分達の使命は出来る限りの情報を得る……この先の惨状を見て知り、それをドンドルマの仲間達に届けること。
街の為、そして仲間達の為に足を止めるわけには行かないと、使命を帯びた筆頭団は凛とした表情で歩を進めた。
―――
皮肉な事に、まるで全てを平らにするように切り裂いて出来た道は広々としており、全員が前だけを向いていても問題なかった。
しかし筆頭ランサー達の警戒は緩まない。ここ未知の樹海には地を裂くモンスター以外のモンスターが出てくる可能性もあることに。
そしてその予感は的中し―――甲高い咆哮が空から響き、セルレギオスが来襲してきた。
後ろ脚の鋭い爪で纏めて裂くつもりだったのだろうが、筆頭ランサー達は其の場で跳んでやり過ごした。
地鳴りを起こすも鋭利な爪故に地面に食い込み動きが一時的に取れなくなったセルレギオスを間近で見て、改めて気付く。
「大きい……!」
「なんと禍々しい……」
誰かが囁いたのを切っ掛けに各々が見て思ったことを口にする。
そのセルレギオスは文献や捕獲して見た実物と比べてもかなり大きく、そして黒い。
亜種と見紛うように全身が黒ずんでいるが、良く見ればセルレギオスの体からオーラのようなものが溢れ出ている。
怒り状態のナルガクルガのように赤く染まった目、生きていながら死体を見ているような不気味さ。
「もしやこれが―――」
―――極限化個体。
筆頭ランサーの予想を査定するかのように、爪を地から引き抜いたセルレギオスは咆哮を轟かせた。
飛ぼうとはせず翼爪を地に着けた状態で周囲を見渡し、身構えたランサー達に戦慄を走らせる。
筆頭ランサーもまたランスを身構えてセルレギオスを睨む。ここで背を向けば殺されると理解したが故に。
もう一度セルレギオスは筆頭ランサーに向けて軽く吠え、翼を広げ後ろ脚に力を込める―――
―――
それは一瞬の出来事だった。
筆頭ランサーが目の当たりにしたのは、いざ飛び立たんと翼を広げていたセルレギオス……その翼に食い込んだ1対の
なにを言っている、いや考えているのか解らないだろうが、彼の目に映っている地中から飛び出たものは、まさに長大な刀でしかない。
セルレギオスにとっての不幸中の幸いは刀が翼膜にしか命中しておらず、突然の不意討ちに驚くも強靭な後ろ脚を持って其の場で跳躍。
筆頭ランサーを跳び越え、地に立つ2本の刀に向けてセルレギオスが威嚇した。もはや筆頭ランサーらは眼中に無いようだ。
その声に応えるように刀は地中へと沈み、先ほどまで緊張していて気付かなかった地鳴りを響かせる。
ここでまたセルレギオスが悲鳴を上げる―――セルレギオスの尾を刀が切り裂いたのだ。
筆頭ランサーの記憶では、極限化した個体は狂竜ウィルスを弱める抗竜石がなければ、どんな武具でも容易く弾く程に肉質が硬化するという。
それを、細長い尻尾とはいえ傷痕を付けた。それはあの刀身が美しいだけでなく切れ味も優れていることを物語らせる。
セルレギオスはその刀に向けて尾を振り回すが、その刀は即座に地中に潜って退避。穴の空いた翼膜を広げ何とか滞空する。
「各自ランスを納刀して散開!逃走しつつ揺れを頼りに避けるんだ!」
それを見た筆頭ランサーの命令は、まさかの防御ガン無視。
セルレギオスは地中に居る敵に夢中になっている事を良い事に刀からの回避に専念する。
筆頭ランサーがセルレギオスと距離を取りつつ視界に納め、部下達が走って逃げ出す。臆病と言うなかれ、あのような化物は相手にしない方が賢明だ。
セルレギオスが低空を飛んだことで音をキャッチできないのか、地中の主は鋭い刀を露出した後、その全身を露にする。
その刀の主は―――蟹だった。
黒い甲殻。異常なまでに長い腕。背には岩竜の甲殻の欠片を繋げたような殻。
筆頭ランサーはそのモンスターの姿に酷似したモンスター……「鎌蟹ショウグンギザミ」を思い出す。
しかし見た目も雰囲気も大きく違っており、特に鋏の先端が鎌のような曲刀ではなく……まるで太刀のように真っ直ぐ伸びていた。
もし筆頭ランサーの出発がもう1日遅ければ、彼はこのモンスターの名を知る事が出来たろう。
その甲殻種の名は―――「ユクモの
そしてセルレギオス同様、その黒色の甲殻をさらにドス黒く染めるオーラ……狂竜ウィルスを纏っていた。
―キュオォォォッ!
―シャコンッシャコンッ
セルレギオスの甲高い咆哮に対しツジギリギザミは威嚇するように刀同士を打ちつける。
互いにターゲットが決まり、セルレギオスがツジギリギザミに錐揉みしながら突撃!刀蟹は咄嗟の攻撃に受け止めるしかない!
―今の内か
取っ組み合っている2匹を背に筆頭ランサーは走り出す。激戦の音に振り向くことなく。
筆頭ランサーの全身に浮き出る脂汗を、そして胸に抱いた恐怖心を振り切るように、ひたすら前へ。
―あのようなモンスター、どう相手にすればいいんだ……。
筆頭ランサーは、折れかけた心を何とか持ち堪えながら思う。幾度も経験した中で最大の挫折を味わいながら。
刀蟹ツジギリギザミについては作者の別作品「Monster Hunter Delsion」をご覧ください。
ついに登場させちゃいました刀蟹。
そしてモンハンクロスで復活おめでとうショウグンギザミ!待っていろよ~!(←予約済)
個人的に一番楽しみなメインモンスはガムート。ゾウさんカッケ~。
今度はランスでいくか、それとも前回と同じく狩猟笛か、あるいはチャジアか……それともニャンター?
スプラトゥーンを買ったのにまだまだ楽しみが増えて夢が広がりんぐ(笑)
そんな中ですが、更新頑張ります~