ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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妄想は沸いていても創作の為の集中力が無い私(汗
これもスプラトゥーンが面白すぎて嵌る私が悪いんだ!(滅

……今日は予約したモンハンクロスを受け取る日。楽しみだ(ソワソワ


第73話「抗竜石」

 抗竜石―――狂竜ウィルスの猛威に対抗すべくドンドルマが新設した「狂竜ウィルス研究所」にて開発された特殊な鉱石。

 嫌味ったらしいが真面目な所長の努力の結晶であるコレは、狂竜ウィルスを沈静化する効力を持っているという。

 開発されて間もないが、各地に狂竜化個体が出現している事もあって性能を試す機会は多く、その効果はいずれも上等な結果となった。

 

 抗竜石で使用する武器を研ぎ、その効果を付与した武器で攻撃を加えると対象の体内に蔓延した狂竜ウィルスを沈静化する。

 これによって狂竜化個体を通常の状態に戻すことができ、理論上では極限個体の肉質までも元に戻すことも可能だとか。

 但し効果は一時的な物であり、時間が経過すると狂竜ウィルスが活性化し狂竜化状態に戻ってしまう。

 

 それでも、一時的とはいえ著しい身体能力強化を抑えられるとなれば万々歳。

 これまで狂竜化個体に苦しんできた時期が嘘のように、多くのハンター達が狂竜化個体の討伐に成功している。

 これだけのものを多く生成してくれた所長には感謝しきりというもの。

 

 

 

 だが所長は言う―――この大量の抗竜石の、もう1つの実験内容を。

 

 

 

―――

 

「はいはーい、向こう行っときーやー」

 

「こやし玉……っと!」

 

 遺跡平原の大きな崖の近隣にあるエリア4にてドスジャギィの群れを追い払う2人のハンターが居た。

 褐色肌の女ハンター・クカルと、赤みがかった金髪の少年ハンター・イリーダ。ロックラック出身のハンターコンビである。

 この短期間でハンター活動を続けていた2人のG級ハンターとしての腕前は大きく上がり、装備を上等な物に変えていた。

 ドスジャギィがこやし玉の激臭に参って逃げ出し、そのままジャギィ達も追うようにして逃走。

 見届けたクカルは振り回していた銀火竜素材のハンマーの先端を地面に置き、持ち手を杖代わりにして体重を預けた。

 

「しんどいわぁ~。まぁけど、ティガとかレウスが来ぉへんだけでも儲けもんやな」

 

「ですね。何せ特殊な依頼ですし」

 

 溜息を零すクカルを見て苦笑いを浮かべたイリーダがそう言う。

 

 彼女達―正確には他のエリアを廻っている2名を含め4名なのだが―の受けた依頼は、普段受けるクエストとは大きく違っている。

 何せこのクエストの大まかな内容は、ターゲットを除いた全てのモンスターをある場所(・・・・)から遠ざける、というものなのだから。

 

「はぁ~あ、狂竜化って本当にイヤやねぇ。遺跡平原(ココ)だって殆どが絶滅寸前やったんやからなぁ」

 

「それでも生態系が戻りつつあるっていうのが自然の凄さですね。だからこそ、なるべく狩猟しないでくれって頼まれたんですけど」

 

 足元に寄ってきたクンチュウを軽く蹴って転がすクカルの愚痴に応えつつ、イリーダは周囲の警戒を怠らない。

 抗竜石を用いた事で生態系の崩壊は食い止められたものの、崩れかけた生態系を立て直すべく狩猟に制限が掛かる。

 まぁ無駄に殺生をするよりは良い事なのだが、やはり面倒くさいの一言に尽きるだろう。

 

 クカルは視線だけを、その面倒くさい任務の原因(・・)に向ける。

 

「しっかしなぁ……ホンマに効果あるんやろか?そもそもココに()が通るん?」

 

「観察隊によると奴の行く先が遺跡平原なのは間違いないようですが……僕も正直怪しいと思いますねぇ」

 

 クカルの言い分に同意しているイリーダも眉を歪めて背後にあるソレ(・・)を見る。

 所長の依頼書ではこのクエストの要となっている物なのだが……正直言って効果があるかどうか怪しすぎる。

 2人がそう思いながら見ている中……2人の間の地面から、ボコッと何かが這い出て来た。

 

「ニャー!来たニャ来たニャ!相棒と一緒にコッチに向かって来ているニャ!」

 

 地中から現れたのは良い武装を施されたアイルーだった。彼はハンターに近い戦闘技術を身につけた『ニャンター』であった。

 クカルとイリーダは互いに頷き合うと、物陰に隠れようとするニャンターの後についていき、共に岩陰に身を潜める。

 そうして岩陰から様子を伺っていると、何故か背中にキノコを担いでいるアイルー―この子もニャンターだ―が走ってくる。

 

 

 そのアイルーを追いかけてくるモンスターが居る―――オウショウザザミだった。

 

 

 ジンワリと漏れるように紫色の靄が漂っているが生態系に影響を及ばすほどの量ではない。

 背にはブッチャーが乗っており、アッチだアッチだ、と言わんばかりに杖をアイルーに向けオウショウザザミを先導している……気がする。

 

「あれが冠蟹……」

 

「いやぁ、改めて見るとほんまゴッツいやっちゃなぁ。甲殻種の王様って感じや」

 

 手に持った『虹色の欠片』とオウショウザザミの甲殻を見比べるイリーダと、二度目の邂逅に額から汗を滲ませるクカル、そして逃げ出した仲間のアイルーを心配するニャンター。

 そんな三者三様を他所にアイルーは必死で逃げ、目標が目の前にあると知ると地中へと潜行。そのまま逃げる算段か。

 

 目標を見失ったオウショウザザミは自然とソレ(・・)を視界に収める事になり、2人と1匹にも緊張が走る。

 オウショウザザミは先ほどとは比べ物にならないぐらいの速度で駆けつけ、ブッチャーも飛び降りて並走する。

 

 

 2人が夢中になっているもの―――それは山のように積まれた食べ物と鉱石なのだ!

 

 

「ああ……ウチも食いたかったわぁ~!」

 

「ま、まぁまぁ、ランボルさんも身を削るような思いで提供したんですし……」

 

 ムッシャムッシャと食べ物を食らうブッチャーとガリゴリと鉱石を貪るオウショウザザミを羨ましそうに見るクカル。

 腹が鳴りそうな程に涎を垂らすクカルを宥めつつ、遠慮なしに食べ物の山を削っていくオウショウザザミを見る。

 ちなみに食べ物と鉱石の大半はランボルが用意したもので、それを他のモンスターがつまみ食いしないようにするのが2人の任務だ。

 

「……効くんでしょうかね、抗竜石(・・・)

 

「鉱石を甲殻に滲ませる性質ゆーとったけど、都合よく行くんかなぁ」

 

 

 

―――

 

 抗竜石が開発される前、所長は【我らの団】教官より、天廻龍シャガルマガラを食らった甲殻種の話を聞いた。

 狂竜ウィルスそのものたるシャガルを食らうなど飛んでもない話だが、その甲殻種について所長は1つの案が閃く。

 

 オウショウザザミ―正確にはダイミョウザザミ変異種か―は、食べた鉱石を甲殻に滲ませるという特異体質があると耳にしている。

 噂が本当ならば、抗竜石を食べさせた場合、その効力をも甲殻に付与できるのではないか?……と所長は思いついた。

 それを再現してみようと、貴重な抗竜石の半分をオウショウザザミに注ぐ為、このようなクエストを発注したのだという。

 

「よーしよし、鉱石類にも手ぇ出したで」

 

「効果が出るのは随分と先になりそうですが……そもそも量が少ないですし」

 

 大量とはいえ大柄な甲殻種に対しては微々たるものだ。しっかりと口に含んでいるとはいえ効力が出るかと言われたら怪しい。

 当のオウショウザザミはそんな企みなど知らぬとばかりに、生肉を焼いて食べようとしているブッチャーを他所にモリモリと食べる。すると……。

 

「……おいおい、靄がちょっとずつ減っとるで」

 

 クカルが呆れたように、オウショウザザミから漏れている黒い靄が減少していく様を指さす。

 それはつまり、狂竜ウィルスが抑制されているという証拠でもあるのだ……食べて間もないのに。

 

「た、体内のウィルスが抑えられているんですよきっと!」

 

「そうやろうけど……なんや噂を聞いとると、これもアイツのトンデモ仕様やと思わざるを得んわ」

 

「……確かに」

 

 ここは抗竜石の効力を褒めるべきなのだろうが、ジグエのホラ話を真に受けたイリーダはクカルの言葉を否定できなかった……。

 

「とりあえず依頼は達成や。次は……」

 

 

 

 

「狂竜化したっちゅーダイミョウザザミ亜種を探さんとな」




作戦名「三大作戦―盾」。
ようはオウショウザザミに抗竜石を沢山食べさせてみましょうの巻。

抗竜石の生成方法は知りませんが、鉱石ならグラビモスやウラガンキンでもいけそうな気が(笑)

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