ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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最近言語力が弱まっている気がしてならない……遅々として小説が書き進められません;


第77話「刀蟹襲来」

――それに遭遇したのは、ある意味で幸運であり、ある意味で不運であった。

 

 

 

―――

 

「ひやー、凄い嵐やな」

 

「クシャルダオラがドンドルマに接近しているとはいえ、この時点でこの風ですか……」

 

 ネコタクの荷台に腰掛ける二人のハンターは、吹き荒れる雨と風を全身に受け止めながらぼやく。

 

 遺跡平原の生態系の調査を依頼された、褐色肌の女性クカルと、赤みを帯びた金髪の少年イリーダ。

 本来は【抗竜石】を用いて狂竜ウィルスの拡散を抑える役割があったのだが、それはとある事情によって断念することに。

 そしてネコタクに揺られ、ドンドルマまで残り半分といった道のりの中で嵐を体感していた、というわけだ。

 

「しかしええんやろか?うちらも避難先に逃げるっちゅうのは。オウショウザザミをどうにかすることもできへんし……」

 

「本来、僕達は狂竜ウィルス拡散を防ぐために派遣されたんです。それをあのチャチャブーが防いでくれたのなら、それでいいじゃないですか」

 

 外套を上から被り嫌そうに暗雲を見上げるクカルを横目にイリーダが言う。

 

 オウショウザザミが大人しくしている事と、その供であるチャチャブーが狂竜ウィルスを鎮めた事実を伝える為だ。

 狂竜ウィルスに浸食されたダイミョウザザミ亜種の雌が鎮まったこともあり、遺跡平原とドンドルマの危機が一つ減ったともいえる。

 どういう原理で狂竜ウィルスを鎮静化したのかはわからないが、これ以上のウィルスの拡散、および狂竜化個体の暴走が減るのならありがたい。

 

 とはいえ完全に除去できているとは言えないのだが……大型は上記の二匹しか確認されていない上、鋼龍が近づいている事もあって周辺のモンスターの動きも大人しい。

 逃げの理由にもなるかもしれないが、ギルドへの報告、ドンドルマ外に避難した人々の護衛も兼ねた撤退だ。

 

「ニャ~、嵐怖いニャ~。ドンドルマ行きたくないニャ~」

 

「心配せぇへんでも、この先で曲がればドンドルマの外れに行くで」

 

 ガーグァの手綱を持ったアイルーが心配そうに暗雲を見上げるが、クカルは前を指さして安心させる。

 この道はドンドルマへ続いているが、途中にある分岐点で曲がれば外れに、つまりは避難先の拠点への道となる。

 自然と嵐――正確には鋼龍――とは反対方向に行くのだ。何も問題はない。

 

――その分岐点が近づいてきた時、イリーダはある存在に気付いた。

 

「……ん?あれは……」

 

 眼を細めて見ると、4人のハンターらしき人物を乗せたネコタクが猛スピードで走っていくのが解る。

 何やら荷台車を引くアプトノスも怯えて逃げ惑っているようにも見えるので、イリーダはその様子を観察してみる。

 

「ほら早く!アイツが足止め食らっているうちに早く!」

 

「ニャニャニャ、ネコタク使いの荒い方ですニャ~!」

 

「うるせぇ!早く逃げなきゃテメェも切り刻まれちまうぞ!」

 

「全速力出しますニャー!」

 

「兄貴……俺吐きそうッス……」

 

 嵐の中だというのに彼らの会話が聞こえるが、どうして焦っているのだろうか。

 そのままネコタクはクカルとイリーダの乗るネコタクを横切り、ドンドルマへと向かう道へと走っていった。

 

「おいおい、ドンドルマにゃクシャルダオラが来とるんやで?そこへ向かうなんてアホやろ」

 

「おかしいですね……装備から見てハンターなのは確かなのに……」

 

 ここでクカルとイリーダは首を傾げる。

 

 ハンターギルドは、この日に備え事前に、管轄内に滞在している全ハンターにクシャルダオラ来襲を告げている。

 飛行船や砂上船と言った各移動手段で訪れないよう、数日前にはギルド全体を通じて運航停止を命じた。

 さらに一部を除いたクエストを受注できないよう手配するなど徹底しており、外に出ているハンターは自分達2人ぐらいだと思っていた。

 

 それなのに4人もハンターが武装した状態で外出しており、ドンドルマへ猛スピードで向かっていく。

 どうしたのだろうと首を傾げていた2人と1匹が、視界の端にある姿を捉えた。

 

 

 

――刀のように鋭い刃を掲げて走る、黒い甲殻種が。

 

 

 

「「ツジギリーーー!?」」

 

 要注意リストにデカデカと表示されていた、ドンドルマで最も危険視されているモンスター・ツジギリギザミ。

 そんなモンスターが狂竜ウィルスを漏らしつつ、甲殻種とは思えない速度で走ってくる。

 なるほど、先ほどのハンター達が血相を変え、逃げるようにしてネコタクを走らせたのも頷ける。これは物凄い恐怖だ。

 

 

―本来なら自分達も逃げに走るべきなのだろうが……。

 

 

「そこを曲がってドンドルマに向かって!」

 

「にゃ!?」

 

「ええから早よぉせんかい!」

 

 黒い甲殻種に驚愕していたアイルーは2人の呼びかけに反射的に応えてしまい、手綱を操ってガーグァを曲がらせる。

 甲殻種の凶暴なオーラに当てられた事もあってか、ガーグァは荷台の重さを無視したような急カーブを決めた。

 

 ツジギリギザミは新たな獲物の出現に気づき歩行速度を上げる。両腕の刀同士を打ち鳴らしながら。

 まるでフォークとナイフを掲げイタダキマスするような仕草を前に、ガーグァは決死の勢いで駆け抜ける!

 

「ニャー!道外れちゃったニャー!」

 

「これでいいんや!でないと街の皆が危ないで!」

 

「正直ドンドルマに向かわせても不味いんですがね……」

 

 後ろから迫り来る恐怖(ツジギリギザミ)だけでなく、これからの対応をどうするか頭を悩ませ冷や汗をかく2人。

 こんな凶悪なモンスターを避難先に連れていくわけにはいかず咄嗟に指示したものの、ドンドルマにはそれ以上の危険が待っている。

 突如として現れたツジギリギザミ、吹き荒れる嵐、ドンドルマに君臨しているだろう鋼龍クシャルダオラ……死亡フラグしか見当たらない現状。

 

「「どうしてこうなった……」」

 

 いくら進んで囮役を買ったとはいえ、こうなった運命を呪う2人と1匹であった。

 

 

 この時2人は知らなかった。

 

 

 先ほどのハンター集団はツジギリギザミを引き付ける役割を持っていたこと。

 

 

 そのハンター集団は密漁者の集まりであったということ。

 

 

 彼らは生き残る為ならドンドルマの門ですら登って内部へ逃げ込む悪党だということ。

 

 

 

 

 そして遺跡平原で佇んでいたはずのオウショウザザミがドンドルマに向けて歩き出したこと。

 

 

 

 

 全ての決着はドンドルマで。




密漁ハンターについては「研究者と密漁者」に記載しております。
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