ヤオザミ成長記   作:ヤトラ

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かなり殴り書きです、ごめんなさい(汗)


第80話「其々の願い」

―コオォォォォォ!

 

 嵐にも負けぬ甲高い咆哮が轟き渡り、その錆色の身体に黒い旋風が巻き起こる。鋼龍の怒りに応じるかのように風が吹き荒れ、逃げるハンターを執拗に追いかける。

 そんなクシャルダオラから逃げるハンターことリリトは、嵐の中で長い戦闘時間を過ごしたことで身体の疲弊がピークに近い事を実感している。

 こんがり肉の1つでも頬張りたいぐらい腹が減っているが、応戦している筆頭ハンター達、そして自分の帰りを待っているはずの【我らの団】の為にと疲れた身体を酷使させる。

 

 しかし彼女一人だけではない。

 

 リリトの疲弊が見て取れたか筆頭ランサーがわざわざ高所から飛び降り、クシャルダオラの気を逸らす為に囮となってきた。

 気性が荒くなっているクシャルダオラは眼前の敵を排除しようと筆頭ランサーに狙いを定め、その隙にリリトは高所を登り始める。

 そんな彼女に筆頭ガンナーが手を差し伸べ、非常食である携帯食料を手渡す。本来ならこんがり肉でも渡したい処だが、今は緊急事態故にコレで勘弁してもらう。

 

 さて、いくら防御に特化した筆頭ランサーとはいえクシャルダオラ相手では分が悪い。

 腹を膨らまし一息ついたリリトは脱いだレイアSヘルムを再び被り、高所から飛び降りようとして……。

 

「ハンターさん!巨龍砲の準備が整ったそうっす!」

 

 駆け付けた筆頭ルーキーの報せが届き、いよいよか、とリリトはヘルム越しに見える移動式砲台を見やる。

 そこでは巨龍砲に必要な砲弾数を詰め終えたのか筆頭ハンターが手を振っており、それに手を振って応じ、そちらへと駆け出す。

 

 リリトが移動式砲台(こちらがわ)に駆け出したのを確認した筆頭ハンターは唐突に高所から飛び降り、クシャルダオラへと向かう。

 応戦している筆頭ランサーの横に立ち、軽く嘶いて威嚇するクシャルダオラを眼前に双剣を構える筆頭ハンター。注意を此方側に向けさせれば良い為、回避か防御に徹すればいい。

 

 

 

 吹き抜ける嵐の音とクシャルダオラの咆哮が轟く中、鉄と鉄がぶつかり合う音が響いている事を、鋼龍撃退しか頭にない彼らは気づかない―――。

 

 

 

―――

 

 ツジギリギザミは徐に両前脚の刃を斜め後ろに突き刺し、地面を難なく切り裂きながら前進。

 そのまま盾のように身構えるオウショウザザミの直前で停止、刃を振り上げ、地面を切り裂く事で生じた抵抗が消え、カァンッと甲高い音を立てて衝突。

 様々な鉱石が混合し圧縮した頑丈な鋏ではあるが浅い斬り傷が走り、対してツジギリギザミの刃には刃毀れ一つもない。

 

 切りつけた反動かツジギリギザミが仰け反るも四脚を地面に固定して軽減。だがオウショウザザミはその隙を逃さず、鋏を構えたまま突進、シールドバッシュと呼ばれる攻撃がツジギリギザミに襲い掛かる。

 両者ともに大型の甲殻種とはいえ軽い分類に入るからかツジギリギザミが軽く吹き飛ぶ程度に終わるも、ツジギリギザミは即座に体勢を整え、今度は鋏を横に大きく広げる。

 そのまま四本脚の内一本を軸にグルリと横に回転、刀のような鋏を二回連続でオウショウザザミに叩きつける。鋏を構えたままなので二回とも鋏に打ち付けられるが、遠心力も合わさったからかオウショウザザミの身体は大きく揺れた。

 

 オウショウザザミも四本足を地面に食い込ませる事で衝撃を抑え込むも、ツジギリギザミは回転の勢いを乗せたまま前進、独楽のようにオウショウギザミの周囲を行き交い切り刻む。

 朱い剣筋を宿す程の斬撃を連続でお見舞いするもオウショウザザミの虹色に光る甲殻と背殻には僅かな傷しか与えられていない……防御チートと言わんばかりの防御力に傷を走らせたこと自体が凄いのだが。

 

「助けてニャー!」

 

「離したら確実に死ぬニャー!死ぬ気で掴まるニャー!」

 

「キー(このぐらい序の口でヤンスのに)」

 

「アタチのお店を守るのニャー!」

 

 何より凄いのは、そんな甲殻種の攻防に巻き込まれながらも、しっかりとオウショウザザミに掴まっている猫人族達かもしれない。

 

「ほれ、もう少しだ!」

 

「わかっとるっちゅうねん!」

 

 一方その頃、人間(ハンター)側は無事にドンドルマの外壁に逃げ延びていた。

 

 クシャルダオラ撃退に赴いているハンター・リリトの帰りを待っていた【我らの団】だったが、密猟者が逃げ出したと聞いて団長と加工担当が駆け出したのだ。

 後ろではロープで雁字搦めに縛られた密猟ハンター×4人が大人しくしており、勇敢にもツジギリギザミを抑え込んでいたクカルとイリーダを救出。今に至る。

 

「……凄いな」

 

「ええ、あの甲殻に傷を負わせるなんて」

 

 団長がクカルの腕を掴んで外壁の上に上がらせる中、【我らの団】加工担当とハンター・イリーダが感慨深いとばかりに溜息を吐きながら、二匹の甲殻種の争いを見守っている。

 長年モンスターの外殻や竜骨を元に加工してきたからこそ、若くして様々な修羅場を潜り抜けた天才的ハンターだからこそ解る、最高クラスの矛盾の争い。

 絶え間なく斬り刻むツジギリギザミと、その猛攻を防ぎ続けるオウショウザザミ。徐々に虹色の甲殻へ走る傷が増えるも、斬るというより叩きつける動作になっているからか斬撃にブレが出てくる。

 ハンター達の間で囁かれ、イリーダ自身も幾つか目の当たりにしてきた【狩技】と呼ばれる技に似た動きが幾つも出てくるも、それらを防ぎ続けるオウショウザザミの防御力も素晴らしい。

 

 

 

 刀蟹から技を得ようと、爛々と目を光らせ甲殻種の戦いを見続けるイリーダ。

 

 

 

 古龍種撃退の為、移動式砲台に乗り込み最終段階へと移行するリリト。

 

 

 

 ドンドルマを守るべく、オウショウザザミを連れてきた猫人族達。

 

 

 

 其々の心の内に宿している願いを聞き届けるかのように―――

 

 

 

 

 

 紅い流星が暗雲の下を駆け巡っていた。

 

 

 




せっかくだからMHXとMHXX要素をチマチマと。

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