アサルトリリィ異聞:弾薬箱に愛を詰め込んで   作:gromwell

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♯09 合流

 あざみの救援へと急ぐ梨璃、楓、二水の三人が目にしたのは、赤い霧の中で一筋の赤い光を従えて戦うリリィの姿だった。

 彼女が守っているであろう建物を見つけて駆けつけて見れば、既にあざみはラージ級に単独で立ち向かっていたのだ。

「急がなきゃ!」

 シューティングモードのブリューナクspを構えた梨璃があざみの下へ駆け出そうとする。

「いけませんわ、梨璃さん」

 慌てて楓が梨璃の肩を掴んだ。

「楓ちゃん!?」

「落ち着いて、梨璃さん」

 驚きの表情で楓へと振り返った梨璃に二水がゆっくりと声を掛けた。

「二水ちゃんもどうしたの?」

 二水にまで止められた事で梨璃も何か感じたのだろう。足を止めて、楓と二水を見つめた。

「おかしいと思いませんか」

 両腕を振るい、砂嵐の如く攻撃を繰り出すラージ級を見つめながら、二水は呟いた。

「いくら大きいとはいえ、ラージ級の攻撃があんなに鈍いものでしょうか……」

 二水の指摘どおり、あのラージ級の攻撃は威力はそこそこありそうだが、余りに鈍重なのだ。

 かつて百合ヶ丘を襲ってきたギガント級の方が遥かに速く、鋭い攻撃を繰り出してきていた。 

「個体差というにはあまりにおかしいですわね」

 油断なくグングニルを握る楓が眉をひそめた。

 訝しがる彼女たちの目に、ラージ級へ向けて軽機関銃の引き金を引くあざみの姿が映る。

「ラージ級には銃火器って効かないんだよね?」

「そのはずですけど……」

「あざみさん、何をなさろうとしているのかしら」

 三人のリリィの顔には困惑の色が浮かんでいた。

 しかし、次の瞬間にそれは驚愕の表情へと変わった。

「効いてる……!?」

「え、でも……どうして?」

 大きくのけぞったラージ級の頭部に刻まれた弾痕を目にして、梨璃と二水は混乱していた。梨璃は陥落した山梨から避難する途中でミドル級に襲われた経験がある。

 防衛隊の扱うライフルでさえミドル級の足止めがやっとだったのに、まさかラージ級へ損傷を与えられるなんて予想すら出来なかった。

「……赤い霧、ツェアレーゲン……」

 一方、楓は深く記憶の海に潜るように目を閉じていた。以前聞いた、欧州で起こったヒュージ遭遇戦の噂話にそういった単語が出てきたように思う。

(どうせ尾ひれが付いているだろうと聞き流してしまったけれど……)

 確かヒュージと遭遇した即席のレギオンが混乱し、一時的に戦闘不能になった原因のひとつが、とあるリリィが発動したレアスキルだったのでは無かったか。

(噂のとおりなら、いま彼女に近づくわけにはいきませんわね)

 そんな事を考えている間に、あざみはラージ級の口のなかへ手榴弾を投げ入れた。

 赤い霧のなかでなお鮮やかに赤く血煙があがる。

 頭を失ったラージ級の倒れる音で、三人はようやく我に返ったのだった。

 

 

 

「皆さん、お怪我はありませんか?」

 三人と合流したあざみの第一声がそれだった。自分は腕や膝などところどころに擦り傷を負っているのに。

「うん、わたしたちは大丈夫!それよりあざみちゃんの怪我は大丈夫?」

 あざみの突っ込みどころ満載の問いに素直な答えを返した梨璃が、手早く消毒液とガーゼを取り出した。

「戦闘行動に支障はありません」

 手当てしようとする梨璃を制止しながら返答するあざみ。そんな彼女の腕を楓はグイッと引っ張った。

「駄目ですわよ。傷痕が残ったらどうしますの?」

 梨璃から消毒液を借りると楓らしくもなく少々手荒く傷を消毒し、治療する。

 綺麗になった傷口に丁寧にガーゼがあてられ、医療用テープで固定される。

「もう!あまり無茶をなさらないでくださいな」

 もはや何度目になるかわからない叱責があざみの耳朶を叩く。何故だか先ほどから妙に楓の機嫌が悪い。

 そんな楓の様子を目の当たりして、珍しい事もあるものだと梨璃も二水も目を丸くしていた。

「楓さん、もうそのくらいで」

「そうだよ。あざみちゃんも反省してるし、それにまだ作戦中だよ?」

 二水と梨璃が見かねて助け船をだした。

「二水さん、それに梨璃さんも……。そうですわね、今回はこのくらいで勘弁して差し上げますわ」

 ようやくあざみの腕を離した楓が、こほんと咳払いをする。

 気持ちを切り替えたのか、そこには普段どおりの柔らかな表情の楓がいた。

 そう、いつもどおりの楓がだ。

 いつの間にか梨璃を抱き寄せた楓が、その白魚のような指を梨璃の鎖骨辺りに這わせていた。しかも梨璃のすぐ目の前に艶やかに微笑む楓の顔が迫っている。

「ねえ、楓ちゃん。ちょっと恥ずかしいんだけど……?」

「うふふ、恥ずかしげな梨璃さんも可愛らしいですわよ」

「え……っと、ありがとう?」

 なんだか甘いやら何なのやらよくわからない空気が漂う。そんな空気を吹き飛ばしたのは梨璃の大声だった。

「あ!そういえば、アンモちゃんは!?」

 言われてみればアンモちゃんこと弾薬箱さんの姿が見あたらない。

「ラージ級が地中から現れた直後、なかなか素晴らしい速度で転がって行きましたが……」

 冷静にそう話すあざみは視線を地面に向けた。

 そこには弾薬箱さんの落とし物が点々と落ちていた。

 そうしてそれらを辿って歩いてみれば、そこにはバタバタと両脚をせわしなく動かして懸命にひっくり返しの状態から抜け出そうとする弾薬箱さん。

「無事みたいですわよ?」

「割と元気みたいですね」

「助けてあげようよ二人とも……」

 その姿を生暖かく見守る楓とあざみの袖をくいくいと引っ張りながら梨璃が溜め息混じりに言った。その様子を二水は苦笑いしながら見ていたのだった。

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