アサルトリリィ異聞:弾薬箱に愛を詰め込んで 作:gromwell
一柳梨璃、二川二水、楓・J・ヌーベル、明野あざみの四名と弾薬箱さんは鎌倉府防衛隊の輸送トラックを見送り、別行動中の一柳隊が現在交戦しているポイントへと移動していた。
一塊になって、てくてく歩きながら周囲を警戒しつつ、このあとの作戦を話し合っていた。
「えっと……、展開しているヒュージはミドル級が二体。それにスモール級が十二~十三体。二手に分かれて攻撃中なんだよね?」
梨璃の持つ通信端末の画面に表示した地図には、夢結たちが民間人を乗せた輸送トラックの離脱を援護する為に陣取った地点が青丸で記入されている。そこに二つのミドル級とスモール級のヒュージの群れが陣取った地点を赤丸で記入する。
「これは……、十字砲火が可能な位置取りですね」
あざみの指が画面を滑り、ヒュージの群れを示す二つの赤丸から線を伸ばせばちょうど一柳隊の位置で交わる。その間には何の遮蔽物もない。
夢結からの通信ではミドル級を盾にしたスモール級が遠距離からの射撃を繰り返しているのだという。身を晒しながら防衛戦を展開する夢結達は不利な状況ではあるものの、よくヒュージたちを釘付けにしていた。
しかし、それも何時まで持つかわからない。
仮に他のヒュージの群れが現れでもすれば一気に夢結たちは突破され、民間人を乗せた輸送車両が危険に晒さられてしまうかもしれない。
それどころか夢結たち自身も危機に陥ってしまうだろう。
「ともかく、これでは夢結様たちが下手に行動できませんわ。ここはわたくしたちがこの布陣を崩しませんと」
楓の指が地図上を滑り、現在地からヒュージの群れの位置を線で結ぶ。
「私たちに近い方のヒュージの群れを攻撃。まずはスモール級を減らしましょう」
二水の提案に梨璃が頷いた。
「あざみちゃんはBZ《バックゾーン》から援護射撃をお願い」
梨璃があざみに指示を出す。あざみの消耗具合を考えて負担の少ない後方のポジションにまわしてくれたのだ。
「了解です。後方から援護ですね」
しっかりと頷くあざみの手には弾薬箱さんからずるりと引っ張り出したマルチグレネードランチャーが握られていた。マギを消耗しつつも彼女の赤い瞳は爛々と戦意を宿している。
「頼りにしていますわ。けれども、あくまで方針は方針。状況に合わせて臨機応変に参りましょう」
楓があざみへ悪戯っぽく微笑みかけたあとに梨璃に視線を送る。
「うん、そうだね。お姉様たちを助けなきゃ!」
グッとブリューナクspのグリップを握る梨璃。
通信では夢結は言わなかったが、此方が動けば当然、夢結たちも何かしら行動を起こすはず。その狙いもおぼろ気ながら梨璃には見当がついていた。
「頑張ろうね!」
ふんすと気合いを入れる梨璃。楓と二水もそれに真剣な表情で応えたのだった。
別行動中の梨璃たちへの通信を終えた夢結が深く息を吐いた。
荷台まで避難民で溢れる防衛隊の輸送車両がもどかしいほどの速度で移動している為だ。
此処に留まれば複数のスモール級ヒュージからの十字砲火に晒されつづける事になると判っている。
けれども、多数の避難民を乗せた輸送車両が安全圏に到達するまでは下手に動くべきではないと隊長不在の一柳隊を預かる上級生の夢結は判断した。
「のう、夢結様。わらわのレアスキル、フェイズトランセンデンスであればあんなヒュージなぞ一撃じゃぞ!」
防戦一方の状況にしびれを切らしたミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウスが夢結に詰め寄る。しかし、夢結は首を横に振った。
「今は無理をしては駄目。反撃に出るのは梨璃たちが到着してからでも遅くはないわ」
「しかし、このままやられっぱなしというのは……!」
苛立ちを吐き出したミリアムは視線を落として、胸に抱いた休止状態のグングニルを睨んだ。
この危機の最中にミリアムはずっと待機を指示されていたのだった。そんな彼女の大きな瞳は、うっすらと悔し涙で潤んでいた。
「フェイズトランセンデンスは一度きりの強力な切り札。だから、より確実なタイミングで切る必要があるの」
それくらいわかっているでしょうと、安藤鶴紗が眉をひそめてミリアムに言った。
「む、もちろんじゃ!」
そんな鶴紗の言葉に気を良くしたのか、ニカッと笑いながらミリアムは返答する。わらわはいわば最終兵器的なアレなヤツじゃな!とすっかり上機嫌である。
そんなミリアムを眺めつつ、王雨嘉は首を傾げた。
(でも、ミドル級って二体もいるんだよね……?)
一体はミリアムが倒すとしても残りはどうするつもりなのだろう。
そんな事を考え込んだせいで眉間に皺が寄った雨嘉へと郭神琳が柔らかく微笑んだ。
「そんなに緊張なさらないで。雨嘉さん」
「ありがとう神琳さん」
気遣いの言葉にお礼を言いつつ、シューティングモードのグングニルを構えて撃つ。
雨嘉の射撃で熱線を放とうとしていたスモール級が慌てた様子で攻撃をやめると、ミドル級の陰に隠れた。
もう一方のヒュージの群れも夢結と鶴紗がうまく牽制し、スモール級の熱線を封じている。互いのヒュージの群れが散発的に攻撃してきているからこそ有効な対処だ。
しかし数が減らない以上、膠着状態なのに変わりない。
「もう……!」
まるでもぐら叩きのようにミドル級の陰から頭を覗かせては、ひょいと引っ込むスモール級。
いい加減、雨嘉が苛立ちをみせはじめたとき、ミドル級の背後で爆発が起きた。その爆発の衝撃でスモール級がふらふらとミドル級の陰から姿を晒す。
その好機を逃さずスモール級を撃ち落とした雨嘉の視線の先に、待ち望んだ救援の姿があった。