アサルトリリィ異聞:弾薬箱に愛を詰め込んで   作:gromwell

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♯12 反撃

 空が濃紺に染まりはじめた頃、一柳隊との合流を目指して進む梨璃たちはミドル級ヒュージと複数のスモール級ヒュージの群れに遭遇した。それは間違いなく、夢結たちを襲撃中のヒュージたちだ。

 安易に近付かず、静かに観察してみるとずんぐりとしたまるっこいシルエットのミドル級は、透明な分厚い膜で黒色の身体全体を覆っていた。そんなビジュアルもあって、まるでぷるんぷるんの水まんじゅうのようである。

 その背中には、てんとう虫的なフォルムのスモール級がわしゃわしゃと重なりあった状態でミドル級の膜に張り付いていた。

「あざみちゃん、お願い」

 そんな言葉とともに、梨璃の瞳があざみへと向けられた。

 たったそれだけの指示。しかし、不思議とあざみは自分がとるべき行動を理解していた。

「了解。通常榴弾、発射します」

 あざみはすぐさまリボルバー式マルチグレネードランチャーを構え発射準備を完了する。

「前衛はお任せくださいな」

 シューティングモードのグングニルを携えた楓が踊るように軽やかな足取りで前衛であるAZ《アタッキングゾーン》のポジションに進み出る。

 梨璃は二水とともに、あざみの両脇についた。BZ《バックゾーン》という後衛のポジションだ。

 そうしてそれぞれがポジションについた直後、あざみのグレネードランチャーから榴弾が発射された。ヒュージとの距離は二百メートルほど。

「着弾……、いま!」

 水まんじゅうなミドル級の頭上で爆発した榴弾が無数の破片を撒き散らす。その攻撃に驚いたのか、一体のスモール級がミドル級の背中から飛び出した。が、すぐさま一筋の魔力《マギ》の光に貫かれて墜ちていく。

「あれは雨嘉さんの狙撃ですわね」

 発射寸前だったグングニルの引き金から人差し指を離した楓が感心したように呟いた。

「二水ちゃん、いくよ!」

「はい!」

 あざみの両脇でCHARMを構えていた梨璃と二水が魔力《マギ》の光弾を射つ。威力よりも速射性を重視しているためか、やや小ぶりの光弾の弾幕がミドル級の周囲を掠めていく。

 それらの攻撃は命中こそしないものの、頭上での榴弾の爆発と相まってスモール級を身動き出来ない状況に追い込んでいた。

「あざみさん、そのままお願いします!」

 二水が叫ぶ。その言葉に従ってあざみは再び榴弾を撃ち込み、ミドル級の頭上で爆発させる。

「よっ、はっ、と……。すぐに終わらせてみせますわ」

 身動き出来ないスモール級を気の抜けた台詞を吐きながら楓が次々と撃ち抜いていった。

 あっという間に最後に残ったスモール級が力尽き、コロリと地面に転がった。

 ぽつんと残ったミドル級は困った様子で膜の表面を波打たせているだけで特に動きはない。

 しかし、このミドル級が問題だった。マギの光弾は膜をへこませたものの吸い込まれるようにかき消され、実弾も膜を貫通出来ずに押し戻されてしまう。

「どうしよう、これ」

「これは困りましたね」

 梨璃と二水が攻撃を受けてもびくともしない、あの憎たらしい水まんじゅうを途方に暮れた眼差しで見つめていた。

 一方で梨璃たちの到着で不利な状況から脱した一柳隊のメンバーは、もうひとつのヒュージの群れへと攻撃しているのか、薄闇のなか魔力の閃光が瞬くのがみえる。

 だが向こうもやはりこのミドル級に手こずっている様子だった。

『そちらも苦戦しているみたいね?』

 通信端末から聞こえる夢結の声も何だか疲れが滲んでいた。時折「ええい離せ夢結さま!わらわは突貫するのじゃー!」というノイズ混じりのミリアムの叫び声も聞こえる。

「お、お疲れさまです」

『ええ、本当に』

 苦笑混じりの梨璃の労りに言葉を返す夢結。

『こちらはミリアムさんで力押しするとして、そちらは何か手段はあるの?』

 もう抑えるのも面倒になったミリアムを本当に突貫させるつもりらしい。まあ、夢結や神琳、鶴紗が援護してやればなんとかなるだろう。

 問題はこちらだった。

 人数は四人と少なく、高火力を発揮するレアスキル持ちもいない。

 こうして話をしている間にも、楓とあざみが水まんじゅうなミドル級をCHARMと通常火器で攻撃しているが効果はないようだった。

「ああ、もう!ぐにゅぐにゅと煩わしいですわ」

 流石の楓も苛立ちを隠せない。グングニルをブレードモードへと変形させ、突撃の構えをみせる。

「これ以上時間をかけてしまっては、梨璃さんとあざみさんとのお風呂の時間が無くなってしまいますわ」

 迫る宵闇に焦った楓がそんな事を叫ぶ。

「えっと、そんな約束してないよね?」

「何故わたしまで?」

 身に覚えのない予定に首を傾げる梨璃と何故か巻き込まれて困惑するあざみだった。

「あ、でもお風呂はともかく楓さんの突撃には賛成です」

 そんな状況で二水がぽふっと両手を合わせた。何やら策を思いついた様子。

「あざみさん、ショットガンはお持ちですか?」

「ええ、AA‐12を所持しています」

「やっぱり!」

 あざみが頷いて足下にいた弾薬箱さんからAA‐12を引っこ抜いてみせた。32連ドラムマガジン付きで毎分三百発のフルオート連射の凄いショットガンだ。

「あざみさんはそのショットガンでミドル級の膜をぶっ飛ばしてください」

 二水がにっこり笑顔でそんな物騒な台詞を吐いた。

 いきなりの暴力的な発言でちょっと引きぎみの梨璃たちに向かってあわあわと手を振りつつ、二水が説明する。

「観察していて気づいたのですが、あの膜はマギを無効化できても着弾時の衝撃は有効なようにみえました」

 そう言われてみれば確かに攻撃を受けているあいだ、ミドル級の膜は少しへこんだような、潰れたような形に変化していた。 

「ですから、より強い衝撃を与えてやればその部分は他よりも膜が薄くなるはずなんです!」

「なるほど、その手薄になった箇所にわたくしのグングニルを突き立てればよろしいのですね」

 いち早く理解した楓が強く頷いた。ヤル気満々である。

「じゃあ、わたしと二水ちゃんはあざみちゃんと楓ちゃんの援護だね」

 梨璃がよいしょとブリューナクspを構えた。

「はい!では皆さん頑張りましょう」

 二水の明るい声が藍色に染まる空に響いた。

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