アサルトリリィ異聞:弾薬箱に愛を詰め込んで   作:gromwell

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♯04 お茶会

 雨嘉の胸に抱かれて、弾薬箱さんは校舎からどんどん離れていく。

 即ち、あざみがいる生徒指導室からどんどん離れてしまっているのである。

 しかし、雨嘉の隣を歩く神琳の監視の目もあって、大人しく抱っこされているしかなかった。

 正体不明の存在に対して神琳は赤と黄色の左右で色の違う目で、しっかりと見張っているのである。

 そうしているうちに、弾薬箱さんは生徒の生活の場である学生寮に到着してしまったのだった。

 女生徒たちのいわゆるプライベート空間の入り口に突入する事になってしまった弾薬箱さんは、ただいま絶賛後悔中だった。

(なんで散歩になんて出てしまったのだろう……)

 あの生徒指導室に居ればこんな事にならなかったのに。

 そんな弾薬箱さんの意識は、楽しげな少女たちの話し声によって現実に引き戻されたのだった。

「あ、雨嘉ちゃん。神琳さんといっしょだったんだね!」

 ピンクのサイドテールの少女が雨嘉に声を掛けた。

 オープンテラスに据えられたまるいテーブルには、ティーポットやカップが並んでいて、紅茶の香りを漂わせている。その周りにある空いた椅子に雨嘉と神琳は腰かけた。

「その抱っこしているのって何ですか?顔が付いてますけど……」

 明るい茶色の髪の少女、二川二水が首を傾げた。あの戦いで彼の応急処置をしてくれた子だ。

「どうやら迷子のようですわ」

 神琳がそう言って雨嘉に抱かれている弾薬箱さんを見る。

(そんなに迷子、迷子と連呼しないで)

 人知れず心を抉られる弾薬箱さんだった。

 しかし、そういつまでもしょぼくれているわけにもいかない。

 気を取り直して辺りを見てみれば、見事に美少女の輪の中にいた。

 その数、九名。

 先日の戦闘においてあざみを救い出してくれたリリィの姿もある。

(もしかしたら、彼女たちが……)

 朦朧とした状態でもはっきりと聞こえた、一柳隊というレギオンの名前。

 とりあえず様子をみることにした弾薬箱さんの目の前で、少女たちの会話はどんどん展開されていく。

「迷子って……。これってただのアンモボックスじゃないの?」

 薄い金色の髪の少女、安藤鶴紗の赤い瞳が弾薬箱さんをジロリと睨んだ。

 聞き慣れない単語にピンクのサイドテールの女の子、一柳梨璃が首を傾げて鶴紗をみた。

「鶴紗ちゃん、アンモボックスってなに?」

「あのね、梨璃。アンモボックスっていうのは弾薬箱の事よ。アサルトライフルや機関銃に使用する実弾を保管する箱」

「そうなんだね。じゃあこの子、アンモちゃんっていうのかな?」

 鶴紗の説明を聞いた梨璃が再び首を傾げる。

(やだなー、そんな名前やだなー)

 そんな弾薬箱さんの言葉は誰にも届かない。

「あの、えっと、それより……」

 口を開いた雨嘉に皆の視線が集中する。

 見かけによらず引っ込み思案な彼女は襲いかかる緊張感で少し声が震えた。けれど、ちゃんと言わないといけない。

「この子の持ち主をいっしょに探してほしいの」

 きちんと言えた。何時もより躊躇う時間もずっと短い。

 黙って見守っていた神琳が、雨嘉には見えない位置でぐっと親指を立てた。グッジョブ、雨嘉さん。

「もちろん!きっと困ってるよね」

 すぐさま、梨璃が頷いた。

「でも持ち主を探すにしても、どうしましょう?」

 二水の視線に雨嘉が首を横に振った。持ち主を見掛けているとはいっても遠目からだ。顔までははっきりと見ていない。

「そのアンモなんたらには持ち主の手掛かりは無いようだしのう……」

 ツインテールの少女、ミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウスがうーんと唸る。

「大丈夫ですわ。わたくし、その方を存じ上げておりますの」

 楓がとんと胸を叩いて言った。

 それを聞いた楓のライバルを自称するミリアムがフフンと鼻を鳴らした。

「どうせセクハラでもやらかしたのであろう」

「あらミリアムさん。セクハラとは聞き捨てなりませんわ!あれは挨拶ですのもの」

 ミリアムの言葉などどこ吹く風とばかりに、さらりと言い放つ楓の声を聞きながら、二水と梨璃が顔を見合わせた。

「今日、楓さんの機嫌が良かったのって……」

「あ、あははは……」

 二水の推察を聞いて、梨璃がつい苦笑いを零してしまう。初めて楓と会った入学初日に梨璃も被害に遭っていたのだ。出会ってものの数分で梨璃の引き締まった可愛いお尻には、楓の手が伸びていたのである。

 そんな一年生組のやり取りを二年生である白井夢結(しらいゆゆ)と吉村・thi・(まい)の二人は紅茶を楽しみながら眺めていた。

「持ち主がわかってるなら、大丈夫だナ」

「あら梅。貴女、心配していたのかしら?」

「意地悪な言いぐさだナ、夢結」

 少し頬を膨らませた梅が砂糖とミルクたっぷりの紅茶で満たされたカップに口を付ける。

 面倒臭がりなようで、実は人一倍周囲に気を配っているのが梅なのだ。

「そうかしら?それより梅」

「ん、何ダ?」

「どうやら持ち主を探す必要はなくなったみたいよ」

 白井夢結の視線の先には吉阪と見慣れない少女の姿があった。

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