アサルトリリィ異聞:弾薬箱に愛を詰め込んで 作:gromwell
「それじゃあ、あとの事は貴女たちに任せてもいいかしら?」
なんて、ちゃっかり紅茶をご相伴してった吉阪に、あざみの件を押し付けられた一柳隊。
雨嘉から弾薬箱さんを受け取ったあざみが、勧められるまま用意された椅子へ腰かけた。
「弾薬箱さんを保護してくれていて助かりました」
そう言うと、あざみは深々と頭を下げた。
「そんなに恐縮なさらないでくださいな」
そんなあざみの肩を隣の席の楓が抱くようにして頭を上げさせる。
その楓の肩越しに梨璃が顔を覗かせた。
「その子、弾薬箱さんって名前なんだね。てっきりアンモちゃんだと思ったんだけど」
「アンモちゃん?」
梨璃の言葉に不思議そうに首を傾げるあざみ。
「そう、アンモボックスのアンモちゃん」
なるほどと、あざみが納得する。
「そうですね。改名しましょうか、アンモちゃん?」
そう言うと冷ややかな視線を自身の膝の上の弾薬箱さんへと向けた。
(勘弁してください)
あざみの両手で左右からがっちりホールドされながらも、器用に身をよじり、身体を左右に振るような動作をする。全身で拒否の意思表示をする弾薬箱さんだった。
「ところで、そろそろ自己紹介を始めてもいいかしら?」
それまでじっと静観していた夢結があざみと弾薬箱さんへ鋭い視線を浴びせながら言った。
吉坂からは名前くらいしか聞かされていないのだ。警戒されたとしても仕方ない。
ひとまず自己紹介を済ませていた楓を除く、一柳隊のメンバーが学年と名前、それからレアスキルとポジションという割とあっさりな自己紹介を終える。
「では、わたしの番ですね」
弾薬箱さんを抱いたまま、すっと席を立ったあざみがゆったりと一礼する。
「対ヒュージ研究機関GEHENA所属、明野あざみです。レアスキルはツェアレーゲン。ポジションは装備次第で一通りこなせます」
言い終わり、再び椅子に腰掛けるあざみ。
彼女へ向けられた視線は先ほどまでとはまるで違うものだった。
鶴紗と神琳はGEHENAという言葉に眉を顰めた。
CHARMの整備や開発を行うアーセナルでもあるミリアムは「装備次第で」という言葉が気になっているのかソワソワとして落ち着きがない。
大方、あざみのCHARMが気になって仕方がないのだろう。
梅と夢結はあざみのレアスキルの名を聞くや表情を強ばらせた。
その他の梨璃や雨嘉、二水は聞き慣れない単語の連続で頭上にクエスチョンマークを浮かべている。
楓だけは変わらずすまし顔でティーカップに口をつけていた。
先ほどとは違い、重い沈黙がその場を支配していた。
「……貴女、GEHENAの人間だったのね」
そんな沈黙のなか、鶴紗の低い声が響いた。
GEHENAは人体実験を受けさせられた過去を持つ鶴紗にとっては忌むべき名前だ。
神琳も鶴紗の事もあってGEHENAには良い印象は持っていない。
「では、貴女も生体実験を受けさせられていたのですか?」
神琳らしい直球の問いだった。
「いえ、わたしは先天的に処置を受けていましたので」
その問いにあざみはさらりと答えた。
そんなあざみへ、今度は夢結が問いかける。
「貴女のレアスキルにはそれが関係しているのかしら?」
「そうですね。その為の処置だったと聞いています」
そんなあざみと夢結のやりとりを聞いていた二水が「あの……」と控えめに手を挙げて発言する。
「あざみさんのレアスキル、初めて聞く名前なんですけど、どういう効果があるのですか?」
リリィやレアスキルなどなど、その手の知識が豊富な二水ですら知らないレアスキルに興味が湧かないはずがない。
「そうね、私も噂程度にしか聞いたことは無かったし、説明してもらえるかしら?」
夢結があざみに説明を求め、そしてあざみがそれに答えようとしたその時──
鶴紗の持つ端末と弾薬箱さんが同時に振動した。