アサルトリリィ異聞:弾薬箱に愛を詰め込んで   作:gromwell

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♯07 迎撃と憂慮

 鎌倉府防衛隊司令部の決定によって、小規模ながら複数存在するケイブ発生の予測地点への対策として、住民を避難させることで無理矢理に防衛地点を絞り込む作戦がとられる事になった。

 住民が残っている地点には各ガーデンからリリィたちが、そして避難が完了した地点は鎌倉府の防衛隊の部隊が展開し、ケイブ発生とヒュージの出現を監視する。

 その作戦に合わせて、二手に分かれる事にした一柳隊。

 梨璃、二水、楓の三名は先行して避難が難しい施設の防衛を行っているあざみの救援へ向かう。

 夢結をはじめとした他のレギオンメンバーはヒュージを誘引・掃討しつつ、梨璃たちとの合流を目指す算段だ。

「あざみちゃん、大丈夫かな……」

 ごとんごとんと揺れる防衛隊のトラックの荷台で梨璃はそう呟いた。

「きっと大丈夫ですよ。彼女、戦い慣れてる感じでしたし!」

 隣に座る二水が明るい声で励ますように言った。

 二水の言葉に嘘はない。

 あざみは彼女のデータには無いリリィだが、それなりに実力のあるリリィだと考えている。

 もちろん、梨璃だってそれを感覚で理解している。それでも梨璃の不安そうな表情は変わらない。

「二水さんの言うとおりですわ。それに、あざみさんには弾薬箱さんも付いていますし」

 見かねた楓が梨璃を優しく頬を撫でながら宥める。

 あの脚の生えた奇妙な弾薬箱が、どう役立つのか楓にはまだわからない。

 だが少なくとも、この場で梨璃の不安を和らげる材料になったのは確かだった。

(それにしても、無茶が過ぎますわよ、あざみさん)

 ぷにぷにの梨璃のほっぺの感触を楽しみながら嘆息する楓だった。

 

 

 

 赤く、朱く染まる空。その下ではあざみが数体のスモール級ヒュージと交戦していた。

 防衛すべき老人ホームを見上げる斜面に陣取ったあざみが、横一列に並んで上ってくるムカデに似た姿のスモール級たちへと銃弾を浴びせた。

 弾薬箱さんから伸びるベルトリンクが、あざみが引き金を引く汎用機関銃のM240Gへとどんどん吸い込まれていく。

 弾薬箱さんとあざみの周辺は空の薬莢が散らかり放題になっていた。

「ケイブ発生は確認されましたか?」

 銃声に負けじと声を張り上げるあざみ。

「あざみちゃんの居る地点から南と西の方に小規模のケイブが発生したよ。でもこれは……」

 応える博士の声には困惑の色が滲んでいた。

「両方とも此処から少し距離が離れているんだ。非飛行型のヒュージがこんなに早く到達するなんて有り得ない」

 博士の言葉を聞きながらもあざみはムカデ型スモール級へ向けてマルチグレネードランチャーのM32MGLを向ける。

 即座に回転式弾倉に収まった通常榴弾六発を連射。

 迫りくる複数のムカデ型ヒュージをまとめて文字通り粉砕すると、ため息を吐いた。

「視認できるヒュージは全滅しましたが、その様子だとケイブの規模を基にしたヒュージ戦力の予測は無意味ですね」

「そうだね。どこか観測漏れがあったのか、それともシステムに問題があったのか……。ともあれ、この早期警戒システムの本格的な実用化は当分おあずけだね」

 GEHENAの推進するケイブ発生地点の規模と時間の事前予測とケイブより出現するヒュージの戦力予測を可能にするシステムをこの鎌倉府で試験運用してみているが、今回の事でまた研究者たちの睡眠時間が更に削られる事になりそうだ。

(ま、部署が違うから僕には関係ないけれど)

 それよりと博士は首を傾げた。

 小規模とはいえ同時多発したケイブに、なにかしら不穏なものを感じたのだ。

(結果的には小戦力の逐次投入と変わらないから、このまま各個撃破されるだろうけど……)

 まさかとは思うが、ヒュージが人類が用いる戦術を学習・模倣し始めたのだろうか。

(ミドル級には知能の高い個体も存在するとは聞いているけどねぇ……)

 ふと思い浮かんだ仮定に背筋を寒くする。

「博士……」

「なに?」

 思考に溺れそうな博士をあざみの声が現実に引き戻した。

「先ほどのヒュージは地中から現れたものと推測します」

 迎撃中に気になったのだろう。

 斜面を下ったあざみが、ちょうど藪の陰に隠れていた、地面にぽっかり空いた穴を見つけていた。

 人がまるっと入れる程の大きさの穴は随分と深そうだ。

「この大きな穴の先に、事前に潜んでいたのか、それともシステムの観測網の外から侵入してきたのか……」

 どちらにしても、博士の仮定はより真実味を帯びてしまう。

(仮にそうなら不味いんじゃないかなぁ……)

 質・量ともに劣勢なうえに、さらに戦術・戦略といった人類側のアドバンテージを失うとなれば、結果は自ずとみえてしまう。

(上層部が焦るわけだ)

 現状でもGEHENA上層部の危機感はかなりのものだ。無謀ともいえる強引な研究や実験を行う程度には。

「あざみちゃん、付近を哨戒して異常なければ一柳隊と合流してくれないかな」

 博士からの指示にあざみが頷く。

「了解」

 その直後、あざみの足下が大きく揺れたのだった。

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