仮面ライダーメルシャウム   作:fuki

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第九話:震えてる手を握って - 1

   AV

 

 腕が動かない。

 橈骨と尺骨がむき出しにされた前腕、その骨の隙間を、銀色に輝く鎖が巡っている。手のひらまで伸びるそれは腱のようにも見えるが、骨の動きを阻害しているので、手首は回らないし握り拳も作れない。

 脛も同様だ。脛骨と腓骨の間に巻き付いたずっしりと重い鎖で、爪先が徐々に柔らかな土の中に沈んでいく。

「解剖学的ゼロ度?」

 言葉を呟いても、顎が動かない。

 水たまりに映った顔の三分の二が、翼を広げたコウモリのような金色の目で覆われている。

 いや、頭全体が、黒と赤のヘルメットで覆われている。

「これ……誰?」

 襟を立てたマントを羽織ったような、黒と赤の身体。

 それぞれを鎖に縛られた、戦いからはほど遠い四肢。

「≪運命の鎖(サダメノクサリ)≫?」

 誰かの呟きが聞こえる。

「そうよ」

 顔を上げると、嬉しそうな誰かの顔が見えた。

 ステンドグラスのような細かな色の集合が、総体として誰かの顔に見えた。

 傾げた首がむず痒い。

 怪我をしている?

「苦しいでしょう、ルビィ。でも安心なさい」

 ルビィ?

 それは誰?

「あなたの夜を、解放してあげる」

 本当に?

 本当に、解放してくれるの?

 この苦しさから?

 水に浸していた手を伸ばす。

「そうはさせないぜ」

 その手が誰かの襟を掴む。

 誰の手が、誰の襟を?

 鎖がこすれる音がする。

 

   *

 

 千歌:≪Orange'squash≫、≪シャンティ≫。

 曜 :≪浦の星少女隊≫、≪潮風sail(セイル)≫、≪Sakuya≫、≪Lir(リル)≫、≪SS's(サンシャインズ)≫。

 花丸:≪歌音(かのん)≫。

 善子:≪KiSeKi≫、≪Palettes!≫。

 月曜日の昼休み、体育館付属の第二教官室である≪浦の星女学院スクールアイドル同好会≫の部室にて。

 単語カードに書かれた言葉たちが、長机に並べられていく。

「色々集まったぞう! グループ名!」

「あんまり挙げられなくて申し訳ないです」

「花丸はアイドルに疎いんだからしょうがないわよ。我らが同好会のフィジカル担当なんだから、ね」

「うん……」

「ヨハネさんのは意外と硬派だよね」

「こ、硬派って言う!? 堕天色を出さないの、苦労したんだからね!」

「てか、曜ちゃんがこんな神話オタクなんて思わなかったよ!」

「調べたんだよ。≪μ's≫って言ったら神様でしょ?」

「≪コノハナノサクヤビメ≫なんて、富士山の神様を引っ張ってるところは渋いです」

「お膝元だしね」

 わいわいと騒ぐ先輩同輩を前に、

(居辛いなあ)

 黒澤ルビィは肩身が狭い。

 ルビィは元々、花丸と二人で屋上で弁当を食べるつもりだった。先を歩く善子を見付けた時も、一人で食事をしたいと言う彼女に声はかけなかった。ところが下階から先輩方がやってきて、千歌の「花丸ちゃん! ルビィちゃん! 一緒に食べよ!」と曜の「ヨハネちゃん! ランチミーティングは部活の基本だよ!」で押し切られてしまい。

 気付けば、浦の星女学院スクールアイドル同好会のミーティングに加えられてしまったのだ。

「そういえば桜内先輩って?」

 もふもふと≪のっぽパン(クリーム)≫を食べる花丸が問うと、

「学校お休み。病院みたい」

 二段重ねのお弁当を広げる曜が答えた。

「調子悪いんですか?」

「どうなんだろ、どっちかと言うと病院の都合が色々あるみたいだよ」

「いないと知らなきゃ、ここに来てないわよ……っと、理事長代理からテキストが来た」

 コンビニ弁当のご飯をつまむ善子が、震える電話を見て言った。

「なんで番号交換してるの? ヨハネさん」

「い、色々あってね……」

 曜は口を動かしながら、新たな単語カードにシャーペンを走らせる。

「“Shinies(シャイニーズ)”、“Stella(ステラ)”、“Spica(スピカ)”、“Soleil(ソレイユ)”……うん、光ものばっかだね」

「シャイニー先輩、『Shiny!』って言いたいだけずら」

 のっぽパン(みかん)を頬張る花丸の中では、鞠莉はすっかり“シャイニー先輩”になってしまったようだ。

「これで全部かな? けっこうバリエーション出たよね!」

 一四枚の単語カードを前に、千歌は海苔弁を口に含んだまま言った。

「そう? 私には同じに見えるけどな」

「一番数出した曜ちゃんがなに言ってるの!」

「浦の星少女隊を出した人に言われたくないです」

「人のこと硬派とか言って、自分だって八〇年代じゃない」

「だ、だから、同じになっちゃうから出したんだってば」

 千歌と花丸と善子に指摘され、曜は反論した。

 会話を続ける四人の後ろから身を乗り出し、ルビィは目を細める。

 五人が上げたグループ名は、大まかに四つに分類できる。

「神話系、光系、地域系、その他」

 呟き、千歌と曜の間から手を伸ばす。

「じゃ、あとは多数決かな。理事長代理がいないと挙手が――ルビィ?」

 単語カードを並び替える。

 神話系――曜の≪Sakuya≫と≪Lir≫。

 光系―――曜の≪SS's≫、鞠莉の≪Shinies≫、≪Stella≫、≪Spica≫、≪Soleil≫。

 地域系――千歌の≪Orange'squash≫、≪シャンティ≫に、曜の≪浦の星少女隊≫、≪潮風sail≫。

 その他――花丸の≪歌音≫、善子の≪KiSeKi≫、≪Palettes!≫。

 そのうち、≪SS's≫をのぞく光系と神話系を右端によける。

 さらに、千歌の≪Orange'squash≫、≪シャンティ≫と、その他の三枚を長机の真ん中に。

 残りの≪浦の星少女隊≫、≪潮風sail≫、≪SS's≫を左端に並べる。

「ルビィちゃん? どうしたの?」

 のっぽパン(ピーナッツ)の封を切る花丸の声に、ルビィはハッと顔を上げる。

「え? ……あ、あ! ご、ご、ごめんなさい! 勝手に動かしちゃって!」

 ルビィが単語カードを元に戻そうと手を伸ばし――

「待ちなさい」

 ――縛ったビニール袋を置いた善子に、掴まれた。

「この分け方、説明してもらおうかしら」

「で、でも」

「意味があるんでしょ?」

 善子の力は思いの外強く、ルビィの手は一ミリも進まない。

「う……」

 そして三人の顔に見つめられれば、折れるしかない。

「も、もういるんだよう」

「なにが?」

「神話系も! 光系も! ≪Orange'squash≫も≪シャンティ≫も≪歌音≫も! ≪KiSeKi≫も! ≪Palettes!≫も!! もういるんだよう!」

 一拍ののち、四人が声を上げ、広くはない部室に反響し、ルビィは耳まで赤くなった顔を手で覆う。

 ああ、居辛いよう……。

 

   A

 

「去年≪ラブライブ!≫にエントリーしたグループって、七〇〇〇組以上いたんだ。すごいなあ」

 後部座席から前の座席の背もたれにもたれ、千歌が呟く。彼女の電話にはグループアイドルがリストとなって並んでおり、その総数は七二三六組。

「今年度のエントリー予定は、今のところ四八五一組です」

「なによ、それじゃ並大抵の名前はいるに決まってるじゃん! 先に言ってよ、ルビィ!」

「ご、ごめんね、ヨハネちゃん……」

「スーパーバイザーをいじめちゃダメだよ。マルたちが最初に調べるべきだったの」

 後部座席の真ん中で足を組む善子から隠れるように、黒澤ルビィは窓ガラスと花丸の間で小さくなる。

 スクールアイドル同好会の三人は、海岸通りを走るバスに揺られて三津海水浴場へ向かっている。

 ルビィはスーパーバイザーとして善子に捕われていた。本当は、今も後ろから追いかけてくるリムジンで帰る予定だったのだが、押しの強い千歌と善子がいると、幼馴染みの花丸がいてもルビィは負けてしまう。

 顔を上げると、普段はコンクリートの防波堤に隠れて見えない海が、バスの高い座席からは、遠く牛臥山まで見通せる。

 綿のように千切れた雲が浮かぶ空が、内浦湾を穏やかに覆う様も、リムジンのスモークガラス越しのそれとは違う。

 それが、ルビィには落ち着かない。

「なんたら少女隊も、けっこうあるね。これはどういうことです? スーパーバイザー!」

 千歌に聞かれ、ルビィは車内に目を戻す。

「えっと、≪少女隊≫ってグループが八〇年代にいて、その響きがアイドルを思わせるんだと思います。≪少年隊≫は八〇年代から今も存続してます」

「曜ちゃんっぽい名前だと思ったんだけどなあ」

 千歌は意外そうに呟いたが、ルビィにはなんとなく想像できた。衣装デザインで≪μ's≫の『START:DASH!!』を参照し、神話系のグループ名を提案したように、曜はアイドルに対して造詣が深くない分、逆に「アイドルらしいもの」を意識してしまうのだろう。それは長所でもあるし、短所でもある。

 ちなみにその曜は、バスには乗っていない。今日は普段なら高飛込の練習日なのだが、先日の一件で壊れた水泳場はまだ直っていない&曜と花丸で週末に考えた振付けを発表するため、自転車で三津海水浴場へと先行しているのだ。

「“かのん”って音の名前もいっぱいあるずら……」

 花丸はさびしそうに、自分が一つだけ提案したグループ名を口にした。

「音楽記号や曲調の単語なんかは、一通り使われてると思うよ」

「神様系もだいたいあるなあ」

「当然です。≪μ's≫――「文芸・学術・音楽・舞踏などを司る女神」の≪ムーサ≫に続くべく、神様や神話の人物の名前をつけるグループは多いんです。このアフターμ's時代の三年間の統計をとったサイトによると、去年デビューのグループのおよそ半数が神話系だったと言います」

「半数!?」

「すごい人気ずらあ」

「一時期、≪ブラッディ・エルジェーベト≫が頭角を現してきた時は、流れが変わると思ったんですけど」

「ち、≪血の伯爵夫人≫!? そんな堕天的な人いたの?」

「うん、でも本当にμ'sの直後だったから、散々比較されて、メンバーが登校拒否になったりして、潰されちゃって」

 今思えば、その世間の潮流にルビィも無関係だったとは思えない。それくらい、μ'sの影響力は大きかった。シーン全体があの九人の呪縛下にいたのだ。

「ぬー、≪ヘイムダル≫もあるなあ。別名は……≪リグル≫か。どれどれ」

「リグル? それ、ユーチュンに載ってますよ」

「ゆーちゅん?」

 ルビィはスクールバッグに乗せていた紙袋から、スクールアイドル情報誌≪ユースフル・チューン≫を出した。九人の女子高生が決めポーズをとっているグラビアページを開き、花丸に手渡して千歌に渡す。

「この人たちです」

「やっぱいるんだあ。ランクは――え? 福岡の新星で六一一位?」

「なのに浦女スクールアイドルの余裕、ただものじゃないずら」

「余裕じゃないよ! 梨子ちゃんは歌のレッスン厳しいし! 花丸ちゃんの振り付けは難しいし!」

「難しくないです。渡辺先輩は完璧にマスターしてます」

「曜ちゃんは特別なの!」

 花丸と言い合う千歌から雑誌を受け取った善子は、ページをめくってメンバーのバストアップを眺める。

「衣装は半手作りなのね。よくできてるなあ」

「それ、ほとんど既製品の魔改造だよ。ヨハネちゃんみたいに一から作ってないんだよ」

 ルビィが不愉快そうに指摘すると、善子は目をパチクリさせた。

「でも九人分揃えてるんだから、すごくない?」

「それはそうだけど、でもいくら揃えたってデザインはμ'sのコピーだし、曲だってμ'sの曲のチャンポンだし、ランクだって三桁の真ん中――」

「――ランク?」

 千歌が呟き、ルビィは言葉を切る。

「ルビィちゃん、ランクってなに?」

「え、えっと、夏の≪ラブライブ!≫には、パフォーマンス動画があれば県大会に出られるんですけど、冬の≪ラブライブ!≫は本戦一発なので、県のランキングでトップを穫らないと出場自体できないんです」

「え?」

「皆さんは静岡県枠なので、昨年度で言うと……一三五組の中でトップにならなきゃいけません」

「え、ウソ! トップに!? 私たちが!?」

「オラがトップ!?」

「って、千歌先輩、目指すは優勝じゃなかったの?」

「優勝なんて、そんな、ちかっちには荷が重いって!」

「あ、あ、あの、トップは冬の話で、あの……」

 前を見ると、ニコニコとこちらを見ているバスの運転手を鏡越しに目が合い、騒いでいるのは三人なのに、ルビィが恐縮してしまう。

 だからスクールバッグに押し込んだままの球体が、微かに振動していることに、ルビィは気付かない。

 

   *

 

 黒澤ダイヤが来客を客間に通した時、反対の障子が乱暴に開け放たれた。

「タク!」

 座布団に座る間もなく入ってきた黒澤家の現当主が、丸い顔を綻ばせて客人の肩を叩く。

「ご無沙汰してるぜ、リン兄さん」

 それに答えたのは、来客でありダイヤの叔父――黒澤琢朗だった。

「相変わらず黒いな。仕事してるのか?」

「兄さんこそ順調に肥えてるじゃないか。接待なんて俺の方が多いのにさ」

「諦めてないんだよ、僕は」

「内定したんだろ? 寿命が縮むだけだぜ」

「言っていろ。必ずひっくり返してやる」

 四四歳の琳太郎と、三八歳の琢朗は、顔立ちこそ似ている。だが、家庭を持って宗家の党首となった長男は、白い肌にふくよかな顎周りと体系をした、黒い袷の着物が馴染んだ初老となり、独り身で≪黒澤重工≫傘下のグループ会社を複数切り盛りする三男は、浅黒い肌に海水に痛んだ髪の毛、ビルドアップした肉体を覆う黒いシャツが似合う壮年のままと、内面も外見もまったく違う。

「しかし、何年ぶりだ? ここに寄るのは」

「五年じゃないか? ほら、松浦の兄ちゃんがさ」

「ああ……」

 琢朗は言葉を濁し、琳太郎も頷くに留まった。

 ダイヤも理解している。父の兄弟や若かりし頃の友人が、果南の父である松浦鏡一の葬儀ののちに、ここ沼津御用邸記念公園に集まったのを見ていたからだ。

「ではお父様、叔父様、失礼致しますわ」

「ああ」

「じゃあな、ダイヤちゃん」

 茶を運んできた使用人と入れ替わりに、ダイヤは外廊下に出た。

(ちゃん付けですか。それこそ五年ぶりですわね)

 と思っていると、廊下の角から現れた姿に目が留まった。

 浦の星女学院の制服を着て、ツーサイドアップにまとめた髪を左右に垂らすのは、ダイヤの妹のルビィだ。

 姉に気付いた彼女は、小さくお辞儀をしてから、小走りにやってきた。

「ただいま、お姉ちゃん」

「お帰りなさいませ、ルビィ。早かったのですね」

「うん、今日はルビィが役に立たない部分だったから。……お客さん?」

 客室の中に気配を感じたか、ルビィは声を落とした。

「ええ、琢朗叔父様ですわ」

「おう、ルビィちゃん!」

 柱に叩き付ける勢いで障子を開けた琢朗に、

「ピギィ!」

 ルビィはダイヤに抱き付くように隠れてしまった。

「おいおい、どうした?」

「申し訳ありません、ルビィは現在、男性恐怖症なのですわ」

「い、言わないでよう!」

「そうなのか? ちっちゃい頃は抱っこしてもらいに走ってきたのに」

「そ、そんなことしてないです」

 琢朗が面白がるようにルビィの顔を覗き込もうとするが、ルビィは叔父から逃げるようにダイヤの周りを回る。

「おいおい、勇気の石(ルビー)ちゃんが聞いて呆れるぞ」

「ルビィ、ちゃんと挨拶なさい」

「やめとけ、タク。しつこいと警備を呼ぶぞ」

 父に肩を掴まれたところで、叔父は追求をやめた。父は笑っていたが、冗談ではない態度だった。

「分かったよ。ルビィちゃん、また今度な」

 琢朗は頭を撫でようと手を伸ばしかけたが、それも諦め、父と共に障子の向こうに消えた。

「ルビィ」

「うう……。ごめんなさい、お姉ちゃん」

「謝るのは、わたくしにではありませんわ」

 涙目のルビィの背中を押し、外廊下を歩く。

 障子の向こうから、琳太郎たちのくぐもった声が聞こえてくる。

「どこまで進んでる?」

「あちらさんとは最後の調整中だ。来月にもプロトタイプが上がるだろう」

「よし、こっちは……」

 やがて声は遠ざかり、林が静粛する表通りの喧噪が、意識に戻ってくる。

「叔父さん、なんだったの?」

「わたくしも分かりませんわ。……ルビィ、血縁関係にある男性とは、普通に接していたはずでは?」

「え、そ、そうだっけ? ルビィ、覚えてないよ」

 ルビィは不思議そうな顔で見上げてきたが、

「そうだ」

 と思い出したように手を合せた。

「ルビィのボディガードさんたち、今月も、先月までの四人がいいんだけど、ダメ?」

「……急にどうしましたの?」

 ダイヤは首を傾げる。

「だから、ルビィのボディガードさんたち、変えないでほしいの」

「わたくしたちの一存では決められませんわ。黒総警の従業員が原則四箇月で異動になるのは、ルビィも知っているはずです」

「そ、そうなんだけど――」

「そもそも、あなたのボディガードは昨日すでに、交代されているでしょう」

「え、そうだったの?」

 分かっていないのに、先月の四人を要望したのか?

 ダイヤは抑えた鼻息を漏らし、ルビィの背中を軽く叩く。

「安心なさい、ルビィ。怪人に襲われる頻度の高いあなたのために、今期は腕利きを集めましたのよ」

「……うん」

 しょんぼり頷くルビィを見て、先月の四人にボディガード以外のなにかを求めていたのだろうか、とダイヤは心配になる。

「分かっているとは思いますが、ルビィ。ボディガードはあなたの友達ではありませんし、それ以上でもありませんわ。まして、あなたは黒澤家の人間。雇用者と被雇用者の形式を弁え、節度ある関係を心がけてくださいませ」

「分かってるよ、お姉ちゃん」

 ルビィは答えると、ダイヤから距離をとるように早足で歩き出した。

 ルビィの態度は不可解だ。彼女が求めるボディガードとの関係がどのようなものであれ、彼らは男性でもあるというのに。

「相変わらず、遠近感のおかしな男性恐怖症ですわ」

 ダイヤは焦点をルビィから廊下の先の林に移し、夕食までの時間の過ごし方を考える。

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