おはようございます、スノーです。あれから3日、算数の勉強会の時間がやってまいりました。
今日の天気は晴れ、汗ばむ陽気になるでしょう。
「ではまずは、1~10の数字のちゃんとした並び順を覚える所から始めましょう。」
「「「「「「「
どうしてこうなった。
あの後、復活したアームさんとガイドさんの必死の説得により、いくつか条件はあるものの、私が教えることをご主人様に渋々認めさせた。その条件とは次の2つ。いや3つに増えた。
1つ目は『ヒールさんを監視役として同席させる事』
夕食時にその話をしたせいか、何故かヒールさんだけでなく団員全員が参加希望してきた。
ガイドさん1人に任せていたことを、皆少なからず申し訳なく思っていたのと、学ぶということに憧れもあったらしい。
ちなみにご主人様は、他の盗賊団との首領会合が重なったので一緒にはいない。朝めっちゃ歯ぎしりしてた。
2つ目は『勉強にかかる費用は自分達で賄う事』
参加者の増加は費用も嵩むかもしれない、とガイドさんは渋ったが、課外活動にする事でその点を解決した。
わざわざ紙とインクを使わなくても、木の棒で地面に書けば良いんだよ。小石なんかを使えば見ながら覚えることも出来る。まさに一石二鳥というやつだ。
そしてお昼はピクニック!
私の二ヶ月の成果を見せてやるぜ!
それで最後の1つが……。
『後日、ご主人様と
というものだ。筆談でやれと?
というか二人きりはヤバい。非常にヤバい。
会合で盗賊団の今後に絡んでくる大事なやり取りをしているご主人様抜きで、皆楽しくピクニックなんてバレたら何されるか分からない!止めるつもりは無いけど。
「……
「ん、何か言ったかスノー?」
「え?あ、何でもないです。」
……おかしい。どうもあの一件以来、こうした考えが過ぎってしまう。
ご主人様ってそっち系の嗜好とかあるのかな?無いと信じたい。あの時も私が勘違いしてただけだし。
「それにしてもよ~、案外簡単なんだな!」
「ちょっと身構えてたが、思ったより楽だな。」
「拍子抜けだよな!」
おっと、勉強会に集中しないと。何々?簡単だって?ほ~う。ふ~ん。
ガイドさんとアームさんが少し苦い顔をしてるし、ちょっと痛い目を見てもらおうかな。
「では『ルート』さん『アイズ』さん『フット』さんは、次の段階にいってもらいますね。」
さぁ桁を増やすよ!
「え、な、何だこりゃ…?」
「んん…んん?」
「コイツとコイツが……あり?」
案の定苦戦している。ちなみにこの3人は盗賊団の偵察隊で、大体一緒に行動している年少組だ。
「さっき教えた『繰り上がり』をキチンと理解出来ていれば、ちゃんと解けますからね。」
まぁいきなり2桁+2桁=3桁の計算は厳しいとは思うけど。
日本で言うなら小学校入学したてから、半年すっ飛ばした位のレベルだ。しかも筆算はまだ教えていない。
そう考えるとガイドさんの努力は半端じゃない。
私だって筆算無しで9桁の計算をしろと言われたらかなり時間がかかる。それを誰に教わるでもなく、自力でやってのけたのだ。評価されてしかるべきだろう。
「……ダメだ、分かんねぇ……。」
「オ、オレも……。」
「ちょっとでこんなに変わんのかよ……。」
「そりゃそうだ。じゃなきゃガイドが報われねぇってもんだぜい。」
「そうねぇん。あの時のガイドは、ワタシ達の為に本当に必死だったもの。」
アームさんとヒールさんに諭されて、3人はハッとガイドさんに視線を向けて、申し訳なさそうな表情をしている。そしてそんな3人を仕方ないなぁという感じでガイドさんが頭を撫でている。
うん、大丈夫そうかな。
その間に私はピクニックの用意を進めとこっと。
「ぴくにっく…だったか?手伝うぜ、スノー。」
「ありがとうございます、ライトさん。」
「ワタシも手伝うわ。……さっきの、狙ってやったんでしょう?」
流石はヒールさん。私の目論見に気付くとは。
「感謝するわ。アナタが来てから、皆笑顔が増えたもの。」
「そうだな。野郎ばっかじゃ華がねぇからな。」
「あら、ワタシじゃ足りないって言いたいのかしらァぁあん?」
最後が完全に男になってますよヒールさん……。
開始直前にライトさんが吹っ飛ぶハプニングがあったけど、ピクニックは概ね成功。
私の自信作のサンドイッチは皆に好評だった。
その後は昔話で盛り上がったり、計算を使ったちょっとしたミニゲームをしたりして、第1回算数勉強会は大成功に終わった。
※※※
「ここはどうなるんだ?」
えっとそこは……カキカキ…ふみゅっ!?
「オイ、今は喋っていいと言わなかったか?」
「ご、ごみぇんなひゃいっ!」
だからほっぺ潰さないで!
「ったく。んで?」
「は、はい。ここはですね――」
勉強会が終わって、会合から帰ってきたご主人様を出迎えたのはいいんだけど、そのまま部屋まで連行されてしまった。そして今に至る。
正直、同日内に2回勉強会をやることになるとは思わなかったよ……。
でも凄い。マンツーマンで教えているとはいえ、たった1日で加減算をマスターしてしまった。
「……よし。これが出来りゃ、今後奴らとの取引が有利になりそうだな。」
「お疲れ様です。お水をどうぞ。」
「ん。……出来れば今日の会合の前にやれたらよかったんだがな。」
「ぅ……。」
「美味い飯を振舞ったんだって?俺抜きで?」
「こ、此方にもご用意はさせて頂きました!」
この勉強会が今日になった理由。それはこのサンドイッチにあるのだ。実はこの世界、サンドイッチ・ピクニックの文化が無いのである。
しかし課外活動に決まった時点で、私の頭はピクニック一色。なら昼食は当然サンドイッチでしょ!
と、訳の分からないテンションで厨房へ駆け込み、現代知識の再現に力を注いだ。
ただ私の料理スキルはド素人もいいとこ。サンドイッチ用のパンなんか存在しない為、代替のパンをどうするかで既に丸一日。具材の選定で更に丸一日。結果三日目にもつれ込んだのである。
そして間が悪いことに首領会合の日取りも前倒しになって重なってしまったのだ。ここでご主人様の堪忍袋の緒が切れ、二人きりの勉強会を条件に付け加えてしまったわけである。
「……まぁ、悪かねぇな。」
ほっ、どうやらサンドイッチはそれなりの評価を戴けた様子。今はちょっとでも機嫌を取らないと。
「……なぁ、スノー。」
「はい?何でしょう?」
「……いや、やっぱ何でもねぇ。」
んん、どうしたんだろうか。サンドイッチの具材に気になるものでもあったのかな?
「えっとこのサンドイッチの具材はですね、うみゅっ!」
「何でもねぇ、つったろ。つか興味ねぇよ。」
「しょ、しょうでしゅか……」
う~…さっきからほっぺ潰されてばっかり…って!
「ほーお、よく伸びるな。」
「ふぇぇ……」
好き勝手されてるよぅ…。でも止めてだなんて言えないし…。
「……(ゴクリ)」
「んにゃぅ!?」
痛い!つ、抓るのは…!
う…あっ!んっ…!んんっ……
「にゃ……ぁぁ……」
「…あ、ヤベ…。」
「…! ハァ…ハァ…」
解放されたけど…ほっぺ…熱い…。涙出てきた…。
でも何か、悪くなかった…ような……?
あれ?何で私、ちょっと気持ちいいとか思ってるんだろう?
「
「ご、ご主人様?お顔が赤いですけど、大丈夫ですか…?」
「う、うるせぇ大丈夫だよ!こっち見んな!」
バシンっ!
「ひゃぅん!」
理不尽ビンタ!ご主人様ってやっぱりそういう嗜好持ちなの!?
奴隷ってなんだっけ