狩りの夜、狩人は何を想う   作:naapatbx

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 これが即落ち2コマちゃんですか


第2話 狩人の夢

「う~ん、あと5秒・・・ん?」

 

 見知らぬ場所で意識が覚醒する。先ほどまでの室内とは違い、石と草の感触がする。風と共に草と花の匂いが流れてくる。

 

「また知らない場所か・・・なんか、こんなのばっかりだな」

 

 そう呟きながら立ち上がり、辺りを見渡す。

 

 倒れていた場所は石が並べられて作られた道のようで、道がない場所には、白い花が生えているようだ。奥には大きな家が見え、さらにその奥には、一際目立つ大樹が見える。

 

 そして辺りを見回すと、遠くのほうは白い霧のようなものが立ち込めており、その霧の中には何か塔のようなものが何本も建っている。そして、その景色は見渡す限り360度広がっているように見える。

 

「で、俺はどうしてこんなところにいるんだ?」

 

  そこまで言い、眠る前のことを思い出す。流石に今回は思い出せた。・・・正確には、()()()()()()()()()

 

 

 見知らぬ部屋で目覚めたことを。記憶を無くしたことを。獣に対しての、自分の無力さを。獣から逃げ回る恐怖を。そして、体をゆっくりと、()()()()()()()()()()()

 

「うっ!・・・がはっ」

 

 そこまで思い出してしまい、様々な感情の波に耐えきれずにその場で嘔吐してしまう。

 

 

 

 

 吐いたら頭がスッキリしたので、冷静に今の状況、特におかしい点を整理してみようかと思う。

 

 まず1つ目、どうして喰い殺されたはずの自分が、五体満足でいるのかということ。喰われた筈なのに体があるという現状の上、さらには衣服まで獣に襲われる前の綺麗な状態のようであった。

 

 これは『死後の世界だから』と言われれば納得の一言ではある。流石に、死後の世界にいってまで喰い千切られた痕だらけというのは誰も得をしないだろうとの判断だ。

 

 

 次に2つ目、吐瀉物の中に胃液以外の異物が入っていないように見えたということ。何かしら食べていれば、それらも消化しきれていない状態で出てくる筈なのだが、それらしき物が全くなかった。ちなみに、口内が酸味で溢れかえっているので、胃液を吐いたことは間違いなさそうである。

 

 これも『死後の世界だから』と言われれば納得の一言ではある。流石に、死ぬ前に食べていたものまではこちらの世界に持ち込めなかったのだろうという判断だ。

 

 

 最後3つ目、どうして知らない場所で倒れていたかということ。喰われた先は胃袋の中で、決して白い花が咲いていたり、大きな家があったりするような場所ではない筈である。流石に馬鹿でも分かる。

 

 やはり『死後の世界だから』と言われれば納得の一言ではある。流石に、死後の世界だとでも言われなければ説明がつかない。そもそも、このような幻想的な場所が現実世界にあるほうが不気味である。

 

 

 そこまで考えて、一旦落ち着いて考え直し、出た結論はこうだった。

 

「なるほど、ここは死後の世界か」

 

 至極、当然な答えであった。

 

「ということは、あの大きな家は・・・考えても仕方ない、とりあえず行ってみるか」

 

 これ以上は考えるよりも行動したほうがよさそうだ、という考えに至り、彼は大きな家へと歩みだす。しかしその顔は、()という概念を叩きつけられた後だというのに、何故かすっきりとしていた。

 

 

 

 家に向かう途中、やたら墓石のようなものがあったり、人間と同じ程の大きさの人形が打ち捨てられていたりしたが、特筆するようなことはなかった。

 

 家の扉の前に立ち、扉を叩く。中からの反応はない。続いて声を出しながら扉を叩く。・・・中からの返事はない。本当に中に誰かいるのか不安になってくる。

 

 しばらく様子を窺っていたが、結局家の中から人がいるような気配はなかった。上ってきた階段から下りながら、さてこれからどうしようかと考えていたとき、階段の中腹辺りから()()らが現れた。

 

「うわっ、あの時の白いの!?」

 

 例の夢の中に出てきた、白い()()かが、地面から生えてくるように現れたのだ。しかも3体。

 

「ま、またあの時みたいに何かするつもりか・・・そうなのか!?」

 

 言っている本人は、すごく逃げ腰である。そんな態度を見てか、白い()()か達は生えてきた地面からあるものを取り出す。

 

「ヒッ・・・手帳と、ペン?」

 

 ()()か達は、手帳とペンを取り出したかと思うと、3体が一斉にその手帳に何かを書き出したのだ。

 

「何やってんだ・・・あっ、書き直しだした」

 

 ()()か達が手帳に何かを書き出す。ちなみに手帳とペンは人間が使うものと同じサイズなので、ペンを抱えるように持ちながら何かを書いている。

 

 見知らぬ生物とはいえ、小さな人のようなものが、全身を使って一心不乱に何かを書いていく姿は、少し微笑ましいものがあった。そして、しばらく眺めていたところ、1体が書き終えたらしくこちらに手帳を見せてくる。

 

「えっと、何々?『私 は 使者 です』・・・あっ、自己紹介?」

 

 白い()()か、使者はそう聞かれると、コクコクと頷いて見せた。

 

「あっ、どうも・・・ん、そっちも書き終えたのかな」

 

 続いて、残りの2体もこちらに手帳を見せてきた。・・・ちょっと可愛いかも

 

「えっと、『ワタシ ワ シシャ デス』・・・これも自己紹介かな?それで、『わたし わ ししや です』・・・お、おう」

 

 そこまで読み終えると、使者たちは一斉に手帳のページを捲った。そしてそこには、少し違う字体でこう書かれていた。

 

『『『私たちは使者という存在です』』』

 

「いや最初にそれ見せようよ!?」

 

 今までの件は何だったのか。しかし、使者たちが満足げなポーズを取っているので、ちょっとやってみたかったんだろうなと考えることにした。(ちなみに表情は一切変わらない。)

 

 

 そこまで考えて、とあることに気がつく。自分の名前がないのだ。

 

 正確には、自分にもちゃんとした名前があったはずなのだが、当然そのことを忘れているため新しい名前を考えないといけないのだ。

 

「名前・・・う~ん」

 

 そう呟くと、使者たちは小首をかしげ、また手帳に何かを書き始めた。何なのだろうと思いしばらく待っていると、3体が同時に手帳を開いて見せてきた。

 

「何何?『狩人様 は』『カリウド サマ トイウ』『なまえ でわ ないゐ ですか』・・・連携力すごいな」

 

 最後の使者に、字を間違えていることを指摘しようかとも思ったがやめた。今はそのようなことよりも、もっと重要なことを言われたような気がしたからだ。

 

「『狩人』って何だ・・・」

 

 そこである。自分はどうしてここにいるのかも分からず、どうして病室のような場所にいたのかも分からず、挙句に記憶さえないのだ。それなのに、いきなり『狩人様』と言われて、はいそうですかとはいかない。だからと言って、記憶があった頃は狩人だったかと言われると、それを否定できる根拠も無ければ、肯定できる根拠も無い。

 

 

 さてどうしたものかと熟考しようかと思った矢先、使者の1体から手帳を差し出される。

 

「えっ、何・・・くれるの?」

 

 使者はその言葉に頷いた。どうやら、当たっていたようだ。そして、恐る恐るその手帳を受け取る。

 

「あ、ありがとう」

 

 何故差し出されたのかはいまいち分からないが、とりあえずお礼を言う。それを聞いて満足したのか、使者たちは地面に潜るようにきえてしまった。

 

 

「手帳だし、中を読めってことなのかな・・・」

 

 適当にページを捲っていく。ほとんどのページが白紙であったが、何か書かれたページが見え、手帳を捲る手が止まる。

 

「『後輩狩人へ。詳しくは次ページから』・・・なんだこれ」

 

 明らかに違う字体でそう書かれているページがあった。元の手帳の持ち主のものだろうか。とりあえずはページを捲る。

 

「えっと『獣狩りの狩人としての基礎知識』・・・獣狩り?」

 

 『狩人』といえば獣を狩るのが基本だとは思っていたのだが、このような書き方をするということは、獣以外を狩る狩人もいるということらしい。・・・他は何を狩るのかというのは考えないようにしよう。

 

 

 手帳には、様々なことが書いてあった。この場所は、『狩人の夢』という場所らしい。そして、墓石のようなものに手を置き、知っている『灯り(ともり)』の場所まで転送できるらしい。さらに、死んでもこの狩人の夢に送られるだけで済むということらしい。・・・便利すぎない?

 

 そして、狩りのコツについてまで書かれている。いろいろと書かれているが、要訳すると「ヒット・アンド・アウェイを心がけて、銃で隙を作って内蔵を抉り出そう!」ということらしい。内蔵って・・・

 

 

 そこまで読み終えると、使者たちが地面から出てくる。それぞれが、斧、杖、鉈のようなものを持っている。人間が使うように設計されているようで、使者たちの体にはかなり大きい。

 

「えっと、それが『仕掛け武器』って奴か?」

 

 それを聞き、使者たちは頷いている。そして、使い方を教えているかのように、手に持っている仕掛け武器を振り回しだす。当然だが、体全体を使って振り回している。ちょっとかわいい。

 

 使者たちの愛らしい姿はさておき、先ほどまで読んでいた手帳に再び目を落とす。そこには、使者たちから貰える仕掛け武器の説明まで書いてあった。

 

 

 

『獣狩りの斧』

 斧の特性はそのままに、変形により状況適応能力を高めており

 重い一撃「重打」と、リゲイン量の高さが特徴。

 

 1体1での殴り合いから集団戦までこなせるぞっ!

 とても重く、ある程度の筋力が必要になるから気をつけよう!

 

 

『ノコギリ鉈』

 変形前は人ならぬ獣の皮膚を裂くノコギリとして

 変形後は遠心力を利用した長柄の鉈として、それぞれ機能する。

 

 とても軽いので、ヒットアンドアウェイをしやすいぞ!

 ただし、変形前はリーチが短く、変形後は遠心力で振り回されやすいぞ!

 

 

『仕込み杖』

 刃を仕込んだ硬質の杖は、そのままで十分に武器として機能するが

 仕掛けにより刃は分かれ、まるで鞭のように振るうこともできる。

 

 扱いが難しいかもしれないけど、近、中距離をこれ1本でこなせちゃう

 的確に弱点を狙える技量が必要になるぞ!

 

 

 

「・・・どれがいいんだろう」

 

 3本の武器について、かなり分かりやすくまとめられていた。しかも、変形前と後の挿絵つきで。この手帳を持っていた狩人は絵が上手かったようだ。・・・やけに感嘆符(ビックリマーク)が多い気がするのは気のせいだろう。

 

 まず、斧は無いと思っている。『リゲイン』というのはどういうものかは分かっているが、つまりは「獣とノーガードで殴りあう」イメージで間違ってはいないと思う。そんなことはしたくないので無しだ。

 

 そうなると鉈か杖なのだが、手帳の挿絵を見る限り、鉈は「変形前の、相手の懐に潜り込んでの連撃」と「変形後の、遠心力を生かしての重い一撃」が得意なようだ。

 

 それに対し、杖は「変形前の、軽く隙の少ない連撃」と「変形後の、広範囲を攻撃できる攻撃」が得意なようだ。そこまで考えると、選択肢は2つに1つだった。

 

 

「えっと、この『仕込み杖』を貰おうかな」

 

 正直、狩人が狩る『獣』がどういうものかを想像できない以上、無闇矢鱈(むやみやたら)に近づくことが恐ろしいのだ。()を経験してしまった以上、これ以上は経験したくないと思ってしまったのだ。結果、広範囲を攻撃できる仕込み杖を選んだのだ。

 

 仕込み杖を受け取ると、使者たちはまた地面に潜るように消えてしまったようだ。しかし、今度はすぐに現れた。今度は、銃を2本もってきたようだった。・・・2体がそれぞれ銃を抱えているので、1体は手持ち無沙汰になっているようだ。

 

「それは・・・『短銃』と『散弾銃』か?」

 

 何も持っていない使者が頷く。そして、どちらがいいですか?というようなジェスチャーをとった。そこまで見て、また手帳に目を落とす。

 

 

 

『獣狩りの短銃』

 短銃は散弾銃に比べ素早い射撃が可能なため、迎撃などに適する。

 

 威力は期待するほどでもないので、相手の体制を崩したり、相手の攻撃を迎撃したりする目的で使おう!

 

 

『獣狩りの散弾銃』

 衝撃により獣のはやい動きに対処する部分も大きく

 特に散弾を用いるこの銃は、当てやすく効果が高い。

 

 密着していれば威力も期待でき、さらに広範囲を攻撃できるため、相手への威嚇目的でも使えるぞ!

 

 

 

「う~ん、これは『短銃』がいいのかな」

 

 仕込み杖を選んだ理由を考えれば当然である。反動が大きい散弾銃でわざわざこちらが隙を作って、その間に攻撃されたりなどしたらたまったものではない。短銃のほうも外した場合は隙になるだろうけれど、そこそこの連射は利くようなので問題は無いだろう。

 

 

 使者から短銃を受け取り、改めて武器の確認をする。

 

 仕込み杖は装飾が少ない金属製の杖のような見た目をしている。だが、杖の表面をよく見ると、かなり鋭利な刃物のようになっている。これで切りつけて攻撃するのだろう。そして、持ち手の部分にスイッチのようなものが取り付けられている。これを押すことで止め具がはずれ、鞭のような姿に変わるのだろう。

 

 短銃のほうは、多少ではあるが銀の装飾が施され、グリップは誰の手にも収まりやすいように調整が出来るよう工夫されている。性能としては中折式の単発銃で、自らの血を混ぜた水銀製の弾丸を使用する特注品のようだ。1発ごとにリロードが必要なのかと思いきや、狩人の夢で1発補充しておけば、後は勝手に手持ちの水銀弾が短銃の中に補充されるらしい。

 

 手帳には、「血の意思の技法により、夢の中にある道具を手元に呼び寄せたり、銃のリロードの手間が無くなったり、輸血液で傷を癒したり、他にも色々とできる」らしい。『血の意思の技法』って何だ・・・。兎も角、リロードに関しては悩む必要は無いようだ。そうなると、かなり使い勝手がいいのではないだろうか。

 

 

 そのようなことを考えながら、右手に杖を、左手に銃を持ち、軽く武器の使い心地を確認する。

 

 仕込み杖のほうは、思っていた以上に軽いというのが第一印象だった。少し振ると、風を切る音が小気味いい。しかし、やはりというか、決定的な攻撃力はあまり無いようだ。強いてあげるとすれば、杖の先端による刺突攻撃を行えば、かなりのダメージを期待できそうだということか。

 

 次は、スイッチを押して鞭のような形状に変形させてみる。こちらもやはり軽めで、一撃の攻撃力は少な目と見て間違いはなさそうだ。それでも攻撃範囲はなかなかのもので、一般的な剣の倍以上の範囲を攻撃できるようだ。

 

 そこまで確認して、杖の状態に変形させる。戻すときには、地面や相手などに、杖の先端での刺突攻撃を行えば、止め具が嵌って元の杖に戻るようだ。そして、そこまで確認して一言。

 

「これ・・・凄く使いやすいぞ」

 

 具体的には、想像の5倍は使いやすい。それくらいには使い勝手がよいのだ。杖を振るときに力がほとんど必要ないこともそうだが、それ以上に非常に手に馴染む。作り手の技術力の高さが窺える一振りだった。

 

 

 短銃のほうも試しに発砲してみようかと思ったが、水銀弾を所持していないことに気がつく。すると、使者が水銀弾を10発だけ渡してきた。ありがたいけれど、試し撃ちだけだったので3発もあればよかったのだが・・・兎も角、水銀弾を短銃に込める。当然、装填数は1発だ。

 

 まずは1発目、発射時の反動はかなり少なく、狙った場所にしっかり着弾するようだった。

 

 続いて2発目、射程はそこそこで、仕込み杖の鞭による攻撃の倍ほどまでが、有効射程範囲と見て間違いないだろう。

 

 最後に3発目、威力を見てみたかったのだが、試しに撃てそうなものが周りには見えなかった。そこは実戦で試すことにする。家の外壁に撃ち込むという案は、流石に失礼極まりないのでやめておこう。

 

 

 短銃の性能に、血の意思の技法によるリロードも確認できた。ズボンとベルトの間に短銃を差し込み、近くにあった墓石に触れる。すると頭の中に、始めに目覚めた診療所のイメージが浮かぶ。恐らくこれが『灯り(ともり)』へのだろう。

 

「さて・・・行くか」

 

 そう意気込み、診療所のイメージに集中すると、狩人の意識が薄れていった。




 獣狩りの夜が(次回から)始まります。ようやくです・・・

 小説用に、いくらか独自解釈を入れました。中折式の短銃なのに連射できるのも、ポケットが四次元に繋がっているくらいに収納力が高かったりするのも、きっと血の意思の技法って奴のしわざなんだ!

 月曜日の魔物が来る前にもう1話あげたいです(小声)
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