狩りの夜、狩人は何を想う   作:naapatbx

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 平和になったヤーナム市街に住んでみたいという狩人は多い筈。

 というか、フロムの街や城はどこもかしこも綺麗で困る。ブラボは夕日や月を眺めながら武器をガシャガシャしてるだけで時間を潰せるくらいには、素晴らしい雰囲気だと思います。


第3話 獣狩りの夜が始まる

 狩人の意識が覚醒する。そこは、見覚えのある診療室

 

 ・・・の扉を出てすぐの部屋の中。

 

「・・・んん?」

 

 イメージとしては、目が覚めた診療室だったと思ったけれど・・・まあ大差ないような気もしてきたので、気にしないことにした。

 

 

 そのまま部屋を出てすぐ、診療台がいくつか置かれた部屋の中央辺りに、()はまだいた。相変わらず、何かを貪っているように見える。

 

 

 獣が見える位置まで移動した後、夢で読んだ手帳に書いてあったことを思い出す。

 

「1つ、『先制攻撃、不意打ちは戦術の基本。先手に回り、戦闘を有利に進めろ。後手に回るな、常に周りに警戒しろ』だったか・・・」

 

 本当に初心者狩人向けのことばかりが書いてあった気がするが、今では確かに役に立つ。最初は逃げることばかり考えていて、背中から攻撃を受け、そのまま・・・これ以上思い出すのはやめよう。

 

 ともかく、あの手帳の半分ほどは狩人としての知識や獣狩りのコツなどが網羅されていた。狩人の夢で読んでおいたが、全てが頭に入りきっているとは思っていない。次の灯りまで行ったら、夢に戻って復習をする予定だ。

 

 

 そこまで再考し終えると、頬を平手で叩き、気合いを入れなおす。自然と右手に持つ杖に力が篭る。記憶が無くなってから初の獣狩りに、緊張が隠せない。

 

「よし、行くか!」

 

 台の影から飛び出し、獣に向かって一気に駆け出す。

 

 しかし、獣まで後半分というところで(カラ)の薬瓶を蹴り飛ばしてしまい、獣に気がつかれてしまった。それでも、狩人は止まらない。

 

 

「4つ、『常に平常心であれ』ッ!」

 

 そう叫びながら獣に飛び掛り、杖を横なぎに振るう。獣は突然のことに回避が遅れ、顔面に杖の殴打を受ける。

 

 しかし当たり所が悪かったのか、獣は体制を崩すことなくそのまま後ろに跳び、戦闘態勢に入る。こちらも杖を鞭に変形させて相手の攻撃に備える。

 

 すぐに獣がこちらに跳びかかってくる。しかし、狩人はこれを左斜め前にステップすることで回避する。そして、すれ違いざまに鞭による攻撃を獣の右後ろ足、スネの辺りに叩き込む。

 

 そしてそのまま反転し、獣のほうに向き直す。今度は多少は効いたようで、獣は体勢を崩していた。獣はすぐに体勢を整え直し、こちらに振り向く。

 

 

「5つ、『前に回避しろ』・・・これはいけるぞ」

 

 例の手帳に書かれていたことをぶっつけで実行しているが、確かにこれはすごい。

 

 知識として身に着けてただけでここまで違いが見えてくる。自分1人では絶対に実行できなかった戦法、気がつけなかった戦法など。しかし、獣狩りの狩人として生きていくには『基本』となること。

 

 あの手帳の元の持ち主は、さぞ優れた狩人であったのだろうということが、今の一瞬の攻防で窺えるほどだった。

 

 

 体勢を整え直した獣との睨み合いが続き、痺れを切らした獣が再び攻撃に移る。

 

 今度は、こちらに覆いかぶさるように、両前足を振り上げながら跳びかかってくる。こちらは待っていましたと言わんばかりに、獣の右後ろ足を狙い短銃を発砲する。

 

 先ほど攻撃したスネの辺りに水銀弾が直撃する。やはりというか威力は大して無いように見えたが、相手の体制を崩すには十分だった。バランスを崩した獣は攻撃の勢いを殺せずに、その場で大きく態勢を崩す。

 

「俺の・・・仇だ!」

 

 大きく体勢を崩した獣に対し、好機と見てステップで近づく。そしてそのまま眼球目掛けて、鞭を杖に変形させながら突き刺す。杖はそのまま眼球を突きぬけ、脳を貫く。

 

 獣は一瞬だけ抵抗したように見えたが、ビクンと体を震わせ、そのまま事切れた。初めての獣狩りは、成功に終わった。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・6つ、『銃で相手の体制を崩せ』・・・これで俺も狩人初心者かな・・・ふう」

 

 そういいながら、獣の頭から杖を引き抜く。杖は血で汚れ、肉がこびりついていたが、血振りの容量で杖を振るうと、血や肉が綺麗に振り落とされた。つくづく凄い武器だと感心する。

 

 

 感心していると、自分の体内に何かが流れ込んでくるような感覚に陥る。突然のことで驚いたが、冷静に考えるとすぐに答えに辿り着けた。

 

「あー、これが『血の意思を得る』ってことか・・・」

 

 手帳に書いてあったことの1つだった。どうやら、獣を狩ると『血の意思』というものを得ることが出来るらしい。そして、この血の意思を集めると狩人の夢で様々なことが出来るらしい。

・・・できれば具体的に書いてもらいたかった。

 

 

 そこまで考えると、とあることを思い出し周囲を見渡す。そして、目当ての物を発見する。それは血痕のように見えるが、周りに散らばった獣の血とは違い、明らかに違う、何故か強く惹かれる()()があった。

 

「あった。これが、俺の落とした血の意思か」

 

 そう言い、血痕に手を差し伸べる。すると、自分の中に血の意思が流れ込んでくる感覚に陥る。そして、先ほどの血痕に強く引かれる気持ちは無くなった。

 

 狩人は夢に戻るとき、灯りを経由しない限りは血の意思を持ち込めないのだという。なので、死ぬとその場所に血の意思を全て落としてきてしまう。さらに、はやく回収しないと血の意思が劣化したり、他の獣に拾われてしまうらしい。

 

 詳しくは手帳に書かれていなかったのでよく分からなかったが、要するにサイフを落とす感覚らしい。自分はサイフを落とす感覚というものを覚えてはいなかったが・・・

 

 

「第一関門突破か・・・とりあえず病院を出よう」

 

 とても苦労したように思えたが、まだ病院を出て街にすら出ていない。獣狩りはこれからが本番だと気を引き締めなおし、先を目指す。

 

 部屋を出るとそこは玄関前広間のようで、玄関近くの棚に輸血液と水銀弾があった。誰もいないようだし、貰っていってしまうことにした。これは大収穫だとホクホク顔で玄関を開ける。気を引き締めた意味はあまりなかったようだ。

 

 

 扉を開けた先はいくつかの墓石が並んでいた。恐らく、この病院で死んだ人達のものだろう。しかし、死者を哀れむ時間は無い。獣狩りを全うし、青ざめた血を手に入れる。その目的を逸早く達成するためにも先へ進む。

 

 正面と側面に鉄製の柵扉が見える、側面のほうは内側から鍵がかけられていたようで、墓地が見える。

 

 正面側は鍵がかけられておらず、外に街並みが見える。恐らく正面が市街と病院との境だろう。柵扉はどこか錆びているのか、かなり力を入れなければ開かなかったが、なんとか人1人分だけ空けてその隙間から外へ出る。

 

 

「・・・うわ、すっげ」

 

 ヤーナム市街を一言で表現すると、『高低差が激しい街』だった。後から聞いた話だが、獣は梯子を登れない。それを踏まえて、梯子を利用した立体的な建造を繰り返していった結果だそうだ。

 

 遠くに見える橋と周囲の高い建造物、そして鮮やかな夕日が美しい。橋の向こうのほうから時折聞こえる、鐘の音が街に響く。それを聞き届け、狩人は市街の探索を始める。

 

 

 曲がり角の向こう側から、市民が現れた。左手に斧を持ち、右手に松明を持っている。ソフトハットを目深に被り、手や顔に包帯を巻きつけている。第一村人発見である。

 

「えっと、こんばんはー」

 

 こちらから声を掛ける。何か、獣に関する情報が聞けるかもしれないと思ったのだ。しかし、市民がこちらに対してとった反応は予想外のものだった。

 

「失せろ、失せろっ!」

 

「ええっ!?」

 

 あまり友好的ではなさそうだった。こちらに悪態をつきながら、松明を振りかざしてくる。自分は何かしたのだろうかと思いながら、杖を鞭に変形させ、短銃を正面に構える。とりあえずいつでも戦える準備はしておく。

 

 

「呪われた獣め・・・全部、貴様のせいだ!」

 

 先に仕掛けたのは市民のほうからだった。こちらに走りよってきて、松明を振り回す。控えめにも攻撃とは言えない様なお粗末なものだったが、攻撃のつもりだったのだろうか。

 

 こちらは1歩下がり、鞭で帽子を下から弾くように攻撃する。威嚇のつもりだったのだが、市民は回避できずに顔に一撃を受けてしまう。

 

 

 顔に攻撃を受けた市民が、こちらを睨み返してくる。帽子を弾いた今、市民の顔面を直視してあることに気がつく。

 

「け、獣か・・・?」

 

 人の身としては明らかに毛深すぎるのだ。さらに口元からは牙のようなものが見え隠れし、全体的に獣のような印象を受ける。それを隠すための包帯と帽子だったのだろうと、今なら理解できる。

 

「獣だっ・・・貴様は呪われた獣だ!」

 

 そう叫び散らしながら市民がこちらに松明の火を向ける。その瞳に生気は無く、瞳孔が崩れ、蕩けきっているように見える。

 

 

「まさか・・・獣って、元は人間なのか?」

 

 そう呟きながら、市民・・・もとい、『獣』に対し鞭を構えなおす。獣狩りの夜は、まだ始まったばかりだ。




 おおっと狩人君、ここで綺麗なヨセフカさんを見事にスルーっ!
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