ダンジョンへ行かずに恋人と過ごすのは間違っているだろうか?   作:翠星紗

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恋人の嫉妬におびえるのは間違っているだろうか

今回の作戦、招聘状は伯爵夫妻2名のみ。伯爵の護衛で入ろうにも事前に申請していなければ人数を増やすことは出来ない。シルが行きたがっている以上、どちらかがはずれなければならない。

どうしたものかとリューとカイトが考えていると、スススゥ-…っとカイトに近づくシル。何事かと彼女を見ると……

 

 

「それじゃ♪ カイトさんが夫で私が―――」

 

「シル。いくらあなたでもそれ以上は言ってはいけない」

 

 

今まで聞いたことが無いくらいに殺気の籠った声を出してくる目の前のエルフ。

顔は無表情で瞳に光がない。まるで人形かのように瞬きもせずにシルを見つめるリューに、目の前の二人はギョッと体を強張らせた。

 

 

「っと、言うのは冗談でカイトさんには今回お留守番になってもらいます!!」

 

コクコク!!

 

 

流石のシルも慌てたようにすぐさま言葉を訂正する。それに同意するかのように何度も頷いて同意して見せるカイト。

この冗談は二度とやらないと決めたシルであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

なんとかリューが正気に戻り。

 

 

「先ほどはやり過ぎてしまいました…」

 

 

自らの失態を思い返して気まずそうに謝ってくるリューに対して、苦笑いなカイト。

ただ、元凶である彼女は特に気にすることなく。

 

 

「ううん。それより、リューにはこの衣装を着て貰おうと思うの!!」

 

 

ドドン!!っと、何処から取り出したのであろう数着の男物の衣装がベットの上に並べられていた。

何処から出した?と、カイトはニコニコ顔のシルを見つめた。

 

 

「どこから出したんですか?」

 

 

流石のリューも軽く引いていた。

 

 

「それは重要なことじゃないの♪」

 

 

ベットに置かれた一着のタキシードを掴んでは楽しそうに笑顔を見せるシル。

その笑顔に何も言えずリューも言葉を詰まらせる。

カイトはベットに置かれた数着の衣装を見て、疑問が浮かび上がった。置かれている衣装すべてが自分のサイズに合わない、それどころかリューに合わせて作られている。

もし、ここに来る前から彼女がこの展開を予想……いや、確信していたのなら?

 

カイトは目の前でリューを着せ替え人形にして遊ぼうとするシルに視線を向けると彼女も気づいた。

 

 

「それじゃ、服が決まるまでカイトさんは外を散歩してきてください♪」

 

 

またも素敵な笑顔でとんでもないことを言いだす彼女にカイトは驚きの表情を見せたが、言葉を描く間もなくシルに背中を押されて部屋を出されてしまった。

閉められた戸を見つめながら”やるんならシルの部屋でやってくれよ”と、軽い悪態を付きたくなりつつもため息で我慢したカイトは頭をかいて部屋をあとにした。

中からリューの呼ぶ声が聞こえたが、確実に入ることは出来ないだろう。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「貴方から訪ねてくるのは珍しいですね」

 

『ちょっと調べて欲しいことがあってね』

 

 

部屋を出されたカイトはヘルメス・ファミリアのアスフィを訪ねていた。深夜に尋ねたことで用件だけを書いた手紙を扉に挟んで戻ろうとした際、扉が開きアスフィが姿を現したのだった。

流石に団員を起こしてしまう恐れもあったため、屋敷の外で話している。軽い会話を重ねた後、アスフィはカイトの書いた手紙に視線を移した。

全て読み終わった後、彼女の口からは軽いため息が漏れる。

 

 

「やはり私の忠告は聞き入れられなかったようですね」

 

『……ごめん』

 

「いえ。それより、このエルドラド・リゾートの経営者……テリー・セルバンティスについて調べて欲しいですか」

 

『難しいのは重々承知だが…頼まれてくれないかな?』

 

「……正直、この件に関しては私も関わりたくはありません。危険すぎるんです」

 

 

返された手紙をカイトは静かに受け取った。

確かにそうだ、治外法権の娯楽都市―――その中でも最大賭博場ともなれば話は別だ。

彼女にはヘルメス・ファミリアの団長だ。このような危険な依頼は安易に受けれるはずがない、ファミリアに迷惑をかけてしまう。

これ以上彼女を困らせる訳にはいかないと、カイトは”ありがとう”と告げてその場を去ろうとした。

 

 

「ただ、貴方にまだ借りを返せていません。主神を救っていただいた借りを」

 

 

ベル・クラネルたちの救出時に現れた階層主ゴライアスと戦った時のことを言っているのだろう。

彼女の方を振り向くとこちらに一通の封筒を差し出していた。

カイトが封筒を受け取ったのを確認するとアスフィは屋敷に戻って行く。

 

 

「貴方たちが賭博場に張り込もうとしていたのは知っていました。私にできることはここまでです」

 

 

アスフィが屋敷に入り扉が閉まるまでカイトは彼女に頭を下げた。パタンと戸が閉まる音と”気を付けてください”と彼女の声を最後に聞いて、カイトは受け取った封筒を開け、中身を読んでいく。

 

 

『―――ッ!?』

 

 

手紙の内容にカイトは息を呑んだ。

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