ダンジョンへ行かずに恋人と過ごすのは間違っているだろうか?   作:翠星紗

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仕事が忙しくて手を付ける暇がありませんでした。今回はカイトとリューの絡みはありません。あしからず!!


ダンジョンで助けた冒険者が弟のように懐いているようだが間違っているだろうか?

娯楽都市最大賭博場”エルトラド・リゾート”

他国から来た貴族、王族のご子息など多くの招待客がこのカジノで金をばら撒く。貧乏人には無縁の世界。しかし、ある条件を満たせば一般人でも商人でも冒険者でさえこのエルドラド・リゾートに入ることが許される。

 

それが……

 

 

「よくこんなカードのために頑張ってねぇーモルッち」

 

 

ルイの手の中に輝く一枚のカード。金色に輝き綺麗な装飾が施されたそれは招待客とは別に娯楽都市に入るための別の切符。第三等級(ブロンズ)から始まり、第二等級(シルバー)第一等級(ゴールド)となる。

等級ごとに娯楽都市に入れる施設は制限されるが、ゴールドにもなると全ての施設が利用可能になる。しかし、そこに至るまでには多くの金を湯水の如く使わなければならない。

そんなカードをモルドたちは所持していたのだ。いつも肌身離さず持っているゴールドカードだがエルドラド・リゾートに入る際に取り出した瞬間、ルイが奪い取ってマジマジと眺めていた。ほへぇーっと、興味があるのかないのか表情で眺める彼にモルドは顔を青ざめる。

 

 

「早く返せ! それを手に入れるのにどれだけの金が……」

 

「へぇ……別に要らないから返すわ」

 

「投げんじゃねぇ!!」

 

 

興味が無くなり手にあるカードを投げ捨て施設内で面白いものがないかキョロキョロと辺りを見渡し歩き出していく。

モルドとスコットは投げ捨てられたカードを慌てて拾い傷がないか熱心に眺めて無事なのを確認すると胸を撫で下ろす。カードを胸元にしまい、先ほどまでルイがいた場所を睨みつけた。

 

 

「ったく。あのマッド・サイエンティストめ」

 

「にしてもよ、あいつ放っておいていいのかよ?」

 

「ほっとけ。あいつがいると何されるか分かったもんじゃねぇ」

 

「けどよ……あいつが何かしたら、ここに連れてきた俺たちのせいにならないか?」

 

「………」

 

 

スコットの言葉にモルドは動きを止めて最悪の状況が頭に浮かんだ。この場に飽きたマッド・サイエンティストが騒ぎを起こしたら、彼を連れてきた自分たちのせいになる。最悪の場合、ゴールドカードの剥奪。

先程よりも見る見る顔が青ざめ、冷や汗が流れる。

数秒固まっていたモルドにもう一度声を掛けようとしたスコット。口を開いた瞬間、モルドは振り返り彼の肩を掴み顔を近づけてきた。

 

 

「あのマッド・サイエンティストを探せ……俺たちの今までの努力が!!」

 

「おう!!」

 

 

二人は行方をくらましたルイを探すためカジノ内を走り出す。周りの客は何事かと見つめ、モルドたちを見て品がないと嘲笑する姿が見られたが、今のモルドたちには関係なかった。

そんな慌ただしい三人を静かに見ていたカイトとベル。気絶したガイルの服を借りて施設内に入り込んだカイトだが、嵐のように目の前から去って行った彼らに呑まれていた。

 

 

「どうしましょ、カイトさん」

 

『……とりあえず、中を見て回ろうか』

 

 

苦笑いしながら声を掛けてきたベルに文字を綴り中を見て周ることにした。

煌びやかなドレスに身を纏い、輝く宝石は淑女を彩る。彩られた淑女をエスコートする紳士。カジノに一喜一憂する招待客たち。

見るもの全てが新鮮なベルは圧倒されたようで口が開く。それを見たカイトはクスクスと笑い、ベルの頭をクシャリと撫でる。

急に頭を撫でられて驚いたようなベルだったが、周りの光景に当てられて呆けていたことに気づき少し恥ずかしそうに笑みを見せた。

カイトはそんな彼にまた笑みを見せ頭を軽く叩く。ベルにはそれが”気にするな”と言われているようで、まるで弟のような扱いにどこかむず痒い感覚を感じた。自分よりも背が高く、落ち着きのある大人。

以前、神様と一緒に自分たちの救出に来てくれた時には驚いたが、突然現れた階層主にリューと共に戦う姿に見惚れていた。

前を歩く彼の背中を見つめていると、突如足を止めてある一転を見つめていた。何を見ているのだろうと視線を向けるとそこには恰幅の良い男性とひげがよく似合う細身の男性が話している。どうしたのか口を開こうとした瞬間、カイトの人差し指で口を添えられた。それから指で文字を綴っていき…

 

 

「こ、こで……まってて?」

 

 

読み上げるとカイトは静かに頷き、またベルの頭をクシャリと撫でた。急に頭を撫でられたことで少し驚いたが、彼はそれ以上何も語らず。静かに男性たちのもとへ歩いて行った。

急に一人残されたベル。なぜ、彼が去って行ったのか。そもそも、彼はここに何しに来たのか?

それさえも聞かされていないベルにとっては謎ばかりだ。頭の中で整理が追い付かない。けど、分かっていることは一つある。

 

 

「あの……ここで一人にされても僕はどうすれば良いんですか?」

 

 

元々、モルドたちに以前の詫びということで無理やり連れてこられたカジノ。ファミリアの仲間はフラフラと消え去りモルドとスコットは彼のお守。ガイルは馬車で気絶しており、ガイルのタキシードを着て一緒に来たカイトは自分を置いていく始末。

一人になった途端不安が込み上げて来て、少しずつ焦りが見え始め…

 

 

「……ベルさん?」

 

「え?」

 

 

心臓がバクバクとなり始めた時に耳に届くのは聞きなれた女性の声。こことは違う聞きなれた冒険者の笑い声が響く酒場で働く少女の声。そんなはずない。ここは娯楽都市にあるグランカジノだ。

聞こえるはずのない少女の声を辿る。ゆっくりと振り返るとそこには―――

 

 

 

 

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