ダンジョンへ行かずに恋人と過ごすのは間違っているだろうか?   作:翠星紗

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書いて即投稿。
これが俺のスタイル!


誰かと仲良くする恋人に嫉妬するのは間違っているだろうか?

「いやぁー、経営者(オーナー)は羨ましいですな。多くの美女を見の周りに置いているんですから」

 

「全くです。少しは私達にもそのお相伴にあずかりたいところです」

 

 

 

カジノに併設してあるバーで楽しそうに話に華を咲かせる男たち。カイトは彼らの話が耳に入りベルを置いてバーカウンタで一人カクテルを頼み会話に集中する。

身分が高いはずなのに笑い方はゲラゲラとあまりに品のないことだ、と肩を竦めながら彼はひとくち酒を口にする。ベルくんを連れてこなくてよかったと心から思った。

すると細身のひげ紳士は手に持つグラスを傾け、楽しそうに恰幅の良い男性に話しかける。

 

 

「しかし、その美女たちを拝むにはあの扉の先に行かなければなりません。ゲイルリィッヒ公爵殿が羨ましいですな」

 

「ワハハ! いえ、なにあの時は勝っていたのでオーナーの目に留まったのでしょうな!!」

 

「いえいえ、なにを―――」

 

 

そこからは貴族同士の社交辞令ともいわれる話し合いが長々と続き、カイトは開いたグラスを返して席を離れた。彼らの言うことが正しければ、入口とは別にオーナーのお眼鏡にかなった人が連れられる部屋がある。そして、そこに彼が財力に物を言わせて集めた女性たち(コレクション)がいるはず。さらに扉の前には警備する人間を配置され、いまカイトの目の前でガネーシャ・ファミリアが警備しているような部屋のはずだ。

 

 

「あなたが見つめる先は貴賓室(ビップルーム)です。あまり眺めていると怪しまれます」

 

 

カイトに近づいた一人の紳士は二人だけに聞こえるように小さい声で話しかける。いや、紳士に扮した美しいエルフだ。

彼女を見てカイトは少し苦笑いを見せた。なんせ、計画では馬車に残って出てくるのを待つはずだった。それがこうしてカジノの中にまで勝手に乗り込んでいる。なんと説明しようか合わせた視線を逸らして頬をかいていると、クスクスと笑い声が聞こえてくる。

笑い声の主は綺麗なドレスに身を包むシルだった。その後ろにベルがついて来ている。まだシルをエスコートするにはベルには早すぎるな、なんて考えているとシルと目が合った。

 

 

「うふふ♪」

 

 

瞬間的に嫌な予感がする。何かを企んだ時のシルの笑いだ。

大きく胸元が見えるドレスを着こなす彼女。先ほどまで普通に歩いてきてたのに、急に胸元を隠しだす。

 

 

「そんなに見つめられると照れてしまいます。主人がいるのに♪」

 

 

えげつない爆弾を投下し始めたシル。というより、見てないのに見たとかどんな冤罪ですかと思いたいカイトだったが、横にいるリューには通じるはずがなく。

 

 

「……私の妻に不埒な視線を送らないでいただきたい。例え貴方でも」

 

『……』

 

 

視線だけで相手を殺さんとばかりにカイトを睨むリュー。無表情、目に光なし。本気で怒ってるやつです。場所が場所だけに手を出してこないが、あとで話がありますと目が語っている。本気で怖い。

何をしてくれたんだと、軽くシルを睨むと…

 

 

「てへ♪」

 

 

舌を出して”やり過ぎちゃった♪”と言いたげだ。本当にやり過ぎだと、心の中で叫ぶカイトであった。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

あんな貴賓室の前でにらみ合っていたら目立ちすぎるため場所を変える。先ほど得た情報をリューとシルに伝え、どうにかして中に入らなければいけない。その為にも、オーナーの目に留まるように派手に動く必要がある。

ここで目立つ行動と言ったら一つしかない。

 

 

「派手に勝ち続けることですか。確かにそれなら目にも止まるでしょうが、それをするにしても私達には手持ちが心もとないですね」

 

 

リューの言う通り、今回用意した資金も最低限の金額。勝負するにしても慎重に選んで動かなければ―――

 

 

「あの、僕そろそろ帰っても…?」

 

 

ベルがおずおずと手を上げる。今回の件にベル・クラネルは関係ないため、無理に巻き込む必要はないだろうとリューとカイトは視線を合わせて頷く。

リューが口を開こうとした瞬間、シルがベルに近寄り手を握る。

 

 

「ベルさん! 折角賭博場(カジノ)に来たんですから。少しくらい遊んでかれたらどうですか?」

 

「え? でも…」

 

「ルーレットなんてどうです? 掛札(チップ)を置くだけですし、簡単ですよ?」

 

「シル? 何を…」

 

 

彼女の行動に疑問を持ったリューが問いかけるがシルは笑みを見せただけで、目の前にあるルーレットの方へベルを誘導させる。楽しそうに話すシルの姿にカイトとリューは何も言えなくなり、二人の後に従う。

一人で遊ぶのは仲間に悪いとベルが放つ。少しくらいなら仲間や神様は怒らないとシルが掴み押さえこむ。

金がないとベルが次弾を撃つ。ないなら貸す、色を付けて返してね♪とシルが弾き飛ばす。

 

 

「けど……」

 

「もうこんな機会はないかもしれませんし、ね?」

 

「う、うぅ……」

 

 

逃げ道を奪われた子ウサギのようになってしまったベル。

にしても、なぜそこまでベルにルーレットをやらせようとしているのだろうか? 静かに彼女を見つめる。楽しそうにベルの背中を押し、ルーレットの前まで連れて行く。目の前の女性ディーラーはベルに優しく微笑みかける。逃げ場を失ったベルは静かに頷いた。

 

 

「どうぞ。好きな所にお賭けください」

 

「えっと……このシートの上にお金を置けばいいんですか?」

 

「クラネルさんはルーレットをやられたことは?」

 

「初めてです」

 

「分かりました。それでは私が説明します」

 

 

リューはルーレットのやり方を簡単に説明を始めた。ベルは一つ一つ静かに聞いていき、シルからチップを渡される。

渡されたチップを見てベルはシルを見返すと、楽しそうに微笑む。

 

 

「それじゃやってみましょう♪」

 

「は、はい……」

 

 

渡されたチップを握りしめテーブルのシートを見つめる。赤と黒、38個の数字を見回しベルは恐る恐るチップを置く。

ゆっくりと置いた場所は赤色。色掛けという配当の中では一番低いものだが、まぁ初めてなら様子見という所か。

ただ、チップを置いただけなのに軽く一呼吸入れていた。

 

 

「ふふ、ベルさん。もし勝てたら色を付けてチップをくださいね?」

 

「色だけにですか…」

 

「あ、あはは…」

 

「それでは始めます」

 

 

ディーラーはウィールを回しボールを指ではじく。ウィールの回転と共にボールも淵をなぞるように回り続ける。

四人は静かに止まるのを見守り、徐々に勢いは落ちていく。ボールは勢いを無くし、回転速度を落とし始めるウィールに近づく。はじかれながらボールは不規則に踊りだし、カランと音を立てて一カ所に止まる。

ベルは一人生唾を呑み込んで結果を見守る。

 

赤の1番

 

ベルは静かにボールの止まった個所を静かに見つめた。

そんな彼の肩をシルは優しく叩く。ビクリと肩を震わせシルを見る、彼女は微笑んだ。

 

 

「やりましたね、ベルさん!」

 

「か、勝ったんですか僕?」

 

「はい。お見事です」

 

「カイトさん!」

 

 

やりました!と言わんばかりにカイトを見つめるベル。少しキョトンとしたカイトだが、すぐに笑みを見せて頭を撫でた。

嬉しそうに喜ぶベル。やれやれと肩を竦めるカイトだったが、ふと彼の両サイドから視線を感じた。

 

 

「むぅー」

 

「……」

 

 

むくれるシルと静かに睨みつけるリュー。ベルが好きなシルは二人で楽しそうにしているのを見て嫉妬のようなものなのだろう。けど、リューはなぜ機嫌が少し悪くなっているのだろうか?

 

 

「さぁ、ベルさん。次、賭けましょう!」

 

「え、えぇ!?」

 

「色ではなく他のをかけてかけてみませんか?」

 

「じゃ、じゃあ……数字の縦一列で――」

 

 

シルに押し切られベルはおずおずとチップを賭けていく。それを見たディーラーはまたウィールを回し、ボールを弾いた。

シルとベル、カイトはゆっくりと結果を眺める。ただ、リューだけは静かにカイトの顔を見つめていた。

 

 

「(どうして私は見過ごせなかったのだろう。ただ、クラネルさんの頭をカイトが撫でただけなのに)」

 

 

エルフとして潔癖症のせいなのだろうか?

いや、それだけであそこまでの不快感を覚えるだろうか? 違う、それだけじゃない。いつも私を見ていた彼の瞳がベル・クラネルに向けられていたからだ。優しく見つめる彼の瞳。大きな彼の落ち着く手。私を包み込んでくれる落ち着く手……そして――

 

 

「ふふ。カイトさんの手を握ってどうしたんですか、あなた?」

 

「え? ッ!!」

 

 

シルの言葉で意識の世界から戻ってきたリュー。言われたことが分からず、彼女の方を見ると困ったように笑みを見せていた。

今度はカイトの方を見ると彼も同じように困りながらも笑みを見せている。その時になって初めて自分の右手が何かを握りしめていることに気づいた。

触りなれた落ち着く温もり。ゆっくりと視線を落とす、案の定自分の手はカイトの手を握りしめていた。自分のしていたことに気づいた彼女は一緒にして顔を真っ赤にして手を離した。

凛々しいエルフの紳士は消え去り、タキシードに身を包んだ恥ずかしさに頬を染めるエルフの少女がそこにいた。

 

しかし、ルーレットに夢中になっていたベルは気づかず、また的中したことに喜んで振り返った。

 

 

「これ、またあたりですよね! ……って、どうしました?」 

 

「い、いえ。お見事です、クラネルさん」

 

「はい。お、お見事です」

 

 

赤い顔を見られない様に背けながら答えるリュー。何かおかしそうにクスクスと笑いを堪えるシル。

カイトもシルと同じように笑みを見せる。

 

 

「は、はい。ありがとうございます?」

 

ただ一人ベルだけは何が起きたか分からず首を傾げていた。

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