ダンジョンへ行かずに恋人と過ごすのは間違っているだろうか?   作:翠星紗

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元ファミリアの団員と対話するのは間違っているだろうか?

リトル・ルーキーの騒ぎに周りが湧きだすカジノ。そんな周りの騒ぎなど彼等には届かない。視線を交わすカイトとシャクティ。

いつまで続くのかと思われた硬直を最初に破ったのはカイトだった。

彼女に見えるように文字を綴っていく。その姿にシャクティは眉を細める。

 

 

『久しぶりだな。相変わらずガネーシャは好き勝手やってるか?』

 

「……勝手にファミリアを抜けたお前が気にすることか?」

 

 

問いかけも返されることなく吐き捨てられる。カイトは少し寂しそうな笑いを見せるとシャクティはまだ表情を見せない。ただ静かに彼に近づく。カイトも何をする出なくシャクティを見つめる。

 

 

「ついてこい」

 

 

ただそれだけ。

それだけ言うと、シャクティはカイトを確認することなくコツコツとヒールの音を鳴らしながら歩いていく。こんなところで騒ぎを起こすことは出来ないと、彼女の後ろを静かについていく。

大広間を離れ、庭園を通り過ぎ人気の少ない道を通る。途中、警備を行うガネーシャ・ファミリアの団員に何度かすれ違ったが、シャクティと数度会話を交わすだけで去って行く。

庭園を通り過ぎ今ではカジノの裏手側に来ていた。周りが警備されていないのは先ほど団員と話した中で彼女が人払いをしてくれたからだろう。

こちらを振り返らない彼女をカイトは静かに見つめる。数分の沈黙がまた二人を覆うが、今度はシャクティの方から沈黙を破った。

 

 

「今は豊穣の女主人で働いてるらしいな」

 

『よく調べたな』

 

「リオンのいる所にお前は必ずいるからな。主神の暴走とお前の失踪癖を止めるのが私の役目みたいなものだった」

 

 

失踪癖。と言ってもほとんどリューに逢いにアストレア・ファミリアに行ってただけだ。帰りが遅くなるとシャクティが連れに戻しにやってくる。その際、素直に帰るかアストレア・ファミリアと一緒に呑みにつれてかれるかの二択だった。

あの頃は楽しかった。街に慣れてないリューのお守と言いながらデートに誘い、それを団員にからかわれて顔を赤くするリューの姿。

俺とリューが一緒に歩いているのをシャクティが見つけ連れ戻そうとした時、リューが何を勘違いしたのかシャクティと喧嘩し始めたり。

数えきれない思い出が頭の中で蘇り、それをカイトは楽しそうにクスクス笑っていた。そんな彼の姿を見ていたシャクティは大きめのため息を漏らし、呆れたような表情を見せる。

 

 

「………元気になってよかった、団長」

 

 

カイトの目の前にいるのは隊長たる風格を消し去った女性。昔よく見た柔らかな表情に戻っていた。

馬鹿するカイトを見つけては呆れたように態とため息を吐き笑みを零す、その姿に。

 

 

『”元”団長だ。俺は自分の地位を捨てて逃げた出したんだよ』

 

「すべてはリュー・リオン。あのエルフのためだということは私や主神も承知していました。あの頃のあなたはとても見ていられませんでした」

 

 

当時のことを思い出したのか、シャクティは自らの腕を抱きしめ視線を逸らした。彼女の言葉にカイトは文字を綴ることは出来なかった。

 

あの頃――

 

 

アストレア・ファミリアとの共闘で迷宮探索を行っていた時、敵対するファミリアの罠"怪物進呈(デス・パレード)"により、リューとカイトを除く構成員全て死亡。その時に喉を切り裂かれ無理やり炎で傷口を治療。

迷宮から逃げる際、カイトは絶命しかかっていたが、敵対ファミリアの動きに気づいたシャクティたちの救援により脱出。

意識を失っていた数週間、リューは主神アストレアを都市外に逃がし都市の闇へ消え去った。意識を取り戻したカイトは怪我の後遺症で声帯がひどく損傷してしまい、声が出ることはなくなった。しかしそれ以上にアストレア・ファミリアの壊滅、リュー・リオンの失踪に心を蝕まれ日に日に彼は酷くやつれていった。

そんな状態にも関わらず、彼は彼女の足取りを探すことだけはあきらめなかった。彼がこの世界にいられるのは姿を消したエルフの少女のおかげだろう。

 

 

「そして、一人の団員にリオンの行方を見つけさせて団長は消えた」

 

『僕を恨んでいるかい?』

 

「あなたが元気な姿を確認できただけでこんなにうれしいことはない。主神にも伝えておくさ」

 

『暴走して店に来ないといいが』

 

「迷惑をかけた罰だ。それぐらいは我慢してくれると助かるな」

 

 

その光景が目に浮かんだ二人は少しおかしそうに笑みを零しあった。自分勝手な振る舞いで団長という地位を捨てで間で愛した女の下に逃げた男をガネーシャ・ファミリアは決して許してくれないだろうと、カイトは一人考え決して彼らと接触することはなかった。

しかし、今回シャクティと話すことでカイトの心を縛り付けていた鎖が緩んでいくのを感じ、言葉には出さないが目の前の女性にお礼を告げたカイトだった。

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