ダンジョンへ行かずに恋人と過ごすのは間違っているだろうか?   作:翠星紗

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そろそろ終焉に話を進めていくのは間違っているだろうか?

シャクティとカイトの昔話も終わり。彼女は団長として、このエルドラド・リゾートの警備を任された者としての本来の姿に変わる。

 

 

「それで、何故お前がここに居る? 姿は見えないがリオンもいるはずだ。貴様たちは何を企んでいる?」

 

『……』

 

 

彼女は職務を全うしようとカイトを問い詰める。下手な嘘は見抜かれてしまう。顎に手を添えて考え込むカイトは、一人頷き指先を綴る。

 

 

『攫われた娘を助けるために』

 

「……どういうことだ」

 

 

綴られた言葉を見て、シャクティは目の色を変え眉間の皺が深くなる。お前の知っていることをすべて話せと語っているようだ。

カイトはタキシードの胸ポケットに手を入れ、一枚の封筒を取り出しシャクティに向けて投げる。投げられた封筒はシャクティの手に渡る。何の変哲もない封筒、カイトを見ると”それを読め”と言っているようで何も動きは見せなかった。

もう一度封筒に視線を戻し、封筒の中身を確認する。数枚の紙が綺麗に折られて入っており、手前にあった紙を読み始めたシャクティ。そこに書かれているのはエルドラド・リゾートのオーナー、テリー・セルバンティスについて。紙に羅列された文字を読むに従いシャクティのは目を見開き声にならない音が口から洩れてしまう。

封筒の中身をすべて確認したシャクティは少し茫然としたまま硬直してしまう。カイトもどうしたのかと心配になっていると、今日一番ともいえる大きなため息が彼女の口から洩れだした。

 

 

「ここ数か月、我々が苦労を重ねて計画を練っていたのが、この封筒一つで水の泡だ」

 

『…さすがに気づいていたのか』

 

「当たり前だ。しかし、決め手に欠けていてな。それで、これからどうするつもりだ?」

 

『リューが貴賓室に入り込み騒ぎを起こす。それに乗じて囚われた少女を連れ出し逃げる。あとは……』

 

「こちらの好きにさせて貰う」

 

『それと……』

 

 

そうして、カイトは一つの小瓶を取り出すとシャクティに投げつける。それを受け取り確認すると、それは”開錠薬(ステイタス・シーフ)”だった。

 

 

「用意周到だな。昔から変わらない………だが、もし他の団員がお前たちを捕まえても私は知らんからな」

 

『僕たちを捕まえられるかな?』

 

 

軽く挑発しながらクスクスと楽しそうに笑うカイトは中に戻ろうと足を進める。そんな彼の後姿をシャクティは止めることなく静かに眺めた。

正義感に強く仲間想い、若くしながら団員たちを導いてくれていた団長の姿が目に浮かぶ。あの頃の彼はもういない。居るのは愛する者のためにすべてを捨てた自分勝手な男だけ。

すべて捨てて逃げたと言いながら、根本は何も変わっていないことに彼女は可笑しそうに一瞬だけ笑みを見せたが、これから彼らがが行うのはエルドラド・リゾートを壊滅させるほどの大騒ぎになる。それを知って放っておくわけには行かない。

 

 

「(今のファミリアを纏めているのは私だ。そう簡単に逃げられると思わないことだな)」

 

 

カイトとは反対方向に歩き出すシャクティ。その表情は何処か楽しそうな表情を見せていた。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

カジノに戻りリュー達が居るであろうポーカーの場に向かおうと足を速める。シャクティと話していたことで思いのほか時間を取られていたようだ。会場を見るに特に騒ぎが起きてない様だ。まだ、アンナを救えていないのは判断できる。

人ごみをかき分け進んで行くカイト。急ぐ彼の腕を唐突に誰かに捕まれる。驚いたカイトは視線をそちらに向けると、息を切らして必死に彼の腕をつかみ肩で息をするベル・クラネルがいた。

 

 

「はぁ、やっと……み、見つけました」

 

 

彼はモルドたちと一緒にルーレットをやっていたはずだ。それが息を切らしてまで自分を探していたということは、リュー達に何かあったのではないか?

 

 

「―――っ!!」

 

「カイトさん!?」

 

 

カイトは無意識に声を出そうと口を開くが音を発することが出来ず、その場で咽てしまう。そんな彼の姿を見てベルは彼に手を添えて心配そうに顔を覗かせた。

こういったときに声が出せないのが腹立たしく思いながらも、カイトは指で綴っていく。その字はいつもよりも荒々しく殴りかかれていた。

 

 

『何があった?』

 

「はい。シレーネ……いえ、シルさんからなんですが……」

 

『詳しく頼む』

 

 

文字を読んだベルは静かに頷き、聞かされたこと見たものをすべて話してくれた。

 

知らない男たちに呼び出されて部屋に連れられたとのこと。中は数人の護衛と多くの美女たち。そして、一卓のテーブルに数人の男性たちが座りゲームをしていた。そこにリューとシルが居て、ベルはシルに呼び出されたとのこと。

シルが彼に駆け寄ると自分をシレーネと言い、彼女は彼にこう告げた―――

 

 

 

”良いですかクラネル様。この貴賓室はガネーシャ・ファミリアの皆さんも入られてはいけない場所。だから誰も通ってはいけないんです。例えもしここで何かあったとしてここに来てはいけません。勇敢な貴方もです”

 

 

「これってどういうことなんでしょう?」

 

『………』

 

 

焦燥感を見せるベルに対してカイトは一人顎に手を添えて頭を回転させる。

彼の言うことが正しいなら、これから中で騒ぎを起こす。貴賓室の中に誰も入れない様に騒ぎを起こしてくれ。その騒ぎでガネーシャ・ファミリア達の目を引き付けて欲しいとシルは言いたいのだろう。

 

ならやることは一つだ。

 

 

『ベル君、今から書くことをルイやモルドたちに伝えてすぐに実行してくれ』

 

「はい!

 

 

………え、えぇ!?」

 

 

次々に綴られていく文字を目で追いかけて行くうちにベルは目を見開き。驚きの余り声を叫び声を出してしまうのであった。




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