ダンジョンへ行かずに恋人と過ごすのは間違っているだろうか?   作:翠星紗

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一人の少女がゲーム流れを変えてしまうのは間違いだろうか?

少し時は遡り、カイトとシャクティが二人で話し込んでいた頃に戻る……

 

リュー達の策は見事はまりエルドラド・リゾートのオーナー、テリーと会うことができ貴賓室の中に招かれた。そこでは限られた招待客とオーナーで高額なゲームをしているところだった。

そして、中には護衛と客人たちをもてなすためにテリーが侍らせている集めた女性たちがいた。その中にアンナがいることを確認したリューは、テリーが仕掛けてきたゲーム”ポーカー”に一つの条件を出した。

 

勝者のの願いを一つ叶える―――

 

それを快くテリーは了承し、ゲームが開始される。

しかし、そのゲーム自体仕組まれていたものだった。店側であるオーナーやディーラーだけでなく、客として招かれている他のプレイヤーでさえもすべてテリーと共謀者(グル)だった。リューが気づいた時にはもう遅かった。リューの勝負を彼らは最初から放棄し、ただ陥れることだけに徹していた。自分の失態をどう挽回するか策を巡らせるリューに対し、テリーは負けたらシルを貰うと挑発を仕掛けた。

それに憤り、最終手段で暴れようとしたリューを止めたのはシルだった。リューの代わりにシルがゲーム入ることとなった―――

 

 

 

 

「では始めたいと思いますが、奥様はポーカーのルールはご存知ですかな?」

 

「はい。お店のどうりょ…ンンッ。屋敷のメイドたちに誘われて主人の目を盗んで興じておりました」

 

「……」

 

 

テリーの言葉に思わずぼろを出しかけたシルだが、何とか言い直して笑顔で答えた。それを横で聞いていたリューの頭の中には”みゃーたちはメイドじゃないニャーッ!!”と叫ぶ同僚たちとミア母さん(主人?)の姿が思い浮かんだ。

シルの返答にゲームを進めても大丈夫と判断したテリーはディーラーにカードを配るよう指示を出そうとするが、シルはさらに言葉をつづけた。

 

 

「お恥ずかしいのですが。私あまり難しい種類のは詳しくありません……ドローポーカーでもよろしいでしょうか?」

 

「ふむ……」

 

 

ドローポーカー。数あるポーカーゲームの中でもシンプルなものであり、配られた5枚の手札の中から役を作り一度だけカードを変更することが出来る。

先ほどまでやっていたゲーム自体変わっても、それぞれのチップに変動はなく。テリーたちの優位は変わらない。

 

 

「えぇ、問題ありません。それでは パンッ! ッ!」

 

 

突然、手を叩く音が響き沈黙が広がる。何事かと音の発信源を見るとそこには静かに目を閉じたシルの姿があった。一体どうしたのかと、周りの人間たちは彼女を注視する。

数秒の沈黙のあと、彼女はゆっくりと口を開いた。

 

 

「勝負を降りる際には参加料の2倍の額を払うというのはどうですか? これ、メイドたちとよくやっていたルールなんです♪」

 

 

先ほどまでしおらしく貴婦人漂う姿を出していたかと思うと今度は少女のような楽しそうな笑みを見せた。

周りは彼女の言った参加料2倍の言葉に気を取られている者いたが、何よりそれに彼女を不振に思ったのがテリーだった。しかし、それもこの部屋の中では無意味だと考えを切り替える。どんな条件にしても自分の優位には変わらない。この部屋に置いて―――いや。

 

この最大賭博場(グラン・カジノ)ではギルドでさえ介入することが出来ない。ここでは彼が王なのだから。

 

 

「えぇ。良いでしょう」

 

 

 

こうしてゲームは開催された。ディーラーがカードを配りそれぞれのプレイヤーにカードが渡される。配られたカードを手にして自らの役を確認する。カードが配り終えたのを確認したディーラーが口を開く。

 

 

「それでは皆さん、ゲーム開始としましょう。それぞれチップを―――」

 

「わぁ!! 貴方見て、同じカードが4枚! これってフォーカードっていうのよね?」

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

 

リューにカードを見せて喜ぶシル。その姿に誰しもが目を疑い息を呑んだ。

自分の役をバラしたのだ。それも全員に聞こえる大きな声で。流石のリューも驚き彼女の行動に目を疑った、しかしその姿は無垢な少女のように楽し気にカードを見せてきている。シルが何を考えているのかリューは分からず。彼女に同意しるように頷くしかなかった。

周りのプレイヤーもさすがの行動に驚きを隠せない様だが、これを騙欺(ブラフ)と判断した。あまりにも子供じみたブラフだ。世間知らずの貴婦人を装い、参加料の2倍のチップを払う条件で自分たちにプレッシャーをかけて、今のブラフで先手を取るつもりだと。

テリーはプレイヤーたちに目配せをする。それを確認した者たちが視線を交わし、一人の参加者が手を挙げた。

 

 

「君、アルテナワインの30年物を頼む」

 

 

手を挙げたのは初老のキャットピープルの男性。給仕をする男性に声を掛け、ワインを頼んだ。端から見れば、ゲーム興じる際に喉が渇いたから頼んだように見えるがこれは彼らが考えた暗号の一つ。30年物のアルテナワイン。これは手役に3枚以上の同名カードがあるフルハウスを意味している。こうした暗号が様々な所に隠されており、初めてこのゲームに参加した獲物を狩る為のものだ。

後は、彼が勝てるように周りの者は不自然の内容にこのゲームから降りるだけだ。

そうすると…

 

 

「おや? どうやらこの老いぼれとの一騎打ちになりましたな。どうなさいますかな奥様?」

 

 

こうして獲物を仕留める下準備が出来上がる。老人は優しい笑みを見せながらシルに尋ねる。

しかし、シルは自らのチップに手を伸ばし…

 

 

「じゃあ、レイズで」

 

「ふふふ。ずいぶん強気でいらっしゃる。なら私もレイズで…」

 

 

さらにシルを追い込んでいく。ここでおりても掛けられたチップは奪い取ることは出来る。

どう転んでも―――

 

 

「レイズ♪」

 

 

「「「「「っ!!」」」」」

 

 

彼女の行動にまたも息を呑む面々。普通なら考え思考を巡らせ次の一手を決める。しかし、彼女は何のためらいもなく勝負に来た。

これは本当にフォーカードなのだろうか?

シルの方に視線を向けた老人、それに気づいたシルは笑みを返すだけ。焦り一つも感じられない。それにただ、彼は恐怖を覚えていく。

そんなはずない、これはブラフだ。幼稚な駆け引きだ!と、彼は自分に言い聞かせ雑念を払った。

 

 

「ははは、よろしい。それでは勝負しましょう。私はフルハウスです」

 

 

老人は手役を見せる。そして、皆の視線はシルに集まる。さぁ、お前の負けだ見せてみろ!

そんな視線を送られる中、彼女は楽しそうに手役をテーブルに広げた。

 

 

「フォーカード」

 

「ッ?!」

 

 

彼女が出したのはジャックのフォーカード。彼女の勝利だ。増えたチップを見て、楽しそうに微笑むシル。

しかし、周りはそれどころではなかった。ブラフではなかった。自分たちの考えすぎか、それとも……

 

まだ1戦のがしただけだ。次がある、と彼らは次のゲームに意識を戻した。

 

 

だが、彼等の疑いは晴れることはなくなっていく。

 

 

 

「すごい! 貴方、今度は全部同じマーク!」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

 

また同じ手を使う彼女に周りは動揺が走る。今度も本当に、揃っているのか? いや、それともブラフか?

それを確かめるために彼らは降りることを選んだ。人間はこうした局面に立たされると逃げの一手を選んでしまう。これは様子見ではなく、明らかな”逃げ”。時間に身を任せようとする逃げなのだ。

 

そして、彼女が見せる手役はクラブのフラッシュ。

 

 

「また私の勝ちです♪」

 

 

最初に宣言したとおりの役が目の前に広げられる。そうして、彼女の前に多くのチップが運び込まれる。

これを見たプレイヤーたちは一つの答えを導き出した。

 

ブラフじゃなくここまで強い手が続く。これは単純に彼女の引きが強すぎるんじゃないか?

 

そこからは彼女の独断場になった。

 

 

「ストレート♪」

 

「お、降りる!」

 

「私もだ!」

 

 

彼女の手役宣言に臆したプレイヤーは足早に勝負を手放す。そして最後には彼女しか残らず―――

 

 

「あら? 皆降りてしまったんですね」

 

 

シルの不戦勝となる。彼女のもとにチップは集まり伏せられたカードをディーラーが回収し、シルも手にあるカードを伏せて渡す。

これが何度も繰り返され、他のプレイヤーよりも一番少なかったチップが今では追いついて来ていた。

粛々とゲームを続ける彼女に対して、テリーは疑いの目を向ける。しかし、ディーラーや周りを囲む護衛達にも視線で確認を行うが不正はしていないと首を横に振られるだけ。

そして、何度目かのゲームが終了したとき―――

 

 

「あら、いけない」

 

「「「「っ!?」」」」

 

 

彼女の手からカードが滑り落ち手役を見て、周りは目を疑った。

このゲームのはじめ彼女はフルハウスを宣言した。しかし、テーブルの上に落ちた手役を見ると何役も揃っていない。いわゆるブタだったのだ。

この時、周りのプレイヤーは彼女に踊らされていたことに気づいた。すべてはブラフ。ただ、遊ばされただけ。

そんな周りのことなど気にしてないシルはディーラーにカードを返却して何食わぬ顔で座っていた。そんな彼女の態度に周りは苛立ち、こんな小娘に弄ばれていたのかと剣幕を変えた。

 

そして次のカードが配られ、シルは先ほど変わらず。

 

 

「フルハウスだわ!」

 

 

全く同じ手を用いてきた。

我慢の限界を超えたプレイヤーたちは己のチップを掴むと場に荒々しく出していく。しかし、この状況をテリーだけは焦り見ていた。

これは明らかな挑発。ここで勝負に出れば明らかに相手の思うつぼ。

 

 

「私もレイズだ!」

 

 

周りの共謀者に視線を向けるも、頭に血が昇りきった彼等には届かない。プライドを汚された彼らは、目の前の女性を力づくで落とそうとするのみだった。テリーは心の中で叫び続けるしかなかった。

声を出して止めれば、自分たちが共謀していたのがばれてしまう。それは避けねばならなかった。

だが、彼の言葉は届くことなく……

 

 

 

「そ、そんな……」

 

 

彼女の手役は宣言通りフルハウスだった。

安い手で挑んだ彼等が彼女にすべて奪われてしまう。一人のプレイヤーの前からはチップがすべて消えていた。

彼女の前には誰よりも多くのチップが置かれており、それを見て初めてあれが挑発だとプレイヤーたちは気づきこの光景に息を呑んだ。テリーだけは頭を抱え現状を周りのプレイヤーの短慮さに嘆く。

そんななか、シルは用意されていたカクテル入ったグラスを取ると一口飲み、淡々と喋り出した―――




シル無双発動中!!
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