異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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決意

「……ふぅ」

 

 俺はトイレに腰を下ろして考えにふける。

 

「早く決めないといけないんだよな」

 

 翡翠から聞いた話によると、生理というものは排卵日から約二週間で来るらしい。

 排卵日とは文字通り卵子が生まれる日のことで、卵子はその後24時間くらいの寿命の間に精子と出会って受精すれば妊娠し、出会わなければ生理のときに体外に排出される仕組みとなっているそうだ。

 俺の生理周期が一定していないのは、女性ホルモンだかなんだかの影響で排卵日がずれるかららしい。

 

 つまり、生理周期が不安定な俺は、今日が排卵日で妊娠できる可能性も有り得るということだ。

 だから、できることならすぐにでも精子を貰って妊娠を試みた方がいいと翡翠は言っていた……アリシアを救うために俺に与えられた妊娠の機会は有限なのだから。

 

 体を前方に折り曲げて肘をつくと、用を足すために下ろしたショーツとナプキンが視界に入る。いつ生理が来ても大丈夫なようにつけている薄いやつだ。

 もちろんまだ生理は来ていない。

 

「妊娠かぁ……」

 

 人工授精を頼れない以上、誰かに種を貰う必要がある。

 種を貰うということは、つまりセックスするということだ。

 こんなことを誰に頼めばいいのだろう……?

 

 異世界人とこの世界の人との間で子供が産まれることは実証されている。過去に俺と同じ方法で異世界に召喚された勇者が、あちらに残って貴族となり子孫を残しているという話をアリシアから聞いたことがあるからだ。

 だから、相手は異世界人に限られるといったことはない。

 

 問題となるのは、知り合いに頼むのか、それとも見知らぬ他人に頼むのか、だ。

 

 心情的にはやっぱり知り合いの方が安心はできる。だけど、魂がアリシアのものとはいえ、相手を父親にしてしまうことを考えると気軽にお願いできることではない。

 

 それに、俺がお願いするのは快楽を求めるためのセックスではなく、子作りのためのセックスだ。知人にセックスを誘われるのはまだいいとしても、積極的に生で中出しを求められるのって普通に考えてあり得ないと思う。俺なら怖い。

 生理がまだ来てないことにしようにも、授業中の教室で初潮が来たことは学校では割りと知られている話だと思うし……

 

 そう考えると、知り合いに頼むにしてもアリシアの事情を話せる相手に限られると思う。その条件に当てはまる男は、蒼汰、エイモック……それから、親父くらいか。

 

 まず、蒼汰はまっさきに却下だ。

 心情的には一番頼みやすい相手で……多分頼み込めば蒼汰は嫌とは言わないと思う。

 だけど、こいつを父親にしてしまうのは問題だ。

 別に認知してもらうつもりも必要もないけれど、産まれてきたアリシアのことを蒼汰が他人として見られるかどうか……あいつはきっと責任を感じてしまうんじゃないかと思う。

 そのことが、将来蒼汰が女性と付き合ったり結婚したいと思ったときに、足枷となってしまう可能性が高い。

 俺の事情でそこまで迷惑を掛ける訳にはいかない。

 それに、蒼汰は男の俺を知る唯一の親友だ。それが、男女の関係になって、関係が変わってしまったらと考えると怖い。

 

 父親にしてしまうことだけを考えるなら、一番支障が少ないのは親父だろう。なにせすでに俺達の父親だから、アリシアの親になることに対する負担は少ないと思われる。

 世間にばれたら社会的に死ぬことになるけれど、子供の父親が誰かなんて俺が話さなければわからないだろうし、どうにでもなるはずだ。

 ただ、心情的には一番抵抗がある。

 なにせ俺にとっては実の親父なのだ。

 遺伝子的には問題ないとはいえ、親とそういうことをするのなんて想像したくもない。一緒にお風呂に入るのとは訳が違う。

 それに、父さんには母さんがいる。

 浮気……になるかどうかは微妙だけど、夫が元息子とはいえ家族とそういうことをして気分が良いはずもない。

 家庭に不和をもたらす原因になるくらいなら、他の誰かに頼んだ方がマシだろう。

 

 エイモックは……は良くわからないが、お願いすれば面白がって協力してくれるような気がする。倫理観が違うので父親になることで責任を感じさせることもないだろう。

 やつに大きな借りを作ってしまうことになるのと、アリシアの記憶が戻ったときにエイモックが遺伝子上の父親であると知ったときの反応が少し怖いくらいか……

 

 いっそ見知らぬ他人の方が良いのかもしれない。

 そうすれば相手を父親にする心配なんてしなくていい。それに、名前も知らない関係なら、無責任に中出しをすることに躊躇はしないだろう。それこそ、まだ生理が来てないことにしてもいい。畜生、どんなエロ漫画だ……

 

 問題は相手をどうやって探すかだ。

 探せばいくらでも俺とそういうことをしたい相手はいるだろう。だけど、具体的にどうしたらいいのだろう。

 

 真っ先に思いついたのは出会い系だった。

 詳しくはわからないけど、そういう相手を求める場所としては一番手っ取り早い方法だと思う。

 

 問題は警察に見つかったら確実に補導されるということ。

 そして、それが学校に知られたら俺は退学になるだろう。俺自身は育児で高校を続けられなくなるから構わないけど、同じ学校に行っている優奈に迷惑をかけることになる。さらに、もし近所にまで噂が広まれば、最悪家族全員で別のところに引っ越さないといけなくなるかもしれない。

 それに、不特定の相手と関係すると、性病にかかる危険があると聞いたことがある。出会い系はそのリスクが高いイメージだ。

 

「……性病はやだなぁ」

 

 他に探すとすればSNSとか……?

 出会い系と違って発言で相手の人柄をある程度知ることができるので比較的安心できそうだ。優しそうなロリコンの変態さんを探して、エロ写メ付きのメッセージで誘ってみるとか?

 

「……なんか、そういうエロ漫画を最近読んだ気がする」

 

 見知らぬロリが中出しをお願いしてくるとか怪しいどころの話じゃない。だけど、釣れるかどうかと言えば釣れるんだろうなぁ……だって、男だもの。

 

 結論としてまだ有り得そうなのは、知り合いならエイモック、そうでないならSNSで探すかのどちらかかな。

 知り合いとするのは難しいけど、かと言って不特定の相手も嫌だ。ある程度身元がわかる他人がちょうどいい頃合いだと思う。

 男に抱かれること自体は、もう医療行為とでも思って割り切るしかない。

 

「おっきいお注射しましょうねーってやつかな……ふふっ、全く笑えない」

 

 俺は自嘲気味に呟いた。

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