異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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喪失

 性交した。

 うん、性交した。

 

 ……成功したとはお世辞にも言えないけれど。

 振り返ってみると初体験は散々だった。

 

 予想外だったのは蒼汰のアレ。

 通常時だけでなくて臨戦態勢になったときのサイズも尋常ではなくて、はじめてその凶器を目の当たりにしたときは自分の顔から血の気が引いていくのがわかった。

 

 大きければいいってモノじゃないんだぞ……マジで。

 それでも、いまさらやめるという選択肢はなかった。

 

 膝の上で後ろ抱きにされて、私は蒼汰のなすがままにされる。

 たどたどしく体に触れてくる蒼汰は、力の加減がわかってなくて。痛いと抗議の声をあげると、今度は恐る恐る触ってくすぐったいばかりだったり。お互い何もかもがぎこちなくて、明らかに経験が不足していた。

 思い描いていた展開通りにいかず焦る蒼汰は、準備を早々に切り上げて本番に臨もうとして――失敗した。

 なかなか繋がることができなくて、四苦八苦しているうちに蒼汰のアレが萎えてしまったのだ。

 

 そうなることがあるというのは知識として知っていた。

 だから、落ち込む蒼汰に気にすることなんてないと慰めて。

 私たちの間で格好なんてつけなくていいからと励ました。

 

 それでも、すっかり蒼汰は気落ちしてしまって、気まずい空気が流れる。

 そんな空気を断ち切ろうと何かなかったか考えたとき、私は父さんから入っていたメッセージのことを思い出した。

 困ったときはベッドサイドのチェストの一番上の棚を開けてみるといいというもので、ことさら明るく振る舞いながらその通りにしてみると、チェストの中にあったのは柔らかな容器に入ったローションが一本。

 

 二人の間の空気がさらに凍りついた。

 

 ありがた迷惑を通り越して地球を一周するくらいな父さんの気づかい。だけど、悔しいけれど、現状これが有効であることは明らかで……私は何も考えずにそれを使うことにした。

 蒼汰任せにせずにちゃんと自分でも準備しよう。

 急がば回れの精神で、今度はゆっくりじっくり――ねっとりと準備をしていく。

 ローションのぬるぬるは悪くなかった。

 ……わりと癖になりそうなくらいに。

 

 そして、何度目かの挑戦のとき。

 ついにそのときが訪れた。

 

 スルリという感触の後、一瞬遅れて鈍い痛みがやってきた。

 

 痛い。

 痛い、痛い。

 

 頭が真っ白になる。

 だけど、痛覚なら我慢できる。

 私はもっと酷い痛みを経験しているから。

 肉を牙で断たれる痛みと比べたらどうってことない。

 槍を体に穿たれる痛みの方が余程きつかった。

 

 収まるはずのものを収めるべきところに収める、ただそれだけのことだ。不可能を可能にするような話ではない。

 

 ――それなのに、涙が止まらなかった。

 

 私は弱くなってしまったのだろうか。

 体は平気なはずなのに、何だかわからないものがこみあげてきて、こらえきれなかった。

 うろたえまくる蒼汰に、大丈夫だからと訴えてみてもまるで説得力がなくて困る。

 ……結局、蒼汰は一度仕切り直してくれて。落ち着くまで私の体をぎゅっと抱きしめ、頭を撫でてくれていたのだった。

 

 落ち着く蒼汰の匂いに包まれる。

 しばらくすると涙は止まっていて、心のざわめきも徐々に収まってきた。

 

 ……もう大丈夫。

 そう言って、私は蒼汰に行為を再開して貰うように促した。

 

 だけど、蒼汰は優しかった。

 少しでも痛がる素振りを見せると蒼汰はその都度私の様子をうかがってくれた。

 友人である私を大切に思って気遣ってくれている。

 それは、とてもありがたいことだけど、そうしていることで、蒼汰が気持ちよくなるのを阻害してしまっているように思えた。

 こんな調子だといつまでたっても終わらないのではないかと心配になる。

 

 だから、私のことは気にしないで蒼汰の思うままにして欲しいと訴えたけど、そんなことはできないと蒼汰に拒絶された。

 

 だけど、蒼汰にはそうしたい欲求があることを私は知っていた。蒼汰が持ってるエロ本は大体把握していたから……それらのどこのページが自然に開くようになっているのかも。

 それに、特殊な性癖というものでもない。大切なものをめちゃくちゃにしたくなる衝動は誰しも持っていて、理性で抑えられているものだ。

 

 だから、私はその理性の箍を言葉で外していくことにした。

 

 私の体を道具のように扱っていいと告げた。魔法が使える私は回復できるから、多少の無茶をしても平気だと。

 そして、これは蒼汰の為だけに言ってるのではなくて、私自身の為に早く終わらせて欲しいのだと訴えた。

 

 そんなふうに蒼汰に甘美な免罪符を与えていく。

 

 それでも……と、まだ躊躇する蒼汰だったけど、体の一部は正直で。私がそのことを指摘すると、蒼汰が体を震わせて反応するのがわかった。

 

 ようやく蒼汰は私の提案を受け入れてくれた。

 私はそんな蒼汰に笑顔で告げる。

 

 蒼汰の好きなように、蒼汰が気持ちよくなることだけを考えていいから……私が泣いたりしても止めないで欲しい、と。

 

 蒼汰は私の目を真っ直ぐに見つめて了承の意を伝えた。

 すでにこれからのことを想像しているのか目の色が違う気がして息が荒い。

 

 ……それが、少しだけ怖くて。

 私は左手の指輪をぎゅっと握り込んだ。

 

 その後の蒼汰は本当に遠慮なかった。

 だけど……これで、良かったのだと思う。

 痛みなら耐えればいいだけだから。

 

 そうした紆余曲折とすったもんだの末、なんとか私は目的を果たすことができた。

 

 事が終わった後、ベッドに横になった私は、お腹に手をあてて回復呪文を使いながら、蒼汰にひとつお願いごとをした。

 

 これから、精子は全部自分の中に出して欲しいと。

 

 アリシアを救う可能性を少しでも無駄にしたくなかった。

 やりたい盛りの高校生にそれをお願いすることがどういうことかくらいはわかっているつもりだった。私自身、少し前までそうだったのだから。

 蒼汰がしたいなら、いつでもそれに応えるつもりだと伝えた。

 蒼汰は神妙な表情で私の頼みを受けてくれた。

 

 ……だけど、直後に早速もう一回とお願いされるとは思ってなかったな。

 断る理由は私にはない。

 数重ねればそれだけアリシアを救う可能性が増えるのだ。

 

 それから、続けて二回した。

 その後に一緒に入ったお風呂でもう一回。

 

 気がついたらすっかり日がくれていて。

 スマホを見たらメッセージの通知が酷いことになっていた。

 

 ……みんなになんと説明したらいいのだろう。

 

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