異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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お泊まり

4月9() 0週4日

 

「ん……」

 

 ぼんやりと視界に入ってくる見慣れない天井。外から日差しが差し込んでいて既に日は高いようだ。

 

 ええと……俺は何をしていたんだっけ……?

 

 周囲を確認しようと起き上がろうとして、

 

「いっ……!」

 

 全身に痛みが走ってベッドに逆戻りした。

 体を起こすのは諦めて、俺は記憶の糸を手繰ることにする。

 

 ここは……父さんに使わせてもらっているマンションの部屋だ。昨日は蒼汰に求められてここに泊まったんだったっけ。

 

 蒼汰と一緒にお泊まりするのは初めてじゃない。俺がこの体になる前は、月に一度はどちらかの家でお泊りをしていた。

 だけど、その頃と今とではその意味は異なっていて。母さんにお伺いのメッセージを送った後、既読がついて返事があるまで気が気ではなかった。

 特に詮索されることもなくあっさり了承されたときは、心の底から安堵したものだ。

 

 そんな訳で、俺はここで一夜を明かしたのだった。

 親の目が無いこの部屋でのお泊まりは正直楽しかった。蒼汰とこれだけの時間一緒に過ごしたのは久しぶりだったし。

 スマホの対戦ゲームで遊んだり、お互いデッキを持っていたのでウィソで対戦したり。夜は蒼汰がテイクアウトしてくれた牛丼を食べた。

 ……いや、まぁ、殆どの時間はセックスしてたんだけど。

 

 今の俺は一糸纏わぬ姿でシーツのみ掛けられている。

 昨日は何度目かわからない行為が終わった後、そのまま力尽きて寝てしまったらしい。

 顔を動かして隣に視線を向けると、大きく口を開けてぐーすかと眠っている蒼汰の顔があった。

 

「しかし、ほんと幸せそうだな……」

 

 あれだけ好き放題すれば満足だろうな。

 最後の方があやふやな昨晩の記憶を探りながら思う。

 

 ――それにしても、

 

「……酷い匂い」

 

 部屋中にすえた匂いが立ち込めていた。甘酸っぱいような生臭いような……様々な体液が揮発して入り混じったとても不健全な匂いだ。

 

 ゆっくり体を起こすと、途端に不快感がやってきて顔をしかめた。体中がべとべとして気持ち悪い。

 

「……シャワー浴びよう」

 

 気だるく重い体を引きずって、のそのそと動き出す。節々で悲鳴をあげる筋肉の痛みで、だんだん意識がはっきりしてきた。

 ベッドから足を下ろして、お風呂場に向けての一歩を踏み出したとき、下腹部からどろりとこぼれ出る感触が――

 

「――っ!」

 

 慌てて手でそこを押さえる。ねちょっと、粘り気のある嫌な手触りがした。俺は少し涙目になりながら、ひょこひょこと内股歩きでユニットバスに駆け込んだ。

 

「うぅ、蒼汰のバカ……」

 

 能天気に寝ているやつがやけに恨めしくなって愚痴をこぼした。八つ当たりだけど。

 

 ユニットバスに入って俺は便器に腰を下ろした。

 そこをきれいに拭いて、もよおしてきたので小用を足す。

 

 その後、浴槽の中に移動してシャワーを浴びた。

 カーテンを閉めてシャワーヘッドを手に取り、青と赤の水栓を捻ってお湯の温度を調整する。

 

「……面倒くさいな、これ」

 

 ちょうどいい温度になったらシャワーヘッドを元の場所に戻して、お湯を全身に浴びる。

 しばらく洗い流してから髪と体を洗ってしまい、そのままお湯を溜めて湯船に浸かることにした。

 今日はお休みで予定も無いしゆっくりするとしよう。

 

「はふぅ……」

 

 湯船に横になって弛緩した声を漏らす。

 やっと心も体も落ち着いてひと心地ついた心境だ。

 

「昨日はすごかったな……」

 

 お湯に顔を半分沈めながら、昨日のことを思い返す。

 精力増強サプリを飲んでオナ禁をしていた蒼汰は、まるで飢えた獣のようだった。私に対する気遣いも最低限で、本能を剥き出しにして襲ってきた。

 

 生理で少し日が開いてしまったこともあり、最初はちょっとだけ怖かった。

 だけど、蒼汰が私を求める姿は少し滑稽なほど必死すぎていて。まるで大きな子供のようだなって思ったら、すこし心に余裕ができた。

 

 それに、「ちょっと待って」って言ったら、ちゃんと手を止めて待ってくれたし……

 

 いつの間にか指を絡ませて握られていた蒼汰の大きな手を握り返すと、すごく安心することに気づいた。

 

「それにしても……」

 

 蒼汰はもうちょっと女の子の扱い方を覚えるべきだと思う。

 あいつの抱き方はいささか以上に荒っぽい。もし治癒魔法が使えなかったら、私の体は今頃酷いことになっていただろう。

 

 私自身はこのままでも問題ないけど、将来蒼汰に恋人ができたときのことが心配だ。少し責任を感じないでもないので、今度優奈に相談してみようかな?

 

 お湯に浸かりながらそんなことを考えていたら、突然入口のドアが激しくノックされた。不意をつかれて体がビクッと震える。

 

「頼むアリス、開けてくれ!」

 

 ドアの外からは切羽詰まった蒼汰の声。

 

「ま、待って。今、お風呂入ってるから――」

 

「無理ぃ!! しょんべんが漏れそうなんだ!」

 

「え、えええっ!?」

 

 仕方ない。

 私は片手で胸を隠しながら、浴室のドアのロックを外すと、勢いよく全裸の蒼汰が飛び込んできた。

 

 蒼汰は便器に向かって仁王立ちすると、手で半立ち状態のそれを持ち照準を合わせて体を弛緩させる。

 

「ふぃぃ……」

 

 筒の先端から放たれた水流が放物線を描いて、便器の中でちょぼちょぼと音を立てる。

 湯船に戻って腰を下ろした私はその様子を特等席で鑑賞させられることになった。

 狭い空間にツンと漂ってくるアンモニアのにおい。

 やがで、だんだんと水の勢いが弱まってきて、放出が終わる。

 蒼汰は小さく震えて先っぽの水分を飛ばすと、トイレのレバーを捻って水を流した。

 

 用を足し終えて出ていくと思っていたら、何故か蒼汰は立ったままこっちを見ていた。

 

「……そんなにじーっと見るなよ」

 

 今更になって少し恥ずかしくなったのだろうか。

 それにしては全く隠そうともしてないけど。

 

「その……なんだか懐かしくてね」

 

 蒼汰がおしっこする姿なんて珍しくもない。並んで立ちションなんて日常茶飯事だったし。

 だけど、それはもう私はできなくなってしまった。

 おしっこしてもおしりが汚れることもないし、手軽で少し羨ましい。

 

「ああ……そりゃそうだよな」

 

 だけど、蒼汰が少しだけ残念そうなのは何故だろう。

 

「……もしかして、私がえっちな気持ちで見てるだなんて思ったりした?」

 

「あ、いや、その……」

 

 図星か。

 なんで私が物欲しげにそんなものを見ないといけないのだ。

 

「はぁ……エロ漫画の読みすぎだよ」

 

 これは本格的に矯正しないとまずいかも。

 私が真剣に蒼汰のことを憂えていると、視界に入っている蒼汰のアレがゆっくりと鎌首をもたげてきて――

 

「……なんで大きくしてるのさ」

 

「それな。じーっと見られてると、その……わかるだろ?」

 

 わかるか、馬鹿。

 蒼汰が見せつけるようにこちらに向き直ると、私の顔の正面で、元気になったソレがびょいーんと跳ねた。

 

「ちょ!? そんなのこっちに向けないでよ、汚い!」

 

 慌てて私は浴槽の奥に逃げる。

 蒼汰はそんな私の反応に唇を尖らせる。

 

「その態度はさすがに傷つくぞ」

 

「だって、蒼汰の洗ってないじゃん。ここまでちょっとにおってきたよ」

 

 そこは一番臭う場所と言っても過言ではないと思う。

 汚いモノのにおいを嗅いだり嗅がせたりして興奮する性癖があるのはわからなくもないけど、私にとっては単に汚いし衛生的でもないのでそういうのはノーサンキューだ。

 

「そ、そうか……」

 

 さすがににおいを指摘されるのはこたえるらしい。

 蒼汰は上も下もしゅんなって元気がなくなった。

 

「私はもう出るから蒼汰も体洗えばいいと思うよ」

 

「……一緒に入らないか?」

 

「やだよ」

 

 二人で体を洗うにはユニットバスは狭すぎる。

 それに蒼汰は体を洗うことを口実にして、私にエロいことしようとしてるのバレバレだし。

 いや、べつにすることはいいんだけど、せっかくさっぱりしたのに、洗っていない蒼汰にベタベタされるのは嫌だ。

 

 ほんと蒼汰は女心がわかっていないなぁ……

 

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