異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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これからのこと

「あちらの準備が整うまで1ヶ月くらいかかるだろう。それからこちらで編入の手続をするから、幾人は二学期から通学するようになると思う」

 

 今は6月だから2ヶ月くらい余裕があるのか。何をしよう? アニメや漫画を見る他に何処か小旅行とか行けたりするかな……可能なら修学旅行のリベンジとかしてみたい。

 

「やらないといけないことは多いぞ。まずは、転入試験の準備だな」

 

 俺の中でのウキウキは一瞬で霧散した。

 

「……転入……試験……?」

 

「当たり前だろ? 高校には試験を受けなくては入れない」

 

 想像もしていなかった。昨年高校受験が終わって肩の荷が降りたばかりだってたのに、もう一度だなんて……

 

「後は高校の一学期分の範囲の勉強だな。入学したはいいが勉強についていけなければ話にならないからな」

 

 ……それだけでも結構大変ですよね?

 

「後は言葉遣いと仕草を直さないと。いつまでも男の子のままじゃみっともないわ」

 

 と、母さん。

 

「……直さないとダメ……かな? ほら、ボーイッシュな娘とかいるし」

 

「男性的な女性と、所作がガサツなのとは別物です。完璧な女性になれとは言いませんが、世間に出る以上、女性としてみっともないような真似は私が許しません」

 

「ふふふ、お兄ちゃん頑張って!」

 

「他人事じゃないですよ優奈? あなたも年頃の女性なのに行動が大雑把なことが多いのが目につきます。この際ですから、幾人と一緒に直しなさい」

 

「うげ……地雷踏んじゃった……」

 

 巻き添えを食らって注意される優奈。

 ……ふん、他人の不幸を笑うからだ。

 

「と言っても、女性らしくと言っても俺は一体どうしたら……」

 

「まずは、一人称は俺ではなく私にする。それから、乱暴な言葉遣いをやめること、これだけでも大分違うと思うわ。後は優奈の話すのを見倣って徐々に身につけるようにするといいわ」

 

「う……それってもしかして家でも?」

 

「もちろんです。あなたは外出して他人と話す機会なんて多くないのだから、家族で慣らしていくしかないでしょう?」

 

「……わかった、気をつけるよ」

 

「合わせてあなたの呼び方も今後はアリスで徹底するようにします。こちらも慣れておいた方が良いですから。みんなもそれでいいわね」

 

 かくして、16年間付き合ってきた幾人という名前と、呆気なく別れを告げることになった。

 

「……がんばろうね、アリス!」

 

 何から何まで前途多難。ようやく定まった日常に向けての方針だけど、その前にこなさないといけない課題の多さに俺は思わず溜息をついてしまう。

 

 ……え? 一人称が私じゃないって? ……心の中で思うくらいは勘弁してほしい。

 

 それから夕食まで俺は優奈と転入試験の対策をした。

 ホームページで調べたところ、転入試験の実施は7月29日、試験教科は国語、英語、数学、それから面接があるらしい。

 転入資格について父さんに聞いたら、それは心配しなくて良いとのことだった。日本人の血を四分の一引くクォーターである設定上の俺は現地の日本人学校に通っていて、高校の一学期までの単位はあちらで取得していることになるらしい。

 試験内容はほぼ高校受験と同じ、つまり中学生の頃勉強した範囲となる。

 一年間も勉強から離れていた俺は大分頭から抜けていて、先日まで受験生であった優奈の助けがあるのは正直頼もしかった。……何気に優秀なのだ、この妹。

 

「……優奈ってここまで勉強できるのに、どうしてヒラコーに行くことにしたの?」

 

 優奈の頭ならもっと上のレベルの学校を目指せたはずだ。

 

「家から近いし、お兄ちゃんも行ってた学校だったから。それに、ほら、当時あんまり受験勉強に集中って気になれなくて……」

 

 優奈は顔を逸らして言いづらそうにする。

 それで気がついた……俺のせいだ。

 

「ごめんね、私のせいだよね……受験で一番大事な時期に居なくなってしまったから……」

 

 申し訳なくなって俯いていると、頭に何か柔らかい感触が――優奈の手が俺の頭の上に乗っていた。

 顔をあげるとにっこり笑った優奈が俺を見ていた。

 

「ほんと、気にしないで。平山高校(ヒラコー)選んだのはあたしなんだから。ここの制服かわいいしクラスもいい人が多いから、全く後悔なんてしてないもん!」

 

 ……そうか、学校を楽しめているなら良かった。

 

「それに、平山高校(ヒラコー)に行ってたからこうやって、アリスのお手伝いもできて一緒に学校生活がおくれるんだから。それって本当に嬉しいんだ、あたし」

 

 そんなことを言いながら優奈は俺の頭を撫でる。

 感情が昂ぶって頬が熱を持つのを感じる……あぶない、優奈が妹じゃなかったら惚れてしまうところだった。

 

「……ありがとう、優奈」

 

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