異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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洗い場にて

 俺は優奈に背中を押されるようにして浴室に入った。それから、導かれるままにシャワーの前の椅子に座る。

 

「それじゃあ、髪の洗い方からね。まずは、髪を濡らす前に櫛で梳かすの」

 

 優奈はそう言って俺の髪に櫛を当てる。髪に触れられる感触が気持ち良い。途中で櫛を渡されたので、自分でも梳いてみるとさらさらと白銀の髪が流れていった。

 

「それから、お湯でしっかりと30秒くらい流してね」

 

 優奈はシャワーからお湯を出して温度を確認した後、俺の髪に当てた。

 心地よい温もりが広がる。優奈は髪を指で漉かしながらお湯を髪に浸透させていく。

 

「次はシャンプーを手で泡立てて、頭皮を指の腹でやさしく、マッサージするように馴染ませていって……あ、そんなの使っちゃダメよ? こっちを使って」

 

 今まで俺と父さんが使っていたリンスインシャンプーはそんなの扱いされた。優奈に言われたシャンプーを手に取り泡立たせて頭につけていく。優奈の髪と一緒の良い香りが漂ってくる。

 

「その後は、毛先にも泡を行き渡らせて優しく洗い上げるの」

 

 髪に泡立たせたシャンプーを行き渡らせる。長い髪はそれだけでかなりの手間だ。

 

「終わったらシャワーで綺麗に洗い流してね」

 

 再びシャワーを髪にあててシャンプーを洗い流していく。

 

「シャンプーが終わったら次はコンディショナーを毛先から半分くらいまでつけて――そうそう毛穴には、つかないように。それが済んだらシャワーで流して髪はおしまい」

 

 俺は優奈に言われるままにやり終える。

 

修復(リペア)があるし、ここまでしなくてもいいんじゃないかな……」

 

「結果として傷んでしまうものは仕方ないけど、最初から傷めても構わないだなんて、女の子が髪をそんな扱いしちゃダメよ!」

 

「……はぁい」

 

 言いたいことは分かる気がする……ただ、ちょっぴり面倒くさいと思ってしまうのだ。

 

「次は体ね。今まではどうやって洗ってたの?」

 

「そこの垢すりタオルにボディソープつけてごしごしーっと」

 

「何やってるの! そんなことしたら肌が痛んじゃうでしょ!?」

 

「うん、肌が赤くなってひりひりしちゃって……だから、昨日は手で洗ったんだ」

 

「……手で洗うってのは良いと思うわ。アリスは肌が敏感みたいだし。そういえば、アリシアはどうやってたの?」

 

『わたしは水で流すくらいでした、肌や髪が痛んだら修復(リペア)してましたので……』

 

「全く、あなた達はもう……あたしが見本見せるから一緒にやって覚えてね」

 

「わかった」『わかりました』

 

「まず、体を洗う前にシャワーで体をしっかり洗い流す。といっても、普通は髪を洗うときに一緒に体も流すから気にしなくていいわ。……本当は髪を先に洗ってから体を洗わないといけないんだけどね」

 

 そう言いながら、優奈はシャワーで自分の体を流す。一般家庭である我が家の浴室にはシャワーはひとつしかない。優奈と一緒にシャワーは使うのは無理だった。ついでに洗い場も2人で使う分にはやや狭く頻繁に肌が触れ合ってしまっている。

 

「次はボディソープを少し手にとって泡立たせてから体を洗っていくの。汗のかきやすいところとか、汚れやすいところとかは念入りに、でも擦ったりはしないで優しくね」

 

 そう言って優奈は泡立たせたボディソープを自分の体に塗り広げていく。

 優奈の手が彼女自身の肌を這いまわる様子はとても艶めかしくて、なんだかいけないものを見ているような気分になる。

 

 そんな気持ちに当てられてしまいそうだった俺は、自分がすべきことを思い出して、同じようにボディソープを手で泡立たせて自分の体に塗り広げていく。

 

 首筋、肩、腕、脇、……胸……、お腹、お臍、腰、……足のつけ根……、ふともも、ふくらはぎ、足元。

 

 ……目の前の優奈の動きに合わせるように自分も無心に手を這わせていく。

 

『……んっ……』

 

 くすぐったいのか、時折アリシアの吐息が溢れているが意識しないことにした。

 お風呂にまだ浸かってもいないのに、体がのぼせたように熱くなっている気がする。

 

 ……少しシャワーに当たり過ぎたのかもしれない。

 

 一通り洗い終えて一息ついていると、俺の様子を見ていた優奈から指摘が入る。

 

「……アリス、お股の間はちゃんと洗った?」

 

「……そ、それは……その……」

 

 ツッコミをうけて俺は頭が真っ白になる。体を洗うときに優奈がソコを洗っていたのはわかった。だけど、そのことに気づいた俺は慌てて優奈から視線を逸らしたので、それ以上は見ていない。

 

 だから、そこをどうやって洗ったらいいのかなんて分からなくて……表面をこわごわと撫でるくらいしかしていない。

 

「恥ずかしい気持ちはわかるけど、ここは汚れやすいところなんだから、しっかり洗わないと……」

 

「……で、でも……私……そんなこと……」

 

「ちゃんと洗わないと(にお)っちゃうよ?」

 

「……それは、嫌だ。でも、俺は触ったことなんてトイレのときくらいで……本当にどうしたらいいか、わからなくて……」

 

 俺は思わず涙目になってしまう。

 変に触って傷つけてしまったらどうしよう? 処女膜とか破れたりするんじゃないか。

 けど、俺のせいでアリシアのそこが臭ってしまうのは嫌だ。

 

「はぁ……アリスが嫌じゃなかったら今日だけ私が洗ってあげてもいいけど……どうする?」

 

「……お願い」

 

 自分が触るのを回避できるならと、そのときは藁をもつかむ思いで言った。

 だけど、冷静になって思い返すととんでもないことをお願いしてしまってたね。

 

 ……その後のことは正直思い出したくない。

 

 ボディソープを泡立たせた指の感触を甘く見ていたよ、俺は。

 優奈は俺の様子に気づかないふりをしてくれてたのはありがたかったかな、うん……

 

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