異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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クラスメイト

「如月さん、さっきはほんとごめんね……」

 

 ホームルームが終わって直ぐ、私の机の前にしゃがみ込んで顔をちょこんと机の上に出して話しかけてきたのは、さっき俺と優奈との関係を聞いた女生徒だった。小柄でショートカットの見るからに活動的な少女だったが、今は全身でしょんぼりとしていた。

 

「純は悪気はないんだけどいつも一言多いんだから……反省なさい」

 

 純と呼ばれた少女の隣に立つ長身のポニーテールの娘はあきれた顔で言う。その一言で少女はさらに小さくなってしまう。

 

「その、本当に気にしないで……遅かれ早かれ話さないといけないことだったと思うし……」

 

 あんまりへこまれると、嘘をついてるこちらが罪悪感で辛い。

 それにしても、この娘は素直でいい娘みたいだし仲良くなりたいな。

 

「そんなことより……その、私と友達になってもらえませんか?」

 

 だから、話題を変えがてらそう聞いてみる。

 少女は一瞬きょとんとした後、花が咲いたような笑顔になって応える。

 

「……! うん、お安い御用だよ! ボクは海江田純(かいえだじゅん)、純って呼んで!」

 

「純だね。私のこともアリスって呼んでほしい」

 

「わかったよアリス!」

 

「良かったわね、純。……その、如月さん。私もあなたと友達になりたいのだけどいい? きっとあなたとは話が合うと思うの」

 

「こちらこそ是非! ……って、私どこかで会ったことありました?」

 

 なんだか俺のことを知っているような口ぶりだけど……同年代の女性にアリスの知り合いなんて記憶に無い。

 

「3ヶ月くらい前にショッピングモールの書店で少しだけお話ししたんだけど憶えてるかな?」

 

「あー! あのときの書店員さん!」

 

 思い出した! 本棚の高いところの本が取れなくて困っていたところを助けてくれた書店員さんだ。

 

「憶えてくれてたみたいで嬉しいわ。私は安藤文佳(あんどうふみか)、私も名前で呼んでもいい?」

 

「勿論!」

 

「よろしくねアリス……私も名前で呼んでね」

 

 そう言って文佳は手を差し出してきた。

 

「わかった、文佳。こちらこそよろしく」

 

 俺はそれを握る。男とは違う柔らかく小さな女性の手の感触だ。

 ……もっとも、今は俺の方がさらに小さい手になってしまっているのだけれど。

 

「ふたりとも抜け駆けずるい!」

 

「はいはーい! 私もアリスちゃんと友達になりたーい!」

 

 これまで様子を見守っていたらしいクラスの女子がわっと俺の机を取り囲む。

 

「よ、よろしく……」

 

 ……というか、みんな距離が近いっ!

 

 女生徒がひしめく空間はなんだかいい匂いがしてクラクラする。

 次々に名乗るクラスメイト達と俺は挨拶を交わしていく。

 

 そのうち挨拶のときに俺を抱きしめてきた女子が居て、それを見た他の女子が「ズルい私も抱きしめたい」って抱きつきたがって、俺はひっちゃかめっちゃかになる。

 さいきんのこうこうせいははついくがよいね。

 ……いろいろ柔らかいものがあれやこれやにあたって大変だった。

 

「はいはい、みんなー! うちのアリスと仲良くしてくれるのは嬉しいけど、そのくらいしといてあげて。この娘あんまり同世代の友達付き合いに免疫が無くて、慣れないことで目を回してるみたいだから」

 

「あ、ごめん……」

 

 優奈の声でようやく俺は解放された。

 

『イクトさん、良かったですね。いろいろ良くしていただけたみたいで』

 

 頭のなかにアリシアの抑揚のない平坦な声が聞こえてきて俺は顔色を失う。

 

『ち、違うんだ、アリシア! これはただのスキンシップ! ……そ、そうスキンシップだから、やましい気持ちなんて無いから!?』

 

『別に私は気にしてませんから』

 

『いや、絶対気にしてるよね!?』

 

『その体はイクトさんの体ですから、お好きにしていただいて構いませんよ? 大きな胸の柔らかさを堪能して思わず頬肉がだらしなく緩んだりなんかしても、それはイクトさんの自由ですから』

 

「……アリス本当に大丈夫?」

 

 急に青ざめてしまった俺を心配してクラスメイトが声を掛けてくれるのだが、俺は上の空でアリシアに脳内で弁明をしていた。そんな俺の様子を見て過度なスキンシップを控えるようになってくれたのは、俺の心の平穏のためには良かったことだと思う。

 ……正直、惜しかったとか思っていない……思ってないんだからね!

 

 アリシアの機嫌が直ったのは、その後に行われた始業式が終わる頃だった。

 放課後に図書室でアリシアが希望する本を読むということと、彼女が食べたことのないスイーツを食べることを約束することで、なんとか機嫌を直してくれたのだった。

 

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