異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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プールの授業(その1)

 その日は朝からどこか調子が悪かった。

 目覚ましが鳴っても起きられず、部屋に様子を見に来た優奈とアリシアの二人の大合唱で強制的に起こされた。

 昨日読んでいたネット小説の続きが気になって少しだけ夜更かしをしてしまったのが原因だと思うのだけど、それにしても眠い。

 なんだか少し頭も痛い気がする。

 ……疲れが溜まっているのかな? なんだかんだで学校生活は刺激が多い。

 

 手早く朝食を取り、洗面所で朝の準備を終らせる。

 大分、身だしなみの手際が良くなってきたと思う……俺も女子としての暮らしに大分慣れたかな。

 

 そんなことを考えてると洗面所に優奈が顔を出した。

 

「アリス、今日の体育の準備はしてる?」

 

「え? ……体操服は用意してるけど?」

 

「やっぱりわかってなかった。今日の体育はプールだよ? うちの学校は9月一杯はプールの授業があるって言ったじゃない」

 

「そうかプールか……って、プール!?」

 

「前から話してたでしょうに……ちゃんと学校指定のは買ってあるんでしょ?」

 

「う、うん……一応」

 

 学校用品を揃えるときに水着一式も合わせて購入してある。だけど、スクール水着を着る自分の姿を考えるのが嫌で、買ったっきりタンスの奥に仕舞いこんでいた。

 

「水着と水泳帽子とアンダーショーツはセットで買ってたよね。……はい、これバスタオルとフェイスタオル、これを一緒に水泳バッグに入れてね」

 

 優奈から押し付けられた2枚のタオルを受け取る。

 

「本当は事前に着る練習をした方が良かったんだけど、もう、そんな時間はないわね……ほら、早くしないと遅刻するよ!」

 

 俺は慌てて自分の部屋に戻ると、まずは急いで制服に着替える。

 それから、タンスの奥に入っていた新品の水泳セットをバッグに詰め込んでいく。

 姿見の前に立ち、リボンの歪みやスカートの裾を整えたりしてると、いよいよ危うい時間になっていた。

 

「アリス! もう走らないと間に合わないわよ!」

 

 俺は慌てて階段を駆け下りて玄関に向かう。かかとの低いローファーを履いて優奈と二人玄関を飛び出す。

 

「「いってきます!」」

 

 うー、なんでこんな日に限って寝坊しちゃうんだろ。アリシアも優奈も、もっと早く起こしてくれてたら良かったのに!

 

   ※ ※ ※

 

 プールの授業はお昼休みの前の四時間目で、それは俺にとって不幸中の幸いだった。

 水着は着るときよりも脱ぐ方が大変みたいで、それを次の授業の時間を気にせずに着替えることが出来るからだ。

 

 しかし、女子の中に混じって水着に着替えるのか……。

 

 アリシアの体になって女性の体に対する知識や経験は随分と増えた。

 だけど、俺が今まで見たことのある女性の裸は俺自身と優奈――家族のものだけだ。

 日常に接しているクラスメイトの女子の裸というのは意味合いが随分と異なる。

 

 俺は午前の授業を悶々として過ごすことになった。

 ホームルームや休み時間にクラスの女子から話しかけられても、この後一緒に着替えるのかと思うと、普段通り接することが出来ず、ぎくしゃくしてしまう。

 唯一事情がわかっている優奈は、「仕方ないわねぇ」という顔をしながら俺のフォローをしてくれていた。

 朝から続く頭の痛みに加えてお腹まで痛み出してきたような気がして、気分が重くなる。

 

 三時間目の授業中、俺は我慢できなくなり念話を使って優奈に話しかけた。

 

『……ねえ、優奈どうしよう?』

 

『どうしようと言われても……普通にすればいいんじゃない?』

 

『普通に出来ないから相談してるんじゃないか。優奈だって男子に着替え見られるのは嫌だろ?」

 

『そりゃ嫌だけど、あなたは如月アリスであって正真正銘の女の子なんだから問題ないでしょ』

 

『だけど、中身は男子高校生なんだし、なんだかクラスメイトを騙してるみたいで……』

 

『そんなの騙してるに決まってるじゃない。いまさら何言ってるの。……だから、最後まで責任もって騙しきりなさい。そうすれば誰も傷ついたりしないんだから』

 

『騙してる……そうだよな。そんなのは当たり前だったな』

 

『……別にそんなに重く考える必要は無いと思うわよ。堂々と裸を見られてラッキーくらいでいいんじゃない?』

 

『そ、それは、さすがに……』

 

『いずれにしろ、同性の裸を見る機会なんてこれから嫌というほどあるんだから。物珍しく思えるのなんて最初のうちだけよ』

 

『そう……なのかな……?』

 

『そんなものよ』

 

 当たり前のように言う優奈のおかげで気持ちは少し楽になった。

 そうこうしているうちに三時間目の授業は終わりを告げ、俺はプールの横にある禁断聖域の女子更衣室に足を踏み入れることになるのだった。

 

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