異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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プールの授業(その4)

 水中の世界は静かで周囲の喧騒とは無縁で、とても落ち着く空間だった。

 水中(アクア)呼吸(ブリーズ)を発動させた俺は水中で地上と変わらず呼吸をすることが出来る。

 

『やっぱり、水の中って気持ちいいですねぇ……』

 

 アリシアはしみじみと言う。その様子に以前アリシアから聞いたことを思い出す。

 

『そういえば、アリシアは水底の祭殿に毎日通ってたんだっけ』

 

『そうですよ。私は水の巫女ですから、日課として湖の祭殿でミンスティア様に祈りを捧げていたのです』

 

『そっか……だったら、夏の間に泳ぎに行っておけば良かったか?』

 

 今年の夏はいろいろと忙しくて泳ぎに行く機会は取れなかった。俺自身が水着姿になるのを嫌がったというのもある。

 こんなにアリシアが喜ぶんだったら、多少無理してでも行っておくべきだったかな。

 

『大丈夫ですよ。毎日のお祈りはお風呂で済ませてますし、わたし自身は毎日お風呂に入れる事で満足してますから』

 

 ……それでいいのか、水の巫女。

 

『……来年は行こうかね、海』

 

『そうですねぇ……行ってみたいです』

 

『約束だな……っと、そろそろ水面に出ないと……』

 

 気が付けば水に潜っでからずいぶん経つ。溺れていると心配されるかもしれない。

 俺はプールの底を蹴って水面に顔を出した。

 

「うわっ、びっくりした!? アリスってば神出鬼没だね」

 

 突然水中から現れた俺に驚く純と文佳。

 

「それにしても、随分長く潜ってたわね……ちょっと心配したわよ?」

 

「私、潜水にはちょっと自信あるんだ!」

 

 一日くらいは余裕で潜っていられる、とは流石に教えられないけれど。

 

 今は授業で25mを何本か泳ぎ終わった後の自由時間だ。各人授業終了のチャイムが鳴るまで、思い思いにプールで遊んでいる。

 授業前にあったあれやこれやは、授業でひたすら身体を動かしす事で、記憶の片隅に置き去りにする事に成功していた。

 

「いやーねー、男子ってば。どいつもこいつも視線がやらしいんだから」

 

 中央のラインで男女は隔てられてはいるが、男子達の視線や話題はラインを越えた水着姿の女子に注がれている。

 元男子の俺からすると、気持ちは大いに解るというのが本音だったりするので、純の愚痴には苦笑いで返しておいた。

 

 特に純にひときわ熱い視線が注がれているのには理由がある。童顔で小柄の純の胸部には、その体格に反した立派な大きさの膨らみが存在を主張していた。アンバランスなその肉体はぶっちゃけエロい。

 

「んー、何だかアリスの視線も嫌らしいぞぉ?」

 

「そ、そんなこと……」

 

 図星をつかれた俺はどきっとしてしまう。

 純はそんな俺の様子ににんまり笑うと、

 

「そんなアリスはこうだーーっ!」

 

 と、俺に後ろから覆い被さり、脇の下から両腕を潜らせて俺の両胸をがっつり掴む。

 

「ひゃっ……!」

 

「ふむふむ、これはなかなか……」

 

 純はその状態でわきわきと手を動かす。

 

「……ちょ……純……やめっ……!」

 

 俺は身体をくねらせて、できた隙間に体を滑らせて水中に逃げ込む。幸い、引っかかりの少ない体付きなので、スルリと逃げ出すことが出来た。(つら)い。

 

 玩ばれた胸を腕で抱きながら、俺はプールの底を漂う。

 

 ……この屈辱晴らさでおくべきか。

 

『……なぁ、アリシア』

 

 触っていいのは、触られる覚悟のある奴だけだ。

 

『わかってますよ、イクトさん……やりかえしましょう!』

 

 流石に潜った修羅場の数が違う、アリシアとは以心伝心だ。

 

『ふふ、あの無駄に育った乳を衆目の前で揉みしだいてやるのです……!』

 

 ……アリシアさん、ちょっとこわいです。

 

 俺は水中で動き回って機会を伺う。最初は俺の姿を目で追っていた純もやがて姿を見失ったらしく、きょろきょろと辺りを見回している。

 俺は純の後背をキープして徐々に静かに距離を詰めていく。気分は某鮫の映画だ。脇が疎かになったその瞬間に、俺は両手を伸ばして脇の下から潜らせた。

 

「隙ありーー!」

 

 後ろから純に飛びついた俺はその双球を鷲掴みにした。

 ふにゃん、とでも聞こえてきそうな感触と共に俺の指がやわらかさに埋まる。到底手の内に収まりきらない膨らみから、弾力が伝わってくる。

 

「ちょ……やっ……くすぐったいっ……!」

 

 俺は夢中になって揉みしだく

 ふにふに、ふにふに。

 

「やぁっ……ボクが悪かった! ごめんってば。だから、ストップ!」

 

 痴態を晒す俺達の姿は、周囲からの注目を集めまくっていた。特に男子からの視線が熱い。窮屈そうに前屈みになっている男達の事情は俺には良く判る。

 

 ……このくらいで勘弁してやるか。

 

「……それじゃあ、私はこの辺で」

 

 俺は水中に潜って、視線から離脱した。

 

「ぼ、ボクを一人にしていくなぁ!?」

 

 ふふん、自業自得だよ。

 

 純から離れた俺は、プールの底に腰を降ろしてひと心地つく。

 

『水着越しなのに、あんなに柔らかいんですね』

 

 アリシアが俺に話しかけてくる。

 

『ああ……俺もびっくりした』

 

 水中で手を動かしてみて、先程までの感触を思い出す。

 その後、ふと、両手を自分の胸にやり、ふにふにと動かしてみる。返ってくるのはあまりにも控えめな感触でしかなく。

 

『全然違いますね……』

 

『うん……』

 

 俺達は二人して溜息をつく。

 こぼれた水泡が、ぶくぶくと水面に上って消えた。

 

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