異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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女になるということ(その3)

 ナプキンのつけ方を教えて貰った俺は体操着に着替えてトイレから出た。

 ショーツにつけたナプキンはごわごわしていて股間の部分に違和感がある。

 優奈の話だと二時間おきくらいで交換しないといけないようだ。最初の三日くらいは量が多いので、それこそ休み時間毎にトイレで状況を確認した方がいいらしい。

 ……話を聞くだけでげんなりした。

 

 俺は優奈に連れられて保健室に入る。

 女性の保健医の先生への事情の説明は優奈がほとんどしてくれた。

 優奈は先生に初潮を迎えたことも話してしまっていて、この歳で初めてという事を変に思われないか心配だったが、そういう娘もときどき居るという話を先生から聞いて少し安心した。

 

 ちなみに今俺が履いているショーツはここで借りたものらしい。借りたものはそのまま返さずに、新しい物を後日学校に収める仕組みになっているようだ。

 

 俺は保健室のベッドで横になることになった。寝不足も体調不良の理由のひとつだったので正直ありがたい。

 保健室の飾り気もなく真っ白なベッドに体を横たえると、安心感で眠気が直ぐにやってきた。

 優奈がベッドの周りのカーテンを引いた。周りの景色が白く隠される。

 

「ゆっくり寝てなさいね。お昼にまた様子見にくるから」

 

 そう言う優奈は紙袋を持っていた。中には汚れた衣類が入っていて、スカートは優奈が後で洗ってクリーニングに出してくれるらしい。本当に優奈には頭が上がらない。

 

「ん……おやすみ……優奈、いろいろありがとう」

 

 俺がお礼を言うと、優奈は俺の額をなでて「よしよし」としてくれる。

 扱いが子供っぽいと不服に思わなくもなかったが、俺は黙って目を閉じて身を任せた。

 髪を梳く指の感触が心地よくて、頬が自然とへにゃっとするのがわかる。

 

『これ、気持ちいいですね……すごく、安心します……』

 

 そんなアリシアの声を遠くで聞きながら、俺は意識を手放した。

 

   ※ ※ ※

 

 お昼休み、様子を見に来てくれた優奈と純と文佳の4人で保健室を出た俺達は、お昼の前にトイレに立ち寄った。

 汚れや匂いに辟易としながら、使用済みナプキンを丸めて、新しいナプキンの包装紙で包んで、トイレの隅にあるエチケットボックスに捨てる。

 それから、ショーツに新しいナプキンをつけた。血を吸ったナプキンは重たくて不快感があったので、新しいナプキンに交換するだけで気持ちが軽くなった気がする。

 

「大丈夫だった?」

 

「うん、なんとか……」

 

 石鹸で手を洗いながら俺は応える。

 相変わらずお腹は重たくて痛みは続いていた。

 これが毎月あると考えると気が遠くなる。

 単純に女の体最高って考えていた昨晩の自分を全力で殴り飛ばしたい気分だ。

 

 お昼はみんなと中庭で食べることになった。

 優奈が買ってくれた物はホットココアとくるみパンで、食欲が減退している俺でも美味しく全部食べられた。

 

「生理中は食べ物にも気を配った方が良いわ。カフェインや乳製品、体を冷やす物、砂糖や脂肪が多いものは控えた方がいいわね」

 

 とアドバイスしてくれたのは文佳。

 

「ボクはそんなの気にしたことないよ。只でさえ気分が憂鬱になるんだからケーキとか美味しいものを食べたのでいいじゃん」

 

 と純は言う。

 優奈は、気にはするけど美味しいものが食べたいときは食べるという折衷タイプのようで。

 生理に対する接し方は本当に人それぞれみたいだ。

 

「ボクも初めては小学校の授業中に来てさー。クラスのバカ男子がからかってきたもんだから蹴り飛ばしてやったのよ」

 

 と、純は笑いながら言う。他にも初めて生理が来たときのこととか失敗談とかをみんなで話しながら昼休みを過ごした。

 初潮を迎えた俺の事を気遣ってくれてのことだろう、ありがたいことだ。

 

 午後の授業も休んで保健室で寝ていることにした。

 体調は相変わらずだったし、何より今授業を受けるなら体操着で受けないといけなくて、今日の今日でその格好は悪目立ちしすぎると思ったからだ。

 

 そのままベッドの上で寝て過ごし、放課後迎えに来た優奈と一緒に家路につく。

 途中、クリーニング屋に寄って水洗いしたスカートをクリーニングに出したり、洋品店で返却用の下着と生理用のサニタリーショーツを何枚か購入したりした。

 サニタリーショーツは防水性で汚れが落ちやすい素材で出来ている下着で、ナプキンがフィットする形状になっている物らしい。実用品だけど、かわいいデザインの物をみつけられて、少し気分が良かった。

 

 用事を済ませて帰宅すると意外な人物が俺達を出迎えた。

 如月幾男、俺達の父親だ。

 

「アリス、優奈、おかえり」

 

「パパただいまー」

 

「ただいま、父さん。お帰りなさい。日本に帰ってたんだね」

 

「おう仕事の都合で急にな……アリス制服はどうしたんだ?」

 

「あ……ええと……」

 

「いじめか? もしそうなら父さんに相談してくれよ。そんなやつが居たら、いじめたことを一生後悔したくなるような目に合わせて、アリスに土下座で泣いて謝りに来させるくらいの事くらいなら、父さんにだって出来るんだからな?」

 

 何このモンスターペアレント、怖い。

 そんな台詞を笑顔で言わないでいただきたい。

 

「いじめとかじゃないよ。今日学校で初潮が来ちゃって制服のスカートが汚れちゃっただけだよ」

 

 俺は一瞬言いよどんでしまったが、父さんに生理のことを話すのにそんなに抵抗は無い。なにせ、中身は息子だから。

 

「お、おう……そうか……」

 

 逆に父さんの方が戸惑ってしまっているみたいだ。

 ……気持ちは解る。

 

「それじゃあ、私はお腹痛いから、部屋で休んでるね」

 

「そうか……気をつけてな」

 

 それを言うならお大事にじゃないだろうか?

 普段動揺する姿をほとんど見たことのない父さんの珍しい姿に少し笑みをこぼしつつ、俺達は手洗いうがいをする為に廊下の奥の洗面所に向かった。

 

 ……後で部屋に戻る前にトイレにいって買い置きのナプキンの種類の確認と交換をしておかないと。

 どうやら、ナプキンにも種類がいろいろあるらしい。

 

 ……女の子って大変なんだなぁ

 

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