異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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文化祭初日(メイド喫茶)

 文化祭当日がやってきた。

 2日ある文化祭両日の午前中はクラスの手伝いでメイド喫茶のウェイトレスをすることになっている。

 

 クラスメイトが相当張り切ったらしく、飾り付けられた教室は、普段とは印象ががらりと変わっていた。

 教室の無骨な部分は、どこからか大量に持ってきたえんじ色のカーテンで極力隠されていて、並べてテーブルにしてある学習机も揃いのシックな柄のテーブルクロスを掛けられている。

 椅子がそのままだったりと、一部手がつけられていないところなどがあったりするのもご愛嬌で、むしろ文化祭の手作り感が出ていて俺は嫌いじゃない雰囲気だ。

 

 ウエイトレスの服装は各人の種類こそバラバラなものの本格的なメイド服で、聞くところによるとクラスの誰かのツテで借りる事が出来たもののようだった。

 ちなみに俺用に用意されていたのはミニスカメイド服だった。交換してもらおうとしたが、他に俺が着られるサイズの服は用意されて無くて逃げ場は無かった。

 

「……でも、今日の私には抜かりはないんだよ」

 

 こんなこともあろうかと、用意しておいたものがある。

 それは、主にテニスウェアの下に履く重ね履き用の下着で、いわゆるアンダースコートと呼ばれる物だった。

 パールホワイトでかわいいデザイン。スカートの下がもこもこするのは嫌だったので、レースは腰のラインに控えめについているだけの物を選んだ。

 

 期待している男子諸君には悪いけど、今日の私はパンチラのサービスをすることは一切無いからね、ふふん。

 

   ※ ※ ※

 

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 

 テーブルを片付けた後、新しいご主人様を席に案内する。

 朝から客はひっきりなしで、接客に慣れていない俺なんかはてんやわんやだった。

 一応基本的な接客のやり方と挨拶の仕方等は事前に放課後のクラスで簡単な研修を受けてはいたが、いきなりここまで賑わいを見せるのは想定外だった。

 アルバイト経験者のクラスメイトを中心に、本来は裏方に徹する予定だった男子もテーブルの片付けや会計等に応援に出てなんとか回せていた。

 

「ご主人様、ご注文は何に致しましょうか」

 

 こういうのは照れたら負けだ。

 接客用の笑顔でちゃきちゃき応対する。

 

「12番テーブル3名様、コーラ1、コーヒー1、アイスティー1でーす!」

 

「8番テーブル2名様ご会計でーす!」

 

「「いってらっしゃいませ、ご主人様」」

 

「3番テーブル2名様おかえりなさいましたー」

 

「「おかえりなさいませ、ご主人様」」

 

「コーヒーにミルクが無いんですけど」

 

「申し訳ございません、直ぐにお持ちします」

 

「き、君を注文したいんだな」

 

「申し訳ありません、当店のメイドは規則により特定のご主人様にお仕えすることは出来ないのです」

 

「あ、お客様。当店のメイドは恥ずかしがり屋なので写真撮影はご遠慮下さいませ~」

 

 ……なにこれ、忙しい。

 

 用意されたメニューが「メイド手作りクッキー(ご主人様のことを思って精魂込めて作りました)とドリンクのセット」のみで

注文はドリンクの種類だけ確認するだけでいいからなんとか回っているけど、メニューが複数あったら間違いなく破綻していた。

 

 それにしても、なんだか学校外から来ている男性客がやたらと多いように思える。

 黒っぽい服装で、リュックを持った人が多く、どこか見覚えがあるような特徴のような気がしたが、のんびりと考える余裕は無かった。

 

「あ、あの……午後のトーナメントで勝ったらあなたとデート出来る権利を貰えるって本当ですか」

 

 注文を受けるの際にご主人様からそう聞かれて、そんな話もあったな、と思いだした。

 

「はい。午後のウィソのトーナメントの賞品のネタ枠として、私とデートする権利があるのは了承しております」

 

 そう返答すると周囲がざわめくのを感じた。それでようやく思い至る。

 

 ……この人達ウィソプレイヤーだ!

 

「俺頑張ります!」

 

「他にも豪華賞品一杯みたいですから、頑張って下さいねー」

 

 わざわざ校外から参加しに来てくれる人が居るんだなーと思いながら、ふと今まで来たご主人様を振り返ってみる。

 

 ……あれ? なんだかウィソプレイヤーっぽい人多くない?

 

 そんなことを考えてるとロングスカートのクラシックメイドスタイルにメガネを掛けた文佳が俺に近づいてきて小声で話しかてきた。

 

「……アリス、あなたさっきからときどきパンチラしてるわよ? すごく見られてるから」

 

 あんまり見えないようにと気を使ってはいるけれど、ここまで忙しく動きまわってるとやっぱり時々見えてしまうことはあるらしい。

 

 だけど、それはパンチラでは無いのですよ、文佳さん!

 

「大丈夫だよ、これアンダースコートなの。見えても平気なやつだから!」

 

 俺は得意気に言ったが、文佳は怪訝そうな顔をするばかりだった。

 

「……そう。あなたがそれでいいならいいけど」

 

 そんな俺達の話を聞いていたらしい純が注文の乗ったトレイを片手に近づいてきて一言。

 

「見てる分には普通にパンツにしか見えないんだけど……?」

 

「……え?」

 

 俺はばっとスカートの後ろを抑える。

 

「ちなみに、かわいいの履いてるなーとは思ってた」

 

 それだけ言うと純はご主人様のところに向かった。

 

「……え? ……え?」

 

 俺は困惑する。回りに普通にパンチラしてるって思われてる……?

 俺の『パンチラしたと思った? 残念アンスコでしたー作戦』は、根本が間違っていたらしい。

 ……まだ、当番の時間は1時間もあるのに、これからどうしよう。

 

「大丈夫よ。パンツじゃないから恥ずかしくないんでしょ? いいじゃない減るものじゃないんだし」

 

 そう言って俺の肩にぽんっと手を置く文佳。

 

 減るよ! 減るからね!?

 俺の精神的なヒットポイントみたいなものが、それはもうガリガリと削れていくから!

 

「ほら、ご主人様が呼んでいるわよ? 行きましょう」

 

「ちょ、ちょっと待って……文佳ぁ……!」

 

 一度視線が気になるととても冷静ではいられなかった。

 気のせいか教室に居る人のうちかなりの割合の人が俺を見ている気がする。

 そして、特にスカートの裾に向けられる視線はなんだか舐めるようなねっとりとしたものを感じて気持ち悪い。

 先程まで頼もしいと感じていたアンダースコートも今では心許なく感じる。

 

 事あるごとにスカートの裾を抑えて、態度もおどおどとしてしまい、接客に集中出来ない有様で、何度かミスをやらかしてしまった。

 

「別にアンスコくらい見られてもいいじゃないの。恥ずかしがると注目を集めて余計目立つだけなのに……」

 

 優奈は呆れてそんな風に言うけれど、パンツと思って見られるのはやっぱり恥ずかしいから無理!

 

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