お風呂の前に俺は着替えを取りに二階の自分の部屋に行くことにした。
階段を上がって廊下の突き当りにあるドアを開ける。
一年前、修学旅行に出かける前から全く変わらない光景がそこにはあった。
この空間にいると、この一年間が全部夢だったんじゃないかと錯覚してしまいそうで――目眩がした。
『ここがイクトさんのお部屋ですか。綺麗にされているのですね』
アリシアの、のんびりとした声で俺は現実に引き戻される。
……この一年は夢なんかじゃない。
「旅行に出る前に片付けたからな。それに、優奈や母さんが時々掃除してくれているみたいだし」
そう言いながら、俺はベッドに倒れこんだ。
程よいスプリングの弾力が体を受け止めてくれる。
異世界のベッドはスプリングが無くて、同じようにベッドに倒れこんで体を痛めたのを思い出す。
『ふぁ、なんですかこのベッド、すごく柔らかいです! ……ふかふかです!』
布団はひなたの匂いがして、時々干してくれていたことがわかる。
一年近く行方不明だった息子の布団を干しているとき母さんは、どんなことを思っていたのだろう……ふと、そんなことを考えてしまって、目元がうるっときてしまった。
……親孝行しよう。
そのままベッドでごろごろしてると、優奈がお風呂のお湯が入ったことを告げに来た。
俺は箪笥から着替えを取り出した。ある程度サイズに融通がきくであろうTシャツとジャージ、それから下着はボクサーブリーフを出してみた。ゴムが結構しっかりしてるので、なんとかなるだろう……多分。
階段を降りて洗面所に向かう。
洗面所のドアを開けると直ぐにアリシアから驚きの声がする。
『すごく大きい
うちの洗面所は壁の一面が鏡台になっている。洗面所の圧迫感が減るうえに、二人並んで使っても余裕があるサイズで我が家の自慢のスペースだ。
朝、鏡の前で女性陣がにらめっこしていても、朝の支度ができる重宝している造りだった。
アリシアも気に入ったらしい。そういえば、異世界で見た鏡は大分質の悪いものだった気がする。あまり身だしなみに気を使うこともなかったので、気にはしていなかったが。
着替えを置いて、改めて鏡に写る
子供料金で疑われることのないであろうその姿。
だからこそ、これから彼女を脱がせて全裸にするという自分の行為に戸惑いと背徳感を覚えざるを得ない。
自分の体と言われて一時は納得したものの、こうやっていざ脱ぐとなると決意が揺らぐ。
『……脱がないんですか?』
そんな躊躇いに気がついたのか、急かすようにアリシアが言う。
『……脱ぐよ』
俺は鏡台に背を向けて服を脱ぎ始める。
まずは法衣から片方ずつ袖を抜いて、裾をまくりあげて頭から抜き取る。
それから、法衣の下に着ていたスリップを肩から落とした。
残ったのはブラジャーというかやわらかな素材の胸当てで、意を決してそれも脱ぎ去った。
つんとした乳首に布が擦れてその存在を意識させられる。……その桜色が視界に入るたびに心の中がざわめく感覚がする。
上半身裸になったので、次は下半身だ。
とりあえず、苦労して止めた紐パンの紐を解いて落とすーーどうしても目にはいるそこはふっくらとした筋があるだけで、まだ毛は生えていなかった。
それから、ガーターベルトに悪戦苦闘していたら、見かねたアリシアが外しかたを教えてくれて、なんとか外すことができた。
全裸になった俺は、なるべく鏡が視界に入らないようにしながら浴室に向かおうとする。
『イクトさんちょっと待ってもらえますか?』
だが、アリシアに呼び止められてしまう。
『……どうした?』
『姿見に向き合って立ってください』
『でも、そんなことしたらアリシアの裸をーー』
『見てください』
『……へ?』
『さっきから、目を逸らしてばかりじゃないですか。イクトさんは今の自分の姿をちゃんと見るべきなんです』
『……わかったよ』
観念して鏡に向き合って立つ。
鏡の先には生まれたままの姿で恥ずかしそうに立つ
腰まである銀の髪、透き通るような肌、ダークブラウンの愛らしい瞳、ぷっくりとした小さな唇、ほのかな胸の膨らみの先っぽでつつしまやかに存在を主張する桜色のぽっち、なだらかなお腹のラインの先に隠すものもなく割れ目だけがある股間、健康的なふともも。
家族以外で産まれて初めてじっくりと見る女性のありのままの姿はとても綺麗で、俺は思わず見入ってしまう。
『……えっちな気持ちになっちゃいますか?』
アリシアの声に俺の邪な気持ちを見透かされた気がして動揺してしまう。
『そ、そんなこと……』
『いいんですよ、イクトさんは男の人だったんですから。男の人はそうなるのが普通だって聞いてます。こう見えても成人しているんですよ、わたし』
異世界では男女共に15で成人を迎える。そして、結婚したら早々に子供を作ることが求められるのだから、アリシアがそういう知識を持っていることに不思議はないとわかってはいる。
けれど、普段のやや幼い言動との違和感はどうしても覚えてどぎまぎする。
『……それに、こんな体でも、イクトさんがそういう気持ちになってくれるのは嬉しい……かも……』
最後の方に聞き取れないような小声でそんなことを付け加えるのはずるい。
『アリシアの体は綺麗だよ。その……すごく、魅力的だ……』
それは偽らざる俺の気持ち。
俺は決してロリコンではない……たまたま好きになった相手が外見的に少し幼いだけなのだ。
そもそも、何度でも言うがアリシアは俺と同じ日の生まれだ。
『この体はイクトさんのものです。好きに見たり触ったりしていいんです。だから、無理にそういった欲求を隠そうとしないでください』
そんなアリシアの言葉に俺は躊躇いつつも頷いた。
そして、左手で自分の胸に触れてみる。
余り大きくはないけれど、ふんわりと柔らかい存在感を手の内に感じる。指を動かしてみるとふにふにとした癖になりそうな感触がかえってくる。
『……んっ……』
アリシアの吐息のような零れた声に、俺は慌てて手を離す。
鏡を見るとほんのりと頬を朱く染めたアリシアがそこに居て。
……気のせいか、さっきよりも桜色の先端が固くなってるような気がした。