異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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神代翡翠(温泉街を散策)

 翡翠とのデートは初っ端は微妙な雰囲気になったものの、その後は拍子抜けするほど平和な時間を過ごせた。

 

 俺達は駅から続いている商店街を行き当たりばったりに巡っていく。

 

 お土産屋さんでいろいろ試食をしてみて、三人で相談して一番気に入ったものを今日旅館で食べる用にひとつだけ購入した。

 

 商店街を時折駆けていく人力車が気になったが、料金が少々高校生には厳しかったので乗るのは断念した。アリシアが、これは私の世界にもありますと妙に得意げだったのがおかしかった。

 

 某キャラクターグッズが売っているお店で、有名な傘をさして化け猫のバスを待っている森の精霊のイラストやぬいぐるみを見て『日本にも精霊獣は居るんですねぇ』と、感想を漏らすアリシア。いや、居ないからね? ……多分。

 

 特産品のソフトクリームをふたつ買って半分こにして食べた。ひとつは柑橘系で普通に美味しかったけど、もうひとつの色物系は微妙な味で、三人でちょっぴり顔をしかめながら食べた。

 

 濡れおかきというものを生まれて初めて食べてみた。小上がりで出されたお茶と一緒に食べたのだけど、かき餅みたいな感じだった。美味しかったけど俺はさくさくしたおかきの方が好みかな……? アリシアと翡翠はとても気に入ったようだ。

 

 そんな風に過ごしているうちに、商店街も出口に差し掛かり、俺達は出口近くの雑貨屋でなんとはなしに売り物を見て回る。

 この時間が終わってしまうのを惜しむように少し時間をかけながら。

 

「ねぇ、今日の記念に揃いのアクセを買うなんてどうかしら」

 

 アクセサリーを見ていた翡翠が、そう提案してきた。

 

「うん、いいと思う」

 

 俺は同意した。

 とても良い記念になると思ったから。

 

『綺麗なブレスレットですね!』

 

 それは樹脂製のブレスレットだった。半透明にさまざまな色があるそれはグラデーションを描いてずらりと並べられていて、とてもカラフルだ。

 

「私の色はアリスが選んでくれるかしら?」

 

「わかった……うーん、これとかどうかな?」

 

 俺が手に取ったのは緑色のブレスレット。安直だけど翡翠と言えば緑というイメージが強い。

 

「私はそれにするわ……アリスは二月産まれだから、誕生石のアメジストのイメージでこれなんてどうかしら?」

 

 翡翠が手に取ったのは紫色のブレスレットだ。

 

「うん、いいと思う。じゃあ、後はアリシアのだね」

 

『……え? わたしもいいんですか。これって、お二人のデートの記念なんじゃ……』

 

『今更遠慮はいらないわよ。今日は三人のデートってことで私も納得してるから。さあ、アリシアも選びましょう?』

 

『あ、ありがとうございます……ええと、わたしもイクトさんに選んで貰ってもいいですか?』

 

『わかった……そうだなぁ、アリシアと言えばこの色かな』

 

 俺が手に取ったのは水色のブレスレット。水の巫女であるアリシアに俺が抱くイメージは、透き通るような薄い水の色。

 

『それでお願いします……すごく嬉しい。お二人共ありがとうございます!』

 

 ここは少し見栄を張って俺が全員分の代金を出した。元々アリシアの分は俺が出すことになるし、翡翠だけ自分で出させるのもなんか違う気がしたからだ。

 

「ありがとう、アリス」

 

『イクトさん、ありがとうございました』

 

 精算を終わらせて店を出た俺達は早速ブレスレットを付けてみる。

 装飾品としてはぶかぶかだったけど、記念品としての意味合いが強いので問題無い。

 翡翠の腕には緑のブレスレット、そして俺の腕には水色と紫のブレスレットが重なっている。

 その様子を見ていた翡翠が、ブレスレットのついた腕を触れ合わせるように手をとって、指を絡めてきた。

 

「ちょ……翡翠!?」

 

「……だって、私だけ除け者なのは寂しいじゃない」

 

 そう言って、拗ねる翡翠は少し子供っぽくて昔を思い出した……腕に感じる膨らみの柔らかさや香水の匂いは完全に大人のものだったけれど。

 

『……ヒスイさん、胸があたってイクトさんがニヤニヤしてますよ』

 

『……ちょ、アリシア!?』

 

『別にこれくらいいいわよ。女同士なんだもの』

 

『わたしは良くはないですけど……ブレスレットが嬉しかったので我慢します。元々デートを邪魔している負い目もありますし』

 

『ふふっ、ありがとうアリシア』

 

『えーと、俺の意見は……』

 

『……何か問題があるのかしら?』

 

 ……ないです、はい。

 

 結局、旅館につくまで翡翠は手を離してくれず、俺達は周囲の視線を集めまくっていた。浴衣や時代風のコスプレをしている訳でもないのに写真撮影をお願いされたくらいだ……断ったけど。

 ウェーブがかった黒髪ポニーテールのすらっとした美人の翡翠と銀髪洋ロリの自分が手を繋いで歩いている姿は周りにはどんなふうに見えたのだろう?

 ……外国人の子供を手をひいて観光案内してあげている女学生と言ったところか?

 自分で想像しておきながら悲しくなってきた、やめよう。

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