異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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神代蒼汰(決闘)

「アリス、お前どういうつもりだよ!」

 

 不良グループが立ち去った後、開口一番蒼汰は俺を怒鳴りつけてくる。

 

「ごめん、蒼汰……」

 

 俺は蒼汰の枷となってしまったことを素直に詫びた。

 俺が居たせいでエイモックの脅迫に具体性を持たせてしまい、相手のペースになってしまった。

 俺という明確な対象が居なければ、不良グループの集会に出ないように蒼汰は交渉が出来たかもしれないのだ。

 

「わかったら、おかしなことは考えないでクリスマスイブは安全な所に隠れてろ……いいな?」

 

「よくない。蒼汰を独りで行かせる訳にはいかない」

 

「ダメだ……お前の為だけで言ってる訳じゃない。お前が居れば、俺の弱みになる。だから、俺を困らせないでくれ」

 

 蒼汰の言いたいことはわかる。普通の感覚なら俺の行動は迷惑この上ないだろうと思う。小柄な少女でしかない俺は足手まといにしかならないと考えても仕方ないだろう。

 

「だったら、弱みにならないってわかればいいんだよね?」

 

 だけど、俺は戦える。

 一番の親友である蒼汰がピンチのときは助けたい。

 隣で共に戦う存在で居たいと思うのだ。

 その為にも、蒼汰に戦えることを証明しなければならない。

 

「ねぇ、蒼汰……私と決闘してよ」

 

 だから、俺は蒼汰にそう持ちかけた。

 

「……ウィソで負けても俺はお前を連れて行くつもりは無いぞ」

 

「カードゲームじゃないよ!?」

 

 何ナチュラルに決闘をデュエルって変換してるんだ。

 このデュエル脳め……!

 

「だったら、何だって言うんだ? まさか俺と殴り合いでもするっていうのか?」

 

「そのまさかだよ。私の実力がわかれば蒼汰も安心できるでしょ?」

 

「実力って……お前、喧嘩なんてした事あるのか?」

 

「それなりにね」

 

 俺は胸を張って腰に手をあてて答える。

 喧嘩どころではない。異世界で命を賭けた戦いの日々を過ごしてきた俺の経験は蒼汰とは比べ物にならない。

 アリシアの体になったことで、体格の違いによるリーチの減少は厳しいけれど、魔法による身体能力向上はそれを補って余りある程だ。

 せいぜい、蒼汰を驚かせてやるとしよう。

 

「それじゃあ、行こうか」

 

 訝しげにしている蒼汰を俺は促す。

 

「……何処に行こうってんだ?」

 

「決まってる。決闘と言えば蒼汰の家じゃない」

 

   ※ ※ ※

 

 俺たちは連れ立って神社の境内にある蒼汰の家にやって来た。蒼汰の家は神社の本殿の横にあり社務所を兼ねている。そして、その裏庭は一般の参拝者が来ることも無く、人目も無い。

 

 小さい頃から俺達はよくここで強くなる為の修行をしていた。

 きっかけは妹達をいじめっ子から護る為だったと思う。それが、いつしか強くなる事自体に夢中になって、二人で競い合うようにして鍛えていた。

 

 空手の段位を持っている光博おじさんに空手の基本を教わり、俺の親父のなんでもありの格闘術を組み合わせたものが俺達の基本スタイルになっている

 何度も転がったこの庭の土の味は今も鮮明に思い出せる。

 その懐かしさに俺は思わず目を細めた。

 

「……ここの場所のことも幾人に聞いてたのか?」

 

 蒼汰は困惑した口調で聞いてきた。初めてここに来る筈の俺が、勝手知ったる他人の家のように振る舞っているのだから疑問にも思うだろう。

 

「そういう訳じゃないんだけど……ねぇ、それにも関わる事なんだけど、この前言ってた告白したい事、今から話してもいい?」

 

 いい加減、自分が幾人であることを話してしまいたい。そうすれば、蒼汰の説得も大分楽になるはずだ。

 

「いや、メッセージで伝えた通り、今はごたごたしてて心の整理が出来ないから……」

 

 顔を赤らめて視線をそらしながらそんな事を言う。

 やめろ、気持ち悪い。変な勘違いしてんじゃねーよ。

 

「ち、違う!? 蒼汰が思っているような事じゃ無いからな!」

 

「わかってる。このごたごたが終わったら俺もちゃんと結論出すから待っていて欲しい」

 

 ……駄目だこいつ。俺が照れ隠しに誤魔化していると思ってやがる。ああもう、面倒くさい。

 

「もういい……この決闘で勝ったら話を聞いて貰うから」

 

 俺は蒼汰に向き直って構えながら言う。

 身体能力向上(インクリスフィジカル)(小)を発動させた。

 この勘違い野郎を、ぶちのめして思い知らせてやる。

 

「……俺が勝ったら?」

 

 蒼汰は聞いてくる。()()の決闘はこんな風にそれぞれが勝ったときの報酬を要求しあうのが常だった。

 

「好きにしていい。蒼汰の言うこと何でも聞いてあげるよ」

 

 俺は言い放つ。

 お互い特に相手に望むことが無い場合、お願いする権利をツケにするのはいつもの話だった。勝負が続く中でお願い権を相殺することも多かった。

 

「お、おう……」

 

 だけど、蒼汰は何故か動揺しているようだ。

 

「それじゃあ、行くよ!」

 

 理由は分からないが動揺している今がチャンス。

 

 出鼻を挫いて畳み掛ける!

 

 俺は魔法で強化された肉体で一気に踏み込み、裏拳の奇襲を鳩尾に見舞う。

 

「!!!?」

 

 常人ではあり得ない俺の速度には、人の反射神経で反応するのは不可能――のはずだった。

 

「!!? ……受け止められた!?」

 

 繰り出した俺の一撃は蒼汰の腕によって阻まれていた。

 

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