異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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神代蒼汰(攻防)

「言っとくけど、あくまでちょっとえっちなお願いだからね。あんまり変なお願いは容赦なく却下するから」

 

 やる気満々な蒼汰に俺は一応釘を刺す。

 

「わかってる……そのくらいの方が俺も気兼ねしなくていい」

 

 そこまで言って蒼汰は溜息をつく。

 

「何でもしてもいいよって迫ってくる相手からの誘惑を我慢するのに最近少し疲れててな……」

 

 涼花のことか。

 そういえば、俺も何度か相談を受けた事がある。

 

「涼花は蒼汰の事が好きなんだから、別に我慢しなくてもいいんじゃない? それとも、蒼汰は涼花の事を好きじゃないの?」

 

「……正直、嫌いじゃない」

 

「だったら、何で……?」

 

「涼花の周辺がな……すでに彼女の両親との対面は済んでいて、娘の恩人という事で涼花の両親に気に入られちまってな。万が一手を出そうものなら、翌日には婿入りの話を纏められて跡取りにされそうな勢いなんだ……」

 

「うわあ……」

 

 思わず声が出た。

 流石は本物のお嬢様、付き合うには相応の覚悟が必要ということか。

 

「それなのに涼花はやたらと積極的で……体の接触も増えてて、いい匂いがするわ、柔らかいわで正直きつい」

 

 生殺しにも程があるな、それは。

 蒼汰が喜んで手を出したくなるような色仕掛けの方法を涼花に幾つか伝授しておいたけど、今の話を聞くと逆に蒼汰を苦しめただけかもしれない。

 

「蒼汰、大変なんだね……」

 

 巨乳美人お嬢様に慕われて色仕掛けまでされるなんて羨ましい奴。そこまでされて手を出さない蒼汰はなんてヘタレ、とか思っててゴメン。

 手を出したら一生が決まってしまうような状況は流石に俺も迷う。

 

「……それに、他にも考えないといけない事もあるしな」

 

 人差し指で鼻の頭を掻きながらちらりとこちらを見てそんな事を言う蒼汰。

 

 ……もしかして、俺の事じゃないだろうな。俺は関係ないからな!?

 

「すまないな、お前にこんな話をしちゃって……アリス相手だとなんだか気安く話せるから、つい色々話しちまった」

 

 ……微妙な気遣いはやめて。

 確かに俺が蒼汰を好きな女の子だったら、他の女の話をされたら傷つくかもしれないけど、俺はそんな事は無いから!

 

「……もういいから、決闘を再開しよう?」

 

 俺はげんなりして答える。きっとこの態度も勘違いされるに違いない。

 ……早く正体を話して勘違いを解きたい。

 その為には、さっさと決闘に勝ってしまおう。

 俺は身体能力向上(インクリス・フィジカル)(小)を唱え直す。

 

「そうだな……やろうか」

 

 俺達は再度構えて向かい合った。

 言葉で語らう時間は終わり、拳で語らう時間が始まる。

 

 小刻みなステップで間合いを詰めて、攻撃の射程圏内に蒼汰を捉えようと試みる。

 だが、蒼汰は俺が間合いに入ろうとする前に、牽制のジャブやローキックで的確に潰してくる。

 リーチの差を活かしたアウトレンジだ。これを続けられたら、俺の攻撃は届かず蒼汰の攻撃を受けるばかりの一方的な戦いになる。

 だが、俺の動きはそう簡単に捕らえられるような速さではない。牽制を繰り返す中で生じた隙を狙って体を懐に滑らせる。

 

「くはっ……!」

 

 飛び込んだ先には、まるでそこに来るのがわかっていたかのように蒼汰の拳が待ち構えていて、俺の勢いを加えたカウンターの一撃が鳩尾にクリーンヒットした。

 横隔膜が一瞬止まり息が出来なくなって喘ぐ。

 俺はよろよろと後ずさり膝をついた。

 

「……ギブアップしないか? 女の子を殴るのはやっぱり気がひける」

 

「ふざけないで。全力で来てって言ったでしょ……こんなのどうってことないから」

 

 俺はどうってこと無いという風を装いながら立ち上がる。だが、足元がおぼつかず、虚勢を張っているのはバレバレだろう。

 

「それにしても、私の動きを捉えられるだなんて……」

 

「正直、俺もまだ動きは見えてない。だけど、来る場所がわかっていたら攻撃を当てる事はできるからな」

 

「故意に隙を作って私の動きを誘導したってこと……」

 

「ご名答……さて、ギブアップしないなら、そろそろ再開するぜ?」

 

「いいから、かかってきなよ。私はいつでも平気だから」

 

「……そういう強がりなところ、幾人にそっくりだな」

 

 本人だからね、とはまだ言えない。

 蒼汰にはちゃんと告白して、いろいろと謝らないといけないから。

 だから、この勝負には負けられない。

 

「……来ないならこっちからいくよ」

 

 そう言い放って俺は再び攻撃を仕掛ける。

 威勢よく啖呵を切ったものの、状況は先程よりも悪化していた。蒼汰がアウトレンジの牽制を繰り返してくるのは一緒だったが、隙を見つけても、さっきの誘導が頭をよぎって踏み込むのを躊躇してしまう。

 その結果、間合いを詰めることが出来ず、攻撃が当たらない。

 

 だったら、強引にブラフじゃない隙を作り出すだけだ。

 俺は一旦距離を取って魔法を詠唱する。

 

飛水礫(ウォーター・スプレッド)!」

 

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