異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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神代蒼汰(道程)

「み、見たいです……」

 

 ……勝った。

 

 蒼汰から懇願の言葉を引き出した俺は上機嫌で勝ち誇っていた。

 ベッドに座っている俺の体を蒼汰がちらちらと見ている。本人はなるべく見ていない風を装っているつもりなのだろうけど、見られてる側からするとバレバレだ。

 

 これだから童貞くんは……

 

 そんな上から目線の感想を抱いて密かに優越感に浸る。

 今の俺は蒼汰と比べて女性経験は豊富だ。だから、同じような状況でも、冷静で居られる自信がある。

 童貞の蒼汰とは違う。

 

 ……あれ?

 

 俺はそのとき、ふと違和感を覚えた。

 

 よく考えたら俺って今も童貞のままなんじゃ……

 

 女性経験はあってもそれは全部この体になってからの事なので、挿入経験は無い。

 しかも、今の俺はもう挿入するべき相棒(パートナー)を失っている。つまり、童貞を喪失する機会は、もう一生訪れることは無いという事だ。

 そんな事実にいまさら気がついて呆然とする。

 

「大丈夫か? いきなり顔を青くして」

 

「蒼汰。俺、一生童貞のままだ……」

 

「いったい何を言いだすかと思ったら……お前、異世界では何にも無かったのか?」

 

「実はそういう機会は何度かあったけど、俺はアリシア一筋だったから断腸の思いで全部断ってたんだ……」

 

「そうか。それはご愁傷様だな」

 

「あぁ、俺のマイサン……」

 

 俺は思わずスカートの股間部分を押さえる。だけど、そこには当然何も無い、ぺったんこだ。

 

「そのかわり処女になれたじゃないか! ……ほら、童貞より、処女の方がずっと価値は高いぞ」

 

「……全然嬉しくねー」

 

 蒼汰のフォローしているのか止めを刺してるのかわからない言葉で俺は一層テンションが下がる。

 

「それにしても、なんでいまさら……落ち込むにしても遅くねーか?」

 

「……それは、いままで童貞を意識する事って無かったから」

 

「人の顔を見て童貞って連想しないで貰えますかね!?」

 

「蒼汰は、童貞じゃねーの?」

 

「……いや、童貞だけど」

 

「やっぱりそうなんじゃん。そんながっついて人の体見てたらバレバレだし」

 

「くっ……そう言うお前だって童貞なんじゃないか」

 

「俺は女性経験はあるからな。お前とはちげーよ」

 

「そ、それって女の子同士ってやつか!? すげぇな、お前……」

 

 蒼汰が目を見開いて俺を見る。

 俺と女の子の絡みを妄想しているな、確実に。

 

「それで、相手は誰なんだ? 俺が知ってる娘なのか?」

 

 蒼汰の質問に俺は固まってしまう。

 

「……す、すまないが黙秘で頼む」

 

 俺はしどろもどろになって答える。

 ひとりは俺の妹。そして、もうひとりはお前の妹なんだ……って、言えるか、こんな事!?

 翡翠のことはいつか話さないといけないかもだけど、今はまだ早い。

 

「女の子同士ってのがバレたら周りに変に注目されちまうもんな……すまない、忘れてくれ」

 

 俺が言い澱んだのを見て、蒼汰は勘違いしてくれたようだ。

 

「そうして貰えると助かる……」

 

 俺はほっと一息つく。

 

「それより、その……」

 

「ああ、そうだ。パンツだったな。俺のがそんなに見たいのか、しょうがねーなー蒼汰は」

 

 だが、ここにきて俺はふと気づく。

 

 見せるってどうやって……?

 

 今までパンチラを見られる事はあっても、自ら見せた事なんて無かった。

 

「……ええと、どうすればいいんだ?」

 

 思わず蒼汰に尋ねる。

 

「自分でスカートを(たく)し上げて見せて貰えないか?」

 

 蒼汰の要求は、なかなかにマニアックなものだった。

 女の子が自分のスカートを捲ってパンツを見せる、それ自体はすごく憧れる良いシチュエーションだと思う。

 でも、それは俺が見る側としてのものであって、見せる側というのは考えた事も無かった。

 だけど、蒼汰にスカートを(めく)られるのはもっと抵抗があるし、代案も思いつかない。他に選択肢は無さそうだ。

 

「わ、わかった……」

 

 俺はベッドから降りて傍らに立つ。

 椅子に座った蒼汰との距離は一メートルくらい。座ってる蒼汰と視線の高さがほぼ一緒だ。

 

「お前、縮んだなぁ……」

 

 感慨深げに蒼汰は言う。

 

「もう、身体測定で競う事も出来なくなっちまったな」

 

 以前の俺達は身体測定の都度どっちの身長が高いか競い合っていたのだ。最後に測ったときは、俺の方が蒼汰よりも数ミリ高かったのを憶えている。

 だけど、アリスとなった今の俺は頭一つ分よりもっと低くなった。測るまでも無く俺の負けなのは明白だ。

 そんなことでも少し寂しく思う。

 

「……それじゃあ、いくよ?」

 

 覚悟を決めて、俺は蒼汰に開始を告げた。

 

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