異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた   作:瀬戸こうへい

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クリスマスイブ

 放課後に呼び出しされて襲撃された後、俺は部活動メンバー全員に連絡を取って安否を確認した。

 

 幸い狙われたのは俺だけだったみたいで、優奈、翡翠、蒼汰、涼花の全員何事も無いようだった。涼花を除いたメンバーは全員学校に残っていたので部室に一度集合してからそれぞれの家に帰る事にする。

 

 なお、涼花は知人のところに来ているとの事だったので、帰りには気をつけてと言ったところ、どうやら今日はその知人の家に泊まるとのことで安心して電話を切った。

 

 優奈と翡翠は随分俺の事を心配していたようで、部室に入るやいなや質問攻めにあった。

 

 彼女達からは警察に届けた方が良いと言う話も出たが、それはやめておいた。俺にとってこの程度の荒事よりも、警察や教師とやりとりの方がよっぽど気が重かったからだ。あれだけこてんぱんにしておけば、そうそうリベンジしようとも思わないだろう。

 

 それに、鳳の口から出た魔法という言葉が気になっていた。

 もし、エイモックが異世界から来た人間だとしたら、異世界の関係者としてエイモックがこの国で何をしようとしているのか確認しておきたい。

 

 また、異世界との行き来の手段があるのかどうかも気になるところだ。あちらに気軽に行けるようならアリシアの里帰りも出来るかもしれない。

 

 そして、翌日のクリスマスイブを迎える。

 

 今日は午前中終業式があるだけで、午後からは半休でそのまま冬休みになる。夕方には生徒会主催のクリスマスパーティがあり、それに参加する生徒も多い。

 

 冬休み前の最後のホームルームが終わって、クラスが気持ち昂ぶった開放感に包まれる中、俺はにやにやした微笑みを口に浮かべた純に呼び掛けられた。

 

「アリスー、お迎えが来てるわよぉー」

 

 言われて教室の入り口を見ると、下級生の教室の入口で所在なげにしている蒼汰の姿が目に入った。

 蒼汰がこの教室に来るのって文化祭のときくらいで、普段の教室に来るのは初めてのことだ。

 俺は普段より多い荷物を持って蒼汰の元に駆け寄る。

 

「どうしたの、蒼汰?」

 

 集合はお互い一度家に帰ってからのはずだった。……何かあったのだろうか?

 

「ちょっと……いいか?」

 

 どうやら、ここでは話しづらい内容のようだ。

 

「うん」

 

 俺が答えると同時に背後で黄色い声があがった。さっきから俺達は、教室中の視線を集めている。

 

 これって、イブのデートのお誘いに来たと思われているんじゃ……

 

 そのことに蒼汰も気が付いたらしく、慌てたように言葉を続ける。

 

「ち、違っ……おーい優奈、一緒に来てくれ。話がある」

 

「わかったよ、蒼兄」

 

 蒼汰の呼び掛けに優奈が親しげに答えた事で、周囲のざわつきが増した。聞こえてくる呟きの中には、姉妹丼とかいう不穏なワードが混じっている。一部の男子からはどす黒い嫉妬のオーラが見えるような気がした。

 勘違いが収まらない様子に俺と蒼汰は動揺を隠せない。

 

「おまたせ」

 

 だけど、そんな中にやって来た優奈は堂々としていて、周囲の視線を気にした様子は無かった。

 

「それじゃあ、部室に行きましょうか」

 

 そう言って蒼汰の後ろから出てきたのは翡翠だった。

 蒼汰を取り巻く女子が増えて教室の一部はさらに色めき立つ。翡翠は蒼汰の妹なんだけど、事情なんて知らないクラスメイトが大半だ。

 ハーレムとかそう言う声が聞こえてきて、男達の纏う嫉妬のオーラの濃度が増した気がした。

 

「お、おう……」

 

 教室の雰囲気から逃げ出すように蒼汰は廊下に出て、俺も小走りで後を追った。

 優奈と翡翠は動じることなくゆっくりと教室を出る。

 

 教室から出た俺達は、連れだって部室に向かった。

 

「……ふたりは平気なの?」

 

 今頃教室ではどんな話になっているのかと思うとうんざりする。さして気にした風もないふたりに俺は問いかけた。

 

「私はアリスと噂になるのなら別に構わない。むしろ事実にしてしまってもやぶさかじゃないわ」

 

 相変わらず翡翠はぶれない。

 と言うか、蒼汰とは兄妹だからそれ以上噂になりようが無い。

 

「騒がすだけ騒がせておけばいいの。どうせ、すぐに飽きるわよ」

 

 優奈は達観している。

 確かに優奈は噂になっても自身がばっさりと否定して長続きする事はなかった。

 俺も同じように否定しているはずなんだけどなぁ……解せぬ。

 

「……でも、いろいろ言われるのって気にならない?」

 

「後ろめたい事なんて無いのだから、堂々としていれば良いのよ。いちいち反応してたら相手を喜ばせるだけよ」

 

「……なるほど」

 

 しかし、未だに女子に取り囲まれてわいわい騒がれるのには慣れない。特に色恋沙汰に対する食いつきの良さは何なのだろう。

 

「アリスあなたね……そんなどうでもいい事より、これからの事を心配しなさいよ」

 

 そんなことを考えていたら、そう優奈から突っ込まれた。

 確かにその通りだ。

 

 優奈達にはこれから俺と蒼汰でエイモックと話をつけに行くと伝えてある。不良グループの集会に二人で乗り込むなんて事を言ったら卒倒しかねない。

 優奈と翡翠はこれから翡翠の家に一緒に行って、時間になったらおじさんに送迎してもらってクリスマスパーティに行く事になっている。

 

 そういえば涼花は部室に居るのだろうか? 電話で無事を確認したものの昨日から姿を見ていない。涼花には蒼汰から注意がいっているはずなんだけど……

 

 そんな事を考えているうちに部室に到着した。

 室内は無人で涼花は居なかった。

 なんとなくそれぞれの定位置になっている場所に座ると、全員が蒼汰を見る。

 

「それで、私達に話って何かあった?」

 

 どう言い出せばいいのか迷っているようで、蒼汰は幾分か困惑した表情になる。そして少し考えた後、蒼汰は口を開いた。

 

「……涼花は今エイモックの所にいるらしいんだ」

 

 蒼汰から開口一番告げられた内容は衝撃的だった。

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