ごちうさの逆転物ってないなー、と思ったので書かせていただきました。
ごちうさのssもっと増えろ…
拙い文章なので、皆様からアドバイス等をいただけると、とても嬉しいです。
では、どうぞ。
「ラビットハウス……ここで合っているはず」
僕は地図とメモに視線を落とし、確認する。
場所に間違いはないだろう。僕が高校に進学するにあたり、下宿させてもらう場所だ。
緊張しているのだろうか。鼓動のペースが少し早くなっていた。呼吸を整え、気持ちを落ち着ける。
さて、行こうか。
ドアを開け放つ。カランコロン、とベルが澄んだ音を響かせる。木造の優しい雰囲気と、コーヒーの芳ばしい香りが心地良い。
「いらっしゃいま───」
店員さんが僕を見た瞬間、ピタリと硬直してしまった。
? どこかおかしい所でもあるのだろうか。
自分の格好におかしい所はないはずだ。
髪の毛に触れてみても寝癖などは無いし、服も特に目立つものは無い。
気まずくなり店内を見回してみると、店内の人は皆等しくこちらに視線を向け、石像のように固まっていた。
既に10秒近く経過している。
このまま突っ立ったままなのもどうかと思ったので、そろそろ声をかけよう。
「あの───」
「お、お好きな席へどうぞっ」
「いや、そうでは───」
「お、お好きな席へどうぞっ」
「あ、はい……」
水色の髪の店員さんに押し切られてしまった。
今日からラビットハウスに下宿させていただく事を責任者の方に伝えたいのだが……と一瞬思ったが、まあいいかと古びた木製の椅子に腰を下ろした。
せっかくなので何か注文しよう。事前に伝えていた時間にはまだ早いうえに、長時間の移動で少し疲れた。
メニューを吟味する。
メニューは見開き1ページで、恐らくコーヒーの名称であろうカタカナの文字列と、値段を示す数字が等間隔で並んでいる。しかし、果たしてそれらにどんな味の違いがあるのかを僕は知らない。
グァテマラ・アンティグアって凄く長い名前だな……なんてことを思いつつ、コーヒーで最安値のオリジナルブレンド(400円)と、とりあえず甘い物を食べたかったので、フードメニューでこれまた最安値のパンケーキ(500円)を注文することにした。
計900円である。英世さん、今日までありがとうございました……あ、そういえばこの千円札は昨日親がお小遣いにとくれたものだった。グッバイ。
メニューと睨めっこをしているようで、その実まったく関係の無い脳内コントを繰り広げている途中、店員の女の子がこちらを見ていることに気づき、とりあえず注文しようと声をかける。
「すみません、注文お願いします」
「は、はいっ」
「オリジナルブレンドとパンケーキをを1つずつ、お願いします」
「か、かしこまりました。すぐにお持ちします」
お願いします、と返し、顎に手をあてて考える。
頭の上乗っているアレは何だ……?
思い返すと、今日はなんだか奇妙な事が多い気がする。朝のニュースで女性が男性を痴漢して捕まった、とか。
いや普通は逆だろうと思ったが、セクハラは確か女性から男性にでも成立するので、痴漢でもそうなのだろう。
他にも、今日一日男性を全く見かけていなかったりする。
因みに、このお店の数人の客も全員女性だ。
そしてその全員が、僕に『野獣の目』とでも言うべきな鋭利な眼光を向けてきている……気がする。
「若い男性の方を見てるだけでもう、十分ニチィ!元気が貰えますよ……」
「オォン!アォン!」
突如、ゾクリとまるで背骨に氷柱を打ち込まれたような悪寒に襲われる。
……季節の変わり目なので体調を崩したのだろうか
顎に指を添えて考えていると、どうやら注文が完成したようで、店員の女の子が銀色の丸盆を持ってこちらを見ていた。
「お、おまたせしました、オリジナルブレンドとパンケーキですっ」
「ありがとうございます」
コーヒーとパンケーキを受け取ると、女の子はそのままもじもじした様子で、淡い水色の髪の毛をいじったりしながらチラチラとこちらを見ている。
淹れられたコーヒーを少量、口に含む。
瞬間。程よい苦味が舌に染み込み、炒った豆の芳醇な香りが鼻を通り抜けた。───美味しい。
思わずほっと息を吐く。ああ、これはいいものだ。お湯に溶かして飲むインスタントのコーヒーとは違う。新鮮で、調和された味だった。
「どうでしょうか……」
店員さんがお盆で口元を隠しながら控えめに聞いてくる。答えは決まっている。考えるまでもない。
僕は店員さんの小さな手を両手で包み込み───
「すごく、美味しいです……!」
「ひゃっ!あの、近い、です……」
店員さんの顔がみるみるうちにのぼせたように赤く染まっていく。
冷静になって考えるとこれはかなり拙いのでは……
「ごっ、ごめんなさい!」
脱兎の如く、という表現が似合う速さで離れる。店員さんは顔を紅潮させたまま俯いてしまった。
「本当に、ごめんなさい……」
「あの、気にしないで下さい……」
店員さんは許してくれたけれど、一歩間違えたら犯罪者になっていたぞ、僕は。……気をつけよう。
冷静になり、思考を巡らせる。そして、はたと思い出す。下宿先はここだったはずだ。会計の時に確認してみよう。コーヒーを味わい終え、レジに向かう。
「こ、こちら、900円になります」
「はい、お代です」
「は、はい。100円のお返しになります」
一瞬このまま帰りそうになるが、すんでの所で思い出し、確認のために店員の女の子に問いかける。
「あの、1つ尋ねたいのですが……ここは香風さんのお宅で合っていますか?」
「は、はい…そうですが、何か」
「えっと、僕は今日からここに下宿させていただく予定の、
「ええ!?げ、下宿ですか!?」
驚きを隠せないという様子で声を上げる女の子。
「あの、もしかして何か問題が……?」
あまりの驚きように、なにか拙いことでもあったのかと思い、恐る恐る問う。
「い、いえ違います。その、下宿に来る方がまさか男性だとは思っていなくて……」
「……ええと、父……タカヒロは今、買い出しに行っています。それから私は
「うん。これからよろしくね、チノちゃん」
「はい。よろしくお願いします、ハクヤさん」
そう返した彼女は、淡い笑顔をたたえていて。
僕はもう少し、感じていた違和感に敏感であるべきだったんだ。
そうすれば。
___この『男女の価値観が逆転した世界』をもう少しだけ、楽に暮らせたのかも知れない。
シリアスっぽくなってしまったのですが、普通に砂糖成分を入れたいですね…
誤字·脱字等ございましたら、教えていただけると嬉しいです。
─────────────
1/19 加筆修正