C₁₀H₈   作:リフォン

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ええ、ほのぼの系を書きたかっただけなんですけどね……どうしてこうなった。

呼称や話し方に違和感あったらごめんなさい。


重桜 駆逐艦 綾波

綾波……です。「鬼神」とよく言われるのです。

よろしくです。

 

 

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 今日も綾波は指揮官のところに向かいます。綾波は秘書艦なので……お仕事のお手伝いをしなければなりません。

 指揮官は、あまり出撃をしない人ですが、いつも忙しそうにしているのです。

 

 この前見た書類では……

 

『紅茶を仕入れていただけませんか(ベルファスト)』

『フィッシュアンドチップスを買いたい(シグニット)』

『もうダメだにゃ……(経済的に)ピンチだにゃ……指揮官早く買いに来るにゃ(明石)』

 等々、色々な方からのお願いが書かれていました。

 

 ……かくいう綾波も指揮官に『通信設備を整備するために必要なものを買いたい』とお願いして一緒に来てもらったことがあります。

 あの時に一緒に食べたパスタは……美味しかったです。はい。

 

 ……ともかく、そういうものもあって大変な指揮官のサポートをするのが秘書艦のお仕事です。

 この前までは新しく来たオーロラさんを秘書艦にしてましたが、彼女の練度が三十くらいになってから、また綾波が秘書艦を担当することになったのです。

 

 これは、前からの事です。新しい人が来ると指揮官はその人を秘書艦とし、この艦隊にすぐに慣れるようにします。

 そして、もう十分かな、と指揮官が判断した時に秘書艦から外して、その代わりに……綾波が入ります。

 

 ……なぜずっと綾波が秘書艦にいるか?それは綾波には分かりません。

 最初からずっと指揮官を支えていますが、流石に指揮官の全てを知るわけではありません。

 

 一度指揮官に聞いてみましたが、「……そうか、綾波ばかりに秘書艦をやらせるのも悪いし、変えようか……」と言われたので必死に弁解して終わってしまいました。結局理由はわかりません。

 

 秘書艦でいることが嫌いなわけではありません、むしろ指揮官の近くに居れて……嬉しい、です。

 だから、理由がなんにせよ、指揮官が綾波を側においてくれるならそれでいいと思いました。

 

 そんな事を考えてると指揮官の部屋が見えてきました。お仕事は大変ですが、頑張るのです。

 

コンコン

 

「指揮官、綾波です。今日も一日……よろしくお願いします」

 

 あ、そうだ。

 

「指揮官は食べました? おやつ、です」

 

 朝からおやつというのは違和感があるかもしれませんが、これは、最初からずっと続けている綾波と指揮官のコミュニケーションの一つなのです。

 

 ……けっして、綾波が甘党だからおやつを勧めてるということではありません。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 指揮官の作業部屋はとてもシンプルです。作業机と資料棚と、来客用のソファーと机、あとはラフィーちゃんが持ってきた観賞用の花が一輪飾ってあるくらいでしょうか?

 

 指揮官の個室も行ったことありますが、そちらも特に目を引くものはありません。ベッドと机と衣服を入れるタンスがあるのみです。

 

 この前サンディエゴさんがいろいろと指揮官の部屋に置いていきましたが、それらは既に撤去されているようです。……メガステージを見た時ちょっと踊ってみたいと思ったのは秘密、です。

 

「…………」

 

「…………」

 

 指揮官はいつも静かな人と言う訳ではありませんが、こういう作業に集中していると無言になります。

 そして私もあまり必要以上に喋らないのでペンが走る音しか響きません……が、この雰囲気は割と好きです。

 

 最初の頃から、指揮官と頑張ってきた綾波にとって、この空間はずっと慣れ親しんできたものです。

 

 あの頃は……建造や出撃やらで必要な書類を間違えることがあって大変でした。

 慣れない作業に四苦八苦しながら、それでもここまで来れたのは指揮官のおかげです。

 

「綾波、それで最後だ」

 

 あれ……もう終わりです?

 

「今日は少なかったです」

 

 本当に珍しい。昼を少し過ぎた頃で終わるのは久しぶりです。

 

「まあ今日はな……取り敢えず、昼飯にするか?」

 

「勿論です。早く食堂に向かうです」

 

 食堂はここからそこまで遠くありません。指揮官の隣を歩きながら食堂へ向かいます。

 今日は何を食べましょうか……普通に定食でもいいし、丼物も捨てがたい。麺類も悪くありません……悩むのです。

 

「綾波、悩んでるのならカレーにしないか?」

 

 カレー? カレーは……この前食べましたが指揮官も食べるのならいいです。

 

「指揮官もカレーを食べる、です?」

 

「ああ、あそこのカレーは美味しいからな。週一で食べている」

 

 確かにカレーは人気です。他の艦隊の指揮官もカレーをよく注文しています。

 ただ、カレーばっかり頼んでくるのでたまには他のものを食べたくなることもあります。

 

「指揮官、魚雷天ぷらも食べたいです。」

 

「カレーと天ぷら合うのか? まあいいが……」

 

 食堂のお姉さんに料理を注文し待っているとジャベリンちゃんとラフィーちゃん、そしてZ23(ニーミ)ちゃんがやって来ました。

 

 この三人は綾波がいつも一緒に遊ぶ友達なのですが……最近の悩みはラフィーちゃんにも改造が来たので未改造組がニーミちゃんしかいなくなってしまったことです。

 

 本人は気にしていないと言うのですが、ニーミちゃんと一緒に出撃すると……敵が次々と爆散していくところを見るに、やっぱり気にしているんだなと感じます。

 

 こればっかりは技術開発の人達に頑張ってもらうしかないのですが……と、話が逸れたのです。

 

「こんにちは、指揮官。ちゃんとお仕事していますか?」

 

「今日は仕事が少なめだったからな。ちゃんと今日の分で言えば終わってる」

 

「指揮官指揮官、お昼ですか? 一緒に食べましょう!」

 

「いいぞ。俺らは注文してるからお前らも頼んでこい」

 

「指揮官……代わりに頼んで」

 

「面倒くさがらず頼んでこいラフィー」

 

「指揮官の意地悪……」

 

 ここの皆も艦隊全体から見たら初期の方からいます。……だから、練度も当然高いですし指揮官とも仲が凄くいいです。

 

 ……嫉妬とかはしてないです。たまにジャベリンちゃんとかよく指揮官にくっついてますけど、羨ましくなんかありません。……ありませんったらありません。

 

「……指揮官」

 

「なんだ?」

 

「綾波を……ナデナデしてもらってもいいですか?」

 

「……まあいいが」

 

 指揮官のナデナデは変な感じがするのです。とっても暖かく感じて……でもその暖かさだけじゃ物足りなく感じて。

 

 昔はこういう事はなかったのに……ただ、これもいいと思っている自分がいることは確かなのです。

 

 昔、本当の駆逐艦だった頃に感じた……仄かな暖かさと似ているから。

 この暖かさはきっと悪いものじゃありません。

 

「あー! 綾波ちゃん指揮官になでてもらってる! ジャベリンにもしてー!」

 

「ずるい……ラフィーにもして……」

 

「あ! ジャベリンちゃんもラフィーちゃんもいきなり走らないでください!」

 

 この友達と過ごす日常も指揮官のナデナデと同じくらい暖かくて……ずっと守っていきたいと思う宝物です。

 

「ナデナデは綾波だけのものです」

 

「何を言ってるんだ」

 

 でもナデナデは譲れないのです。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 あの後指揮官も巻き込んで皆で遊びました。ニーミちゃんが卓球で強かったり、ねぷねぷから譲ってもらったゲームで遊んだり、他の駆逐艦の子と合流してドッジボールをやったり……楽しかったです。

 

 こういう遊ぶ余裕がある、というのは大事なことです。……働き詰めでもいいことはないからです。

 

「指揮官、今日もお疲れ様でした」

 

「おう、お疲れさん、と言いたいところなんだが、綾波はこの後暇か?」

 

 何かあるようです。別にこのあと誰かと特別な用事があるわけではないですから……

 

「何かするのです?」

 

「俺がこの司令部に着任してからもうすぐ半年だし、ちょっとしたパーティーを計画していてな。それを手伝ってほしい」

 

 指揮官は親交を深めるためにこういう節目で毎回パーティーを開きます。勿論ずっと前からいる私にとってはいつものか、みたいな感じです。

 

「分かりました。何処に向かえばいいです?」

 

「俺の部屋でいいかな。メンバーはいつもの感じだからよろしく」

 

 いつもの感じと言うと……いつもの三人やポートランドさん達と、寧海さん達。レパルスさんや、ユニコーンさん、テネシーさんもいそうです。

 

 このメンバーはずっと最初の頃から指揮官のもとで戦っているのです。

 今は第一線から退いているレパルスさんやテネシーさんはあとから来た戦艦や巡戦の人達に指導を行ってますが……昔の私達はかなり頼ってたのです。

 

 指揮官が指揮に慣れていなかった頃でも、二人の砲撃はかなりの命中率でして、綾波達の道を切り開いてくれたのです。

 

 他の人たち、ポートランドさん達や寧海さん達は姉妹でセットになってよく編成されていて……残り一人の所に私が入ることは少なくなかったです。

 

 ポートランドさんはインディアナポリスさんを凄く推してきますし、インディアナポリスさんはそんな姉を冷たくあしらってますが…満更でもなさそうでした。

 

 寧海さんは平海さんと肉まんをいつも食べている気がしますが、海域では頼りになります。二人ともいつも綾波を気にかけてくれてとても嬉しかった、です。

 

 ユニコーンさんは静かな人ですが……いつも支援空母でサポートしてくれるすごい人です。いつも主力艦隊に編成されている辺り、指揮官の信頼が見えるのです。

 

 まあ初期勢というの他にもいるのですが、主に召集されるメンバーはこんな感じです。

 全員が全員出撃したわけではないですから……ずっと、遠征しかしていない子もいます。

 

 指揮官いわく、育てたい艦が多すぎて間に合わない、らしいのです。……じゃあ出撃を増やしたらどうです、と聞いてみたところ、燃料が五千以下になると不安だから……、とのお返事。

 

 ……確かにその気持ちは分かるのです。昔からそういう管理をしてきた身にとって、燃料が半分以下になると不安を感じるのは仕方のないこと、です。

 

 まあ指揮官もそういう出撃出来てない子とは別の形でコミュニケーションをとっている様ですし、問題ないです。

 

 「あら、綾波じゃない。これから指揮官のところへ行くの?」

 

「綾波……こんばんは」

 

 寧海さんと平海さんだ。……いつも持ってる肉まんはどこから仕入れてきているです?

 

「こんばんは、寧海さん、平海さん。そうです、綾波はこれから向かいますが……お二人も?」

 

「まあね。指揮官の財布のひもは私が握ってないと緩みに緩んでいきそうだから……全く、手のかかる人ね」

 

「でも姉ちゃん……この前指揮官とお話してた時、すっごく嬉しそうだったよ?」

 

「そういうのは言わなくていいの!」

 

 寧海さんはいつも指揮官に、節制をするように、といつも忠告しているのです。

 それで指揮官とちょっとした喧嘩になることはありますが……仲直りしたあとは二人で肉まんを食べてます。

 

 平海さんは……静かに指揮官の側にいることが多いです。

 最近自分より指揮官を優先する……と寧海さんが愚痴ってた事もあるように、平海さんは指揮官の言うことをよく聞きます。

 

 冗談もそのまま受け取っちゃうから困ってましたね……まあその素直さが平海さんの良いところだと思うのです。

 

「綾波、ぼーっとしてないでさっさと行くわよ?」

 

「着いてきてね」

 

「あ、今行くのです」

 

 今は取り敢えず、パーティーの準備をしましょう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 そこそこ準備が終わったところで綾波も帰る……筈だったのですが、指揮官に止められました。

 

 何かあるのかと思ったら指揮官は何かを見ていて……それは。

 

「指揮官?」

 

「ん……どうした綾波」

 

「指揮官が持ってるそれは……」

 

 私と、指揮官が出会った時に明石さんに撮られた写真……記念だ、と言われて撮られたもの。

 

 懐かしく感じる所に、時間の流れを感じるです。指揮官は今となってはたくさんの子を指揮しているのです。

 

 ……昼の事に考えていたことを思い出します。はい、あの時綾波は嘘をつきました。

 

 指揮官は分け隔てなく皆と接します。それはすごく良い事で……綾波もそういう指揮官の下にいれて嬉しいです。

 

 その一方で、それをして欲しくないと感じる自分も居ます。こんな事は間違ってるというのに……

 

「……波、返事をしろ綾波」

 

「! ど、どうしたです?」

 

「この様子は話を聞いてないな? まあいいが……」

 

 こんなことを考えていて……指揮官の大事な話を聞いてなかったと分かるとショックです。

 

「この話をもう一回するのは凄く恥ずかしいんだけどな」

 

「……? 恥ずかしい、です?」

 

「そりゃな。もう一回このセリフを言わせるなんて罪なやつだよお前は」

 

 このセリフ……?

 

「俺は一番お前を信頼している。だからこれからも絶対に……俺のもとに帰ってこい」

 

「し……きかん……?」

 

 それは、そのセリフは……

 

「『安心して、今度こそどんなことがあっても生き延びて指揮官のもとに帰るのです……だって、指揮官にはまた会いたいんですもの……』……この言葉、忘れたとは言わないよな?」

 

 あの時、クリスマスにもらった《あるプレゼント》を貰ったときに、綾波が言った……

 

「その時は戦力増強……ってことだけ考えていて綾波達から貰う愛を見てみぬふりしていた。ああ、俺は馬鹿だからな」

 

 他のある5人にも渡されたその《あるプレゼント》は…指揮官の言うとおり、強くなるためのアイテムとしてプレゼントされた。

 

 嬉しかったですけど……本当の意味で欲しかったのは誰でも同じ。

 

「でもやっと気づいたんだよ。こんなに時間のかかる馬鹿野郎で……すまない」

 

「本当……です……指揮官は……馬鹿、です……」

 

 綾波はいつも指揮官の隣で、指揮官の頑張りを見てきて……そうしたらいつの間にか……

 

「綾波。俺は、綾波のことが本当に好きだ。《誓いの指輪》は他にも渡してしまったが……」

 

「……そうですね。六股とか、かっこ悪い、です」

 

「うっ……そう言わないでくれ綾波……」

 

「でも、そんなのはどうでもいい、です。綾波は優しいので」

 

 本当はどうでも良くないけど。大事なのはもっと別。

 

「……そうだな。それは昔から知っている」

 

「ずっと指揮官を支えてきました」

 

 だからモヤモヤしたです。貴方が誰を選ぶのか不安で。

 

「それに何度助けられたことか」

 

「だから……この気持ちには早く気付いてほしかった……です」

 

 綾波はずっと悩みました。指揮官がこの気持ちをどうしたら受け止めてくれるのか。

 

「俺は臆病者だったんだ。……許してくれ」

 

「これからもずっと一緒、です」

 

 ずっと一緒じゃなきゃ嫌、です。

 

「ああ、ずっと一緒だ」

 

 

「だって」

「何故なら」

 

指揮官(アナタ)のことが、好きですから……」

綾波(オマエ)のことが、好きだからな」

 

 

 ……よし。

 

「言質、とったです」

 

「信用してくれよ……」

 

「三ヶ月待たされた身になってほしい、です」

 

 さっきまで嫉妬やら何やらを考えてた自分が馬鹿みたい、です。

 

 ……今私はとても……とても舞い上がってます。ええ、ちょっとおかしいかもしれないですけど問題ないです。

 

「逃げちゃ駄目ですよ?」

 

「逃げるか! というか綾波その手は……」

 

 おかしくなる前に。これだけはちゃんとしてほしい、です。指揮官も男性ですから。

 

「もう一度はめて……です。この、指輪を」

 

「……ああ、分かったよ」

 

 そうして左手の薬指につけられたその指輪は……

 

 眩しすぎて……見れませんでした。

 

「お、おい。泣くな綾波」

 

「静かにする、です。指揮官……今は……」

 

 この幸せを噛み締めていたいから。




読んでくれてありがとうございました!

こういう感じの話が読まれるのであれば続けようかなと思うのですが、どうでしょう?

アズレンの小説がもっと増えてほしいな!(でも公式のストーリーが意味不明だからね、仕方ないね。)
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