ダンガンロンパ~黄金の言霊~   作:マイン

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しばらく書き溜めで更新が遅くなるかもしれないので場つなぎに番外編落っことしていきます
ちなみに、この0部は日常5割、スタンドバトル4割、シリアス1割でお送りしていきます


強欲な節制者の逆襲

ある意味衝撃的な入学式から数日が経った。最初はぶつかり合っていた生徒達も学校生活のためにはある程度コミュニケ―ションを取らざるを得ないため、直接的な喧騒は少なくなったが代わりにどうにもぎこちない空気が常に教室に流れるようになっていた。

そんな中で、初日に圧倒的な存在感を持って皆に強烈な印象を叩きこんだ苗木はというと…有体に言って、浮いていた。当然と言えば当然であろう。おおよそ日本人とは思えないような容姿に加え誰であろうと物怖じしない態度。なにより『ギャング』という肩書と時折学園長室に入ってくのが目撃されるような生徒と積極的に仲良くなるような生徒などそうそういはしない。最初こそ苗木の存在に喜んでいた舞園であったが、苗木がギャングだったという事実を受けどう接していいのか分からずうまく話しかけれずにいた。

そして当の苗木はというと、そんな現状に苦笑しながらも、それを改善する様子もなくそっけない日々を送っていた。

 

「あ、桑田君。これ昨日借りてた教科書、ありがとうね」

「お、おう…」

そっけないながらもフランクに話しかけてくる苗木に、桑田は戸惑いつつも差し出された教科書を受け取る。普段の態度から悪い奴ではない、むしろお人よし過ぎるような人柄であることは分かってはいるのだが、まだその見た目や肩書きとのギャップに慣れずうまく会話ができずにいた。

 

ピンポンパンポーン

『78期生、苗木誠君。苗木誠君。学園長がお呼びです、至急学園長室までお出で下さい』

「……ッ!」

「?学園長から…、なんの用だろう。…またくだらない用事だったらブッチしちゃおうかな。…じゃあ石丸君、ちょっと行ってくるね」

「う、うむ…」

おおよそ学園長に対する言葉づかいとは思えないようなことを言い残し、苗木は教室を去っていった。苗木が居なくなった後、クラスの面々は顔を見合わせて口々に呟きあう。

 

「…彼、どういう人なのだろうな?」

「こないだちょっと話したけど、すっごくいい人だったよ!…いい人だったんだけど…」

「やはり、あまりにも得体がしれぬな」

「そもそも一介のチンピラ風情が希望ヶ峰学園の学園長とこうもしょっちゅうコンタクトを取っていること自体が異常だ。同じチンピラの77期生の九頭竜組の跡取りとは特別そうではないというのに…」

「いや~、彼はただのヤクザではないと思いますがねえ。…なんというか、悪役というよりはダークヒーロー的な感じがする御仁でしたが…」

「あ、あいつが主人公ぉ?…ふ、ふふ、笑えない冗談ね…」

「…どうにもやりづらいぜ、なんかアイツと話していると仗助さんと話しているみたいで妙にやりづらくてしょうがねえ」

「…苗木君、どうしちゃったんでしょう…?」

「…」(彼はあの男とどういう関係なの…?いくら調べてもなかなか情報が入ってこないし、一体何者なのかしら…?)

徐々に広がっていく苗木とクラスメートとの溝。その関係が急激に変化するような事件が後日起こるとは、誰も予想していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…学園に不審な人物が?」

一方その頃学園長室に呼び出されていた苗木は、学園長から相談を持ちかけられていた。

 

「ああ、まだ生徒や職員に接触している訳でもなく校内に侵入しようとしている訳でもないんだが、最近妙な人物が何人か学園の周りをうろついているのが目撃されているんだ。…ただのストーカーやチンピラ程度なら学園のセキュリティでどうにでもなるんだが、万が一のことがあれば…」

学園長の万が一が示すことを、苗木は理解していた。

 

「…スタンド使いの可能性、ですか。…確かにこの学園はSPW財団の援助に加え僕が在籍している。SPW財団…というか承太郎さんたちに恨みがあったり僕の事を知るスタンド使いがいた場合、その可能性を否定することはできませんね」

「うむ…。過去にもこの学園を狙おうとしたスタンド使いがいたが、それらはSPW財団の『超自然現象』部門に所属するスタンド使い達によって未然に防がれてきた、が…もし侵入を許してしまえば、そいつらに対抗できるのはこの学園では君だけだ。君のスタンドの凄さは正直よく分からないが、もしもの時は頼むよ苗木君」

「…はい、分かりました」

苗木と学園長はがっしと握手を交わす。この学園の『希望』を守る為に。

 

 

 

 

「…ところで苗木君、響子とは仲良くなれているかね?…響子、私のことでなにか言っていなかったかい?クソ親父とか、あんなの父親じゃないとか……ああ~っ!口にするのも辛いッ!!」

「自重しろドタコン親父」

いつの間にかこの二人は相当に仲良くなっているようであった。…おもに親馬鹿とそのカウンセラー的な意味合いで。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう…今日も何事も起きなくて良かったな」

その日の夜、学園長は寄宿舎内の自室のテラスで星空を見ながら一息ついていた。

 

「しかしアレだな。苗木君の事を最初は警戒していたが、実際話してみると確かに高校生離れした胆力と視点を持ってこそいるがそれ以外はどこにでもいる普通の子供と同じだったなあ…。だからこそ、彼は魅力的なんだろうけどね。…『未完成な完璧』…といったところかな」

入学式の日から、学園長は苗木の人となりを良く知る為に自分のプライベートまでも話題にして苗木と話をしていた。結果自分の方がなにかと気を遣われることになってしまったが、そのおかげで自分の彼にかけた期待が正しいものであったという確信を持ち始めていた。

 

「まあしょっちゅう呼び出してるせいで学園の皆からはすこし警戒されているみたいだけどね…、彼らも苗木君という人間を知ってもらえればその素晴らしさが理解できるだろうけど…どうしたものか」

と、学園長がぼやいた時の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~、もうそんな心配をする必要はないぜぇ~」

突然聞こえてきた聞きなれない声に振り向くと、テラスの出入り口に大柄な男が立っていた。この学園の人間すべてを把握している学園長にも、見覚えはない。

 

「な、何者だ貴様!?」

「答える必要はねえなぁ~。悪いがしばらくおねんねしてもらうぜぇ~」

「何…!?」

「言ったろ、もう心配する必要はねえってよぉ。何故なら、その苗木誠はこの俺様がぶっ殺しちまうんだからよぉ~!その為に、テメエの面をちっと借りるぜぇ~ッ!!」

その言葉と共に、男の背後から現れた何かが学園長へと襲い掛かった!

 

「う、うわあああああああッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、苗木達78期生は移動教室のためにクラスを出て3階の物理室へと向かっていた。相変わらず気まずい雰囲気で移動している彼らに、

 

「やあやあやあ!君たち久しぶりだねェ~!」

向こう側からやってきた人物から声が掛けられた。

 

「…?学園長…」

「ハッ!おはようございます学園長先生!」

「うんうん、気持ちのいい挨拶だねえ~」

「学園長…、何故あなたがこちらに?」

「今日ってなにかありましたっけ?…あ、もしかしてまた苗木君?」

「そうなんだよ~!いちいち呼び出すのも悪いから直接呼びに行こうと思って待ってたんだよ~!」

「…だとよ、苗木」

「そうですか…」

学園長を見る苗木の眼には、どうにも普段と異なる学園長に対する不信感がありありと存在していた。それを感じた学園長は、苗木の後ろにいる霧切を見て行動を起こした。

 

「やあ響子!元気にしてるかい?」

「…!?何のつもりですか、学園長?」

「つれないこと言うなよぉ~。親子だろう?今までほったらかしにしていたことは謝るから仲良くしようじゃあないかぁ~」

「…え!?霧切ちゃんって学園長と親子なの!?」

「そんなもの名前で分かるだろう、まだ気づいていなかったのか…」

冷たく突き放す霧切に構うことなく、学園長は霧切の頭に手をやり撫でまわす。

 

「…ッ!ちょっと!やめなさい!」

「いいじゃないか響子ぉ~!小さいころを思い出すだろぉ?お前がまだ小さかったころはこうしてやると喜んだものだよぉ~」

「ちょ、やめっ…いい加減にしなさいッ!!」

霧切は学園長の手を無理やり振り払い、学園長に敵意の眼差しを向ける。

 

「おお怖い怖い、響子を怒らせてしまったナァ~」

「…あなたがそういう人で安心したわ、これで気持ちにけじめがついたもの」

「…学園長って、あんな人だったんだな」

「入学式の時はもっと凛々しかったんですがなぁ…」

軽蔑の眼差しも一向に気にせず、学園長は回れ右して苗木を呼ぶ。

 

「…さて苗木君、授業前のところ悪いけどちょっと来てもらってくれるかなぁ?」

「……」

そして学園長が顔を背けたその時、

 

 

 

 

 

 

「…おい!」

「あ?」

呼ばれたと思った学園長が再び後ろに振り向くと

 

 

 

 

 

 

バキャァァァッ!!

苗木のフルスイングした拳が学園長の顔面を捉えたッ!

 

 

『!!?』

「プギャアアアアッ!!?」

下あごを殴り飛ばされた学園長は情けない悲鳴と共に後方へ吹っ飛ばされる。皆が思わずポカンとした表情を浮かべる中、事態を引き起こした苗木は吹っ飛んだ学園長を冷めた目で見つめていた。

 

「……」

「…な、ななな、苗木君ッ!!き、君は一体、何をやったのか分かっているのかッ!?」

「うわ…、流石のアタシも今のは引くわー…」

「苗木、貴様何を考えて…」

と、非難轟々の声にも一切構うことなく苗木は倒れたままの学園長に叫ぶ。

 

「…何時まで狸寝入りをしている!?さっさと正体を現せッ!!」

『!?』

苗木の言い放った「正体」という言葉に一同は更なる驚愕に包まれる。

 

「正体…だと!?まさか…」

「あの学園長は…」

「偽物…だとでも言いたいの?」

その問いに苗木は振り向くことなく答える。

 

「…僕の知っている学園長、霧切仁さんは仕事にプライベートをむやみに持ち込むような人じゃあない。少なくとも他の人がいる前で霧切さんを娘扱いするほど馬鹿ではないよ」

「……」

「じゃ、じゃあアイツは一体…?」

とその時、倒れたままの学園長がピクリと動き

 

 

 

 

 

「…ったくよぉ~、おっそろしいガキだぜ全く。洞察力と思い切りに関しては承太郎以上なんじゃあねえかぁ~?」

先ほどとは異なる、まるで聞き覚えのない声が発せられる。

 

「!?え、え、ええッ!?」

「だ、誰よアンタァ!?」

「…俺なりによぉ~、一週間学園に張り込んでこいつの顔とか口調とか人間関係とか調べまくったんだぜぇ。そんでやっと完成させたってのによぉ~…」

その声に反応し学園長がゆっくりと起き上がると

 

 

 

 

 

 

「…ヒデエことすると思わねぇかぁ?お前らよぉ~」

下あごが丸ごと抉り取られた状態で平然と言葉を口にする学園長の顔が明らかになった。

 

 

「「「ギニャァァァァァッ!!!」」」

「な、ななな、何よぉアレェ!!?」

「ぞ、ゾンビ!?お化け!?…ど、どっちにしてもあんなのッ…」

「…人間ではないッ!」

そのおぞましい光景に皆が怯え、身構えるがその学園長の『ふり』をしていた者はゆっくりと立ち上がって相変わらずの軽い口調で話しかけてくる。

 

「おいおいおい、人間じゃないってのは流石に傷つくぜぇ~?まあ俺のスタンドが肉体と一体化するタイプのスタンドである以上、スタンド使いじゃあねえお前らにも視えちまうのは気の毒とは思うけどよぉ~」

「…スタンド?」

「それの説明は後でするよ、今はそれより…。おい貴様!本物の学園長は何処だ!?」

「安心しなよ、殺すなって言われてっから今頃はどっかの倉庫でおねんねしてるぜぇ。…けどまあその心配をする必要もねえなぁ、これからテメエはこの俺に殺されちまうんだからよぉ!」

「…何?」

「…な、なあちょっといいか?」

と、葉隠が全員に声をかける。

 

「…何だ?こんな時にもよおしたなどとふざけたことを抜かすと…」

「いやいやそうじゃあねえって!…気のせいかと思ったんだけどよぉ、……あいつ、どんどんでかくなってねえか?」

その言葉に改めてソイツを見ると、確かに最初は学園長と同じ180cm程度だった身長が今見るとさらに一回り大きく見える。

 

「気のせい…なんかじゃあないッ!ホントに大きくなってる…」

「大きくなってる?少し違ぇなぁ~。これはよ、元に戻ってるっつーんだぜぇ~!」

その声と共に、学園長の顔が弾け

 

 

 

 

 

 

「これが俺の本体のハンサム顔だ!」

その下から全く見覚えのない男の顔が明らかになる。

 

『…ッ!!?』

誰も、何も言えない。何も返せない。何が起こっているのか理解できない以上、コメントの仕様がない。彼らは今、ローマでの戦刃と同じ心境にあった。

そんな中で、

 

「…言うほどハンサムでもないな」

苗木が一人冷静にコメントをする。確かに露わになった素顔は、元は彫の深い美丈夫であったと思われるものの、なにか事故にでもあったのか鼻は潰れ目元も歪み、歯もいくらか抜けていてすきっ歯状態の悲惨な顔であった。

 

「う、うるせぇ!元からこんな顔だった訳じゃあねえ!承太郎の奴にこっぴどくやられたのが完全に治らなくてこの有様よ…」

愚痴るように言ったその言葉に、苗木は目の前の男の正体を感づいた。

 

「承太郎さんに?それにそのスタンド……そうか、思い出したぞ!お前、承太郎さんが言っていた13年前にエンヤとかいうバアさんに雇われたスタンド使いの一人だろうッ!」

「ギクウッ!?」

「確かスタンド使いの名前は『ラバーソール』、スタンド名は『黄の節制(イエローテンパランス)』だったか…どうなんだ!?」

苗木が問い詰めると男、ラバーソールは冷や汗を垂らして驚いた後、途端に真顔になってこちらを睨む。

 

 

「…驚いたぜ、まさか承太郎が俺の事をテメエに教えていて、なおかつテメエがそのことを覚えていたとはヨォ~」

「…承太郎さんが立場上手を出せない以上、まだ所在が分かっていないスタンド使いの情報を提供してくれてたからね。おかげで手早く終われそうだ」

「…なあ、さっきから承太郎とかエンヤとか言ってるけど誰なんだべ?」

「知るか!つーか今それどころじゃあねーだろ!」

外野の言葉などまるで無視し、ラバーソールはニヤリと笑う。

 

「手早く終わるねぇ~。…苗木くぅ~ん、そりゃちょっと皮算用が過ぎるんじゃあねえかなぁ~?俺の事を知ってるってことは、俺のスタンドの能力も知ってんだろォ~?…だったらさっき殴った時に、手についたソレがどういう意味か分かるんじゃあねえかなぁ~!」

言われてさっき殴った自分の右手を見ると、小指の根元付近になにやらうねうねと動く黄色いジェル状の物体が張り付いていた。

 

「うわっ!?なんだべあれ!?」

「…あれがスタンド?」

「ご名答、そこのレディー。それが俺のスタンド、『イエローテンパランス』だ。肉体と一体化することでさっきみたいに変装することもできるが、他人に取りつくことでそいつの肉体を喰ってどんどん大きくなるスタンド!今はその程度だが、もう十分もすればそいつの手は完全に喰われて跡形もなくなっちまうぜぇ~」

「そ、そんな…苗木君ッ!」

(…けれどおっかしいなぁ~。どうにも喰うスピードが遅い…っていうか、さっきからもぞもぞしてるだけで喰ってる様子が全然ねえんだよなぁ~?そんなにそいつがまずいのかぁ?)

と、驚く生徒達と不思議がるラバーソールの間で、苗木はしばらく手についた『イエローテンパランス』を見て

 

 

 

 

 

 

「…フッ」

ニヤリと笑った。

 

「…あ、なにが可笑しいんだ?」

「可笑しいも何も、この程度のスタンドなら対処の仕様はいくらでもあるさ」

「何と…!」

「なぁにぃ~?…言っておくがそいつは引っぺがせるもんじゃあねえぜ!無理にはがせばテメエの指ごと持っていくし、熱や刺激を与えれば反応して喰うスピードが早まるだけだ!…それともテメエ、自分の指を詰める気か?」

「ちょ、それは…!」

「…そんなことはしないさ」

「だ、だよな…ハハハ…」

と、そこで

 

 

 

 

 

「『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』ッ!!」

ヴォンッ!!

苗木は自身のスタンド、『G・E・R』を呼び出した。

 

「…は?ゴールド…あんだって?」

「…そいつが噂の『レクイエム』か。それで、どうするつもりだ?」

「簡単なことさ、この手についている限り離れないというなら…」

苗木が『イエローテンパランス』の付着した右手を突き出すと、『G・E・R』が横に回る。

 

「指を詰めるなんてみみっちいことなんかせず…」

そしてその手を伸ばし、腕を振り上げ…

 

「…苗木君、あなた何を…?」

「…まさかテメエ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手ごと切り落とせばいい」

手刀が振るわれ、豆腐でも切るかの如く手首から切り落とされた右手がドチャリ、という音を立てて地面に落ちた。

 

「……い、嫌ァァァァァッ!!」

「あ、アイツやりやがったッ!!」

その光景に生徒たちが悲鳴を上げる。それはそうであろう、突然クラスメイトの右手が切り落とされるなど、スプラッタ以外の何物でもない。

 

「…テメー、キレてんのか?指どころか右手ごと切り落とすなんざ正気の沙汰じゃあねーぜ。それとも、勝ち目がないと悟って右手一つで手打ちにして貰おうってハラか?言っておくが、俺はそんなに甘くはないゼェ~!」

予想外の行動に戸惑うラバーソールに、右手の切断面から血を流す苗木は一切動揺した様子を見せることなく返答する。

 

「…僕はいたって冷静だよ。手を切り落としたのも血迷ったからなんかじゃあない。この方が都合がいいからさ」

「あ?」

「苗木君!早く保健室に…!今二年の罪木さんを呼んでくるから…ッ!」

霧切の声に一つ振り返って

 

 

「大丈夫」

と目配せすると、苗木は制服につけていたテントウムシのブローチを一つ外す。

 

 

「指みたいな小さな箇所を創るよりも…」

やがてそのブローチに苗木の手から金色の光が流れると、ブローチはみるみる形を変えていき

 

 

「いっそ手を丸ごと創り直した方が…」

それはやがて切断された右手と寸分違わぬものになり、苗木は右腕を立てて左手でそれを持つと、

 

 

「簡単に治せる」

 

 

バチィィンッ!

まるで人形の腕でも嵌めなおすかのようにあっさりとそれを右手にくっつけた。

 

 

「…………はい?」

目の前で起きた出来事に、今度こそ開いた口が塞がらない。手が切り落とされたというのならまだ現実感があるが、ブローチが手になってそれがくっついたとなればもはや理解の度合いを越えている。

 

「悪いがお前のスタンドは僕には通用しない。殺しはしない…が、再起不能にしてからSPW財団に突き出させてもらう」

「…それが『生命を創り出す』能力って奴か。まいったねこりゃ、確かに俺のスタンドと相性最悪じゃあないか」

切り落とされた手から『イエローテンパランス』を回収したラバーソールはそんな台詞を言ってはいるが、未だに余裕の態度は崩れない。

 

「しかしお前さんよぉ~、こんなところで騒ぎを起こしたのはちっと判断ミスとしか言えねえなぁ~」

「何…?」

「分かんだろォ~?ここは学校の中、しかも周りの教室にはお前ら以外にも生徒がいるんだぜぇ~。そんな中でこんな騒ぎを起こそうものなら…」

と、その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くぉらあぁぁぁッ!!!何事じゃあああああッ!?」

近くの美術室から怒鳴り声と共に顔を覗かせたのは、苗木達にとって一期先輩にあたる『超高校級のマネージャー』弐大猫丸であった。

 

「だ、誰!?」

「…弐大殿!?」

突然の闖入者に驚く78期生達。

 

「おお!お前ら78期の連中じゃな!こんなところで何騒いで…」

と、事情を聞こうとした弐大の視線がその手前にいる大柄な男に向けられる。一目見てただごとではないと察したのか、その視線が厳しいものに変わる。

 

「…おんし何モンじゃあッ!?お前みたいな奴ワシは知らんぞッ!名を名乗らんかいッ!」

「…うるせえなぁ、突然飛び出してお前の方がやかましくしてどうすんだよ…」

「あ?誰だ、弐大のおっさんの奥にいるあのデカいの?」

「…どうやらただごとではなさそうですわね」

弐大の声につられて美術室から続々と77期生の面々が顔を覗かせる。スタンド使いにとって、目撃者が増えることは決して良いことではない。しかし、そんな状況でラバーソールはというと…笑っていた。

その笑みを見て、苗木は自分の失敗を悟る。

 

「…ッ!!弐大さんッ、そいつから離れろォッ!!」

「あ?」

「もう遅いィッ!!」

瞬間、ラバーソールに貼り付いていた『イエローテンパランス』が後ろにいた弐大に襲い掛かる。

 

「うおおおおおおッ!?なんじゃああああああッ!!?」

突然現れた黄色の物体に全身を包み込まれ、拘束され身動きの取れなくなった弐大が悲鳴を上げる。

 

「に、弐大さんッ!?」

「なんだ…!?あの異様な存在は!?おのれ魔界のゲートから零れ落ちた魑魅魍魎かッ!?」

「んな訳ねえだろ…とはハッキリ言えねえな今回は、こいつはマジモンのバケモンか!?」

「…あの怪生物はそこの男から飛び出した、あの男が操っているのか?」

クラスメートの異変に驚く77期生の中から、突如何かが発射された。トップスピードで飛び出し、弐大を包む『イエローテンパランス』に殴り掛かったのは、おそらく希望ヶ峰学園一の脳筋、『超高校級の体操部』終里赤音であった。

 

「テンメェこのゼリーのお化けがぁッ!!弐大を離しやがれええッ!!」

苗木が止める間もなく終里の拳が振り下ろされるが、めり込んだ拳は『イエローテンパランス』に一切ダメージを与えることなく、逆に終里を捕えて弐大と同じように雁字搦めにしてしまった。

 

「こぉの阿呆ッ!考えて行動せいとあれほど言ったろうがぁぁぁッ!!」

「う、うるせぇッ!こうなったらこんなゼリー野郎なんざ喰って…や……は、らら?ち、力が…抜ける…」

「…ぬぅッ!?それだけではないッ!?…む、むしろワシらが喰われているッ!?」

脱力感と共に熱を帯びた部分から感じる喪失感に流石の弐大も顔を青くする。

 

「…予想外の収穫だったなぁ~、まさか二人も捕まえられるとは思わなかったぜぇ~。希望ヶ峰学園の奴らってのは相当マヌケ揃いだったらしいなぁ~?…いや」

喜色の笑みを浮かべたラバーソールは目の前で歯噛みしている苗木を指差しこう告げる。

 

「一番マヌケだったのはテメエだったな苗木くぅ~ん?テメエも親父と一緒だなぁ、『レクイエム』だかなんだか知らねえが、強力なスタンドの力にかまけて余裕ぶっこいてたりするからテメエの仲間を危険に晒して、結果自分が惨めに負けることになるんだぜぇ~!」

「………」

「…どういうこと?」

流石に状況を整理できなくなったのか霧切の口からそんな問いが零れる。ラバーソールはそれを聞き逃さない。

 

「なんだ、知らなかったのかぁ?…だったら教えてやるよぉ!そいつの親父はDIOっつてよぉ、かつて世界を支配しようとしていた大悪党なんだぜぇ~!」

「…な、なんだってーッ!?」

ラバーソールの語った内容に苗木を除いた全員が驚く。が、あまりに突拍子の無い内容だったせいか逆に冷めているものも居る。

 

「…フン、何を言い出すかと思えば…。世界征服なんぞガキの戯言かフィクションの中だけの話だ!そんなことができるものか!…どうやら苗木、貴様の父親とやらは相当頭が幸せな奴らしいなぁ?」

嘲るように言う十神の言葉に苗木は何も言い返さない。

 

「…そいつはどうかなぁ?もしそいつがフィクションの中だけにいるような奴だったら不可能じゃあねえだろぉ~?」

「何…?」

しかしその十神の嘲笑は、ラバーソールの次の言葉によって掻き消えることとなる。

 

「教えてやる!DIOは人間じゃあねえッ!その正体は聞いて驚け、『吸血鬼』なんだよぉーッ!!」

「きゅ、吸血鬼ィ!?」

「…まさか、吸血鬼ってその…」

「お前らが考えてるやつで有ってると思うゼェ~、バンパイア、ドラキュラ、…呼び方は色々あるが要するに化け物さ!つまり、お前らのクラスメートのそいつは吸血鬼の息子、バケモンの子供なんだよぉッ!!」

高笑いと共に語られた衝撃の事実に、全員の視線が苗木に向けられる。

 

「…証拠はあるの?」

そんな中で、霧切が若干上ずった声で問いかける。

 

「…あ?」

「彼が吸血鬼の息子だという証拠はあるの?彼は日光を浴びても嫌がるそぶり一つ見せないし、ニンニクや十字架だって恐れたりしなかったわ。伝承にある吸血鬼の特徴とは逸脱してるように見えるけれど…」

「そ、そうだべ!確かに苗木っちはトマトが好きだけど、トマトジュースばっか飲んでるわけじゃあ無かったべ!」

「…あー、それなんだがよぉ。俺も良く知らねえんだが、DIOが吸血鬼になった手段ってのが少し変わってるみたいでよぉ~、そのせいかそいつは吸血鬼としての力が無えみたいなんだが…ま、俺に聞くよりも本人に直接聞いてみりゃあいいんじゃあねえかぁ~?」

ラバーソールが苗木を指差しそう答える。振られた苗木はというと、未だラバーソールを睨みながら複雑そうな表情を浮かべていた。

 

「…な、苗木君?今の話は本当なのかね…?」

「…」

「そ、そんなのウソに決まってるじゃんッ!吸血鬼なんてホントにいる訳ないよッ!」

「…確かに、そんな存在本当にいたとすれば世間が騒がない筈が無い」

「そ、そうですよ!吸血鬼なんてメルヘンやおとぎ話の中だけの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そいつの言っていることは、全て本当だ」

唐突に放たれた苗木の言葉に、その場の全員の表情が凍りつく。

 

「…ま、マジ…!?」

「い、いやいやいや!あり得ねーって!」

「まさか…!貴様も俺と同じ破滅の運命を持って生まれてきた忌子だったとはッ!」

教室を出たらいきなりクラスメートが危機に陥った挙句、後輩が吸血鬼の子供などという話を聞かされた77期生の面々もまた戸惑いを隠せない。

 

「…ほぉ~?思ったより素直に認めんだなぁ、観念したか?…こんなところで俺の正体を晒したものそこの学園長の娘の為だろォ?」

「…え?」

「あのまま喧嘩別れしたんじゃあ親子関係おしまいだからなぁ~、自分の代わりに親父と仲良くなってもらいたいとでも思ったか?父親の誤解を解くために自分を犠牲にするとはくぅ~ッ!泣かせる話じゃあねえか。…そんじゃあよ、さくっと自殺して死んでくれや。先輩が殺される前によぉ~。スカッとしたら、先輩の命だけでも助けてやろうって気になるかもしれねえぜぇ~!」

 無論、そんなことはあり得ない。苗木が自殺すればラバーソールはこの場の全員を皆殺しにするだろう。しかし、かといってこのままでは眼前でぐったりしている弐大と終里が死ぬのも時間の問題だ。そんなどうしようもない状況で苗木がゆっくりと顔を上げると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呆れたような視線をラバーソールに向ける。

 

「…やっぱりマヌケはアンタだったみたいだな」

「…あぁ?」

「心理的な動揺を誘うためだか知らないが、アンタは僕の身の上話なんかを好き勝手話してないでさっさと僕を自殺させるべきだったんだ」

 とその時、ラバーソールは苗木の周りの違和感に気が付く。

 

「…おい、テメエ……さっきテメエが切り落とした右手どこやった?」

「その時間稼ぎのおかげで…」

 ラバーソールの真上の天井がゆらゆらと蠢き、

 

 

 

 

 

 

 

 

「…チェックメイトを掛けられたんだからなぁーッ!!」

 それがラバーソールに飛来し、その体を絡め取る。

 

「ぐおおおッ!?なんじゃあこりゃあーッ!!」

 全身に感じる艶めかしい感触に驚いていると、それは絞めつける力を急激に強め、絞めつけられたラバーソールの体からミシミシと嫌な音が鳴る。

 

「うぎ…ぎ、く、苦しい…。こ、こいつは…『蛇』…か!?」

 首を絞められ声を出すのもやっとなラバーソールの体に絡みついているのは、丸太ほどの直径のある太さの巨大な蛇であった。

 

「うわデカッ!キモッ!!」

「ただの蛇ではないッ!あれは世界最大級の蛇、『アナコンダ』だッ!大きいもので九メートルを超す長さもさることながら、最大の特徴はその重さだ!最高で100㎏にもなるその重量は、その全てが筋肉ッ!!絞めつけた相手の体力と自由を完全に奪い、獰猛で知られるあのイリエワニすら絞め殺してしまうほどのパワーの原動力でもあるのだッ!!」

「…説明ご苦労さん」

「さすが田中さん!お詳しいですのね!」

 77期生の『超高校級の飼育委員』田中眼蛇夢が殆ど喋ってしまったため、説明の手間が省けた苗木が苦笑しながら詰め寄る。

 

「切り離す前に右手に生命エネルギーを残しておいたんだ。蛇になった右手は気づかれないよう天井に移動し、アンタの真上に来たところで襲い掛かった。…そいつの大きさから考えてアンタの首をへし折るのにかかる時間は一分弱といったところかな?」

「…ぐ、ぐ…」

「さて質問だ。アンタの『イエローテンパランス』が弐大さんと終里さんを喰い殺すのと、僕の蛇がアンタの首をへし折るの、どっちが早いと思う?」

「……」

 もはやラバーソールに答える気力はない。本体の呼吸が弱まったことで『イエローテンパランス』もまた活動を停止し捕まっていた二人も半ば解放されつつあった。

 

 

 

「…まあ、答えは聞いてないけどね」

 ゆっくりとラバーソールの前に立った苗木がクスリと笑う。穏やかそうな笑みではあったが、その顔には紛れもない怒りが存在していた。

 

 

「結果的にとはいえアンタは僕の逆鱗をかーなーり逆撫でしてくれた…」

 その後ろから『G・E・R』が現れ、その拳を握りしめる。

 

 

「…一発ぶん殴っとかないと、気が済まないんだよぉッ!!」

『WRYYYYYYYYYッ!!』

 雄叫びと共に放たれた拳が、既に満身創痍だったラバーソールの顔面に突き刺さった!

 

 

「ブゲェッ!?…も、もう勘弁しちくり…」

「『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!』」

「どぎゃぁぁぁぁッ!!」

 命乞いなどまるで聞いてないかの如く叩き込まれたラッシュの嵐を受け、ラバーソールは吹っ飛ばされた拍子に蛇から解放されたが、そのまま廊下の突き当たりの壁に叩きつけられる。

 

 

 

 

 

(な、なんだ…こいつのスタンド…、強すぎる…反則だろぉ…)

 ゆっくりと倒れ伏しながら意識を手放そうとしたラバーソールであったが、突如頭部に痛みを感じると体が固定される。視線を前に向けると、自分の髪の毛を掴みあげて無理やり起き上がらせている苗木の姿が見える。

 

「…は、はは…な、苗木さぁん…。もういいじゃないっすかぁ~…、勘弁してくださいよぉ~…」

「安心しろ、これ以上殴るつもりはない。幸い弐大さんも終里さんも大した怪我はなかったようだからね。…だが、アンタをSPW財団に引き渡す前に聞きたいことがある。…アンタを僕にけしかけたのは誰だ?きっちり喋ってもらう」

「…や、やっぱりそこ聞いちゃいます…?」

 当然、といった態度の苗木にラバーソールは敗北を認めざるを得ない。負けてしまった以上おめおめと逃げ帰れば『奴』に何をされるか知れたものではない。それならいっそ、ここで洗いざらい喋ってSPW財団の管理下に入った方が安全といえるだろう。うまくいけば、SPW財団のおかかえスタンド使いとして食い扶持を稼ぐことぐらいできるかもしれない。現にあの『ホル・ホース』は既に財団のヒットマンとしてそれなりの地位にいると聞いている。そんな希望的観測を持ってラバーソールはすべてを話そうと決める。

 

「わ、分かった…俺を雇った奴は…」

 とその時、

 

ドズッ…!

 突然飛来した一本の鉄柱が、苗木の脇腹を掠めてラバーソールの胸に突き刺さった。

 

『何ィィィッ!?』

 突然の事態に苗木が警戒してその場を飛び下がると、入れ替わるように生徒たちの頭上を飛び越えて謎の人物がラバーソールの傍に降り立った。

 

『……』

 そいつは横縞の体に文字のようなものを刻み、王冠を模したような紫の頭飾りをした人型の人物であった。しかし、人の形を成してこそいるが、どう見ても人間には思えない。

 

「…お前、何者だッ!?」

『……』

 苗木の問いにもだんまりを決め込んでいたが、そいつの足元で死にかけているラバーソールが血の泡を吹きながらその名を言う。

 

「…て、テメエ…『ホワイトスネイク』、裏切りやがったな…」

「…『ホワイトスネイク』?…スタンドか!」

 周りのクラスメート達が気づいていないところから、苗木は眼前の人物をスタンドだと認識する。

 

『裏切った?いいや違う、裏切ったのは君だよラバーソール』

「…は、はあ…?」

 『ホワイトスネイク』が突如として言葉を話し出す。

 

『私は君を信用していた。君ならばきっと、苗木誠に敗北の絶望を味あわせ私と共に歩むにふさわしい人物へと導いてくれると信じていた。…だが君は彼にあっさりと敗北し、あまつさえ彼の輝きを強める真似をしてしまった。私は信用を裏切られたのだ、ラバーソール』

「…な、何言ってやがる…?」

『失望したと言っているのだよラバーソール。もはや君に用はない、…だがそのスタンドを失うのは実に惜しい。故に…』

そう言って『ホワイトスネイク』がラバーソールの頭部に手を掛け

 

「な、なにを…?」

「…ッ!待て…ッ!」

 苗木の制止など聞くことなく

 

ベリィッ!

 ラバーソールの頭部から『DISC』のような物を抜き取った。

 

「!?」

『君の『イエローテンパランス』は私が貰うとしよう。安心してくれ、きっと有効に使って見せよう。…どうせ君が持っていた所でじきに無用の長物となる物だからな』

「あ…あ…あ?」

 『DISC』を引き抜かれたラバーソールは言葉にならない呟きを発しながら痙攣している。スタンドが見えていない生徒達から見ても、異常な光景である事はハッキリ分かり、皆が混乱を隠せずにいた。

 

「…な、何、何、何ィ!?」

「あ、あのオッサンどうしたんだべ!?」

「貴様…、まさかスタンドを…!」

『もうこの男に用はない。おとなしく…』

 『ホワイトスネイク』はまるでゴミでも見るかのような視線をラバーソールに向け、足を振り上げ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『神の御許に逝くがいいッ!!』

 ラバーソールの頭部を踏み砕いた。嫌な音とともに、血と脳漿がまき散らされる。

 

「…い、嫌あぁぁぁぁぁッ!!?」

「あぶあぶあぶあぶ…」

 朝日奈の悲鳴が廊下に響き渡る。この手のことに耐性のない山田や不二咲、腐川や澪田に至っては悲鳴を上げる間もなく失神している。

 

「貴様…ッ!!」

 怒りの視線を向ける苗木に、『ホワイトスネイク』はラバーソールの遺体を足蹴にし『DISC』を弄びながら告げる。

 

『苗木誠、今回はこのまま引き下がろう。しかし憶えておくがいい、お前は既に逃れられん『運命』の流れの中にある。お前の中の『DIO』と『ジョースター』の因縁がある限り、お前と私は再び出会う運命にある。次に会うときに、君が『DIO』を受け継ぐものとしてふさわしい男になっていることを、私は切に願っているよ…』

「能書きはもういい…、貴様はッ、ここで殺すッ!!」

 苗木が『G・E・R』を従え『ホワイトスネイク』に迫る。しかし、『ホワイトスネイク』は苗木に背を向け

 

『ウオシャアアアアッ!!』

ボゴオォォンッ!!

 背後の壁をラッシュで破壊し、その穴から飛び出していった。苗木がそこから下を見下ろすが、下には『ホワイトスネイク』もその本体らしき人物も存在していなかった。

 

「逃げられた…!だが妙だ、あれほどのパワーのスタンド操る以上本体は必ず近くにいる筈だ。それなのに廊下はおろか校内からは不審な生命エネルギーは感知できなかった。…まさか、この真下からあのスタンドを操っていたとでもいうのか…?だとすれば遠隔操作でこれほどのパワー、そして明らかに本体とリンクした言動を発することができるということか…、なんてスタンドだ…」

苗木が消えた『ホワイトスネイク』について考察していると、

 

「…苗木君」

「…ん?」

 背後から声が掛けられ、振り返るとその場にいた78期生と77期生の全員が自分を警戒した目で見ていた。

 

「説明してもらうぞ、苗木。さっき起きたことも、そこでくたばっている奴の事も、…そして貴様の事もな」

「……」

 十神の冷たい命令に、苗木は反応することなく歩き出し彼らの前にあったラバーソールの遺体の前で膝をつき、砕けた頭部に手をかざす。

 

「おい、貴様何を…!?」

 次の瞬間、手から金色の生命エネルギーが溢れだし、原型を留めていなかったラバーソールの頭部は元通り…正確には承太郎にボコボコにされる以前の顔に戻った。

 

「…なんだ、ホントに結構ハンサムだったんじゃあないか…」

 ラバーソールの素顔に苗木がそんな風に笑っていると、

 

「…どうして、彼を治したんだい?彼は君を殺そうとしたんだろ?だったら治す義理は無いと思うけど…」

 77期の『超高校級の幸運』狛枝凪斗の問いかけに、苗木は顔を伏せたまま答える。

 

「…確かにこいつは僕を殺そうとした。けれど、それは生きているときのこいつだ。死んでしまった以上、もうこいつにこれ以上罰を与える必要はない。死は誰にでも平等に訪れるからこそ、誰の死であってもそれを侮辱してはならない。…要するに、これは僕の単なる自己満足さ…」

 ラバーソールの遺体を担ぎ上げ、苗木は生徒たちの間を縫って歩き出し皆に背を向けて言う。

 

「…事情は説明するよ。巻き込んでしまった以上、黙っていることは許されない。けど、まずは学園長を助け出してからだ。こいつも殺してないとは言ってたし何処かに幽閉されてるだろう。…それが済んだら、全部話すよ…」

 そう言って歩き出す苗木。それを見送る生徒達には、いつも穏やかでしかし油断のないその背中が、ひどく寂しげに見えていた。

 




ご覧のとおり0部に出てくるスタンド使いはほとんど1~5部に出てきた連中の再出演が多くなってきますのであしからず
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