「…まずは、僕の素性から説明しておこう」
「ま、まさかアンタまで偽物ってことは無いわよね…?」
「それは無いよ。僕は紛れもなく苗木誠さ。…ただ、普通の日本人とはちょっと違うんだけどね」
「違う…?貴様ハーフか?」
「まあざっぱに言えばそうなんだけど…。正確に言えば、僕の母は日本人、そして父はイギリス人で…吸血鬼だったんだ」
「!?きゅ、吸血鬼って…苗木っちと同じ!?」
「まあね。…父の名は『ディオ・ブランドー』。19世紀に実在した、古の呪具『石仮面』によって吸血鬼へと変貌した本物の化け物だよ」
「…は?19世紀?」
「な、苗木君?年代間違えてませんか?今は21世紀ですよ?」
「いいや。ディオは19世紀に生まれ、とある事情で100年の眠りを経て復活したんだよ。で、その時にあのクソ親父が母さんを襲って産まれたのが僕って訳」
「…さらっとヘヴィな話すんなぁ…」
「いいさ、もうその辺は吹っ切れたよ」
「…だが、そいつは『ブランドー』なのだろう?江ノ島が言っていた貴様が『ジョースター』家の人間というのはどういうことだ?」
「…ディオが何故19世紀の時代に眠りについたのだと思う?」
「…?」
「それは、一人の人間によって倒されたからなんだ。その人間の名は…『ジョナサン・ジョースター』。以前パソコンのファイルで知った、ジョセフ・ジョースターさんの実の祖父に当たる人物だよ」
「…え?やっつけられちゃったんですか?それじゃあ…」
「…確かにディオはジョナサンに敗れた。けれど、寸でのところでディオは生き延びたんだ。…ジョナサンの肉体を奪ってね」
「奪った…!?」
「うん。ディオは倒されたと見せかけて策をめぐらせ、新婚旅行中のジョナサンを襲って首から下の肉体を奪って生き延びたんだ。そして、肉体が自分に馴染むまで、およそ100年の間眠りについていたんだけど、どっかの馬鹿がそれを目覚めさせてしまった。…という訳で、ジョナサンの肉体を得たディオから生まれた僕は、吸血鬼DIOの子であると同時にジョースター家の血を継いでいるってことなんだ。…理解できた?」
「…なんか壮大過ぎてリアルとは思えねーけど…」
「貴様が嘘をつくとも思えんしな…、まあ信じるとしよう」
「ありがとう」
「…そう言えば、『S・フィンガーズ』が言ってた、苗木のもう一つの才能って何?」
「ああ!そういやそんなこと言ってたな…」
「そうだね、そこも言わなくちゃね。…僕のもう一つの才能、それは…『超高校級のギャング』というものだよ」
「…ぎゃ、ギャング?」
「日本風に言えば、ヤクザだね。僕はイタリアギャングの『パッショーネ』と言う組織でボスを務めている。このロングコートは、ボスの証みたいなもんだよ」
「ちょ…!私そんなこと知りませんでしたよ!?何時そんなのになったんですか!?」
「…僕がボスに就任したのは中3の夏休みのことさ。舞園さんもその時期の記憶を消されていたみたいだから憶えていないのも無理はないよ」
「…待て、貴様イタリアに住んでいたのか?」
「いや、日本生まれの日本育ちだけど…」
「だったら、どうやっていきなりギャングのボスなんぞになったというのだ?いくらなんでも急すぎるんじゃあないか?」
「あー…、その辺はまあ色々あったんだけど、端的に言えば、僕が当時のボスを倒してそのままボスの座に就いた…ってことかな」
「は!?ちょ、ちょっと待つべ!なんでいきなりそんな話になってんだ?訳が分からんべ!?」
『…そこからは俺が話そう』
その声と共に現れたのは、『スティッキー・フィンガーズ』、『ムーディ・ブルース』、『エアロスミス』のスタンド達であった。
「…待て、何故貴様らが出てくる?」
『苗木が全てを思い出した今、もう俺たちを縛る制約は無くなった。ならば俺たちが事情を話すことが最も効率的だろう』
「…ブチャラティ」
「…そのブチャラティという…名前?は何?何故苗木君は『S・フィンガーズ』や『ムーディ・ブルース』の事を別の名前で呼ぶの?」
『それは決まっている。…それが俺たちの『生前の』名前だからだ』
「!?生前のって…?」
『…それは、よぉ…』
『単刀直入に言おう。…俺たちは元々スタンドではなく人間だった。そして苗木がギャングになった時の仲間だったものだ。今はどういう訳か生前のスタンドの意志となっているがな…』
「何だと…!?」
『S・フィンガーズ』…ブチャラティはそこでイタリアであったことの経緯を全て話した。苗木がなし崩し的にギャングの一員になったこと、組織の現状を知り、自分をボスにする為に決意したことを、そして…その過程で自分たちはボスの凶刃に斃れ、苗木に『希望』を託して死んだことを。
『…これが苗木がボスの座に就いた事の顛末だ』
「…俄かには信じがたいが」
「す…ブチャラティさんたちや苗木君が嘘をついているとも考えられないですし、信じるほかないですよね」
「…さて、これで苗木君の素性に関する説明は終わった訳だ」
「…それじゃあ、次は『人類史上最大最悪の絶望的事件』の事について話そう」
「…!そうね、お願い…」
「最初のきっかけは、希望ヶ峰学園の『真の目的』から始まったんだ」
「真の目的、だと?」
「うん。希望ヶ峰学園は、表向きは世界各地の『超高校級』と呼ぶに相応しい才能を持った学生たちをスカウト、養成することで、その才能を有意義に使う事ができるようにすることを目的としている。それが世間一般の希望ヶ峰学園のイメージだ。…しかし、それは全て希望ヶ峰学園創設時から続けられている『ある計画』の為の下準備でしかなかったんだ」
「計画…?」
「な、なんなんだべそりゃ?」
「計画の名は…『カムクライズルプロジェクト』。希望ヶ峰学園創設者、『神座出流』から名を取って名づけられた。その目的は、『ありとあらゆる才能を持った万能の天才を人工的に創り出す』というもの。そして、その計画によって誕生する予定の存在を連中は仮にこう呼称していた。…『超高校級の希望』とね」
「天才を…創る!?」
「…アホらし、んなのどーするっつーんだよ?」
「…正直あまり聞いてて気分のいい内容じゃあないけど、それでも聞く?」
「…ここまで聞かされてそれを知らずにはいられないわ。続けて頂戴」
「分かった…」
気が進まないのか皆の顔色を窺った後に、苗木は仕方なくそのおぞましい計画の実態を語りだす。
「…『カムクライズルプロジェクト』は、大きく分けて2つの段階で構成されている。一つは、世界各地で確認されるあらゆる才能の持ち主を長期にかけて養成、その才能のメカニズムを解読し、どういった能力がその才能の起源となっているのかを研究することだ」
「…つまり、表向きの希望ヶ峰学園はその第一段階の為のカムフラージュだったという訳か」
「よーするに、アタシらはモルモットだったっつーワケ!?ギャハハハハ!…ナメやがってクソがァッ!」
「…そして希望ヶ峰学園は、第78期生…つまり僕らの代まででデータの収集に一旦見切りをつけ、計画を第二段階へと移行した。この第二段階こそが、万能の天才『超高校級の希望』を創り出すことだったんだ」
「…で、その第二段階って、何するんだべ?」
「……」
そこで一旦息をつき、苗木は覚悟を決めて真実を口にする。
「『カムクライズルプロジェクト』の第二段階…それは被験者となる人間の脳に干渉し、才能のデータを直接インプットすることであらゆる才能を『強制的に』開花させる実験…ようするに、『人体改造』だよ…!」
『ッ!!?』
人体改造、漫画の中でしか使われないであろうその言葉に、一同は驚愕を隠せない。
「じ、人体改造って…」
「ど、どういことだッ!?」
「言葉通りさ。…被験者となった人間に外科手術を施し、脳に直接才能のデータを電気信号として入力、そうすることで脳と肉体にインプットした才能を行使できるだけの能力を強制的に覚醒させる…それが『カムクライズルプロジェクト』の実態だよ」
「外科手術って…なにをするんですか?」
「そんなの、頭を切開して脳を…」
「ひぃッ!」
「…ごめん、ちょっと直接的すぎた。要するに、脳に無理やりその才能が使えるということを錯覚させることで実際にその才能を使えるようにする…一種の『思い込み』に近い方法だね」
「な、なんつーエゲツねえやり方だべ…!」
『イカれてやがるッ…!』
「希望ヶ峰学園の裏で、そのような実験が行われていたとはな…」
自分たちが思い描いていた希望ヶ峰学園の本当の実態にショックを隠せない一同に、苗木はさらなる事実を告白する。
「…けれど、この計画において本当に非人道的なのは手術という行為そのものじゃあない。その手術の『過程』こそが本当に残酷なんだ…」
「えっ!?」
「どーいうこった?」
「『カムクライズルプロジェクト』の被験者は、僕ら本科の生徒ではなく『予備学科』の生徒から選抜されたんだ」
「予備学科?」
と、そこで江ノ島が口を挟む。
「私から説明しましょう。『予備学科』とは、あなた達78期生の一期前…すなわち第77期生の代にて希望ヶ峰学園が急遽試験的に導入した『一般枠』のことです。『超高校級』の才能がなくとも、入学金と定期的な寄付金さえ支払えば誰であろうと『一応』希望ヶ峰学園の生徒としての肩書きを得ることができ、さらに就学過程で『超高校級』の片鱗が見受けられればその時点で本科への編入ができるという、聞くだけならまさに夢のような制度のことです」
「…何故そんな制度を急に?」
「簡単に言えば、資金不足です」
『か、カネェ?』
「はい。『カムクライズルプロジェクト』は、希望ヶ峰学園上層部と一部の政治家のみが知る極秘プロジェクト。政府からの援助金はともかく、その存在を知らないスポンサーの企業や卒業生からの寄付金にはその為の資金は含まれてはいません。とはいえ学園の維持費も馬鹿にならないため予算を誤魔化すこともできない。結果、希望ヶ峰学園は近年深刻な資金不足に頭を抱えていました。それを解消するために用意したのが『予備学科』制度なのです。その結果予定通り、希望ヶ峰学園のネームバリューに惹かれ、多くの学生が高い入学金を払って窓口に殺到しました。それにより希望ヶ峰学園は当面の資金不足を乗り切ることができました」
「成程、庶民連中から実験の為の資金を搾り取り、その過程で『超高校級』の才能が発掘できれば儲けもの…というわけか」
「…ああ、その本科への入学という内容ですが…、正直なところそれはまるっきりの出まかせ、学園はそんなつもりは一切ありませんでした」
「は!?」
「だって~、『予備学科』が設立されたのって~、老朽化して廃棄予定だった旧校舎を突貫工事でとりあえず見栄え良くしただけで、設備とか授業内容とかはごく普通の学校と同じものだったんだよ~。そんな環境でいきなり『超高校級』が誕生するとかマジあり得ない~!それに、本科生徒との交流も殆ど無くって~、ぶっちゃけ希望ヶ峰学園の看板背負っただけのマイナー高校って感じだったんだよね~」
「そ、それって詐欺じゃん!」
「昔の偉くもない人はこう言ったそうだよ。『バレなきゃ犯罪じゃあないんですよ』…全くその通りだね。そんなおいしい話があるわけがないってのにさ…」
「ひ、酷え…」
『…虫唾が走るな』
「…気持ちは分かるけど、話を戻そう。それで、何故被験者が予備学科から選ばれたかということなんだけど、どうしてだと思う?」
「へ?それは…」
「アタマん中カラッポだからじゃあねーの?」
「ふ、腐川さん流石にそれは…」
「はい大正解~!」
「はぁッ!?」
「…言い方はアレだけど、腐川さんの言っていることは間違いではないよ。この手術の被験者には、できるだけ元からの才能を持ち合わせていない、いわゆる『凡人』を対象とすることが望ましいとされていたんだ。脳の情報量に余裕がある分だけ、それだけ多くの才能のデータをインプットできるから実験の成果が分かりやすいからね」
「成程な…」
『ナランチャみてーなもんか』
『あっ!言ったなアバッキオ!』
「けれど、理由はそれだけではなかった。予備学科の生徒の中には例え才能がなくとも、持ち合わせている何かしらの『技術』がある人もいたから、被験者がそれを持っている場合にその技術も得られるということも理由の一つ。そして最大の理由としては…『替えが利く』というのが本音だろうな」
「ッ!?何、それ…!?」
「才能ある金の卵を使うよりも、有象無象の凡人を使った方が誤魔化しがきく…。あの頃の上層部のジジイ共はそういう連中だったんだよ。僕も正直何度始末してやろうかと考えたか分からない…」
「ぶ、物騒なことをいうんじゃあねーべよ…」
「………」
「…霧切さん、気休めにしかならないと思うけど、学園長はそのことを知らずに協力していたんだ。あの人はただ、純粋にこの世界の新しい『希望』の誕生を願っていただけなんだ。だから、あまり気に病まないで…」
「…ええ、ありがとう…」
「…それで、貴様がさっき言った手術の『過程』とやらはどういうことなんだ?」
「うん。…今言ったとおり、手術の被験者には比較的脳の情報量の少ない予備学科の生徒が選ばれた。けれど、いくら才能が元から無いとはいえ人間一人の脳におよそ数百人分にもおよぶ才能のデータを全てインプットするなんて不可能だ。例えるなら、フロッピーディスクにスーパーコンピューターのデータを全部突っ込むような物だ。そんなことをしたら、どうなると思う…?」
「んなことしたらパンクしちまうべよ!」
「その通り。そしてそんなことは連中も分かっていた。だから連中はこう考えたんだ。…『入りきらないなら、余計なものを消してしまえばいい』と」
「そ、それって…どういう…?」
「…奴らは、自分たちの研究をより完璧に成功させるために、被験者となった生徒の人格や記憶、思考や感情と言った情報を脳から削除したんだ…!より多くの才能のデータをインプットする為に…ッ!!」
「なっ!?」
余りにも残酷な事実、それに皆は怯えと動揺を隠せずにいた。
「む、無茶苦茶だべ!?人を何だと思ってるんだべッ!!」
「…さっきジェノサイダーが言っていただろう、モルモットだと。所詮そいつらにとって俺たちは実験動物でしかなかったという訳だ…!」
『…そのジジイ共もまさに吐き気を催す邪悪だったってことか』
「本当…酷い話ですよね…。私がやったことが、可愛く見えるぐらいに…外道ですよね…」
「おめえはどさくさに紛れて自己擁護してんじゃあねーよッ!!」
「…ちぇー、バレちゃった」
「…それで、結局その実験はどうなったの?」
「…手術自体は成功したよ。その結果、あらゆる才能を持ち合わせ、なおかつそれを最大限発揮することのできる肉体を兼ね備えた万能の天才、『超高校級の希望』…『カムクライズル』が誕生した」
「名前そのまんまじゃあねーか…」
「連中もそこまでは頭が回らなかったんだろう。…けれど、誕生したカムクライズルには問題があったんだ」
「問題…?」
「カムクライズルのベースとなった被験者の生徒なんだけど、彼の精神力が想像以上に強かったせいか、術後に消滅している筈のその生徒の人格がカムクライズルの中で消えずに残存したままだったんだ」
「あらまビックリ!」
「その生徒は元々手術なんて受けるつもりはなくて、単なる能力向上の臨床試験の名目で被験者となったから、騙されたと知った彼はカムクライズルの中で肉体を取り戻そうと抵抗し続けてね、そのせいでカムクライズルは思うように動けなかったんだ。…で、それに業を煮やしたジジイ共はある生徒に協力を申し出た」
「ある生徒…?」
「その生徒こそが、生物室にあったもう一つの死体の正体…。『カムクライズルプロジェクト』の脳開発研究部門の一員でもあった、『超高校級の神経学者』松田夜助。そして…江ノ島盾子の、恋人でもあった人だ…!」
「何ッ!?」
驚いた皆が江ノ島に視線を向けると、江ノ島は心底どうでもいいかのような表情でその視線を受け入れる。
「…ああ、そんなこともありましたねえ。正直あまりにもどうでもいいことでしたので忘れていました」
「ま、待て!苗木、貴様植物庭園の死体が元々生物室にあったものだと言っていただろう!?だがあの死体は紛れもなく女のものだったぞ!」
「…松田さんの遺体は、生物室にその死体と一緒に安置されていたんだ。どうやら一つのカプセルに二人をまとめて突っ込んでいたらしい。死体の顔も確認したから、松田さん本人だというのは間違いないよ」
「は~、あのまっつんが盾ちゃんとねぇ~…。全然気づかんかったわ~」
「で、でも…江ノ島盾子の恋人だったその人が、なんで死んでるの?」
「…それは」
「私が殺しました」
言いよどんだ戦刃に構うことなく、江ノ島はなんでもないかのようにそう返答する。
「こ、殺したッ!?なんで…恋人だったんでしょ!?」
「ええ、確かに私と松田君は幼馴染で、そういう関係でもありました。けれど…、うっとおしくなったので、殺しました」
「う、うっとしく…だと?」
「そーだよ!あの野郎アタシにキモい幻想なんざ抱くもんだから、アタシがこれ以上歪まないようにって小細工しやがってよ!まーそれも全部想定内だったからアタシにとっちゃどーでもいいことだったんだけど…アレだ、よく言うだろ?『思い出は綺麗なままで』って奴?これ以上松田君が『希望』にも『絶望』にもなりきれない醜い存在になっちまう前に、アタシが引導を渡してやっただけのことだよッ!!」
「そ、そんな…そんなのって…ッ!!」
『こ、コイツヤベェッ!マジあり得ねェ~よ!』
「…皆、言い方は酷いけど、盾子ちゃんは本当に松田君のことを…」
「余計なことを喋らないでくれますか残姉ちゃん?というか、出番が来るまで口を開かないでください。口臭が臭います」
「う…」
「…話を戻そうか。ジジイ共に助力を乞われた松田さんはカムクライズルにある処置を施した。それは、『記憶の一部を消し去る』というもので、松田さんはこれを応用してカムクライズルの中のもう一つの人格を記憶として表に出てこれないよう封印したんだ」
「…ちょっと待って、記憶を消し去る?それって…!」
「…そうだ。この松田さんの技術は、江ノ島さんが僕らの記憶を奪う為に施した方法のプロトタイプなんだ。江ノ島さんはこの技術を松田さんから会得し、それを分析、発展させることでより完璧なものにして僕らに施したんだ」
「ま、マジか!?…つかオメエ、なんでそんなことができんだべ!?お前ギャルだろ!?神経学者じゃあねーじゃねーか!」
「ああ、そんなものは私の『もう一つの才能』をもってすれば容易いことさ」
「もう一つの才能…だと!?貴様も持っているのか!?」
「そーだよ!私のもう一つの才能は~、『超高校級の分析家』~!どんな事だろうと、それに関する情報を基に分析して~、例えば喧嘩の相手の動きを完全に予測したり~、不完全な技術を完璧なものに改良することだってできるんだよ~!私ってばマジ天才~!」
「な、何それ!?」
「マジチートじゃん!」
「…これが江ノ島盾子の得体の知れなさの正体か…!」
「…おっと、また話が脱線しちゃったね。苗木君、続けてくれないか?」
「…松田さんの処置の結果、カムクライズルの中から被験者の生徒の人格はとりあえず鳴りを潜めた。けれど、さっきも言ったとおりその技術は未完成なものだったから何時また人格が戻るか分からない。結局カムクライズルを持て余したジジイ共は眼の届くところに置いてしばらく監視することに決め、カムクライズルに仮の学籍を作って当時の希望ヶ峰学園の生徒会に在籍させたんだ。…そこに江ノ島さんは眼をつけた」
視線を向けられた江ノ島は、待ってましたとばかりに語りだす。
「…私は入学当初からずっ……っと考えていた。どうすればより多くの人間を絶望させられるのか、どうすればより甘美な絶望を味わえるのか…。松田君や残姉ちゃんを殺すのは最後のお楽しみとして、まずはより多くの人類を絶望させて地盤を固める必要があった。…ちょうどその頃、松田君から面白い話を聞いたんだ。『希望ヶ峰学園が『超高校級の希望』なる存在を創り出そうとしている』、『その計画に自分が一枚噛んでいる』とね。…それを聞いた時、私は物凄く面白いことを想いついたんだ」
テンションが高まって来たのか、次々とキャラを変えながら江ノ島はなおも語り続ける。
「カムクラ君が生徒会に入ったって聞いてねー!私は計画を実行するなら今しかないってことで~、こっそりカムクラ君に協力をお願いしたの~!…彼は記憶の混濁と…自分の基になった生徒の存在のせいで…かなり情緒不安定な状態だったので、自分の存在を自覚させるために…ほんの少し背中を押してあげたら…喜んで、協力してくれました…」
「自己の存在が希薄になっている所を弱みに付け込んだ訳か。狡い手だ…」
「うっせーな!黙―ってろ三下ァ!」
「さ、さんし…!?」
「…まあそれは置いておいて、カムクラ君の協力を得た私は事を起こしました。そしてその事件こそが、人類史上最大最悪の絶望的事件の種火となったことなのです」
「人類史上最大最悪の絶望的事件の…種火…!?」
江ノ島の意味深な物言いを、苗木が引き継いだ。
「その事件こそが、『希望ヶ峰学園生徒会虐殺事件』…またの名を、『希望ヶ峰学園史上最大最悪の絶望的事件』なんだ…!」
「希望ヶ峰学園…最大最悪の絶望的事件…!?」
「希望ヶ峰学園生徒会の虐殺だと…!?まさか…!」
「…その通りだよ十神君、学園の校舎の5階にあったあの血糊と破壊跡が残った教室…。あそここそが希望ヶ峰学園史上最大最悪の絶望的事件の現場だったんだ…」
「で、でも虐殺なんて…どうやって!?」
「まあ簡単なことですよ。あの教室にカムクラ君を含めた当時の生徒会メンバーを集めた後、出入り口を封鎖して逃げ道を失くし、こう言ったのです。…『ここから出たければ、周りの人間を全員殺して最後の一人になること』とね」
「ちょ、ちょっと待て!そ、それって…!」
「そうだとも!希望ヶ峰学園生徒会虐殺事件は、このコロシアイ学園生活のデモンストレーションでもあったということだ!実に有意義な実験であったよ。まあカムクラの横綱相撲だったのは少々退屈であったが、ただの『超高校級』風情が『スタンド使い』を相手によくやったものだと私様は思っているよ!」
「…!?い、今聞き流しで済まないワードが出てきた気がするんですが!?」
「カムクライズルがスタンド使い…だと!?」
「…成程、さっき言ってた被験者の生徒が持ち合わせている『技術』というのがスタンド能力のことだったということかしら?」
「いーや、それは少し違うね。被験者であった彼は確かに特別な『技術』を持っていた。けれど、彼自身はスタンド使いではなかったのだよ」
「え…?じゃ、じゃあどうやってスタンド能力を…?」
「カムクラ君は、人為的にスタンド能力を発現させられたんですよ」
「そ、そんなことできるんけ!?」
「ええ。…というか、皆さんだってそうなんですよ?」
「…何?」
「皆さんのスタンド能力は、私が記憶を奪う際に殺し合いをヒートアップさせるために与えたものです。ですから皆さんも、生まれついてのスタンド能力者という訳ではありませんよ」
「与えたって…何をしたんですかッ!?」
スタンドを与えるという得体の知れない行為に皆が警戒していると、ふと苗木が呟いた。
「…やっぱり江ノ島さん、プッチの奴と繋がっていたのか」
「ええ。利害関係の一致している間の協定関係ですけどね」
「プッチ…?」
「…皆にスタンド能力を与えたのは、エンリコ・プッチという男の持つ『ホワイトスネイク』というスタンドだ」
『…どういう能力なのだ?』
「簡単に言えば、『人の記憶やスタンド能力をDISC化して取り出す』ことができる。奴はこの能力を使ってスタンド能力を収集していたんだ。皆の能力も、プッチが他のスタンド使いから奪ったスタンドを与えられて発現したんだろう。…一部見覚えのある能力もあるけれど」
『…んだそりゃ、厄介どころの話じゃあねーぞ…!』
「な~るほど、学園からの脱出にスタンドが使えねーのはコイツが仕込んだからって訳か!」
「…次から次へと、一体どれほどねじ曲がっているのだこの事件は…!」
「…まあ、例外もあるんだけどね」
「例外?」
「ああ、入学以前からスタンドを所持していた苗木君と、…何故かDISCが弾かれてしまったはずなのにスタンドを発現している舞園さん、霧切さん、そして残姉ちゃん…」
「え?」
「…私たち?」
「…やっぱり」
「君たちがどうしてスタンドを手に入れたのか、そしてどうして『その』スタンドなのか、私にもとんと分からないんだよね。…ま、出所の見当はつくけどね」
『………』
『…チッ』
『う…』
「さて、続けよう。カムクラ君がスタンド能力を手に入れた経緯だけど、彼の場合はDISCによるものじゃあなくって手術の際に移植された『ある物』が関係しているんだ」
「ある物…?」
「…希望ヶ峰学園は、兼ねてからスタンド能力というものに興味を抱いていた。実際僕を始めとして当時の学園にはスタンド使いが3人在籍していたし、学園のスポンサーであるSPW財団には多くのスタンド使いが出入りしていた。眉唾物ではなく、実際に存在することが分かっている以上、万能の天才であるカムクライズルにもそれを求めた。けれど、スタンド能力を発現させることができるものを容易に手に入れることなんてできはしない。…そんな矢先、連中は『奇妙なもの』を入手したんだ」
「な、なんだべそれ?」
「…アメリカ大陸で発見されたという『ミイラ』…正確には『脳の一部』だ」
「ミ、ミイラ!?」
「それは相当古いものの筈なのに、どういう訳か風化しておらずほとんど原型を留めたまま何百年も存在していたものらしい。現地では気味悪がられていたけど、明らかに超常のものであることは確かだった。スタンド能力がなんらかの力の作用によって発現することを知っていた学園は、スタンド能力の発現の実験の為に被験者の脳にその『ミイラの脳の一部』を移植したんだ」
「結果は大成功。目論見通り、カムクライズルはスタンド能力を発現させることに成功した。…そしてその能力を使い、希望ヶ峰学園の生徒会の虐殺はほぼ予定通りに完了するはずだった。…最後にアクシデントさえ起きなければね」
「あ、アクシデント?」
「そうだよ!他の連中を全部ぶっ殺して、あとは後始末させりゃ終わりだってところに…苗木が邪魔しにきやがったんだよッ!」
「!苗木君が…?」
話の矛先を向けられ、苗木は遠い思い出を呼び起こすかのように語りだす。
「…あの夜、僕は学園の自室で奇妙な不安を感じて寝つけなかったんだ。…しばらくして急に学園の方で生命エネルギーが急激に減っていくのを感じて、大急ぎで駆け付けたんだ。そしてあの教室に着いたんだけど、頑丈に扉が固定されているのをみてただごとではないと思って無理やりぶち破ったんだ。…けれど、その時にはもう手遅れだった」
苗木は、その光景を思い浮かべながら懺悔するかのように独白を続ける。
「そこで僕が見たのは、狂気と絶望の表情を浮かべて血の海に倒れ伏す生徒会の皆…。そして、その中で平然とした顔でこちらを見るカムクライズル。…彼が僕を見て何かを言うよりも早く、僕の理性は吹っ飛んでいたよ」
「…闘ったのか?カムクライズルと…」
「ああ。…取り逃がしちゃったけどね」
「取り逃がしたって…勝ったんけ!?カムクライズルに!?」
「あの時のカムクラ君はまだスタンド能力を完璧に使いこなせてなかったからね~!まあ~、それでもカムクラ君としては邪魔くさい蠅を潰すつもりで迎え撃ったのかもしれないけど~、逆にボコボコにされて這う這うの体で逃げ帰ったんだよね~!マジウケる~!」
「す、凄い…!」
「…ま、その結果カムクラ君の怒りと関心を買っちゃうことになるんだけどね。さて、苗木君の横槍で若干尻切れトンボに生徒会の虐殺事件は終わっちゃうんだけど、ここでまた私の計画にアクシデントが起きちゃったんだよね」
「こ、今度はなんだべ?」
「はい…それは、苗木君もこの事件の『目撃者』になってしまった…ということなんです…」
「…も、だと?どういうことだ?」
「僕が殴りこんですぐに、もう一人現場にやって来た人がいたんだ」
「…読めたわ。それが江ノ島さん、あなただったということね」
「その通りだ!今回の事件は、私様がカムクラを焚き付けそのまま雲隠れさせ、その一部始終を私様『だけ』が目撃することで唯一の証人になってこそ完成される計画だったのだ。だというのに…運悪く苗木誠がもう一人の目撃者となったことで計画に狂いが生じた。流石の私様も何か手を打たなければと思っていたんのだが…ここで思いもよらぬ幸運が発生したのだ」
「幸運…ですか?」
「ハイ。事件の存在を知った学園側は、苗木君に事件の事を口外しないように指示してきました。要するに、隠蔽ですね」
「な、なんで!?自分の学校の生徒が殺されたんだよ!?それなのに…」
「だからですよ。誇りある希望ヶ峰学園の生徒が、こともあろうに学園の象徴たる『超高校級の希望』に皆殺しにされたとなれば、学園の名誉と信頼に傷がつく…学園の上層部はその事態を恐れ、事件の存在を知る苗木君に口止めをお願いしたのですよ」
「…腐ってるわね」
「僕も最初はもちろん断ったさ。例え学園の名誉が失墜したとしても、事件を究明しないことには何も解決しない。…けれど、学園長に土下座までされてしまった以上、とりあえず連中の要求を呑むしかなかった。学園長としても、自分たちのやって来たことが元凶になった以上自分たちの力で解決しなければならないと思っていたんだろう…」
「……」
「…待て、貴様はどうなったのだ?」
「あ、そうだべ!元はと言えばオメエが元凶だろ!オメエも目撃者だったっつーんなら、オメエを取り調べりゃ分かることじゃあねーか!」
「その通り。隠蔽することに決めたとはいえ、学園側としても事件の真相を突き止める必要はあった訳です。肝心のカムクライズルはどうにか保護できたものの何も話そうとしない。…結果、目撃者である苗木君と私には徹底的な取り調べが行われました。『超高校級のカウンセラー』や『超高校級の交渉人』などによる尋問から自白剤を使った証言の聴取まで、取り調べは苛烈を極めました。流石の私も、そこまでされてはボロが出ないとも限りません。そこで、私は私自身にある処置を施しました」
「処置…まさか!」
「…そう、松田君がカムクラ君に施した記憶の消去術…あれを私自身に施すようお願いしたんです…。松田君は危険だと言っていましたが、…ちょっと色目を使ったら認めてくれました…。ホント、男って馬鹿ですよね…」
「つーことは…?」
「施術の結果、予定通り私は事件に関することを綺麗さっぱり忘れることができました。…しかし、そんな私に恐怖を抱いたのか、松田君は施術の際に予定外のことをしでかしました」
「何だ?」
「松田君は私の事件に関する記憶だけではなく、私の人格そのものを消し去ってしまったのです。言ってしまえば、私という存在を消してしまおうとしたんですね」
「…だが貴様は現にこうしてここに居る。ということは奴はしくじったのか」
「ええ、彼の施した術式はその時点では未完成。しばらく時期を置けば自然と記憶は戻ってきますし、何かしらのきっかけがあれば思い出す恐れがあったため彼は定期的に私に術式を施す必要がありました。施術前からそのことに感づいていた私は事前にプッチと打ち合わせをして、松田君の思惑の裏で記憶が戻る手筈を整え、最終的に彼を出し抜いて記憶を取り戻し、邪魔者と化した彼を始末しました」
「…そんなことをすれば、増々学園の上層部に怪しまれるだけなんじゃあないの?」
「ご心配なくー!用意周到な私は、記憶が戻る過程で爺さんたちを皆殺しにしておきましたー!だからー、学園長や苗木君が気づいた時にはもう手遅れだったって訳―!」
「なんだと…!?」
「な、なんて奴だべ…」
「…さて、記憶を取り戻し、苗木君を除いた邪魔者を全て始末したところで、私はいよいよ計画を最終段階へとシフトさせました」
「つまりそれが…」
「そう!それこそが『人類史上最大最悪の絶望的事件』なのだよ!」
「…で、具体的に貴様は何をしたのだ?」
「…いいや、私は何もしていないよ」
「ハァ!?…いや、オメエが起こしたんだろうが!その『人類史上最大最悪の絶望的事件』って奴を!」
「私がやったことと言えば、予備学科の連中に『希望ヶ峰学園最大最悪の事件』の一部始終の映像を見せるよう手配しただけ。あ、もちろんカムクラ君がボコられるところはカットしてね。…私自身は、何も手を下してはいないよ」
「映像を見せた…だと!?」
「そう!私は才能に僻む連中に見せつけてやったのさ!才能が有ろうが無かろうが、『絶望』の前では等しく無力なんだってことをなッ!…連中の反応は予想通りでした。自分たちの憧れて、時に憎んでいた『超高校級』の生徒たちが己の欲望丸出しで殺し合う様子、それを見た予備学科の生徒たちはたちまち『絶望』し、それはやがて凄まじいスピードで世界中へと拡散していきました」
「せ、世界中に…!?」
「あり得ん!凡人程度の感情が、世界中に広まるなど…」
「…十神君さ、少し思い違いをしているよ」
「思い違い…?」
「彼らが感じた『絶望』は、試験に落ちたとか、会社をクビになったとか、そういう時に感じる『絶望』とは全く別次元のものなんだよ。…本当の『絶望』はね、『正義』だとか『悪』だとか、『本能』とか『理性』みたいな安っぽい感情で制御できるものじゃあないんだよ。それは宗教とも、倫理とも、常識とも違う…例えるならそうだね、『絶望』という事象に近いかな?『絶望』は、『伝染』するんだよ…!」
「馬鹿な…」
「『絶望』に染まる世界の変貌のスピードは凄まじいものだったよ。世界中で動機や理由のない殺人や自殺が発生し、連日のようにクーデターやテロによってどこかの国家が消滅していった…」
「そ、そこまで!?」
「うぷぷ!そうだよ、真の『絶望』を知った人間は誰にも止められないのさ!『絶望』しているから恐怖を感じない、恐怖を感じないから命も惜しくない。終いにはそれを止めようとしている人間がその理不尽さに『絶望』して仲間入りしてしまう!人間が『絶望』する生き物である以上、対策も理解もできない、それこそが『人類史上最大最悪』と呼ばれる所以なのさ!」
テンションが最高潮に達した江ノ島の言葉に、皆は言葉を返すことができない。生前にとんでもない邪悪と相対した経験のあるブチャラティ達であっても、例外ではなかった。それほどまでに、『絶望』の存在は想像以上に巨大で、理不尽なものであった。
「…もちろんこの事件の余波は希望ヶ峰学園にも及び、学園は学校としての機能を失い閉鎖にまで追い込まれた」
「…そしてその手帳に書かれている通り、学園長は学園のシェルター化を始めたという訳か」
「私たちを…『絶望』から守る為に…」
「その通り。ちなみにですが、この学園中に張り付けられている鉄板や柵などは全てあなた方が設置したものなのですよ。皆で、トンチンカン、とね。…けれどね、そこに追い討ちをかける事態が起きちゃうんだよ!」
「追い討ち…?」
「オマエラが学園の中に引き篭もってシコシコしている間にも、『絶望』に染まった連中は『希望』の象徴たる希望ヶ峰学園を落とす為に日々押し寄せてきていた。そんな奴らを、誰が足止めしていたんだと思う?」
「…誰、って…」
「……」
「わっかんないかー!じゃあじゃあ、ちょっとだけヒント教えてあげるー!…苗木君の記憶がさ、世界がこうなっちゃう以前の所までしか憶えていないのは何故だと思うー?」
「……」
『…まさか』
「そう!苗木誠は迫りくる『絶望』軍団を迎え撃つために、学園のシェルター化を進めている間一人学園の外で闘い続けていたのだよ!」
「一人でって…そりゃいくらなんでも無茶だべ!?」
「まあそう悲観したものではないさ。スタンド使いとそうでない人間に越えがたい差があるのは君たちも身を持って分かっている事だろう?それに、あの頃の苗木君は今とは比べものにならないくらい…おっと喋りすぎるところだった!うぷぷぷ!」
「…??」
「まあともかく、苗木君一人でも食い止めるぐらいなら不可能ではなかった。大神さんや大和田君辺りは助力に向かいたがってたけど、学園長と苗木君がそれを許さなかったけどね。…そして、ようやくシェルター化が完了し、苗木君を収容するのみとなった時…それを阻む者が現れた」
「んあ?誰それ?」
「無論、カムクラ君です」
「か、カムクラ!?ボコられて逃げ帰ったんじゃあ…」
「ジジイ共が死んだ後、私が彼を連れ戻したんだよ。…けれど、ちょうどその頃カムクラ君に施された術式が解けかかっていてね、また『前の奴』の人格がしゃしゃり出て面倒なことになってたんだ。…ま、ちょっとお節介をしてやったら聞き分けよくなってくれたけどね」
「お節介…ッ!?」
と、そこで背筋が凍るような殺気を感じた皆がハッとなって苗木を見ると、苗木はまた今にも襲い掛からんばかりの怒りの表情を浮かべていた。
「…貴様という奴はッ!」
「あーもーまたキレてんの?そろそろ時効でしょ?勘弁してよ~」
「…苗木君、何か知っているの?」
霧切の問いに、苗木は悔しさを滲ませた声で口を開く。
「…江ノ島さんは、カムクライズルの中の人格を消し去る為に、…彼の恋人を、殺したんだッ!!」
「なっ!?」
「おいおい、それは言いがかりなんじゃあないか?私が手を下した訳じゃあないんだぞ?」
「貴様がそうさせたんだろッ!!」
「そうさせたって…まさか!!」
「…そう、ただ殺したんじゃない。彼の恋人を、江ノ島さんはカムクライズル自身に殺させたんだ!しかも、『前の人格』が表に出てきている時を狙って…!」
「そ、そんなッ…!」
「そう!つまり、彼は自分自身の手で最愛の人を殺してしまったという訳なんだよ!いやぁ~、あの瞬間は最高だったなぁ~!『黄金の精神』を持つ人間が、自分自身に『絶望』する様!私が男だったら常時勃起モンのサイコーのショーだったってもんだ!」
「…ひ、酷い…酷すぎるよそんなのッ!」
「…とまあそういう訳で、自分自身に『絶望』してしまった彼にもはやカムクライズルに抵抗する力はなく、ようやっとカムクラ君が体の主導権を握った訳だ。そのカムクラ君が最初にしたことこそが、苗木君へのリベンジだったってことさ」
「……」
「さて、その戦いはどうなったかと言えば…結果だけを言えば、『相討ち』でした」
「相討ち…!?」
「体の支配権を得たことで、カムクラ君はスタンドを完璧に使いこなすことができました。しかし、相手はスタンド使いとしてカムクラ君よりもずっと練度の高い苗木君。一進一退の攻防でしたが、一瞬の隙を突いた苗木君のラッシュが決まり、カムクラ君は再起不能の重傷を負いました」
「だ、だったら…!」
「…しかし、苗木君も油断してたんでしょうねえ。ラッシュの最後の一撃が終わる刹那、カムクラ君の放った最後の一撃を喰らい、こちらも再起不能となりました」
「…ああ、そうだったな…」
「成程、苗木の記憶がそれ以降途絶えているのはそういうことだったのか…」
「…さて、苗木君の憶えていることはここまでなので、ここからは残姉ちゃんにお願いしましょうか?ホラホラ、さっさと話しな」
「…苗木君が負傷した後、学園長は本格的に学園を封鎖し外の世界と断絶したの。一応衛星放送だけは入るようにして外の情報が分かるようにはしていたんだけど、日に日に悪くなる現状に耐えかねていつか誰も見なくなっちゃんたんだ。盾子ちゃんはそれに目をつけて電波ジャックの手筈を整えたんだ…」
「全く学園長の癖にマヌケだよね~!『希望』を守る為にこしらえたシェルターの中に、僕ら『超高校級の絶望』が紛れ込んでいることに気付かなかったんだから!…シェルター化が完了してしばらくして、私様はいよいよ行動に移った。外にいる同胞たちに衛星の電波ジャックを指示した後、学園長を拘束して処刑、そして逃げ惑うあなた方をとっ捕まえて記憶の消去術を施してスタンド能力を移植、その間に学園の各所に銃火器の設置を行い、コロシアイの舞台を整えたという訳だ!」
「…そして戦刃さんと入れ替わり、自分は黒幕としてモノクマを操り…」
「オマエラが目覚めると同時にコロシアイ学園生活が幕を開けたという訳だ!」
詳しい掘り下げに関しては番外編の終盤をお待ち下さい