ぶっちゃけまだ準備できてませんが、挨拶も無しで正月すっぽかすのもどうかと思ったのでとりあえず更新がてら挨拶させていただきます。
これからも応援よろしくお願いします
や…」
苗木の手にしている『矢』を見た瞬間、ディアボロの余裕は瞬時に吹っ飛んだ。
「やめろぉぉぉぉぉぉーッ!!!」
焦燥と恐怖の籠った叫びを上げながら、ディアボロは苗木へと突貫する。もはや現状や周りの事など構っている暇はない。己にとっての唯一にして最大の恐怖をもたらす『力』の根源が揃ってしまった以上、ディアボロにとって苗木を一刻も早く抹殺することだけが最優先事項であった。
しかし、そんなディアボロをみすみす行かせる程皆は甘くない。
「…フン、貴様のそんな表情が拝めるとはな。いいザマだ、だが…」
真っ先にディアボロの前に立ち塞がったのは、『グレイトフル・デッド』を従えた十神白夜。
「見苦しいことこの上ない。さっさと黙ってもらおう!『グレイトフル・デッド』!パワー全開だッ!!」
ディアボロの進行を遮るかのように、『グレイトフル・デッド』が『老化』のエネルギーを放出する。今までは閉鎖された空間の都合上や江ノ島へのスタンド攻撃の無効化などの理由から『グレイトフル・デッド』を使うことは無かった。しかし、その制約も消え、目の前のこの男を一瞬でも足止めできればいいこの状況で、十神が『グレイトフル・デッド』を躊躇う理由はない。
『グレイトフル・デッド』から漏れ出した熱気が、辺り一帯を生命を瞬時に老化させる。当然真っ先にその影響を受けるのは最も近くにいる上に焦りで体温が上昇しているディアボロの筈である。
…が、相手が悪すぎた。
「『キング・クリムゾン』ッ!!」
『グレイトフル・デッド』の能力が発動したことで、ディアボロは『キング・クリムゾン』を発動せざるを得なくなった。
ディアボロが最初から時を飛ばさなかったのには理由がある。『時間操作系』のスタンド能力は強力であるが、それ故に能力を一度使うと終了してから再発動までに僅かだがタイムラグが必要となる。といっても、ディアボロ程に慣れていれば精々1,2秒程度のものであるが、今自分を取り囲んでいるのはその数秒あれば自分に致命的なダメージを与えられるようなスタンドばかりである。現に十神だけでなく他の皆も既に臨戦態勢を整えており、よしんば苗木を瞬殺できたとしても、次の瞬間に『S・フィンガーズ』や『オアシス』といったスタンドに攻撃されようものなら苗木だけに注意を向けている以上それを躱すことは困難である。
故に、ディアボロとしては必殺の間合いに入るまでは『キング・クリムゾン』を温存する予定であった。しかし、この至近距離で『グレイトフル・デッド』の発動を許すわけにはいかない。
ドォーンッ!!
『キング・クリムゾン』の発動と共に、時間が切り取られディアボロだけの時間が始まる。当然その中でも『グレイトフル・デッド』の能力は発動したままだが、棒立ちの十神を蹴散らす上では些細な事であった。
「プロシュートの亡霊風情が…。この俺にほんの少しでも敵うとでも思ったかッ!!」
瞬時に距離を詰めると、老化の影響が出るよりも早く『キング・クリムゾン』で十神を『グレイトフル・デッド』ごと薙ぎ払う。
「ッ!?グハッ!」
その瞬間再び時間が戻り、十神は何をされたのか分からぬまま壁に叩きつけられた。止めは刺さない。刺している暇がない。十神のような後でどうとでもなるような奴に構っている暇があるなら、既に矢じりを自身に向けている苗木を止めなければならない。ディアボロの頭の中はそのことで一杯であった。
しかし、忘れてはならない。十神白夜を傷つけるということは、とある人物の逆鱗を引き千切る行為に他ならないということを。
「白夜様になにしてくれてんだこのカビ頭がぁぁぁぁーッ!!!!」
十神が殴られたと見るや否や、ジェノサイダーは人体工学的に理解不能な動きでディアボロに飛び掛かる。
「ハリネズミになっちまいなッ!『メタリカ』ァァァァッ!!」
『メタリカ』によって錬成した無数の鋏を四方八方から投げつける。能力終了直後であるため『キング・クリムゾン』は使えない。しかし、空間攻撃である『グレイトフル・デッド』と異なり攻撃が見えているのであれば、ディアボロにはもう一つの『奥の手』がある。
「『エピタフ』ッ!!」
翻ったディアボロの髪の内側に、これより起こりゆる未来のヴィジョンが浮かぶ。これこそがディアボロの『キング・クリムゾン』の時間消失を確実なものとするもう一つの能力、『墓碑銘(エピタフ)』である。数秒先を映し出した『エピタフ』により、ディアボロは迫りくる鋏の軌道を完璧に把握することができる。
「リゾット・ネエロのスタンドか…。以前は手を焼かされたが、今の俺にとっては敵ではないッ!!」
エピタフに映された軌道を鋏が描くよりも速く、『キング・クリムゾン』の拳がそれらを叩き落とす。
ギャギャギャギャギャギャインッ!!
「なっ!?」
自身の攻撃を防がれたジェノサイダーがショックから立ち直る前に、『キング・クリムゾン』が蚊でも払うかのようにその体を弾き飛ばす。
「ぐえッ!?」
「ええい、忌々しいガキ共めッ!貴様らになんぞ構っている暇はッ…!?」
悪態をつきながらも苗木に迫るディアボロが地に足をつけた瞬間、その足場が泥沼の様に緩み、ディアボロの足を捉える。
「何ッ!?」
「「たあああああああああーッ!!!!」」
足を取られたディアボロが一瞬動きを止めたその瞬間、二つの影がその上から飛び掛かる。『S・フィンガーズ』を従えた舞園と、ディアボロの足元を『軟化』させた張本人である『オアシス』を身に纏った朝日奈である。
『アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!』
「オォォォォォアシスゥゥゥッ!!!!」
『S・フィンガーズ』の殺意むき出しのラッシュと、『オアシス』を纏った朝日奈自身が放つ大神直伝の拳がディアボロへと迫る。いくら女の子とはいえ片や触れるだけで『切断』する能力を持ち、片やスタンドを身に纏うことで『溶解』能力だけでなく、近接タイプのスタンドの中でも最高レベルの格闘能力を持ち合わせている。まともに喰らえば即死、運がよくとも重症は免れない。
…しかし既に『キング・クリムゾン』のタイムラグは終わっている。
「小賢しいッ!『キング・クリムゾン』ッ!!」
拳が鼻先まで迫った瞬間、ディアボロは時間を消し飛ばす。しかし、止まっている訳ではないため攻撃は続いたままである。足場を崩された以上、抜け出したとしてもこの近距離では攻撃を躱すことは出来ない。
だが、それは以前の『キング・クリムゾン』の話。今の『キング・クリムゾン』にはその限界を超える力があった。
「『アナザーワン・ディスペアー』ッ!!この場所から脱出した時間まで『跳躍』するッ!!」
その発動と同時に、ディアボロの存在は世界から『消失』する。『ディスペアー』の力によりディアボロは消し飛んだ時間の内に一切の邪魔が入らなかった場合に移動できた距離の好きな場所に転移することができる。すわなち、二人の攻撃により躱しきれないこの状況であっても、今の場所から抜け出し二人を射程に捉えるができるのである。
フンッ!!
「…えっ!?」
「どこに…」
「邪魔くさい小娘どもとしつこい亡霊がッ!!」
バキャッ!!
「あぐっ!?」
「きゃあッ!?」
『さやかッ!』
後方に突如出現したディアボロに攻撃が空振った二人はなす術もなく打ち倒される。立て続けに入る妨害に対し憤怒を隠し切れないディアボロであったが、今は苗木を止めることだけを考えすぐさま苗木に向き直る。
だが、その行動を読み切っていた奴がいた。
「…やっぱ俺の占いは3割当たるな。オメエならそこにいるってヤマ張って正解だったべ」
『ドウセナラ当タラネー7割ノ方に賭ケテタ方が確実ダッタンジャアネーカ?』
「うるせーッ!今カッコつけてんだから邪魔すんじゃあねーべ!」
「!?葉隠…康比呂ッ!?」
横から声をかけてきた取るに足らないカス以下の存在にディアボロが思わず反応する。
「さて、ディアボロ。俺の占いによると、オメエなら絶対躱した後二人に仕返しするって占いに出てた。その上で言うべ。…その位置、『大凶』だべッ!!」
「ッ!?」
その瞬間、真上にあった天井の照明がディアボロ目掛けて落下する。
「フン…!こんなもの…!?」
叩き落とそうとした瞬間、ディアボロの腕、そして足から次々と鋏が飛び出し、その筋肉を引き裂く。
「ぐおッ!?これ、は…『メタリカ』ッ!!」
見ると壁際で寝そべっているジェノサイダーが意識があるのかないのか分からない状態ながらもニヤリとしたり顔を浮かべている。どうやら運が悪いことに『偶然』ジェノサイダーの無意識のフォローと照明の落下のタイミングが重なったらしい。
『ソノ腕ジャア防グコトモ回避スルコトモデキネーダロ!ソノママ腕の腱ブ千切ラレテ頭潰れッチマイナーッ!!』
中立である筈の『ドラゴンズ・D』もザマミロという感じなのかディアボロを貶し出す。…だが、腕を引き裂く鋏が今にも腕の腱に迫ろうとしている時であっても、ディアボロは慌てなかった。
「…そのスタンドの能力は知っている。確かに恐ろしいが、この俺にとっては問題ではないッ!『キング・クリムゾン』!」
ディアボロは『キング・クリムゾン』により一瞬時間を消し飛ばす…そう、『一瞬』である。その気になれば10秒程度消し飛ばし多少手傷は負う恐れがあっても状況を打破できるかもしれないというのに、ディアボロが消し飛ばしたのはほんの一瞬であった。
…だがその一瞬が、『ドラゴンズ・D』にとっては命取りとなる。
「…はにゃ?」
時間が戻った瞬間、ジェノサイダーが力尽きる。と同時に当然『メタリカ』も消失し
ガシャ
「…フン」
ディアボロは何事も無かったかのように落ちてきた照明を受け止めた。
「…ありゃ?なんでだ?『大凶』の位置ならゼッテー躱せない筈だったのに…」
『…オイヤスヒロ、ドウヤラ俺達とアイツジャア相性最悪ダッタミテーダゼ』
「あ?どういうことだ?」
『忘レタノカヨ、風水ッツーノハ秒単位で変化スルモンナンダゼ…』
「それがどうし…ッ!?ま、まさか…」
『アノ野郎…!『大凶』二ナッテイル時間を消し飛ばしヤガッタ!モウアソコハ大凶ジャアネーッ!』
『ドラゴンズ・D』の能力はあくまで風水を読み取るだけであって自由に操れるわけではない。なので、ほんのわずかでも時間をずらすことができれば風水の位置は変化し、大凶の位置に居たとしてもその難を逃れることは容易である。詰まる所、『ドラゴンズ・D』と『キング・クリムゾン』の相性は最悪だったのである。
愕然とする葉隠を路傍の石でも見るかの如く見下し、ディアボロは手にした照明を葉隠に投げつける。
ガインッ!
「ぐへぇ~!?」
情けない悲鳴と共に倒れる葉隠になど意に介さず、ディアボロは恐らく既に矢を自身に突き立ているであろう苗木に顔を向けようとし…はたと気づく。
(…まて、何故苗木誠は未だに『矢』を突き刺さない?俺は既に十数秒時間を消し飛ばしている。それだけの時間があれば、『矢』を突き立てることなど容易な筈なのに…。もしや…『矢』が拒否しているのか!?苗木誠を!)
ディアボロの予想は、少なからずも当たっていた。。
ググ…グ…!
(『矢』が…僕を『拒絶』しようとしている…!?)
苗木は『矢』を取り出してからすぐに自分に突き刺そうとしていた。だが、肝心の『矢』
が自分に向けられた瞬間、まるで自分の腕が鉛のように重くなりなかなか『矢』を突き立てれずにいたのだった。
(『二度』も至るのはフェアじゃない、ということか…?いや、違う…。僕に、『覚悟』が足りないから…。あの時、『ブラック・サバス』の『矢』に貫かれても何も起きなかったように、今の僕にはあの『力』に対して背負うべき『覚悟』が足りてないのか…!)
「だが、意地でも従ってもらうぞ…!今の僕には、あの時と同じぐらいこの『力』を求める『渇望』があるッ!!」
皆の奮闘を無駄にしないためにも、苗木は『矢』の抵抗に屈せず腕を動かそうとする。
「フ、フハハ…!この土壇場で『矢』に嫌われるとはなッ!無様なものだ!…だが貴様にはこれまで何度も煮え湯を飲まされている、もしものことが無いよう、今のうちに殺してやるッ!!」
願ってもない状況に歓喜するディアボロは進撃を再開する。万が一のことが起こらぬよう、もう邪魔が入らないうちに苗木を殺してしまえば後はどうとでもなる。ディアボロにとってはそれだけが目的であった。
しかし、彼等にもまだ奥の手はある。
「……ッ!!」
「…ハッ!上かッ!?」
微かな殺気に気づいたディアボロが見上げると、そこにはナイフを携えた戦刃と『エアロスミス』が突っ込んで来ていた。
「戦刃むくろッ!」
「『エアロスミス』ッ!!」
『ボラボラボラボラボラボラッ!!』
『エアロスミス』の機銃と爆弾がディアボロへと殺到する。しかしそれに対しディアボロは余裕の笑みを浮かべる。この程度の攻撃なら『キング・クリムゾン』で防ぐことは容易である。
「無駄なことを…!」
ディアボロは嘲笑しながら時を飛ばし、弾丸や爆弾が自分に当たる瞬間を消し飛ばして攻撃を躱す。
「ッ!やっぱり…!」
『クッソォ~ッ!また時を飛ばしやがったぁ~!』
「貴様ら程度にこの俺を止められると思ったか!この裏切り者どもがッ!!」
歯噛みする戦刃の刃が届く寸前に、『キング・クリムゾン』の拳が彼女を殴り飛ばす。
バキャッ!!
「あうっ!」
『ムクロッ!』
間一髪でガードが間に合い、腕の骨をへし折られながら天井に叩きつけられた戦刃に見向きもせず、もうすぐ射程へと捉える苗木に向かおうとし…ディアボロはふと気づいた。
(…今のはなんだ?『やっぱり』だと?戦刃むくろ…『超高校級の軍人』ともあろうものが、無駄だと承知の上で無意味な攻撃をしたのか?いくら奴がすっトロイといっても、その程度の判断がつかないほど愚かではッ…!?)
その時ディアボロは思い出す。今の今までこの戦闘に参加していない、もう一人の存在を。ハッとしたディアボロが上を見上げると
そこにはナイフを構えた戦刃が存在していた。しかし、当の戦刃は足元に倒れ伏せている。だがディアボロには、それを確認せずともその正体がわかっていた。
「『ムーディ・ブルース』ッ!霧切響子か!」
そう、上から迫る戦刃の正体は、つい先ほどの戦刃の動きを『再生』している『ムーディ・ブルース』であった。霧切は戦刃の攻撃が躱されることを先読みし、事前に戦刃と打ち合わせをしていたのだ。戦刃が倒された時、そのすぐ後、『キング・クリムゾン』の能力が復帰する前に『ムーディ・ブルース』が同じモーションで攻撃できるように。
「あなたのその『時間消失』…続けて使える物じゃあないでしょう?このタイミングなら、あなたは躱せない…!」
『くたばれディアボロォォッ!!』
『ムーディ・ブルース』…もとい、アバッキオの雄叫びと共に振り下ろされたナイフは、本来戦刃が描くはずだった軌道に従い棒立ちのディアボロの肩口に突き刺さった。
「ぐおおおおおおおッ!!?」
『これ以上は先がねえから『再生』できねえ…、だが関係ねえッ!今度は俺自身がテメエを絞め殺してや…ッ!?』
『再生』が終了し本来ののっぺらぼうへと戻った『ムーディ・ブルース』がディアボロの首に手を掛けようとした時、
瞬間、ディアボロの姿が掻き消える。
「ッ!?しまった、『ディスペアー』…ッ!?」
『あの状態から、時を…ッ!?』
霧切がそれに気づいた時にはもう遅い。
「…貴様という奴は本当に、本当にこの俺を苛立たせてくれる…ッ!」
「ッ!」
「おとなしく父親の元へ逝くがいいッ!!」
ボンッ!
「がふっ…!?」
『キョーコッ!』
脇腹に手刀を叩きこまれ、半ばまで引き裂かれながら霧切は壁に叩きつけられる。かろうじて息を保った彼女を一瞥し、もう邪魔者がいないことを確かめるとディアボロはようやく笑みを浮かべて苗木へと向き直る。
そして『矢』を構えながら自分を睨む苗木に対し、宣言する。
「…ディアボロ…ッ!!」
「もうこれで邪魔は入らん…。苗木誠、もう一度言おうッ!貴様には死んだことを後悔する時間すらも、与えんッ!!」
そして苗木が迎撃の体勢を取る前に、ディアボロはこの時の為に得た力を発動させる。
「『キング・クリムゾン・アナザーワン・ディスペアー』ッ!!時間よ、我に追随せよーッ!!」
その言葉の通り、ディアボロは消し飛ばした時間の中から『苗木を確実に仕留められる距離』までの時間まで『跳躍』し、やがて世界がディアボロの存在を確認したその時には
『キング・クリムゾン』の腕が、苗木の心臓を貫いていた。
「な…ッ!」
『苗木ィィィィィーッ!!!!』
その光景が現れた瞬間、皆の悲鳴が木霊する。その慟哭を背に受けながら、ディアボロは『キング・クリムゾン』が貫いた怨敵の姿を捉えて高らかに宣言する。
「勝ったぞ…ッ!!苗木誠は死んだッ!『帝王』はこのディアボロだ!永久に、変わりなくッ!!」
「…感謝するぞ、ディアボロ。お前のおかげで、最後の『覚悟』が決まった…。『死』を以てしても、この力を得るという『覚悟』がな…ッ!」
「ッ!!?」
足元から聞こえた聞こえる筈のない、聞きたくない声にハッとして視線を下げると…そこには依然『キング・クリムゾン』に貫かれたままで鮮血を飛沫かせながらも不敵な笑みを浮かべる苗木が居た。
「馬鹿なッ!心臓を貫いたんだぞ!?生きてなどいれる筈がッ…!?」
「…そうだ、確かに以前の僕なら例え『ゴールド・E』を使ったとしても即死していただろう。だが…、今の僕には『奴』からの初めての『誕生日プレゼント』があるんでなッ!」
唖然とするディアボロに構うことなく、苗木は手にした『矢』を再び強く握りしめ、
「ッマズイ!『キング・クリムゾン』!早く止めをッ…!」
「クソ親父ッ!こんなことを言うのは最初で最後だ!……ありがとう、父さんッ!!」
『ゴールド・エクスペリエンス』の胸を、貫いた。
その瞬間、
ブアアアアアアアアアッ!!
『ゴールド・E』の『矢』が突き刺さった傷口から凄まじい光の奔流が溢れだした。
「ぬあッ!?こ、これはッ…あの時と、同じッ…!?」
その光は間近に居たディアボロの眼をくらませるだけでなく、周りで傷つき倒れ伏す皆に纏わりつくとその体に変化を齎す。
「ぐっ…、この、光は…?…ッ!?体が…?」
「痛みが、消えて…傷も、治っていく…!」
「これは…『ゴールド・E』の生命エネルギー…?でも、今までとは明らかに違う…!」
あふれ出た光は皆の傷口を瞬く間に癒し、致命傷だった霧切ですらも元通りに治してしまった。だが変化はそれだけではない。
「確かに、なんか居心地が良いっつーか…。暖けえ…すんげえ暖けえよ…!」
「うん…。まるで、苗木みたいな…」
『さくらちゃんがどこに行っても、私は変わったりなんかしないよ!ずっとずっと、さくらちゃんと…皆と友達!だから、安心して!』
『朝日奈…有難う』
「ッ!?」
「朝日奈さん…?」
「な、なにコレ…?これは…私と、さくらちゃんの…?」
『…貴様が作家だろうが殺人鬼だろうが、そんなことはどうでもいいッ!!下らん陰口をたたく奴がいるなら俺が黙らせてやるッ!だから…ついて来るなら好きにしろ、腐川』
『…は、はいっ!一生ついて行きます白夜様!』
「…びゃ、白夜様ッ!いつの間にアタシにデレてくれたんですか!?」
「ええい、うっとおしい!…なんだこの光景はッ!?頭の中に勝手に流れ込んでくる…!」
「…もしかして、これって…!」
「私たちの、失われた記憶…?」
『例えどんなことを言われても、私はここに宣言します!『アイドル』舞園さやかは、皆さんを裏切りませんッ!!』
『…私は決して負けはしない…!あなた達『犯罪被害者救済委員会』が何度私を見世物にしようとも、必ずあなた達に辿りついてみせる!御爺様の…『霧切』の名にかけてッ!!』
「…そう。苗木君の『希望』が、私たちの記憶を繋いでくれた。苗木君の『希望を与える』という思いが、私たちの記憶を呼び戻してくれた…!」
「…不思議なものだな。一つ一つが滑稽極まりないものだというのに…それを自然と受け入れている」
「ああ…。まるでジグソーパズルみてーに欠けたところが埋まっていくみてーだ…」
「これが、苗木君が知っている私たち…。苗木君が、愛した…苗木君を愛した、私たちの記憶…」
『…あ、あの…苗木君…。こんな言い方変かもしれませんけど…優しくしてくださいね?』
「ッ!?」
『え、えと!な、苗木…その…!わ、私こういうこと全然知らないけど…下手かもしれないけど頑張るから…!その…私を、貰ってください!』
「ファッ!?」
『…不束者ですが、よろしくお願いします苗木君…。』
「…!」
『…後悔しないかしら?こんな変わった女なんかで…?…そう、じゃあ…愛してるわ、苗木君』
「ッ!!??」
「…え、えっ…と?」
「い、今のって…?」
「…?おい、貴様ら何を赤くなっている?」
「な、なんでもないですッ!!」
「…見たの?」
「…ええ」
「そっか…見ちゃったんだ」
「あ、あの…戦刃さん…。やっぱり、今のって…」
「…多分考えていることであってるよ」
「そ、そうですか…」
「……」
「……」
「…凄かったわね」
「「「うん…」」」
「…なんだべこりゃ?」
「わっかんね!」
そんな外野の騒ぎであったが、ディアボロの耳には聞こえていなかった。
「ふ…ふざけるなよッ!!『2年』だぞッ!この俺が、帝王であるこのディアボロが2年もの間無様に息をひそめてこの時を待ったというのに、それを…それを、こんなカスみたいな連中に台無しにされて…たまるかぁーッ!!」
自分を押し返そうとする光の奔流を掻き分け、ディアボロは光の中心目掛けて再び攻撃を仕掛ける。
「死ねェーッ!苗木誠ォーッ!!」
…だが、『キング。クリムゾン』の手刀が突き刺さった先には
ガララッ…!
「ッ!?妙な、手ごたえ…!?」
軽石でも砕いたかのような感覚に疑問を憶えたその時、ようやく光が収まっていき、中心が見えてくる。そこに『あった』のは
「あれは…?」
「『ゴールド・E』…の、…抜け殻?」
半ば砕かれた状態であったが、かろうじて原型を留めている『背中がぱっくりと割れた』、まるで蛹の抜け殻のような『ゴールド・E』の残骸。そして
「…無駄だディアボロ。これは『結果』に至ったんじゃあない。最初からこうだったんだ。ただ、『在るべき形』に戻っただけだ…そうなるべきだった所に、ただ元に…」
「…ハッ!?」
『頭上』よりかけられる声にデジャヴを感じたディアボロと皆が顔を上げたその先には…
「…敢えて言おう。戻って来たぞ、ディアボロッ!」
髪と瞳に、黄金の輝きを取り戻した苗木誠、そしてその『
「…本当に、本当に、遠い廻り道だった。僕一人の力では、決してここには戻ってこれなかった。…けれど、皆の『生きたい』という思いが、僕に道を切り開く『覚悟』をくれた…」
桑田、大和田、セレスの顔が浮かぶ。
「皆のお前に『立ち向かう』思いが、僕に暗闇を進む『勇気』をくれた…」
不二咲、石丸の顔が浮かぶ。
「皆が僕に『託した』思いが、僕に『向かうべき方向』を導いてくれた…」
山田、大神の顔が浮かぶ。
「この『レクイエム』は、僕一人のものじゃあない。この学園で死んでいった、そして外の世界で闘う『希望』を信じる人たちの想いの結晶…!その重み、お前一人の力で消し去ることができるか…?ディアボロ…ッ!!」
「…ッ!!?」
常識はずれのスタンドパワーを持って、己を見下ろすかのように滞空する黄金の存在。かつて自らに『敗北』の二文字を叩きつけたそれに、ディアボロは戦慄する。
(…馬鹿な…ッ!こんな、こんなことが…ある筈が、あっていい筈が無いッ!!あんな小僧如きが、二度も『矢』に選ばれるなどということが、あってたまるかッ!!)
一方、霧切たちもまた苗木と『G・E・R』を見上げていた。
「あれが…苗木の本当のスタンド…」
「そうだべ…あれが、あれが苗木っちの最強のスタンド…」
「『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』…!」
「姿を見るのは初めてですけど…なんでしょう、すごく不思議な感じです…」
「…あ~、駄目だ。アタシあれ見てると自己嫌悪になりそー…」
「なんていうか…スタンドとは思えない…。なんていうか…本当に、苗木君がもう一人いるみたいな…」
「…あれが、彼自身の『希望』の形そのものなのね…」
『…そうか、それがお前の『希望』か。苗木…』
『成程な。…先輩、どうやら俺がやったことは無駄にはならなかったみたいだぜ…』
『すっげぇ…。アレが、『矢』の力だったのかよ…!ポルナレフのおっさんが必死になってた理由がようやく分かったぜぇ~…』
その圧倒的な存在感と、それでいてなお感じる安心感を皆は憶えていた。だが、そんな彼等とは裏腹に、ディアボロは愕然とする自分をどうにか繋ぎ止めようとしていた。
(落ち着け…!奴のスタンドはただ『進化』しただけだッ!奴は今ようやく俺と『同等』の存在になったに過ぎん…。ならばあの時から自分の能力すらも碌に理解していない奴よりも、『ディスペアー』の能力を完璧に使いこなしているこの俺の方が圧倒的に有利!なにも恐れることはない…、勝つのは、この俺だッ!!)
恐怖を自信とプライドで押し潰し、ディアボロは苗木へと再び殺意を飛ばす。
「…調子に乗るなよ苗木誠ッ!!もうお前には、死ぬための時間すらも与えんッ!!『ある筈のない時間』のなかで、永久に自分を悔い続けるがいいッ!!」
「……」
何も言葉を返すことなく自分を見つめる苗木に向けて、ディアボロは再び『キング・クリムゾン』を発動させる。
「『キング・クリムゾン』ッ!!我以外の時間は、全て吹き飛ぶーッ!!」
消し飛んだ時間の中で、ディアボロは跳び上がると一気に距離を詰め苗木の『頭部』目掛けて『キング・クリムゾン』の拳を叩きこむ。
「貴様が『吸血鬼』になっていたことを忘れていたッ!あの女からの情報通りなら、『吸血鬼』は『太陽の光』か『波紋』とかいうエネルギー、そして『頭部』を砕いてやれば死ぬッ!!ならば最も有効なのは、貴様の脳ミソをこの『キング・クリムゾン』で叩き潰してやることだーッ!!」
まっすぐに苗木の頭部に突き出される拳。だが…
ググ…グ…
あの時と同じように、消し飛んだ時間の中であるにも関わらず『キング・クリムゾン』の動きが止まる。
「…ッ来た!!」
しかし、ディアボロはこの時を待っていた。
「ここだッ!以前俺の『キング・クリムゾン』はこの瞬間に何らかの力によって消し飛んだ時間を戻されてしまった!…だが、今の俺はあの時の二の轍は踏まんッ!!この力は、『この時』の為にあったッ!!」
あの時のように時間が逆行する前に、ディアボロはあの時に無かった力を使う。
「『アナザーワン・ディスペアー』ッ!!我が時よ、この俺を『未来』へと誘えーッ!!」
発動する『ディスペアー』。消し飛んだ時間の中からその先の『未来』へと『跳躍する』能力。なんらかの力によって時間の逆行が始まったのなら、それが来る前に『逆行が起き得なかった』時間へと向かってしまえばいい。それがディアボロが考えた『レクイエム殺し』であった。
そして、ディアボロが跳躍した時間、『エピタフ』に写し出された『最善の未来』にあった光景は
『キング・クリムゾン』によって頭蓋を砕かれ、脳漿をまき散らす苗木の姿であった。
「…ッ!や、やったぞ!これで『未来』は『確定』されたッ!!多少タイムパラドックスが起きたとしても構うものかッ!次に俺が『辿りついた』先に、この輝かしい『未来』がある!『矢』は苗木誠を選んだようだが、『世界』はこのディアボロを選んだッ!!最後に『希望』を得るのはこのディアボロだッ!!」
そして『ディスペアー』が始まり、ディアボロの体は時間を飛び越え未来へと消える。
「死ねェーッ!!」
辿りついた『未来』目掛けて、ディアボロは改めて『キング・クリムゾン』を叩きこむ―
―ガシッ
「…?」
しかし、その『未来』でディアボロを待っていたのは、『キング・クリムゾン』の手首を掴む『何か』であった。
「…なんだ、これは?俺は、こんな『未来』など…」
「…浅はかだったな、ディアボロ」
「ッ!!?」
その『何か』…手首を掴む『腕』の主は、『消し飛んだ時間』の中で平然と声を上げる苗木と『G・E・R』であった。
「き、貴様…!何故、動ける…ッ!?この『消し飛んだ時間』を認識できるのは、この俺を於いて他には…」
「この力が、皆が命を賭けて僕につないでくれたこの力が、そんな生ぬるいものだとでも思っていたのか…?」
愕然とするディアボロに、苗木は遠い想いに馳せるかのように呟く。
「『二度目』にこの力へと至ったことでようやく理解できた…。『レクイエム』の真の力…それは『あらゆる力をゼロへと戻す』能力。『消し飛んだ時間』であろうが、『確定された未来』であろうが、僕に向けられたあらゆる『事象』を無かったことにしてしまう力…!それこそが、僕の『ゴールド・エクスペリエンス』の『レクイエム』…!!」
『…ソウ。苗木誠ヨ、アナタハ遂ニソノ『真理』ヘト辿リツイタ。モハヤ私ハアナタノモノ…。アナタコソガ、『レクイエム』ソノモノ…!』
『G・E・R』の言葉に頷き、苗木は高らかに言い放つ。
「…『時間』よ、『在るべき場所』へと還れッ!!」
その『言霊』は『キング・クリムゾン』の力すらも上書きし、消し飛んだ時間を元の時間へと巻き戻していく。…無論、ディアボロも例外ではない。
「う…おおおおおおおおおッ!!?」
再び味わう『逆行』していく感覚に、ディアボロは遂に悲鳴を上げる。
「な、何故だッ!世界は、『絶望』は…このディアボロを選んだのでは無かったのか…ッ!?」
『…バーカ、アンタなんかをアタシが『認める』訳がないでしょ?』
「ッ!?江ノ島…盾子!?」
ディアボロの中で今まで沈黙を保っていた江ノ島が声を上げる。
『アンタはアタシに『利用』されていたに過ぎないんだよ。他人には『絶望』を、自分には『希望』をだなんていう、都合のいい阿呆をアタシが選ぶわけがないじゃん。アタシがアンタを置いといたのは、苗木のとの『繋がり』と『スタンド』が欲しかっただけ。アンタ自身はどーでも良かったんだよ』
「き、貴様ッ…!」
『この『結果』は予想外でもなんでもない、既に決定された『必然』だったんだよ。…でなきゃ、アタシがアンタに体を貸す訳がないじゃん。アタシは『死の絶望』は喜んで歓迎だけど、『惨めな敗北』だけは死んでも御免なんだよ。…あ、どーせ死ぬじゃんラッキー♡』
「江ノ島盾子ォォォォッ!!」
激怒するディアボロの事などお構いなしに、時間はみるみる戻っていき、
「…調子に乗るなよ苗木誠ッ!!もうお前には、死ぬための時間すらも与えんッ!!『ある筈のない時間』のなかで、永久に自分を悔い続けるがいいッ!!」
遂に、『消し飛んだ時間』の始まりへと戻って来た。
「こ、こんな…こんなことがッ!」
「…な、何だ?何があった?」
「アイツ、急にパニクって…どうしたんだべ?」
「…いえ、あれはただのパニックだけじゃない。…怯え、そして…怒り?」
時間が消し飛んだことすらも認識できていない霧切たちにとっては、盛大に啖呵を切ったと思いきやいきなりパニックを起こしたディアボロの姿はとても異様なものだったであろう。
「…終わりだ、ディアボロ…!」
そしてそのディアボロに、全てを知る苗木が接近する。
「お、俺の『未来』はこんな『終わり』なんかじゃあない筈なんだ…ッ!この俺の『キング・クリムゾン』は、勝利への『未来』を…ッ!」
そしてディアボロが苗木に応戦の構えを取るよりも早く…
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」
『G・E・R』のラッシュが、ディアボロへと突き刺さった。
「ぐ、ぐえ…ッ!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」
「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYッ!!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーッ!!!!」
今回ここまで
次回の更新も少し遅くなります